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第三章 私のできること
10.新たな一歩
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「もうすぐ、レイラたちが、ティータイムの用意にやって来ます。アイデン皇太子殿下がここにいらしては、彼らに見つかってしまいます。ちょっとまずいのでは・・」
私は殿下にそう進言した。
「そうだな。確かに、僕がいることで、騒ぎになったり、侍従たちを驚かしたりするのはあまり得策ではない。今日は魔法を使って城に入ったので、場内ではちょっとした騒ぎになっているかも知れないし、そうなれば警戒も強まっていることだろう・・」
いやいやいやいや・・アイデン皇太子殿下・・・えらく軽く言われとりますが、全部自分で蒔いた種だと思いますけど・・。
「そんな、他人事みたいに・・・」
「いや~済まない。これもシャノン、いや、リサか、いや、やはりシャノンというべきか?に会いたい一心だったもので・・」
全く悪びれる様子もなく、むしろ楽しんでいるようにアイデンは言葉を続けた。
「なので、やはり安全なのは、ここしかない。つまりはムーンストーンの力を持つリサのそば。ありがたく、リサの力の恩恵に預かるのが、最も賢明というものだ。ところで、この部屋に僕が隠れるのに適当な場所はあるかな?」
私は部屋を見まわしながら、必死で考えた。殿下が隠れられる所・・
「そうですね~。殿下には失礼極まりないのですが、クローゼットの中はいかがですか?こういった場合の隠れ場所の王道です」
あぁぁぁ。しまった!クローゼットの中なんて皇太子殿下の気に入るはずもない・・殿下の逆鱗に触れてしまったか?しばらく、辺りを見回しながら、何かを考えているようなアイデンの様子を見て私は不安を覚えずにはいられなかった。
ところが、
「あはは・・。なるほど、クローゼットの中か?何だか逃亡者になったような気分でいいな。よ~し!そこに決定」
意外にも、笑い飛ばしてあっさりOKとなってしまった。
「では、ここに」
私はクローゼットのドアを開けて、ドレスを一方に寄せ、殿下が入れそうな空間を作った。
「なかなか、いい感じだ」
何だか、かくれんぼをしている子どもみたいにはしゃいでいるアイデン皇太子殿下はむしろ、この状況を楽しんでいるように見えた。私達のやり取りを見ていたシャノンも思わず吹き出していた。
「うふっ・・うふふ・・うふっ・あははは。アイデン、久しぶりのかくれんぼがよほど気に入ったようね。ちゃんと、気配を消して、隠れていなくっちゃだめよ」
「分かってるよ。リサよりはうまく生きを潜めていられるよ・・」
「アイデン皇太子殿下、また、馬鹿にしてますね!」
「いや・・そんなことは、決して・・。リサを頼りにしているよ。では、クローゼットを閉めてくれ」
「はい分かりました」
私はゆっくりとクローゼットの扉を閉めた。
タイミングよくノックの音がして、レイラとフランクが入ってきた。テーブルの上を片付けながらレイラは不思議そうに言った。
「ハーブティーをお召し上がりになったのですか?」
「い、いいえ・・」
「それは残念でございました。とても、上等のフレッシュハーブでございますね・・これほどのハーブはなかなか手に入りませんよ」
レイラは自分のことのように、残念そうに言った。
ティータイムの準備ができ、あとはアルベルト皇太子殿下がお見えになるのを待つだけとなった。
「レイラ、フランク、申し訳ないのですが今日のティータイムは私とその・・殿下お二人だけにしていただくわけにはいきませんか・・コホン・・」
私は少し照れたように言った。
「は、はい?」
「え?」
レイラとフランクは顔を見合わせ、最初は不可解な表情をしていた。
が、急に何かに気づいたというように、同時にうなづき・・
「あ・・ああ。そういうことでございますね」
「そういうことなら・・」
二人は少し顔を赤らめるようにして、お互いに、妙に不自然にうなずきあいながら
「では、私たち、お呼びになりますまで、外で控えておりますので・・」
「ど、どうぞ、ごゆっくりなさってくださいまし・・」
そう言って部屋から出ていった。
二人がいなくなったことを確認した後、私はドアの外の二人に手を合わせ、謝った。
「大切なことなの、許してね」
私は殿下にそう進言した。
「そうだな。確かに、僕がいることで、騒ぎになったり、侍従たちを驚かしたりするのはあまり得策ではない。今日は魔法を使って城に入ったので、場内ではちょっとした騒ぎになっているかも知れないし、そうなれば警戒も強まっていることだろう・・」
いやいやいやいや・・アイデン皇太子殿下・・・えらく軽く言われとりますが、全部自分で蒔いた種だと思いますけど・・。
「そんな、他人事みたいに・・・」
「いや~済まない。これもシャノン、いや、リサか、いや、やはりシャノンというべきか?に会いたい一心だったもので・・」
全く悪びれる様子もなく、むしろ楽しんでいるようにアイデンは言葉を続けた。
「なので、やはり安全なのは、ここしかない。つまりはムーンストーンの力を持つリサのそば。ありがたく、リサの力の恩恵に預かるのが、最も賢明というものだ。ところで、この部屋に僕が隠れるのに適当な場所はあるかな?」
私は部屋を見まわしながら、必死で考えた。殿下が隠れられる所・・
「そうですね~。殿下には失礼極まりないのですが、クローゼットの中はいかがですか?こういった場合の隠れ場所の王道です」
あぁぁぁ。しまった!クローゼットの中なんて皇太子殿下の気に入るはずもない・・殿下の逆鱗に触れてしまったか?しばらく、辺りを見回しながら、何かを考えているようなアイデンの様子を見て私は不安を覚えずにはいられなかった。
ところが、
「あはは・・。なるほど、クローゼットの中か?何だか逃亡者になったような気分でいいな。よ~し!そこに決定」
意外にも、笑い飛ばしてあっさりOKとなってしまった。
「では、ここに」
私はクローゼットのドアを開けて、ドレスを一方に寄せ、殿下が入れそうな空間を作った。
「なかなか、いい感じだ」
何だか、かくれんぼをしている子どもみたいにはしゃいでいるアイデン皇太子殿下はむしろ、この状況を楽しんでいるように見えた。私達のやり取りを見ていたシャノンも思わず吹き出していた。
「うふっ・・うふふ・・うふっ・あははは。アイデン、久しぶりのかくれんぼがよほど気に入ったようね。ちゃんと、気配を消して、隠れていなくっちゃだめよ」
「分かってるよ。リサよりはうまく生きを潜めていられるよ・・」
「アイデン皇太子殿下、また、馬鹿にしてますね!」
「いや・・そんなことは、決して・・。リサを頼りにしているよ。では、クローゼットを閉めてくれ」
「はい分かりました」
私はゆっくりとクローゼットの扉を閉めた。
タイミングよくノックの音がして、レイラとフランクが入ってきた。テーブルの上を片付けながらレイラは不思議そうに言った。
「ハーブティーをお召し上がりになったのですか?」
「い、いいえ・・」
「それは残念でございました。とても、上等のフレッシュハーブでございますね・・これほどのハーブはなかなか手に入りませんよ」
レイラは自分のことのように、残念そうに言った。
ティータイムの準備ができ、あとはアルベルト皇太子殿下がお見えになるのを待つだけとなった。
「レイラ、フランク、申し訳ないのですが今日のティータイムは私とその・・殿下お二人だけにしていただくわけにはいきませんか・・コホン・・」
私は少し照れたように言った。
「は、はい?」
「え?」
レイラとフランクは顔を見合わせ、最初は不可解な表情をしていた。
が、急に何かに気づいたというように、同時にうなづき・・
「あ・・ああ。そういうことでございますね」
「そういうことなら・・」
二人は少し顔を赤らめるようにして、お互いに、妙に不自然にうなずきあいながら
「では、私たち、お呼びになりますまで、外で控えておりますので・・」
「ど、どうぞ、ごゆっくりなさってくださいまし・・」
そう言って部屋から出ていった。
二人がいなくなったことを確認した後、私はドアの外の二人に手を合わせ、謝った。
「大切なことなの、許してね」
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