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15.今を楽しんで生きる

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お盆の間に弟から電話が入った。

何だろう?

この歳になると、久々の電話というものには警戒をする。

悪い知らせでは・・といらぬ心配をしてしまう。

深呼吸してから、応答ボタンを押す。

「ご無沙汰!元気?」

いつもながら元気な声が聞こえてきてホッとする。

「どうしたの?」

「報告、報告!」

「え?何?」

「うちの長男、今日入籍したから」

「そうなんだ。おめでとう」

そういえば、結婚は弟に先を越されたんだった・・私。

「このご時世では、式なんて、以ての外やしな。本人たちも式はええわと言うしで、

入籍だけしたんよ。そうそう・・できちゃった婚やから・・アハハ」

「それは二重のおめでたやな。それでいつ生まれるの?」

「来年3月な」

「そっか。楽しみやな。うちの兄弟で初のおじいちゃんやな。アハハ」

「そちらのご長男さんは、どうなん?」

「イテッ・・痛いところをついてきたな。まあ、先は長いかも・・」

「そう・・。縁のもんやからな・・」


そんなこんなで、予想を裏切るとてもおめでたい電話で、正直、とても嬉しかった。


弟はバツイチであるが、離婚したはずの元嫁と一緒に住んでいる。

離婚したときは、子どもたちの養育費とか諸々の支払いのために

昼間の勤めの他にコンビニでバイトしていたこともあったっけ・・・。

身から出た錆とはいえ、ホントに苦労してたと思うし、頑張っていたと思う。

「俺は、今を楽しんで生きてるから」

なんてよく言ってたな。

私は少しカッコつけすぎじゃない?

とか

軽すぎじゃない?

と思ったこともあったけど、

弟の言うように、自分がしあわせって思える人生が一番かもな・・と思ったりもする。

結婚前から、弟は元嫁と息子と息子の彼女(今はもう妻)の4人でゴルフも行っていたみたい。

いろんな家族のカタチがあるよなぁと思う。

どんなカタチが正解とかじゃなくて、なんとなく居心地が良いのがいいのかも。

何はともあれ、みんな、ずっと、ずっとしあわせでいてほしいと思う。

電話を切ってから、

急いでダイソーに行って祝袋を買い、

銀行に直行して、お祝いの新券に両替して、

心ばかりのお祝いを贈った。

そんな急がなくても、しあわせが逃げてしまうわけでもないとは思うんだけど、

弟の息子の結婚というめでたい報告が

運んでくれたしあわせな気持ちが

私の心を満たしてくれている間に贈りたかったから。

なんと翌日の午後には、到着の報告があった。

郵便局員さん、すぐに届けてくれて本当にありがとう。








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