異世界で皇太子妃になりましたが、何か?

黒豆ぷりん

文字の大きさ
上 下
25 / 36
第三章 私のできること

2.妄想?

しおりを挟む
「シャノン、それにしても、アルベルト皇太子殿下ってちょっと、過保護すぎないかなぁ」
暇を持て余す私としては、ちょっぴり文句も言いたい。
「何でそう思うの?」
シャノンは冷静に言った。
私は愚痴のように続けた。
「だって、今回の事故だって、偶然が重なって起こったかもしれないじゃない?特に私に危険があったようにも思えないのになあ。なのに、部屋を出るの禁止なんだよ。ひどくない?」

しばらく考えるように黙っていたシャノンだが、言葉を選ぶようにしながら応えた。
「まあ、リサは呑気すぎるってのもあるけど、でも、アルは・・いえ、アルベルト皇太子殿下がちょっと、神経質になってしまうのは無理ないかもね」

「それって、やっぱり結界をくぐり抜けた侵入者のこと?」

「そうだね。それも神経質にならざるを得ない原因の一つといえるかな。侵入者がサルーン王国の魔力を使ったという形跡があることがね・・」

「サルーン王国っていうのは、この国とは敵対している国ということなの?」

ここでも、シャノンは直接的な言い方を避けるようにして言った。
「2年前まではとても友好的な関係だったのだけれど、いろいろあったようだね」

「何があったの?」

「さあね。アルベルトに聞いてみたらどう?」

「ええぇぇ~!!そんなの聞いていいの?」

「う~ん、分からない。けれど、あなたは今、アルベルトの婚約者なんだよね。結婚して皇太子妃になるとするなら、避けては通れないところじゃないかな・・」

雲を掴むような話だ。私はまたまた妄想に妄想を重ねないといけないのか?
「えぇぇ~!!?ワケが分からないよ~」
思わず、手に力が入り、モフモフのシャノンの毛をクシャクシャにしてしまったようで、
「痛たた・・・ちょっと気を付けてよ!」
シャノンからクレームが入る。

「ご、ごめん。ついつい・・」

「まぁ、リサにすれば分からなくて当然なんだけどね。でも、アルベルトのこと助けたいんでしょ?好きなんだよね?」

「もちろんだよ。私に何ができるか分かんないけど、アルベルト皇太子殿下はイケメンだし、優しいし、何より私を婚約者に選んでここに連れてきてくれたんだと思うし・・・うふふ・・」

そう言いながら、殿下を抱きしめるようにシャノンをギュッと抱きしめる。
シャノンは少し迷惑そうな顔をしていたようだが・・そこは気にしない。
「ゴホッ・・。今更なんだけど、リサは、どこから来たの?」

「シャノンが私の妄想とすれば、それはもう分かってるのかとは思うのだけれど・・。一応、ちゃんと応えておくね。日本っていう国。ここへは、アルベルト皇太子殿下がテレウィンドウというのを使って連れてきたんじゃないかと思う」

「ふ~ん。そうだったの。ドッペルゲンガーっていう現象があるらしいけど。うふふ・・」

「ド、ド、ドッペルゲンガー?いきなりですか?で、誰が誰に似てるわけ?私?」
余計にわけが分からなくなってくる・・
妄想にしてはシャノンとのやりとりはリアル感に満ちているが、私の頭はさっぱり、整理ができていないのでやはり妄想なのかな・・とも思う。

トントントン
ドアをノックする音が聞こえ、レイラの声がした。
「コーヒーとお菓子を運んでまいりました」
「どうぞ」
私が応えるのと同時にシャノンは、私の方に片目をつぶって見せて姿を消した。
ドアが開くと同時にコーヒーの芳ばしい香りが漂ってきた。
「う~ん、いい香り」
テーブルの上にはコーヒーカップとケーキが手際よくセッティングされていく。私は急いで席に着いた。今日はチョコレートケーキだ!!ケーキの表面はツヤツヤのチョコレートで滑らかにコーティングされている。ケーキの断面は3層のチョコレートが層をなし、しっとりと滑らかな様相をしている。流石フランク。最高の組み合わせだ!思わず手を出しそうになったところで、我に返り、レイラに尋ねた。
「アルベルト皇太子殿下はおいでにならないのでしょうか」
「はい、今日はご都合がお悪いようです。が、明日は必ずいらっしゃるそうです」
「分かりました」
そう言うと、私はフォークを手に取り、一口分を口に入れた。カカオと洋酒の香りが口いっぱい広がり、食感の違うチョコレートがそれぞれ口の中で溶け合って幸せな気持ちでいっぱいになった。殿下もお菓子を食べて、幸せな気持ちになってほしいな・・
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

処理中です...