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20.髪は20代!

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「おはようございまーす」

「おはようございます」

朝の職場に飛び交う「おはよう」の挨拶の声・・

『さむ~!こんなことならパッチ履いてくるんだった・・(涙)』

と心が後悔の声を叫ぶ・・・

そんなおばちゃん臭いことを考えながら、

おもむろにひざ掛けを巻きつけていると、隣の先輩が

「あ~海外旅行行きたい!」

と天井を見上げるようにしての賜った。

「え~!海外旅行ですか~!何回も行かれてるんですか~。すごいなあ」

「いやいや、そんな、ちょっとよ。ほんのちょっと、数回よ・・」

「韓国とか、マレーシアとか、中東とか・・」

照れるように口ごもりながらも、

何度も海外旅行に行っているということが分かる口ぶりはさすが・・

いやあ・・リッチだ!実に優雅!

なるほどそういえば、以前にも外貨による投資信託で少し

(こんな場合の少しは絶対にかなりという意味だ・・

想像もできないけどきっと10万や20万ではない気がする・・)

利益が出たとポロリと言われていたっけ。

「海外って行ってみたい気もしますが、なんだか怖い気もして・・」

「何だろう・・私の場合は単なる現実逃避よ」

「現実逃避ですか~?」

「そうよ、誰も知った顔に会わない、違う文化、違う景色、違う人間・・

それだけでワクワクするじゃない?

ホテルでは一切おさんどんなし、

好きなときに寝て、好きなときに起きる!」

「そういうもんですかね~」

「そうよ。それに一人だから気も使わないし・・」

「え~!一人で海外なんてそれこそ危険では?」

「あ、でも出るときは一人でも、向こうで一緒になる人がいるのよ。

ケチで食事なんかはファーストフードでいいから色んなとこ回りたいとか、

そういう価値観がよく似た人が・・」

「なるほど~。旅仲間がいれば心強いし、楽しいそうですね~」

「あ~、早くこの巣篭もり生活が収まってほしいわ。」


制約された生活には、慣れてきたけれど、大好きな仲間とのバーベキューを

つい最近、参加を断念したところだった。海外旅行なんて、夢のまた夢~。


そしたら、先輩が私の方をみて言った。

「あなた、髪は20代よね~」

え?これって褒められてる?

突然のことだから、どう取るべきか分からん・・・と戸惑いながらも・・

正直、嬉しい!

が、ここは謙遜するところ・・・

「え~!20代はちょっと、厚かましいですよね~」

「艶があってほんと、20代といっても大丈夫」

そんなことを言われてすぐ有頂天になる単純な私は、

途端にパッチを履いてこなかったことなど忘れて

若くなった気分になったのだった。

それにしても、髪を褒めるなんて、さすが先輩!

実際、顔にはシワやシミなど現れるけど、髪を褒めるなんて嫌味がなくて

相手も嬉しくなるし、高等テクニックだ!

さすが、先輩から、学ぶことは多い!

日々勉強、日々修行!



















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