元王女で転生者な竜の愛娘

葉桜

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第81話

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「クスィオンさんから憎まれたり恨まれるような理由が、リリィにあるとは思えませんが……」

 眉を下げながら言うラスカに、私はふるふると顔を横に振る。
 全てを知った上で適宜、言葉を挟んでくれるラスカの存在はとても助かる。

「私にも思い当たることはないよ。そもそも初対面だったわけだし」
「だが事実として、クスィオンはリリィに悪感情を抱いていた。だからなのか何なのか、ラスカを介さずに用意された物には毒まで仕込まれてた始末だ」
「――毒!?」

 驚いたように身を乗り出したテオが、私をまっすぐに見た。

「そんなこと聞いてなかったぞ!? 大丈夫なのか? 解毒が必要とか、そもそも体調がおかしいとかはないか!?」
「だ、大丈夫だよ! リフがすぐにおかしいって教えてくれたから、一切手をつけてないし。処理も、ラスカには伝えた上で内密に処分してもらったから」

 ね、と振り向きながら聞くと、ラスカはしっかりとひとつ頷いた。

 因みにこれは本当のことだ。
 あの毒入りとかいう恐ろしいものはラスカがしっかり処分しておくから、と任されてくれたから。
 もしかしたら一部は別にして確保しているかもしれないけど、と本当か、と問うような視線を向けたテオに答えるラスカを見ると、

「リリィの言葉は真実です。誰にも騒がれないよう、また被害が決して出ないようにと細心の注意をはらいながら処分させていただきました」
「それは全部か?」
「いいえ。何かの時に必要になるのではないか、と少量分けて保存しています」
「……そうか。ならそれはしっかりと確認してもらうとしよう」

 そう言ってふう、と息を吐きだしたテオが、額を押さえて更に息を吐く。

「アイツが、そこまでしているとは……」
「でもこれもあくまでもその可能性が高いってくらいよ。確たる証拠もないし……」
「だがそれでも毒を盛られたものがあるなど……それがリリィのもとに運び込まれるなど、本来ならあってはならないはずだ。それなのに実際にはこのようなことが起きている――誰かの手によって、な」

 本当に疑念通りクスィオンが関わっているのかは重要じゃないんだ、と僅かに微笑むテオの言い分はもっともだ。
 毒が盛られるだなんて、本来あってはいけないことなのは考えるまでもなく分かることなのだから。

「少なくとも、リリィ達を害そうと考えている者が侍従の中に必ずいる。……その者にとってリリィたちの存在は不都合なんだろう」
「おそらくはそういうことだな。そして明確に殺意を示したんだ、このまま大人しくなんてするはずもない。……悠長にしていられるような時間はないだろうな」

 そう言って肩を竦めたのはカノンだったけど、その双眸には剣呑な色を宿していた。
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