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第三章 私のできること
5.危ないハーブティー
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「リサ!!」
シャノンの声がしたと思うと、シャノンは、テーブルの上にいつものように背筋をピンと伸ばして、上品に、優雅に座っていた。私と目が合うと、シャノンは不敵な笑みを浮かべた。そして、さっきウィリアムスが入れてくれたフレッシュハーブティーが入ったカップに前足を伸ばしていた。
グイッ・・
前足に力を入れたかと思うと、カップを見事にひっくり返した。
カシャン!!
カップはソーサーに当たった。シャノンが見えない人には手品か心霊現象に見えたかもしれない。
「あ、あ、あ~」
間の抜けた声が出た。
せっかくのハーブティーがこぼれ、テーブルを伝って床に落ちる。ドレスが汚れないように、私は反射的に席を立っていた。ウィリアムスには、シャノンの姿は見えていないようだった。
「リサ様、大丈夫ですか?」
そう言うと、ウィリアムスは慌ててテーブルの上を片付け始めた。倒れたカップもテーブルや床にこぼれたハーブティーもあっという間に元通りになっていた。シャノンは悠々とウィリアムスの方を見ている。
「ご、ごめんなさい・・て、手が滑ってしまって・・・」
私はとりあえずこの場を逃れるための言い訳をしていた。
「お気になさらないで下さい。では、もう一度お入れしましょうか?」
「で、では、せっかくなので、お願いします」
ウィリアムスは、新しいカップにお茶を注いだ。
「どうぞ」
優雅な手つきで、私の目の前にハーブティーの注がれたカップを置いた。
「ありがとうございます。いただきます」
カップを手に取った時、シャノンがこっちを見ながら言った。
「リサ・・そのお茶には毒が入っている。飲んではだめ。飲むふりだけをして」
「え、え、え~!!ど、ど、」
「し~っ!!声を出しちゃダメ!!」
そんなことを言われても、いきなり、毒なんて言われても、意味が分からない。
いきなり変な声を出した私をいぶかるような表情でウィリアムスが見ているのに気づき、とりあえず、
「あは・・ど、ど、どんな・・このハーブはどんなハーブなのかなぁ~・・って、聞いていなかったなぁ~と思って・・」
「そうですね、うっかりしていましたね。このフレッシュハーブはレモンバーベナとカモミールを使いました。気持ちを穏やかにしてくれる効果があるようです」
「あ、あ、ありがとう」
その時、シャノンは極々普通のことのように私に言った。
「飲んだふりをした後は、ばったりと倒れる。分かった?」
私、役者じゃないし、ばったり倒れるって言っても・・
「こんな時にオタオタしないの!あんた、皇太子妃になるんでしょ!」
とてもきっぱりとシャノンは言った。
そうだよね・・これってコメディとかじゃなく、ヤバい状況ってことだよね・・たぶん。落ち着け!じぶん・・!訳は分かんないけど、やるしかないか。よ~し!!私はカップを持ち、口に近づけながら、言った。
「ほ、本当にさわやかな香りですね。心地よくて、とても穏やかな気持ちになれそうです」
ウィリアムスは私の方をじっと見ている。こりゃ誤魔化せるのか?と、思ったその時、シャノンがハンカチをくわえて、ウィリアムスの顔の近くで、ひらりと落とした。ウィリアムスがハンカチに気を取られている間に私は、テーィカップを床に落とし、お茶がこぼれて濡れているところを避けてばったりと床にうつぶせに倒れた。多分誰かが見ていたとしたら、ものすごくわざとらしいと思ったに違いないが・・・。
すぐにシャノンが私の背中にもふっと乗ったのを感じた。
「リサ様!!どうなさったのですか!」
ウィリアムスは、すぐに私のもとに駆け寄り、抱き起こそうとした。
が、その時、
「私に、触れないで!」
え~!!誰?私じゃない!!私じゃないのに私がしゃべってる?しかも、うつぶせに倒れたまま会話をするなんておかしくない?誰?
驚いたウィリアムスは私から少し離れ、うつ伏せに倒れた私を凝視していた。
「久しぶりね、アイデン」
その懐かしく、愛おしい声を聞いた途端、ウィリアムスは驚愕の表情から一転し、柔和で愛嬌のある表情になった。
「君は、君はシャノンなのか?」
シャノンの声がしたと思うと、シャノンは、テーブルの上にいつものように背筋をピンと伸ばして、上品に、優雅に座っていた。私と目が合うと、シャノンは不敵な笑みを浮かべた。そして、さっきウィリアムスが入れてくれたフレッシュハーブティーが入ったカップに前足を伸ばしていた。
グイッ・・
前足に力を入れたかと思うと、カップを見事にひっくり返した。
カシャン!!
カップはソーサーに当たった。シャノンが見えない人には手品か心霊現象に見えたかもしれない。
「あ、あ、あ~」
間の抜けた声が出た。
せっかくのハーブティーがこぼれ、テーブルを伝って床に落ちる。ドレスが汚れないように、私は反射的に席を立っていた。ウィリアムスには、シャノンの姿は見えていないようだった。
「リサ様、大丈夫ですか?」
そう言うと、ウィリアムスは慌ててテーブルの上を片付け始めた。倒れたカップもテーブルや床にこぼれたハーブティーもあっという間に元通りになっていた。シャノンは悠々とウィリアムスの方を見ている。
「ご、ごめんなさい・・て、手が滑ってしまって・・・」
私はとりあえずこの場を逃れるための言い訳をしていた。
「お気になさらないで下さい。では、もう一度お入れしましょうか?」
「で、では、せっかくなので、お願いします」
ウィリアムスは、新しいカップにお茶を注いだ。
「どうぞ」
優雅な手つきで、私の目の前にハーブティーの注がれたカップを置いた。
「ありがとうございます。いただきます」
カップを手に取った時、シャノンがこっちを見ながら言った。
「リサ・・そのお茶には毒が入っている。飲んではだめ。飲むふりだけをして」
「え、え、え~!!ど、ど、」
「し~っ!!声を出しちゃダメ!!」
そんなことを言われても、いきなり、毒なんて言われても、意味が分からない。
いきなり変な声を出した私をいぶかるような表情でウィリアムスが見ているのに気づき、とりあえず、
「あは・・ど、ど、どんな・・このハーブはどんなハーブなのかなぁ~・・って、聞いていなかったなぁ~と思って・・」
「そうですね、うっかりしていましたね。このフレッシュハーブはレモンバーベナとカモミールを使いました。気持ちを穏やかにしてくれる効果があるようです」
「あ、あ、ありがとう」
その時、シャノンは極々普通のことのように私に言った。
「飲んだふりをした後は、ばったりと倒れる。分かった?」
私、役者じゃないし、ばったり倒れるって言っても・・
「こんな時にオタオタしないの!あんた、皇太子妃になるんでしょ!」
とてもきっぱりとシャノンは言った。
そうだよね・・これってコメディとかじゃなく、ヤバい状況ってことだよね・・たぶん。落ち着け!じぶん・・!訳は分かんないけど、やるしかないか。よ~し!!私はカップを持ち、口に近づけながら、言った。
「ほ、本当にさわやかな香りですね。心地よくて、とても穏やかな気持ちになれそうです」
ウィリアムスは私の方をじっと見ている。こりゃ誤魔化せるのか?と、思ったその時、シャノンがハンカチをくわえて、ウィリアムスの顔の近くで、ひらりと落とした。ウィリアムスがハンカチに気を取られている間に私は、テーィカップを床に落とし、お茶がこぼれて濡れているところを避けてばったりと床にうつぶせに倒れた。多分誰かが見ていたとしたら、ものすごくわざとらしいと思ったに違いないが・・・。
すぐにシャノンが私の背中にもふっと乗ったのを感じた。
「リサ様!!どうなさったのですか!」
ウィリアムスは、すぐに私のもとに駆け寄り、抱き起こそうとした。
が、その時、
「私に、触れないで!」
え~!!誰?私じゃない!!私じゃないのに私がしゃべってる?しかも、うつぶせに倒れたまま会話をするなんておかしくない?誰?
驚いたウィリアムスは私から少し離れ、うつ伏せに倒れた私を凝視していた。
「久しぶりね、アイデン」
その懐かしく、愛おしい声を聞いた途端、ウィリアムスは驚愕の表情から一転し、柔和で愛嬌のある表情になった。
「君は、君はシャノンなのか?」
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