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第三章 過去
2.葛藤
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彼女は学業に対して、とても熱心だった。アルベルトとアイデンが教室の最後列で座っているのに反して、授業は常に最前列のかぶりつきなのはもちろん、予習復習も怠らず、常に本を抱えて勉強していた。自然と結果は如実に現れ、最初のテストでは、それまで常にトップの成績をとっていたアイデンをも凌駕し、あっという間に学年トップになっていた。アルベルトも3位という好成績を修めていた。
男女を問わず、彼女に憧れの眼差しを向けるものは多かったが、男前な性格で、不必要な付き合いもせず、二人の皇太子殿下と学業にしか興味のないような振る舞いから、誤解されることも多かった。
「今回のテストはアイデン様が2位?何かの間違いでは?」
「彼女、何だかお高くとまっていて、嫌みですわ」
「カンニングでもしたんじゃないんですか」
「幼馴染だからと言って皇太子殿下のお二人に馴れ馴れしすぎですわ」
等、逆に陰では、特に女子の間では敵意をむき出しにするものもあった。その中でもアイデンに好意を持っていたオリビアはクラスでも中心的な存在でありながら、二人の皇太子と仲が良い彼女に対し、嫉妬心から憎悪の気持ちを膨らませていた。
そんな周囲の思いなど全く意に関せずの3人は、学校生活を思いきり楽しんでいた。
「テストが終わったし、お二人の御仁、ぱ~っと盛大にお茶等いかがかな?」
アイデンは愛嬌のある顔に笑顔を浮かべて言った。
「そうね、賛成!!」
「賛成!」
彼女の声とアルベルトの声が重なった。思わず二人も顔を見合わせ、笑顔になった。
「しかし、参ったなあ。早速1位を奪われるなんて・・。あのミスさえなければ、仲良くペアで同点トップだったのだが、残念」
アイデンは悔しそうに言った。
「普段以上に、勉強したのだけれど、君達にかなわなかったのが悔しい。しかし、次は、負けないからな」
「ははは・・負け犬の遠吠えだな」
「何だと、この~。アイデンのやつ、言わせておけば言いたい放題。今にその鼻へし折ってやる!」
アルベルトとアイデンは肩を組みあってにらみ合っていた。
「もぉ。男の人ってホントにいつまでたっても子どもだなぁ。」
呆れたように言い、
「お二人の仲の良いのは十分わかりましたから、その辺でよろしいのでは」
彼女はきっぱりと二人のじゃれあいにピリオドを打ち、喫茶室のドアを開けて入っていった。3人はお茶を囲んで、テスト後の開放感を思い切り楽しんでいた。
アイデンが不意に彼女に言った。
「僕が10歳の時の誕生日のこと覚えてる?」
「え~っとなんだったっけ」
「ほら、お祖父様が、急にお前はフローレンス伯爵家の孫娘と結婚するのだと言い出して」
「そうだったわね。いきなりでびっくりして。そうそう・・アイデンのお父様が、まだそんなことは早すぎますって、お祖父様をなだめてらっしゃったっけ」
「そうそう・・父上もそれでかなりワインを飲みすぎて・・」
「でも、僕はその時、君と結婚するって心に決めたんだ」
「え~!そうだったんだ~。知らなかったなぁ~」
彼女とアイデンがサルーン王国での昔話をし始めると、自分だけ輪の中に入っていくことができないもどかしさを感じた。すると、取り残されたような気持ちになり、アルベルトの胸は彼女への思いで痛み始めるのだった。もともと、アイデンからは彼女に手を出すなとはっきり言われていたので、アルベルトは努めて、必要以上に近づいたり、深入りしたりしないようにと頭の中では制御をしていた。しかし、感情はとどまるところを知らず、アルベルトの心はどんどん彼女に惹かれていってしまうのだった。
『彼女は今はアイデンのただの幼馴染と思っているし、今はまだ恋人ではないのだから、僕にだってチャンスはある』
『何を言っているんだ。親友を裏切り、傷つけてまで、自分のエゴを通すのか』
『少なくともアイデンは彼女を心から愛していて、そのことを僕は親友として知っているのに・・』
アイデンの心は、堂々巡りをしていた。
男女を問わず、彼女に憧れの眼差しを向けるものは多かったが、男前な性格で、不必要な付き合いもせず、二人の皇太子殿下と学業にしか興味のないような振る舞いから、誤解されることも多かった。
「今回のテストはアイデン様が2位?何かの間違いでは?」
「彼女、何だかお高くとまっていて、嫌みですわ」
「カンニングでもしたんじゃないんですか」
「幼馴染だからと言って皇太子殿下のお二人に馴れ馴れしすぎですわ」
等、逆に陰では、特に女子の間では敵意をむき出しにするものもあった。その中でもアイデンに好意を持っていたオリビアはクラスでも中心的な存在でありながら、二人の皇太子と仲が良い彼女に対し、嫉妬心から憎悪の気持ちを膨らませていた。
そんな周囲の思いなど全く意に関せずの3人は、学校生活を思いきり楽しんでいた。
「テストが終わったし、お二人の御仁、ぱ~っと盛大にお茶等いかがかな?」
アイデンは愛嬌のある顔に笑顔を浮かべて言った。
「そうね、賛成!!」
「賛成!」
彼女の声とアルベルトの声が重なった。思わず二人も顔を見合わせ、笑顔になった。
「しかし、参ったなあ。早速1位を奪われるなんて・・。あのミスさえなければ、仲良くペアで同点トップだったのだが、残念」
アイデンは悔しそうに言った。
「普段以上に、勉強したのだけれど、君達にかなわなかったのが悔しい。しかし、次は、負けないからな」
「ははは・・負け犬の遠吠えだな」
「何だと、この~。アイデンのやつ、言わせておけば言いたい放題。今にその鼻へし折ってやる!」
アルベルトとアイデンは肩を組みあってにらみ合っていた。
「もぉ。男の人ってホントにいつまでたっても子どもだなぁ。」
呆れたように言い、
「お二人の仲の良いのは十分わかりましたから、その辺でよろしいのでは」
彼女はきっぱりと二人のじゃれあいにピリオドを打ち、喫茶室のドアを開けて入っていった。3人はお茶を囲んで、テスト後の開放感を思い切り楽しんでいた。
アイデンが不意に彼女に言った。
「僕が10歳の時の誕生日のこと覚えてる?」
「え~っとなんだったっけ」
「ほら、お祖父様が、急にお前はフローレンス伯爵家の孫娘と結婚するのだと言い出して」
「そうだったわね。いきなりでびっくりして。そうそう・・アイデンのお父様が、まだそんなことは早すぎますって、お祖父様をなだめてらっしゃったっけ」
「そうそう・・父上もそれでかなりワインを飲みすぎて・・」
「でも、僕はその時、君と結婚するって心に決めたんだ」
「え~!そうだったんだ~。知らなかったなぁ~」
彼女とアイデンがサルーン王国での昔話をし始めると、自分だけ輪の中に入っていくことができないもどかしさを感じた。すると、取り残されたような気持ちになり、アルベルトの胸は彼女への思いで痛み始めるのだった。もともと、アイデンからは彼女に手を出すなとはっきり言われていたので、アルベルトは努めて、必要以上に近づいたり、深入りしたりしないようにと頭の中では制御をしていた。しかし、感情はとどまるところを知らず、アルベルトの心はどんどん彼女に惹かれていってしまうのだった。
『彼女は今はアイデンのただの幼馴染と思っているし、今はまだ恋人ではないのだから、僕にだってチャンスはある』
『何を言っているんだ。親友を裏切り、傷つけてまで、自分のエゴを通すのか』
『少なくともアイデンは彼女を心から愛していて、そのことを僕は親友として知っているのに・・』
アイデンの心は、堂々巡りをしていた。
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