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第三章 私のできること
7運命の糸
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「そう、あの日ね。リサが馬車で湖畔にやってきて、いきなり真っ青な顔でシートに横たわっていた。その時、私は池の畔でゆったりとお昼寝をしていたの。そこは私のお気に入りの場所だったから。ねえ、アイデン、その場所で三人でランチをしたのを覚えてる?」
シャノンは穏やかな声で話し始めた。
「もちろんさ。僕にとっても大切な思い出の場所だ。アルベルトがランチを用意してくれて、その後は湖でボートにも乗った。じゃんけんで僕が勝って、君と二人で乗ったんだ」
「そうだったわね」
「アルベルトは、じゃんけんに負けて一人で寂しくボートに乗ったんだが、あいつ、悔し紛れに横からわざとオールで水をかけてきたものだから、そのまま、競争になったっけ・・。気がついたら、三人ともずぶ濡れになってた・・・」
共通の思い出を懐かしみ、緩やかな時間を楽しむような穏やかな笑い声が聞こえた。
そして、そのまま、お互いに当時のことを思い出していたのだろう・・・しばらくは静かな沈黙の時が流れたようだった。
それから、シャノンが続けた。
「私達はいつも3人一緒だったのよね」
「そうだった・・だから、あの事故の日のことが受け入れられずにいる」
その声からはアイデンの葛藤が感じられた。
「それが、あなたが今ここにいる理由なの?」
シャノンは尋ねた。
「分からない・・」
アイデンは、苦悩するように言葉を続けた。
「本当に偶然というのか、運命というのか・・。君が事故で亡くなってから2年が経つというのに、未だに心の糸はグシャグシャに絡まって、少しも解けようとしないままだった。そんな中で、アルベルトが婚約したという噂を耳にして、気がついたらあの日、懐かしい湖畔に来ていた」
「・・・そうだったのね・・・」
「すると、セントクリストファーの紋章が入った城の馬車が急に止まり、ウィリアムスとレイラが急いで馬車から出てきた。その後、ウィリアムスが抱いて出てきたリサを見て、僕はこの目を疑った。髪の色がブロンドである以外はシャノンそのものだった。そして、その彼女こそがアルベルトの婚約者だと理解したんだ」
アイデンは両手を広げ、天井を見上げた。
シャノンが続けていった。
「そう、私も彼女を見て驚嘆した。髪がブロンド・・と言ってもそれがウィッグだったと後で知るんだけど、それ以外は生きていた頃の私にそっくりだった。しかも、彼女がアルベルトの婚約者だと分かって、本当に複雑な思いでいっぱいになった。それで、そのまま、リサについて来てしまったの。しかも馬車酔いでフラフラになるなんて、頼りない感じがしてしまったから」
――――――――――――――――――
シャノンは、きっと、あの小憎らしい表情で言っているに違いない。もぉ~、一言文句の一つも言いたいところだが・・・。私にも少しずつ状況が分かってきた。しかしながら、まだまだ、話は続きそうだ。ただ、床にうつ伏せにになっているだけとはいえ、死んだふりも、とても疲れる・・。はぁ・・皇太子妃になるための我慢はいつまで続くのか・・・。でも、頑張らなくては・・私は自分に喝を入れ、死体になりきった。
――――――――――――――――――
「あはは・・。そうだったのか。僕たちは、このとき、行動をともにしていたんだ。とっさのことだったが、私は変身魔法で御者の姿になり、城の御者には申し訳ないことをしたが忘却魔法をかけて、木陰で眠ってもらったんだ。ただ、サルーンの私が城に入るときには結界に掛かる恐れがあったのだが、不思議なことに、普通に城内に入れてしまったんだ。変身魔法が解けた後、再び今度はウィリアムスに変身した。流石、アルベルトの侍従は優秀で、本物のウィリアムスと入れ替わるのは大変だったが、まあ、そこは、サルーン皇太子の僕はさらに優秀だから、まあ、うまくやったのだが、サルーンの魔法の痕跡が残ってしまったようだった」
シャノンは穏やかな声で話し始めた。
「もちろんさ。僕にとっても大切な思い出の場所だ。アルベルトがランチを用意してくれて、その後は湖でボートにも乗った。じゃんけんで僕が勝って、君と二人で乗ったんだ」
「そうだったわね」
「アルベルトは、じゃんけんに負けて一人で寂しくボートに乗ったんだが、あいつ、悔し紛れに横からわざとオールで水をかけてきたものだから、そのまま、競争になったっけ・・。気がついたら、三人ともずぶ濡れになってた・・・」
共通の思い出を懐かしみ、緩やかな時間を楽しむような穏やかな笑い声が聞こえた。
そして、そのまま、お互いに当時のことを思い出していたのだろう・・・しばらくは静かな沈黙の時が流れたようだった。
それから、シャノンが続けた。
「私達はいつも3人一緒だったのよね」
「そうだった・・だから、あの事故の日のことが受け入れられずにいる」
その声からはアイデンの葛藤が感じられた。
「それが、あなたが今ここにいる理由なの?」
シャノンは尋ねた。
「分からない・・」
アイデンは、苦悩するように言葉を続けた。
「本当に偶然というのか、運命というのか・・。君が事故で亡くなってから2年が経つというのに、未だに心の糸はグシャグシャに絡まって、少しも解けようとしないままだった。そんな中で、アルベルトが婚約したという噂を耳にして、気がついたらあの日、懐かしい湖畔に来ていた」
「・・・そうだったのね・・・」
「すると、セントクリストファーの紋章が入った城の馬車が急に止まり、ウィリアムスとレイラが急いで馬車から出てきた。その後、ウィリアムスが抱いて出てきたリサを見て、僕はこの目を疑った。髪の色がブロンドである以外はシャノンそのものだった。そして、その彼女こそがアルベルトの婚約者だと理解したんだ」
アイデンは両手を広げ、天井を見上げた。
シャノンが続けていった。
「そう、私も彼女を見て驚嘆した。髪がブロンド・・と言ってもそれがウィッグだったと後で知るんだけど、それ以外は生きていた頃の私にそっくりだった。しかも、彼女がアルベルトの婚約者だと分かって、本当に複雑な思いでいっぱいになった。それで、そのまま、リサについて来てしまったの。しかも馬車酔いでフラフラになるなんて、頼りない感じがしてしまったから」
――――――――――――――――――
シャノンは、きっと、あの小憎らしい表情で言っているに違いない。もぉ~、一言文句の一つも言いたいところだが・・・。私にも少しずつ状況が分かってきた。しかしながら、まだまだ、話は続きそうだ。ただ、床にうつ伏せにになっているだけとはいえ、死んだふりも、とても疲れる・・。はぁ・・皇太子妃になるための我慢はいつまで続くのか・・・。でも、頑張らなくては・・私は自分に喝を入れ、死体になりきった。
――――――――――――――――――
「あはは・・。そうだったのか。僕たちは、このとき、行動をともにしていたんだ。とっさのことだったが、私は変身魔法で御者の姿になり、城の御者には申し訳ないことをしたが忘却魔法をかけて、木陰で眠ってもらったんだ。ただ、サルーンの私が城に入るときには結界に掛かる恐れがあったのだが、不思議なことに、普通に城内に入れてしまったんだ。変身魔法が解けた後、再び今度はウィリアムスに変身した。流石、アルベルトの侍従は優秀で、本物のウィリアムスと入れ替わるのは大変だったが、まあ、そこは、サルーン皇太子の僕はさらに優秀だから、まあ、うまくやったのだが、サルーンの魔法の痕跡が残ってしまったようだった」
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