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第53話
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「と、というか、テオこそ何で書庫に来てたの?」
慣れない女の子扱いに動揺を隠せないまま尋ねると、テオは何度か目を瞬かせ、
「ラスカと道中で会ったんだ。用事を頼まれてしまったから、書庫にリリィとリフを残してしまったと。本来なら、リリィたちの世話をと任せられているラスカを連れ出すなど、許されはしないんだが……ラスカも察していたらしいな」
「あー……なるほど、アナスタシア王女……」
「ああ」
つくづく勝手なことをしまくっていて、妹であるアクアリアとしての感覚だと心から申し訳なくて仕方ないわね。リリィとしては呆れるくらいだけれど。
テオは苦い顔で額を押さえて溜息を吐いてから、また口を開いた。
「丁度、確認と署名を終えた書類を運んで、残りを受け取ってくるところだったからな。そっちにはティートとアルノーを行かせて、ひとまず立ち寄ってみたってわけだ」
「そっか……なんか、面倒というか時間を使わせちゃった割に言い合いをしてる現場に来させちゃって、ごめんね?」
「いや、謝る必要はない。何事もないならそれが一番だしな」
ふ、と表情を緩めて言うテオだったけど、すぐに僅かに眉を僅かにつり上げ、
「だから、次にこんなことがあったら、迷わず逃げるんだぞ? 何かあってからじゃ遅いんだからな?」
「わ、わかってるってば!」
そんな妹でも叱るような感じで怒らないで欲しい。
リリィとしてはレイン兄たちにそんな怒られ方をした事はなんどもあるけど、前世で実の兄にはそんな風に言われたことなんてないから、本当にそういう風に接せられるのは慣れないんだってば。
思わず少し声を張り上げると、テオはきょとんとした表情を浮かべた後にからかうような表情を浮かべて顔を傾けた。
「本当に分かってるのか? 今回は怒らせるようなことを故意で言ったみたいだが、そうじゃなくても人が怒りを感じる事はそれぞれでわからないものなんだからな?」
「う、うぅ……」
「キューウ! キュイ!」
「ほら、リフもリリィはすぐに無茶をするって」
「わ、私そんなに無茶してない!」
リフまでからかうような鳴き声を上げるだなんて、本当に仲良くなったのはいいけど、すごーくあんまりだ。
むす、と眉をつり上げてテオを見上げていると、
「――テオドール殿下!」
不意に、静かな廊下にはテオを呼ぶ男声が響き渡った。
そちらを見ると、たった一人の男性が立っていた。
燕尾服に身を包む姿は、紛れもなく侍従で――けれどもその後ろ姿を見ていると、落ち着かないような感覚に苛まれるような気がするのはどうしてなんだろうか。
髪色は黒で、眼の色は灰色。
整った顔立ちではないけれど、折り目正しい行動と言動は清潔感を与えてくれるようで。
それらは私が確かに感じたことだ。間違いなく感じたこと、なのだけれどどうにも落ち着かないような感覚があって。
「(なんだろう、この執事さん……)」
と、僅かに後退る私の傍らで、テオが当たり前のように侍従を名を呼ぶ。
「クスィオン」
その名前は、ラスカが不審であるとして目星をつけていた相手の名前だった。
慣れない女の子扱いに動揺を隠せないまま尋ねると、テオは何度か目を瞬かせ、
「ラスカと道中で会ったんだ。用事を頼まれてしまったから、書庫にリリィとリフを残してしまったと。本来なら、リリィたちの世話をと任せられているラスカを連れ出すなど、許されはしないんだが……ラスカも察していたらしいな」
「あー……なるほど、アナスタシア王女……」
「ああ」
つくづく勝手なことをしまくっていて、妹であるアクアリアとしての感覚だと心から申し訳なくて仕方ないわね。リリィとしては呆れるくらいだけれど。
テオは苦い顔で額を押さえて溜息を吐いてから、また口を開いた。
「丁度、確認と署名を終えた書類を運んで、残りを受け取ってくるところだったからな。そっちにはティートとアルノーを行かせて、ひとまず立ち寄ってみたってわけだ」
「そっか……なんか、面倒というか時間を使わせちゃった割に言い合いをしてる現場に来させちゃって、ごめんね?」
「いや、謝る必要はない。何事もないならそれが一番だしな」
ふ、と表情を緩めて言うテオだったけど、すぐに僅かに眉を僅かにつり上げ、
「だから、次にこんなことがあったら、迷わず逃げるんだぞ? 何かあってからじゃ遅いんだからな?」
「わ、わかってるってば!」
そんな妹でも叱るような感じで怒らないで欲しい。
リリィとしてはレイン兄たちにそんな怒られ方をした事はなんどもあるけど、前世で実の兄にはそんな風に言われたことなんてないから、本当にそういう風に接せられるのは慣れないんだってば。
思わず少し声を張り上げると、テオはきょとんとした表情を浮かべた後にからかうような表情を浮かべて顔を傾けた。
「本当に分かってるのか? 今回は怒らせるようなことを故意で言ったみたいだが、そうじゃなくても人が怒りを感じる事はそれぞれでわからないものなんだからな?」
「う、うぅ……」
「キューウ! キュイ!」
「ほら、リフもリリィはすぐに無茶をするって」
「わ、私そんなに無茶してない!」
リフまでからかうような鳴き声を上げるだなんて、本当に仲良くなったのはいいけど、すごーくあんまりだ。
むす、と眉をつり上げてテオを見上げていると、
「――テオドール殿下!」
不意に、静かな廊下にはテオを呼ぶ男声が響き渡った。
そちらを見ると、たった一人の男性が立っていた。
燕尾服に身を包む姿は、紛れもなく侍従で――けれどもその後ろ姿を見ていると、落ち着かないような感覚に苛まれるような気がするのはどうしてなんだろうか。
髪色は黒で、眼の色は灰色。
整った顔立ちではないけれど、折り目正しい行動と言動は清潔感を与えてくれるようで。
それらは私が確かに感じたことだ。間違いなく感じたこと、なのだけれどどうにも落ち着かないような感覚があって。
「(なんだろう、この執事さん……)」
と、僅かに後退る私の傍らで、テオが当たり前のように侍従を名を呼ぶ。
「クスィオン」
その名前は、ラスカが不審であるとして目星をつけていた相手の名前だった。
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