異世界で皇太子妃になりましたが、何か?

黒豆ぷりん

文字の大きさ
上 下
33 / 36
第三章 私のできること

10.新たな一歩

しおりを挟む
「もうすぐ、レイラたちが、ティータイムの用意にやって来ます。アイデン皇太子殿下がここにいらしては、彼らに見つかってしまいます。ちょっとまずいのでは・・」

私は殿下にそう進言した。

「そうだな。確かに、僕がいることで、騒ぎになったり、侍従たちを驚かしたりするのはあまり得策ではない。今日は魔法を使って城に入ったので、場内ではちょっとした騒ぎになっているかも知れないし、そうなれば警戒も強まっていることだろう・・」

いやいやいやいや・・アイデン皇太子殿下・・・えらく軽く言われとりますが、全部自分で蒔いた種だと思いますけど・・。
「そんな、他人事みたいに・・・」

「いや~済まない。これもシャノン、いや、リサか、いや、やはりシャノンというべきか?に会いたい一心だったもので・・」
全く悪びれる様子もなく、むしろ楽しんでいるようにアイデンは言葉を続けた。

「なので、やはり安全なのは、ここしかない。つまりはムーンストーンの力を持つリサのそば。ありがたく、リサの力の恩恵に預かるのが、最も賢明というものだ。ところで、この部屋に僕が隠れるのに適当な場所はあるかな?」

私は部屋を見まわしながら、必死で考えた。殿下が隠れられる所・・

「そうですね~。殿下には失礼極まりないのですが、クローゼットの中はいかがですか?こういった場合の隠れ場所の王道です」

あぁぁぁ。しまった!クローゼットの中なんて皇太子殿下の気に入るはずもない・・殿下の逆鱗に触れてしまったか?しばらく、辺りを見回しながら、何かを考えているようなアイデンの様子を見て私は不安を覚えずにはいられなかった。
ところが、

「あはは・・。なるほど、クローゼットの中か?何だか逃亡者になったような気分でいいな。よ~し!そこに決定」

意外にも、笑い飛ばしてあっさりOKとなってしまった。

「では、ここに」

私はクローゼットのドアを開けて、ドレスを一方に寄せ、殿下が入れそうな空間を作った。

「なかなか、いい感じだ」

何だか、かくれんぼをしている子どもみたいにはしゃいでいるアイデン皇太子殿下はむしろ、この状況を楽しんでいるように見えた。私達のやり取りを見ていたシャノンも思わず吹き出していた。

「うふっ・・うふふ・・うふっ・あははは。アイデン、久しぶりのかくれんぼがよほど気に入ったようね。ちゃんと、気配を消して、隠れていなくっちゃだめよ」

「分かってるよ。リサよりはうまく生きを潜めていられるよ・・」

「アイデン皇太子殿下、また、馬鹿にしてますね!」

「いや・・そんなことは、決して・・。リサを頼りにしているよ。では、クローゼットを閉めてくれ」

「はい分かりました」

私はゆっくりとクローゼットの扉を閉めた。

タイミングよくノックの音がして、レイラとフランクが入ってきた。テーブルの上を片付けながらレイラは不思議そうに言った。

「ハーブティーをお召し上がりになったのですか?」

「い、いいえ・・」

「それは残念でございました。とても、上等のフレッシュハーブでございますね・・これほどのハーブはなかなか手に入りませんよ」

レイラは自分のことのように、残念そうに言った。

ティータイムの準備ができ、あとはアルベルト皇太子殿下がお見えになるのを待つだけとなった。

「レイラ、フランク、申し訳ないのですが今日のティータイムは私とその・・殿下お二人だけにしていただくわけにはいきませんか・・コホン・・」
私は少し照れたように言った。

「は、はい?」
「え?」
レイラとフランクは顔を見合わせ、最初は不可解な表情をしていた。
が、急に何かに気づいたというように、同時にうなづき・・

「あ・・ああ。そういうことでございますね」
「そういうことなら・・」

二人は少し顔を赤らめるようにして、お互いに、妙に不自然にうなずきあいながら

「では、私たち、お呼びになりますまで、外で控えておりますので・・」
「ど、どうぞ、ごゆっくりなさってくださいまし・・」

そう言って部屋から出ていった。

二人がいなくなったことを確認した後、私はドアの外の二人に手を合わせ、謝った。

「大切なことなの、許してね」








しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

処理中です...