普通に生きられなかった私への鎮魂歌

植田伊織

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書く・描く

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 日差しの暖かい休日だった。自転車で遠出をしたから体は冷えてしまったけれど、息子を公園で遊ばせている間はさほど寒さを感じなかった。
 広い公園にはこどもがわらわらいて、皆薄着だ。子供は風の子、大人は火の子。

 長い間駄文を書かないでいると、何か人のためになるような記事を作成できればとか、何か物珍しい出来事が起こった時に書いた方が良いのだろうかとか、下心が芽生えてしまっていけない。

 12月は繁忙期でとてもではないが文章を書いている余裕が無かったし、年始の休みは家族の世話で過ぎてゆくから、駄文にまで手はまわらなかった。

 文章を書く事といえば、嬉しい事に、短期間に三本短編を書くことが出来たので、そちらを優先した。

 『絶縁された後の正月について』は私の作品の中ではコメントや感想をいただけた作品で、はじめてカクヨムでレビューをいただいた短編でもあった。

 社会に問題定義するために書く、というような目的があったわけではなく、書かずには自分が自分でいられなかったため、書いた物だった。
 だから正直、一本の短編としてまとまるかどうかも不安だったし、最悪駄文シリーズに加えようかとも思ったのだけれど、あくまで「創作」である以上、なんとか「物語」として成立させたかった。
 推敲する余裕も無く、言い回しが重複している箇所もある。私の文の癖がもろに出てしまった。
 重たい内容の話なので書き直すのもしんどく、今後も粗は見ないふりするだろうけれど、書いて良かったと思えた作品だった。

 私はまだまだ、駆け出し(と言っていいのか?)の底辺字書きである。それでも、人の心を打つことが出来たのだと、嬉しく思えた。
 ゆっくり進もう。成長しよう。今書いている作品以上の物を、今後書けるかわからないけれど、それはピリオドを打ってから考えれば良い話だ。

 ——そう判っていても、文章を書くのがしんどくなる時がある。
 推敲最中に執筆中の夢心地な気持ちから覚めてしまい、「こんなんで傑作だと思っていたのか」と我に返った時。
 そして、発表したものが読んでもらえなかった時だ。そんなに駄目ですかね、私と言いたくなってしまう。

 外部からの評価に依存するのは良い結果を招かない。自分で自分を認めてあげて、駄目な自分をも認めた上での躍進を願うのが正当な手順という物なのだろう。それがうまくいっていれば駄文シリーズなど初めてはいないのだけれど。

 そんなしんどい時は、絵を描くことにした。
 というより、自然と描きたくなってきたと言うほうが正しい。

 この駄文の最初の方に描いたのだけれど、私は若い頃、絵でプロになりたかった。しかし、実力不足で挫折し、母からも夢を見ているんじゃないと絵画関係の道具をすべて捨てられてしまってから、絵が描けなくなった経緯がある。
 若い頃のように、普段からスケッチブックを持ち歩いて、気になる物を片っ端から描いてゆくようなモチベーションはもう無いけれど、時折発作のように、絵が描きたいなぁと思う事が増えた。
 私にとって絵は、辛い時の感情のはけ口なんだろうか。そうだとしても今はかまわないと思っている。
 
 とにかく、絵なら、自分がどの程度描けて、どの程度描けないのかある程度把握している。だからこそ、過度な理想を追い求めることなく自分なりの理想を表現できるのが良い。
 自分ですべてを生み出すのはあきらめているので、描けなくなったら素材を探すし、構図も勉強する。弱みを潰すより強みを生かした絵画を追求できる。(仕事じゃないから)

 多分、絵を描くことによって自分の人生を豊かに出来るけれど、方向性まで変える事はできないと。平たく言えばプロにはなれっこないと良い意味で諦めきれているので、しんどくないのだと思う。
 ここまでの境地にいたるまで、私なりに努力したつもりだ。その上での決断だから、今では納得している。

 好きなことと共に生きるというのは、そういう事なのかも知れない。
 いつの日か、小説が私にとって「好きな事」になる日がくるまで、技を磨ければいいなと思っている。
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