異世界で皇太子妃になりましたが、何か?

黒豆ぷりん

文字の大きさ
上 下
20 / 36
第三章 過去

2.葛藤

しおりを挟む
 彼女は学業に対して、とても熱心だった。アルベルトとアイデンが教室の最後列で座っているのに反して、授業は常に最前列のかぶりつきなのはもちろん、予習復習も怠らず、常に本を抱えて勉強していた。自然と結果は如実に現れ、最初のテストでは、それまで常にトップの成績をとっていたアイデンをも凌駕し、あっという間に学年トップになっていた。アルベルトも3位という好成績を修めていた。

男女を問わず、彼女に憧れの眼差しを向けるものは多かったが、男前な性格で、不必要な付き合いもせず、二人の皇太子殿下と学業にしか興味のないような振る舞いから、誤解されることも多かった。

「今回のテストはアイデン様が2位?何かの間違いでは?」

「彼女、何だかお高くとまっていて、嫌みですわ」

「カンニングでもしたんじゃないんですか」

「幼馴染だからと言って皇太子殿下のお二人に馴れ馴れしすぎですわ」

等、逆に陰では、特に女子の間では敵意をむき出しにするものもあった。その中でもアイデンに好意を持っていたオリビアはクラスでも中心的な存在でありながら、二人の皇太子と仲が良い彼女に対し、嫉妬心から憎悪の気持ちを膨らませていた。

そんな周囲の思いなど全く意に関せずの3人は、学校生活を思いきり楽しんでいた。

「テストが終わったし、お二人の御仁、ぱ~っと盛大にお茶等いかがかな?」

アイデンは愛嬌のある顔に笑顔を浮かべて言った。

「そうね、賛成!!」
「賛成!」

彼女の声とアルベルトの声が重なった。思わず二人も顔を見合わせ、笑顔になった。

「しかし、参ったなあ。早速1位を奪われるなんて・・。あのミスさえなければ、仲良くペアで同点トップだったのだが、残念」

アイデンは悔しそうに言った。

「普段以上に、勉強したのだけれど、君達にかなわなかったのが悔しい。しかし、次は、負けないからな」

「ははは・・負け犬の遠吠えだな」

「何だと、この~。アイデンのやつ、言わせておけば言いたい放題。今にその鼻へし折ってやる!」

アルベルトとアイデンは肩を組みあってにらみ合っていた。

「もぉ。男の人ってホントにいつまでたっても子どもだなぁ。」
呆れたように言い、

「お二人の仲の良いのは十分わかりましたから、その辺でよろしいのでは」

彼女はきっぱりと二人のじゃれあいにピリオドを打ち、喫茶室のドアを開けて入っていった。3人はお茶を囲んで、テスト後の開放感を思い切り楽しんでいた。

アイデンが不意に彼女に言った。
「僕が10歳の時の誕生日のこと覚えてる?」

「え~っとなんだったっけ」

「ほら、お祖父様が、急にお前はフローレンス伯爵家の孫娘と結婚するのだと言い出して」

「そうだったわね。いきなりでびっくりして。そうそう・・アイデンのお父様が、まだそんなことは早すぎますって、お祖父様をなだめてらっしゃったっけ」

「そうそう・・父上もそれでかなりワインを飲みすぎて・・」

「でも、僕はその時、君と結婚するって心に決めたんだ」

「え~!そうだったんだ~。知らなかったなぁ~」

彼女とアイデンがサルーン王国での昔話をし始めると、自分だけ輪の中に入っていくことができないもどかしさを感じた。すると、取り残されたような気持ちになり、アルベルトの胸は彼女への思いで痛み始めるのだった。もともと、アイデンからは彼女に手を出すなとはっきり言われていたので、アルベルトは努めて、必要以上に近づいたり、深入りしたりしないようにと頭の中では制御をしていた。しかし、感情はとどまるところを知らず、アルベルトの心はどんどん彼女に惹かれていってしまうのだった。

『彼女は今はアイデンのただの幼馴染と思っているし、今はまだ恋人ではないのだから、僕にだってチャンスはある』

『何を言っているんだ。親友を裏切り、傷つけてまで、自分のエゴを通すのか』

『少なくともアイデンは彼女を心から愛していて、そのことを僕は親友として知っているのに・・』

アイデンの心は、堂々巡りをしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...