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小さな幸せ
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「奥様、なんだかご機嫌ですね」
窓から外を見ながら頬を緩ませてしまった私に、ハンナが宝石を広げながら笑う。
いつの間にか戻っていた奥様という呼び方はやっぱりなんだかくすぐったいと思うのだけれど、主人であるエルネストに不満がある時はアリシア様と呼ぶのです、とハンナはなぜか張り切っていた。
使用人一同、その不思議なルールを共有することに決めたらしいわ。ここの皆は本当に仲がいいのね。
結局、私とエルネストはやり直しの結婚式をすることに決めたの。
正直今さら式なんて恥ずかしいし、私はあまりこだわりが無い方だったから断ろうかと思ったのだけれど、断りきれなかった。皆がやる気を見せていたからこじんまりとした式で、と私が折れたと言うべきかしら。
形だけのつもりだったから手持ちの白系の服でと思っていたのに、どこから聞いたのか、お母様とお義姉様が私のドレスを作るのだと張り切っていて、式は一年後。場所は私の希望で、領地の中の小さな教会。小ぶりな花が周りに咲いていて、幼い頃そこを気に入っていたことを思い出す。
そう、丁度ドレスに合わせる宝石を選んでいるハンナが手に持っている薄い紫の石みたいな色だったわ。
もう結婚前の少女でも無いのに、花嫁になる準備をしているこの時間にそわそわしてしまうわね。
私はこうしてのんびりしているだけで、周りの皆がやってくれているし、今日もお昼からエルネストとピクニックに行く約束をしているの。
「ええ、ピクニックが楽しみなの」
うふふ、と堪えきれない笑い声が零れる。そんな私を見て、ハンナも笑っていた。
「奥様が嬉しそうだと私も嬉しいです。今日は旦那様と2人きりでのお出かけですからね! 季節のせいか体調を崩していたのが心配でしたがここ数日は調子も良さそうですし楽しんできてくださいね」
動きやすい、ゆったりとしたワンピース。厚手だけど重くは無いストール。軽く巻いた髪はポニーテールで、リボンが結ばれている。
少し若作りじゃないかしら、と窓に映る自分を見て思うけれど、ハンナを含めた侍女たちには大絶賛されては嫌とも言えない。
コンコン、と響いたノックの音に、私は立ち上がった。
「アリシア、そろそろ行こうと思うんだが」
扉の先に立っているエルネストが片手を伸ばす。もう片方の手には何だか似合わない大きめのバスケット。
果物でも入っているのかしら。少しだけ甘い香りがするわ。
「ありがとう。私も出かけられるわ」
そっと手を重ねれば、優しく握られる。歩く歩幅は私に合わせてゆっくりで、それが嬉しい。
ずっと背中を見つめていたはずのエルネストが今は隣にいて、見上げれば、そこにあるのは後頭部ではなく横顔。
もちろん騎士服ではない彼の服装はラフなジャケットとパンツで、その色は私のワンピースと同じで、よく見てみれば服を飾る装飾も同じ物が使われているみたい。
「私たち、今日はお揃いね」
「お揃い……?」
不思議そうに繰り返したエルネストが視線を私と自分との間で行ったり来たりとさ迷わせて、それから「お揃いか」と呟いた。
こうしていると婚約者とか夫婦とか、堂々と主張しているようで嬉しい。貴族の間では義務のように礼服を揃えて作ることが当たり前になっているけれど、そうでなくとも恋人たちがお揃いにしたがる気持ちもよく分かるわ。
だってとても気分がいいんだもの。
エルネストは常に護衛騎士の制服だったから、二人で合わせたドレスや夜会用の服を作るなんてことはほとんどなかった。
それに対して何かを思ったことはなかったのよ。悲しいとか辛いとか、強がりなんかじゃなくてそういうものだと思っていたから。
「エルネストと服を揃えて出かけられるなんて、初めてで嬉しいわ」
「……その、すまない……」
純粋に嬉しかっただけだったけど、それを口にした私に、エルネストは気まずそうに視線を逸らしてしまう。
「責めてるわけじゃないのよ。ただ、やっぱりこういうのは楽しいな、って思っただけ」
「……アリシアが喜ぶならもっと早く作れば良かったな。今度礼服でも仕立てに行こう」
「あら、いいの?」
「何着だって好きなだけ作ればいい。俺も、自分の色のドレスや装飾品で相手を飾り立てる、というのに興味がある」
ふわり、と微笑んだエルネストに思わず固まってしまう。
こんなことを言う人だったかしら? 最近のエルネストはなんだか変だわ。
嫌では無いけれど、なんだか、こう、ムズムズするわ。
「は、早く行きましょう」
繋いだ手を引いて足を動かせば、エルネストも合わせて大きくした歩幅で着いてくる。
エルネストが笑っているのが、手の振動から伝わってきた。
***
ゆっくりとした時間に屋敷を出て向かったのは、すぐ裏手の丘のような場所。可愛らしい桃色の実の着いたちいさめの木が目立つように1本だけ周りから離れた場所に立っていて、私たちはその根元に腰を下ろした。
敷布を引いて、エルネストが持っていたバスケットの中身を広げていく。
ポットに入った果実水、柔らかいパンとバケットのサンドイッチはそれぞれ色んな種類の物があって、付け合せの野菜にまだ暖かいチキン、それから果物と小さな焼き菓子。
随分たくさん入れてくれたのね。
大きなバスケットいっぱいに入っていたランチに思わず笑ってしまう。朝から気合を入れて調理場で動きまわる使用人たちみんなの顔が目に浮かんでくるわ。
かなりの量があるとおもっていたけれど、エルネストの口に消えていくのは一瞬だった。
甘い焼き菓子とフルーツサンドはエルネストが最初から私の方に寄せてくれている。
私用なのか小さめのサンドイッチを何個か食べ終われば、自分の分を食べ終えていたらしいエルネストがこちらを見つめていた。
「どうかした?」
「いや、俺は幸せなんだな、とそう思っていた」
不思議なことを言うエルネストに首を傾げてしまう。
今なら、言えるかしら。
ほんのり甘酸っぱい果実水を飲み込んで、エルネストの手を握る。
その大きな手は簡単に持ち上がって、導かれるまま、私の腹部に触れた。
「エルネスト、私、子供が出来たの」
一瞬の静寂が少しだけ怖い。拒絶されることなんてきっと無いはずなのに、恐怖で心音が早くなっている気がする。
エルネストの顔は見られずにお腹の上に乗せたエルネストの手を見つめていれば、ピクリ、とその指先が動いた。
「子供……。俺の……、俺たちの子が……ここに……?」
呟かれた言葉にそろそろと顔を上げる。
エルネストは何かを耐えるように私の腹部を見つめていた。まだ特に変化のない、あの時と同じように膨らみの全くないそこを、恐る恐るといった様子でエルネストの手がゆっくりと撫でていく。
「……あ、すまない。触っても大丈夫、だったか?」
ハッとした様子で手を離したエルネストの手をもう一度引き寄せる。
「大丈夫よ。まだ何も分からないと思うけれど、貴方の子だもの」
「そう、か。屋敷の者たちにはもう伝えたのか?」
嬉しそうに、笑みを耐えるように、エルネストが私の腹部を見つめている。
こんなにも幸せな時間があるのね。
「まだよ。エルネストに一番に伝えたくて。しばらく様子見をしていたけど、お医者様に無理をしなければ好き動いていいと許可も貰ったから」
やっと言えたわ。前回のこともあったから、本当はもう少し前に分かっていたのだけど、慎重にお医者様に診てもらっていたの。
「最近の不調の原因は……。それなら出かけるのはまずかったんじゃないか? 無理をしてはいけないと言われたんだろう? せめて侍女を連れてくるべきだった」
こんなに慌てたエルネストはあまり見た事がないわ。
そんなに大袈裟にしなくて大丈夫よ、と伝えたかったのに、口を開く前に抱き上げられた。用意されていたひざ掛けに包まれながら感じた浮遊感に思わず言葉を飲み込んでしまう。
「体を冷やすのは良くないんだったな。辛くはないか? とりあえず帰ろう。ゆっくり歩くが何かあれば言ってくれ」
「大袈裟だわ」
自分で歩けるからと降ろしてもらおうと思っていたのに、暖かな日差しと安定したエルネストの腕の中、規則的な揺れとそれから聞こえてくる心音に、気づけば瞼が下がっていた。
まるで私が子供みたい。
窓から外を見ながら頬を緩ませてしまった私に、ハンナが宝石を広げながら笑う。
いつの間にか戻っていた奥様という呼び方はやっぱりなんだかくすぐったいと思うのだけれど、主人であるエルネストに不満がある時はアリシア様と呼ぶのです、とハンナはなぜか張り切っていた。
使用人一同、その不思議なルールを共有することに決めたらしいわ。ここの皆は本当に仲がいいのね。
結局、私とエルネストはやり直しの結婚式をすることに決めたの。
正直今さら式なんて恥ずかしいし、私はあまりこだわりが無い方だったから断ろうかと思ったのだけれど、断りきれなかった。皆がやる気を見せていたからこじんまりとした式で、と私が折れたと言うべきかしら。
形だけのつもりだったから手持ちの白系の服でと思っていたのに、どこから聞いたのか、お母様とお義姉様が私のドレスを作るのだと張り切っていて、式は一年後。場所は私の希望で、領地の中の小さな教会。小ぶりな花が周りに咲いていて、幼い頃そこを気に入っていたことを思い出す。
そう、丁度ドレスに合わせる宝石を選んでいるハンナが手に持っている薄い紫の石みたいな色だったわ。
もう結婚前の少女でも無いのに、花嫁になる準備をしているこの時間にそわそわしてしまうわね。
私はこうしてのんびりしているだけで、周りの皆がやってくれているし、今日もお昼からエルネストとピクニックに行く約束をしているの。
「ええ、ピクニックが楽しみなの」
うふふ、と堪えきれない笑い声が零れる。そんな私を見て、ハンナも笑っていた。
「奥様が嬉しそうだと私も嬉しいです。今日は旦那様と2人きりでのお出かけですからね! 季節のせいか体調を崩していたのが心配でしたがここ数日は調子も良さそうですし楽しんできてくださいね」
動きやすい、ゆったりとしたワンピース。厚手だけど重くは無いストール。軽く巻いた髪はポニーテールで、リボンが結ばれている。
少し若作りじゃないかしら、と窓に映る自分を見て思うけれど、ハンナを含めた侍女たちには大絶賛されては嫌とも言えない。
コンコン、と響いたノックの音に、私は立ち上がった。
「アリシア、そろそろ行こうと思うんだが」
扉の先に立っているエルネストが片手を伸ばす。もう片方の手には何だか似合わない大きめのバスケット。
果物でも入っているのかしら。少しだけ甘い香りがするわ。
「ありがとう。私も出かけられるわ」
そっと手を重ねれば、優しく握られる。歩く歩幅は私に合わせてゆっくりで、それが嬉しい。
ずっと背中を見つめていたはずのエルネストが今は隣にいて、見上げれば、そこにあるのは後頭部ではなく横顔。
もちろん騎士服ではない彼の服装はラフなジャケットとパンツで、その色は私のワンピースと同じで、よく見てみれば服を飾る装飾も同じ物が使われているみたい。
「私たち、今日はお揃いね」
「お揃い……?」
不思議そうに繰り返したエルネストが視線を私と自分との間で行ったり来たりとさ迷わせて、それから「お揃いか」と呟いた。
こうしていると婚約者とか夫婦とか、堂々と主張しているようで嬉しい。貴族の間では義務のように礼服を揃えて作ることが当たり前になっているけれど、そうでなくとも恋人たちがお揃いにしたがる気持ちもよく分かるわ。
だってとても気分がいいんだもの。
エルネストは常に護衛騎士の制服だったから、二人で合わせたドレスや夜会用の服を作るなんてことはほとんどなかった。
それに対して何かを思ったことはなかったのよ。悲しいとか辛いとか、強がりなんかじゃなくてそういうものだと思っていたから。
「エルネストと服を揃えて出かけられるなんて、初めてで嬉しいわ」
「……その、すまない……」
純粋に嬉しかっただけだったけど、それを口にした私に、エルネストは気まずそうに視線を逸らしてしまう。
「責めてるわけじゃないのよ。ただ、やっぱりこういうのは楽しいな、って思っただけ」
「……アリシアが喜ぶならもっと早く作れば良かったな。今度礼服でも仕立てに行こう」
「あら、いいの?」
「何着だって好きなだけ作ればいい。俺も、自分の色のドレスや装飾品で相手を飾り立てる、というのに興味がある」
ふわり、と微笑んだエルネストに思わず固まってしまう。
こんなことを言う人だったかしら? 最近のエルネストはなんだか変だわ。
嫌では無いけれど、なんだか、こう、ムズムズするわ。
「は、早く行きましょう」
繋いだ手を引いて足を動かせば、エルネストも合わせて大きくした歩幅で着いてくる。
エルネストが笑っているのが、手の振動から伝わってきた。
***
ゆっくりとした時間に屋敷を出て向かったのは、すぐ裏手の丘のような場所。可愛らしい桃色の実の着いたちいさめの木が目立つように1本だけ周りから離れた場所に立っていて、私たちはその根元に腰を下ろした。
敷布を引いて、エルネストが持っていたバスケットの中身を広げていく。
ポットに入った果実水、柔らかいパンとバケットのサンドイッチはそれぞれ色んな種類の物があって、付け合せの野菜にまだ暖かいチキン、それから果物と小さな焼き菓子。
随分たくさん入れてくれたのね。
大きなバスケットいっぱいに入っていたランチに思わず笑ってしまう。朝から気合を入れて調理場で動きまわる使用人たちみんなの顔が目に浮かんでくるわ。
かなりの量があるとおもっていたけれど、エルネストの口に消えていくのは一瞬だった。
甘い焼き菓子とフルーツサンドはエルネストが最初から私の方に寄せてくれている。
私用なのか小さめのサンドイッチを何個か食べ終われば、自分の分を食べ終えていたらしいエルネストがこちらを見つめていた。
「どうかした?」
「いや、俺は幸せなんだな、とそう思っていた」
不思議なことを言うエルネストに首を傾げてしまう。
今なら、言えるかしら。
ほんのり甘酸っぱい果実水を飲み込んで、エルネストの手を握る。
その大きな手は簡単に持ち上がって、導かれるまま、私の腹部に触れた。
「エルネスト、私、子供が出来たの」
一瞬の静寂が少しだけ怖い。拒絶されることなんてきっと無いはずなのに、恐怖で心音が早くなっている気がする。
エルネストの顔は見られずにお腹の上に乗せたエルネストの手を見つめていれば、ピクリ、とその指先が動いた。
「子供……。俺の……、俺たちの子が……ここに……?」
呟かれた言葉にそろそろと顔を上げる。
エルネストは何かを耐えるように私の腹部を見つめていた。まだ特に変化のない、あの時と同じように膨らみの全くないそこを、恐る恐るといった様子でエルネストの手がゆっくりと撫でていく。
「……あ、すまない。触っても大丈夫、だったか?」
ハッとした様子で手を離したエルネストの手をもう一度引き寄せる。
「大丈夫よ。まだ何も分からないと思うけれど、貴方の子だもの」
「そう、か。屋敷の者たちにはもう伝えたのか?」
嬉しそうに、笑みを耐えるように、エルネストが私の腹部を見つめている。
こんなにも幸せな時間があるのね。
「まだよ。エルネストに一番に伝えたくて。しばらく様子見をしていたけど、お医者様に無理をしなければ好き動いていいと許可も貰ったから」
やっと言えたわ。前回のこともあったから、本当はもう少し前に分かっていたのだけど、慎重にお医者様に診てもらっていたの。
「最近の不調の原因は……。それなら出かけるのはまずかったんじゃないか? 無理をしてはいけないと言われたんだろう? せめて侍女を連れてくるべきだった」
こんなに慌てたエルネストはあまり見た事がないわ。
そんなに大袈裟にしなくて大丈夫よ、と伝えたかったのに、口を開く前に抱き上げられた。用意されていたひざ掛けに包まれながら感じた浮遊感に思わず言葉を飲み込んでしまう。
「体を冷やすのは良くないんだったな。辛くはないか? とりあえず帰ろう。ゆっくり歩くが何かあれば言ってくれ」
「大袈裟だわ」
自分で歩けるからと降ろしてもらおうと思っていたのに、暖かな日差しと安定したエルネストの腕の中、規則的な揺れとそれから聞こえてくる心音に、気づけば瞼が下がっていた。
まるで私が子供みたい。
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