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第三章 私のできること
8.続運命の糸
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「リサは自分では分かっていないけれど、強大なムーンストーンの力を持っているようだわ。アイデンはその力に守られて、すんなり城内に入れてしまったのかもしれないわね。リサの力は、リサ自身にはまだ制御ができていないの。本人が気づいていないのだから仕方ないのだけれど・・」
「なるほど・・そういう事かもしれない。城に侵入というか、思わずリサについてきてしまったのだが、そのときはリサの力に守られていたのだ。それを知らない僕は、シャノンにそっくりのリサに、さらに近づきたい一心でウィリアムスに変身したが、それが失敗だった。もう、リサの力の圏外になり、すんなり侵入者のことがバレてしまったのだ。危なくなったので、城から引き上げ、今日再びここにやってきたというわけだ。」
どうしよう・・鼻がむずむずしてきた・・こんな時に・・
ふわぁ・・必死でくしゃみを我慢しようとしたが・・・出物腫れ物・・所嫌わず・・
クッ、グググ・・グシュン!
し、し、しまった・・やってしまった・・・
まずい!まずすぎる・・
焦っている私の背中からするりとシャノンが飛び降り、私の顔の前にやってきた。
「リサ、起き上がっても、いいよ」
「え?うわぁ!」
目を開けると、超至近距離でシャノンが私を見下ろしていた。そして、事もあろうに笑いながら言った。
「毒って嘘だから・・」
私の頭が一瞬でまっ白になる。
「え?嘘・・え~!!嘘だったの!!何でそんな、毒なんて・・」
「ごめん、ごめん・・」
はぁ?そんな軽く言われても・・・
何だか、ムクムクと怒りがこみ上げてきた。
「な、な、何で、そんなびっくりするような嘘をつくわけ?」
やっと起き上がっていいと判断した私の脳の命令で、私は緩慢な動きで起き上がり始めたが、一旦は床に割座状態で座り込んだ。そしてシャノンを睨みつけていた。
「事が急で、説明してる間がなくて・・あなたにじっとしてもらうには、ちょうどいいかなぁ~って思ったわけ。」
「・・・・」
「流石、リサと思った。皇太子妃になるという意志の硬さを感じられる、迫真の演技だったよ。この名演技をアルベルトに、見てもらえなかったのがホントに残念」
ちっとも残念そうじゃない、むしろ可笑しそうにシャノンは言っている。ホントに憎たらしい。
「アルベルト皇太子殿下には、こんな姿は、絶対に見せられないから。もぉ」
「本当に無礼なことになってしまい申し訳ない。リサ様」
丁寧に、腰をかがめて私の方を優しくみつめて、手を差し出しているのは、ウィリアムスではなく、今まで会ったこともない男性だった。この人がアイデン?私は少し躊躇したが、その手に自分の手を置いた。
「では、ゆっくり立ち上がりましょう」
ごく自然に、優しく手を取り、腰を抱きかかえるようにしてアイデンは私をサポートし、私はびっくりするほど楽に立ち上がることができた。
「ソファにかけましょうか?それともテーブルでハーブティを召し上がりますか?」
「では、ソ、ソファに」
そう言うと、ソファまでエスコートして座らせてくれた。
私がソファに座ると、アイデンは、懐かしい目を私に向けていた。きっと私ではない、過去のシャノンを見ていたのだろう。それから、ふと気づいたように、アイデンは言った。
「はじめまして、リサ様。サルーン王国の皇太子、アイデンです。度重なる非礼をどうかお許しください」
そう言うと深く、頭を下げていた。
え?アイデンって、サルーン王国の皇太子殿下なんだ。
「あ、頭をお上げ下さい。アイデン皇太子殿下。私は、アルベルト皇太子殿下の婚約者、リサです」
改めて、アイデンと向き合い、迫真の演技で、死体の役をやっていた自分の姿を想像すると、恥ずかしさで目の前がクラクラした。全てはシャノンのせいだからね。そう思い、シャノンの方を睨みつけたのだが、シャノンは全くそんなこと知らないというように、そっぽを向いているのだった。ホントに憎ったらしい・・。と思ったその瞬間、私の膝に座っていた。私の身体を使って、シャノンはアイデンに、かいつまんで、私が倒れた状況をアイデンに説明していた。
「あはは・・」
アイデンは、あけっぴろげな性格なのだろう、きっと。私に遠慮することなく笑い転げていた。
「なるほど・・そういう事かもしれない。城に侵入というか、思わずリサについてきてしまったのだが、そのときはリサの力に守られていたのだ。それを知らない僕は、シャノンにそっくりのリサに、さらに近づきたい一心でウィリアムスに変身したが、それが失敗だった。もう、リサの力の圏外になり、すんなり侵入者のことがバレてしまったのだ。危なくなったので、城から引き上げ、今日再びここにやってきたというわけだ。」
どうしよう・・鼻がむずむずしてきた・・こんな時に・・
ふわぁ・・必死でくしゃみを我慢しようとしたが・・・出物腫れ物・・所嫌わず・・
クッ、グググ・・グシュン!
し、し、しまった・・やってしまった・・・
まずい!まずすぎる・・
焦っている私の背中からするりとシャノンが飛び降り、私の顔の前にやってきた。
「リサ、起き上がっても、いいよ」
「え?うわぁ!」
目を開けると、超至近距離でシャノンが私を見下ろしていた。そして、事もあろうに笑いながら言った。
「毒って嘘だから・・」
私の頭が一瞬でまっ白になる。
「え?嘘・・え~!!嘘だったの!!何でそんな、毒なんて・・」
「ごめん、ごめん・・」
はぁ?そんな軽く言われても・・・
何だか、ムクムクと怒りがこみ上げてきた。
「な、な、何で、そんなびっくりするような嘘をつくわけ?」
やっと起き上がっていいと判断した私の脳の命令で、私は緩慢な動きで起き上がり始めたが、一旦は床に割座状態で座り込んだ。そしてシャノンを睨みつけていた。
「事が急で、説明してる間がなくて・・あなたにじっとしてもらうには、ちょうどいいかなぁ~って思ったわけ。」
「・・・・」
「流石、リサと思った。皇太子妃になるという意志の硬さを感じられる、迫真の演技だったよ。この名演技をアルベルトに、見てもらえなかったのがホントに残念」
ちっとも残念そうじゃない、むしろ可笑しそうにシャノンは言っている。ホントに憎たらしい。
「アルベルト皇太子殿下には、こんな姿は、絶対に見せられないから。もぉ」
「本当に無礼なことになってしまい申し訳ない。リサ様」
丁寧に、腰をかがめて私の方を優しくみつめて、手を差し出しているのは、ウィリアムスではなく、今まで会ったこともない男性だった。この人がアイデン?私は少し躊躇したが、その手に自分の手を置いた。
「では、ゆっくり立ち上がりましょう」
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「ソファにかけましょうか?それともテーブルでハーブティを召し上がりますか?」
「では、ソ、ソファに」
そう言うと、ソファまでエスコートして座らせてくれた。
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「はじめまして、リサ様。サルーン王国の皇太子、アイデンです。度重なる非礼をどうかお許しください」
そう言うと深く、頭を下げていた。
え?アイデンって、サルーン王国の皇太子殿下なんだ。
「あ、頭をお上げ下さい。アイデン皇太子殿下。私は、アルベルト皇太子殿下の婚約者、リサです」
改めて、アイデンと向き合い、迫真の演技で、死体の役をやっていた自分の姿を想像すると、恥ずかしさで目の前がクラクラした。全てはシャノンのせいだからね。そう思い、シャノンの方を睨みつけたのだが、シャノンは全くそんなこと知らないというように、そっぽを向いているのだった。ホントに憎ったらしい・・。と思ったその瞬間、私の膝に座っていた。私の身体を使って、シャノンはアイデンに、かいつまんで、私が倒れた状況をアイデンに説明していた。
「あはは・・」
アイデンは、あけっぴろげな性格なのだろう、きっと。私に遠慮することなく笑い転げていた。
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