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第85話
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その後は特に何事もなく、明けて翌日。
「流石に危なすぎるだろう……」
昨晩も、今朝も同席出来ず、昼時になってようやく時間が取れたというテオに昨日話し合った事柄を告げると、眉をハの字にして額を押さえてそう絞り出した。
その様子に瞬き数回。けどすぐに思い当たって、苦笑をひとつ。
「ノエルを巻き込むなど……リディと変わらないくらいなんだぞ」
テオにはノエルも、それにラスカも普通の人間の子供に見えてるのよねえ。
それにまあ、既に事後報告的な感じなわけだしね。ラスカがノエルくんを説得したことにようり、もう行動してくれている言ってたし。……そのあたりは流石にテオには話せないから伏せてるけど。
此処は中庭のテラス。
昨日の今日でまた此処に来ることになるとは、とは思ったけれど、それでも部屋に缶詰よりはずっといいでしょう、とラスカに促されてやってきたこの場所には、今は私とテオと、ティートさんしかいない。
カノンは今朝からまた外出しているし、ラスカは例によって同僚からのお呼び出し。アルノーさんも珍しくそんな感じで席を外しているし、リフはテオたちと合流するよりも前にラスカに魔法を掛けてもらって静かに辺りを探索中。
そんなこんなで今席についているのは私とテオだけで、ティートさんはといえばテオの傍にそっと控えている。……っていっても、普段よりは気の緩んだ、テオの幼馴染みって表情はしているけれど。
「私もどうなのかとは思ったけど、ラスカが大丈夫だって」
「大丈夫なわけが……いや、年よりもずっとしっかりしてはいるが」
なんだろう、あくまでもテオによるノエルくん評ではあるのにレナのことを思い出すような感覚は。
つまりはまあ、よく似てるってことなんだろうけど。
それはそれとして、とどうして答えたものか、と眉を下げていると、見かねたようにティートさんがやんわりと口を挟んだ。
「ラスカが大丈夫、って言ってんですから大丈夫なんじゃないです? ラスカは何もなくそんなこと言う奴でもないでしょ?」
「確かにそうではあるが……」
「むしろ俺は、リリィ嬢のことの方が心配ですけど」
じ、っとティートさんに見詰められ、わたしはきょとりと瞬き一つ。
するとテオもまた私を見て、
「カノンはともかく、ラスカはほかの仕事を押し付けられたのか」
「そうみたい。可能な限り早めには戻ります、とは言ってたけど……」
「思うに、そういう発言をする時点で厳しいんじゃないか……?」
それはごもっとも。
昨日も、面倒で細々したことばっかり任せられたのよ、ってげんなりしてたんだもの、今日だってそんな感じの状態になってしまうんだろう。
とはいえラスカがどれだけ嫌がろうが、どうにもならないものはどうにもならないものである。
私に出来る事は残念ながら、何もないのよね。せいぜい今起きてる事柄を解決することくらいだろう。
「まあ、ラスカにはどうしようもない事を話しても仕方ないな。不可抗力に近いんだろうし」
「ノー! と言えることだったら断る、ってはっきりと断言しててこれだからね」
「やっぱりか。……それはそれとして、リフは大丈夫なのか?」
不意に問いかけられて、私は首を傾げる。
「リフは大丈夫、って? カノンがかけた魔法の効力はまだ残っていると思うけど」
実際にはカノンではなくラスカの魔法だけど、ラスカをただの人間と思っているテオたちには伏せないとね。
言いながらじっと見ていると、テオは真正面からそれを受け止めて答えた。
「その心配もあったが、食事は構わないのか、と思って」
「………そういえばそうだね」
言われてみれば、と思い出す。
テオたちが来る前にラスカに魔法をかけてもらったから、リフはまだお昼を済ませてないのよね。
「流石に危なすぎるだろう……」
昨晩も、今朝も同席出来ず、昼時になってようやく時間が取れたというテオに昨日話し合った事柄を告げると、眉をハの字にして額を押さえてそう絞り出した。
その様子に瞬き数回。けどすぐに思い当たって、苦笑をひとつ。
「ノエルを巻き込むなど……リディと変わらないくらいなんだぞ」
テオにはノエルも、それにラスカも普通の人間の子供に見えてるのよねえ。
それにまあ、既に事後報告的な感じなわけだしね。ラスカがノエルくんを説得したことにようり、もう行動してくれている言ってたし。……そのあたりは流石にテオには話せないから伏せてるけど。
此処は中庭のテラス。
昨日の今日でまた此処に来ることになるとは、とは思ったけれど、それでも部屋に缶詰よりはずっといいでしょう、とラスカに促されてやってきたこの場所には、今は私とテオと、ティートさんしかいない。
カノンは今朝からまた外出しているし、ラスカは例によって同僚からのお呼び出し。アルノーさんも珍しくそんな感じで席を外しているし、リフはテオたちと合流するよりも前にラスカに魔法を掛けてもらって静かに辺りを探索中。
そんなこんなで今席についているのは私とテオだけで、ティートさんはといえばテオの傍にそっと控えている。……っていっても、普段よりは気の緩んだ、テオの幼馴染みって表情はしているけれど。
「私もどうなのかとは思ったけど、ラスカが大丈夫だって」
「大丈夫なわけが……いや、年よりもずっとしっかりしてはいるが」
なんだろう、あくまでもテオによるノエルくん評ではあるのにレナのことを思い出すような感覚は。
つまりはまあ、よく似てるってことなんだろうけど。
それはそれとして、とどうして答えたものか、と眉を下げていると、見かねたようにティートさんがやんわりと口を挟んだ。
「ラスカが大丈夫、って言ってんですから大丈夫なんじゃないです? ラスカは何もなくそんなこと言う奴でもないでしょ?」
「確かにそうではあるが……」
「むしろ俺は、リリィ嬢のことの方が心配ですけど」
じ、っとティートさんに見詰められ、わたしはきょとりと瞬き一つ。
するとテオもまた私を見て、
「カノンはともかく、ラスカはほかの仕事を押し付けられたのか」
「そうみたい。可能な限り早めには戻ります、とは言ってたけど……」
「思うに、そういう発言をする時点で厳しいんじゃないか……?」
それはごもっとも。
昨日も、面倒で細々したことばっかり任せられたのよ、ってげんなりしてたんだもの、今日だってそんな感じの状態になってしまうんだろう。
とはいえラスカがどれだけ嫌がろうが、どうにもならないものはどうにもならないものである。
私に出来る事は残念ながら、何もないのよね。せいぜい今起きてる事柄を解決することくらいだろう。
「まあ、ラスカにはどうしようもない事を話しても仕方ないな。不可抗力に近いんだろうし」
「ノー! と言えることだったら断る、ってはっきりと断言しててこれだからね」
「やっぱりか。……それはそれとして、リフは大丈夫なのか?」
不意に問いかけられて、私は首を傾げる。
「リフは大丈夫、って? カノンがかけた魔法の効力はまだ残っていると思うけど」
実際にはカノンではなくラスカの魔法だけど、ラスカをただの人間と思っているテオたちには伏せないとね。
言いながらじっと見ていると、テオは真正面からそれを受け止めて答えた。
「その心配もあったが、食事は構わないのか、と思って」
「………そういえばそうだね」
言われてみれば、と思い出す。
テオたちが来る前にラスカに魔法をかけてもらったから、リフはまだお昼を済ませてないのよね。
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