元王女で転生者な竜の愛娘

葉桜

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第78話

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 テオの言い分が間違っているわけではない。
 実際私はこの事に関しては嘘を言ってはいないし、嘘をつくつもりもないのだから。
 だがしかし、である。

「テオはもう少し疑ってかかって良いと思う……」

 信じてもらえるのは素直に嬉しいんだけど、こう、王子という身分を考えるといいのかそれで、って思うし心配になるんだけど。

 眉を下げながらおずおずと言うと、テオは目を瞬かせた後に、

「リリィがそれを言うか。行き倒れていた俺を助けて、あまつさえ俺の言葉を信じて此処まで来てくれた君が」
「見付けたのは私とリフだけど助けたのは私じゃないし、テオの言葉を信じたのはどれかといえばレイン兄よ。それに……此処にいるのは何もテオの話を信じたってだけじゃないんだから」
「そうなのか?」
「といっても掛け離れた目的ではないんだけどね。まあ、別の理由もあるっていうのは事実だよ」

 ふう、と息を吐いて、気を取り直すように口を開く。

「とまあ、こんな感じに嘘くらい私もつくし隠し事だってするんだから、多少の疑いは持ったほうがいいと思うわよ。……誰だってきっとそうなんだから」

 含みを持たせたのはアルノーさんを責める意図があってのものじゃない。ごくごく普通の、私自身の考えとして告げておきたかっただけだ。
 テオはしばし黙した後、考えるような仕草を取りそれから、

「……だとしても、リリィの言葉を疑おうとは俺は思わないが」

 考えた末にもそれなのか、と少しだけ困ったような笑みを零すと、テオはきっぱりと言う。

「例え嘘を吐いていても、隠し事があったとしても、そこにどうしようもない悪意を含める事が出来るような人間ではないだろう、リリィは」
「…………」

 見透かされてるのか、見透かされてるのか私は!?
 確かにそんな器用な事は出来ないというかできる気がしないから、やったことがないけどさあ。

 僅かに眉を下げてどうしたもんか、と悩んでいると、隣から吹き出すような笑い声が上がった。

「ふ……ははっ! 確かに、そんな器用な事はリリィには出来ないな」

 にこにこと楽しそうな笑みを浮かべてそう言い切ったのは言うまでもなくカノンだ。
 見た目よりうんと長く生きていて、小さな頃からずぅっと面倒を見てくれていた天狼であるカノンは、当然私のことをさらりと理解している。

 理解をしてくれているんだけど、からかうような言い方だけはやめてほしいものだわ、全く。リフにも悪影響じゃない。
 じとりと半目で見ていると、カノンは一度私を見て柔和な表情のまま、

「ただまあ、もう少し……気持ちばかり程度は気をつけた方が良いとは思うよ。何より自分の為にもさ」

 まっすぐにテオを見て、優しく教え説くように告げたのだった。
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