異世界で皇太子妃になりましたが、何か?

黒豆ぷりん

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第三章 私のできること

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「ふぅ、ふぅ、ふぅわぁ~」

ベッドにどっさりと倒れ込み、酸欠になった金魚のように、息が詰まりそうになって息を吸ったりはいたりする。両手両足を上に上げ、立っている4本足の動物をそのまま仰向けにひっくり返したような姿勢になって、両手両足を思いっきりぶらぶらさせて、もがいてみる。

「あ~、ひまだぁ~、何とかしてぇぇぇええ!!」

 元の世界では帰宅部として在宅生活を謳歌し、学校へ行くことを含め、家から出ることを極力避けてきた身ではあるが、それも、家という勝手知ったる大きな安らぎの場があったからこそである。いくら豪華な装飾を施された、超素敵な生活も、全てが自由になるとは決して言い切れない今の状況では息が詰まりそうになるのだ。せっかく、キッチンや図書室といった場所への自由な出入りが許されそうになっていたにも関わらず、アルベルト皇太子殿下によると、城への侵入者がいて危険だと言うので、しばらくは出入り禁止になってしまった。ホントに迷惑なんですけど~。心の声が叫んでいた時、ハッとなって思わず声が出ていた。
心の奥底でなんとなく渦巻いていたちょっとした疑問だった・

「まさか、シャノンって、その侵入者じゃないよね」

まもなく、腹部にボフッという衝撃が・・。背筋をしゃんと伸ばしたいつもの姿勢で、腹部に前足を立てて座り、いつもの気取った表情で私を見下ろすようにして見ていた。
視線が合うと、
「フン」
というようにちょっと顔を横に向けたと思うと、おもむろに伸びをしてから。ゆっくりと丸くなり、そのままお腹の上に横になり、目をつむっている。じんわり温かさを感じるような気がする。こういうシャノンは可愛くてたまらない。そして、私は当たり前のように、両手を腹部にいるシャノンに伸ばし、そのモフモフな毛を撫で撫でしていた。

「あふ~ぅ。癒やされるわぁ」

思わずうっとりとした声が漏れる。我慢しきれず、シャノンを両手で胸に抱きかかえ、ギューってする。と、頭の中が真っ白になってていくようで、しばらくは何もかも忘れてどっぷりと幸福感に浸れるのだ。しばらくしてふと我に返った時、私の口から疑問に思っていた言葉が出た。

「ねえ、シャノン。あなったって、私の妄想?」
「・・・・」
「ねえ、知ってる?アルベルト皇太子殿下が言ってたんだけど、お城に結界をくぐり抜けて入った侵入者がいるんだって」
「・・・・・」
「時期的にはなんとなく、合致する気もするけど、侵入者という感じはない気もするんだよね」
「・・・・」
「しゃべる猫、とか、私にしか見えない猫とか・・どう考えても現実的じゃないし・・異世界に来て私が妄想の中で作ったとも、考えられるし・・。例えば、今の状況を、他の人が見たら、独り言言いながら、モフモフしてる危ない人としか見えないわけだし・・」
「・・・・」
「ねぇ、聞いてる?シャノン」

応える代わりに目を開けて、モゾモゾして私のほうに顔を向けた。

「私のこと、疑っているの?」

痛いところをついてくる・・

「ま、ま、まさか・・・。こんなにモフモフして、賢そうなロイヤル猫が侵入者とは思えないし。第一やっぱり私の妄想かな~ぁ・・なんて思ったりもして・・」

ちょっと、小馬鹿にしたような表情でシャノンは笑いながら言った。
「アハッ。あははは・・。そんなに気になる?」
「なるなるなる・・」
即答する私。焦らすように私の方を見るシャノン。

「もちろん、私がその侵入s・・」
「eえぇぇええ!?シャノン、侵入者なの?」
「アハハ・・。リサは、本当に面白い。からかい甲斐がある」
「って、何?今の嘘?」
「いや、話は最後まで聞きなさいってことよ・・」
「はぁ・・ってことは・・」
「あなたの聞きたい答えから言うと、Noね」
「ってことは、城への侵入者じゃないってことね」
「まあね」
「ってことは、シャノンって私の妄想なんだねぇ・・よかった」

何だか分からないけど、シャノンが悪者じゃないって分かってほっとした。しかも、殿下に私の妄想の話をしなかったことが正解だったことも・・

「そう思うなら、それでいいと思う」
私に聞こえないような独り言をシャノンは言っていた。
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