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第二章 殿下、私のことはお好き?
9.偶然だよね
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「リサ様!ご無事ですか!」
「リサ様!」
「リサ様!!お怪我はありませんか?」
ウィリアムス、アンナ、レイラの3人は口々に叫びながら、すぐにリサのそばにやってきた。
「あ、ありがとう。びっくりしただけ。私は全然大丈夫。みなさんは?」
思いがけず私の、のんびりとした様子に、レイラは珍しく取り乱したような口調で言った。
「私どもの事をご心配するより、ご自身のことをご心配して下さい!!ご無事だったからよかったというものの・・・リサ様に何かがありましたら・・わたくし・・。それにしても、とんでもない事故に2度も遭遇するなんて・・」
「申し訳ありません。本当に申し訳ありません」
アンナは弱々しい声で何度も何度もそう言って頭を下げた。
「あなたのせいじゃないわ。きっと、本棚の寿命ね」
私は特に問題がないというように言った。
ウィリアムスは、険しい表情ではあったが、私を気遣っているのだろう、努めて平静に言った。
「リサ様、申し訳ありません。私がついていながらこのような事態が2度も起こってしまいました。原因を早急に究明し、2度とこのような危険なことが起こらないように致しますので、今日のところは城内の見学はこれで終了ということでよろしいでしょうか」
「そうですね。残念ですが・・。分かりました。では、レイラ、お部屋の方に戻りましょう」
「承知致しました」
レイラはウィリアムスに向かって言った。
「リサ様を無事にお部屋までお連れ致しますので、ウィリアムス様、ご安心下さい」
「では、お先に失礼します」
私は、散乱している本を避けながら、本棚が倒れた原因を検証しながら考え込んでいるような様子のウィリアムスに声をかけてから、図書室を出た。
ちょうど、図書室のドアの前あたりで数人の警備と思われる男たちとすれ違った。無機質なお城の廊下は、そこだけいつもと雰囲気が違い、緊張感が漂っていた。レイラと一緒に部屋に入ると、ホッとして、ソファにどっかりと腰を降ろした。
「あ~疲れたね。やっぱりお部屋が一番だね~」
両腕を万歳するようにして伸びをし、深呼吸した。レイラは私を気遣い、お茶を淹れたあと、テーブルにティーカップを置いた。
「リサ様、今日は本当に、お疲れさまでしたでしたね。では、食事までしばらくゆっくりとなさって下さい。御用のときはいつでもお呼び下さい」
と言い残してドアの外に出た。
しばらくすると、
「ニャン!」
シャノンが何事もなかったように、膝の上に現れたかと思うと、気だるそうにゆっくりと伸びをした後、そのまま丸く寝そべった。私は、シャノンのモフモフした毛を撫でながら身体も心も癒やされていくのを感じた。そうしているうちに、自然と、聞いているか聞いていないか分からないシャノンに話しかけていた。
「キッチンで照明が落ちたり、図書室で本棚が倒れたりなんて、はぁ、参った~。偶然って重なるもんだね」
「まあね~」
思いがけなく返事が帰ってきた。
「聞いてくれてたんだ~。ちょっと、嬉しいかも。ねえ、シャノンがいる時に起こったよね。その様子、見てたんじゃないの?」
「まあ、そうとも言える」
「じゃ、どうして照明が落ちたのかとか本棚がどうやって倒れたとか、知ってる?」
「まあね~」
「やっぱり、老朽化かなぁ。でも王宮はではそういうとこ、一番しっかりメンテナンスしてると思うけど・・え?もしかして、この国思った以上に逼迫してる?」
「うふふ・・あんた、やっぱり呑気だね~アホすぎるよね」
「はぁあ~!!」
ムカッとして、思わず語尾が上がる。シャノンにアホなんて言われる筋合いはない。心地よいモフモフの毛を撫でていた私の手が止まると、シャノンは、ぱっちりと目を開け、ゆっくり起き上がった。いつものようにしゃんと背筋を伸ばし、気取ったポーズで座ったかと思うと、パッとテーブルに移動し、私の目を正面から見据えていた。
「リサ様!」
「リサ様!!お怪我はありませんか?」
ウィリアムス、アンナ、レイラの3人は口々に叫びながら、すぐにリサのそばにやってきた。
「あ、ありがとう。びっくりしただけ。私は全然大丈夫。みなさんは?」
思いがけず私の、のんびりとした様子に、レイラは珍しく取り乱したような口調で言った。
「私どもの事をご心配するより、ご自身のことをご心配して下さい!!ご無事だったからよかったというものの・・・リサ様に何かがありましたら・・わたくし・・。それにしても、とんでもない事故に2度も遭遇するなんて・・」
「申し訳ありません。本当に申し訳ありません」
アンナは弱々しい声で何度も何度もそう言って頭を下げた。
「あなたのせいじゃないわ。きっと、本棚の寿命ね」
私は特に問題がないというように言った。
ウィリアムスは、険しい表情ではあったが、私を気遣っているのだろう、努めて平静に言った。
「リサ様、申し訳ありません。私がついていながらこのような事態が2度も起こってしまいました。原因を早急に究明し、2度とこのような危険なことが起こらないように致しますので、今日のところは城内の見学はこれで終了ということでよろしいでしょうか」
「そうですね。残念ですが・・。分かりました。では、レイラ、お部屋の方に戻りましょう」
「承知致しました」
レイラはウィリアムスに向かって言った。
「リサ様を無事にお部屋までお連れ致しますので、ウィリアムス様、ご安心下さい」
「では、お先に失礼します」
私は、散乱している本を避けながら、本棚が倒れた原因を検証しながら考え込んでいるような様子のウィリアムスに声をかけてから、図書室を出た。
ちょうど、図書室のドアの前あたりで数人の警備と思われる男たちとすれ違った。無機質なお城の廊下は、そこだけいつもと雰囲気が違い、緊張感が漂っていた。レイラと一緒に部屋に入ると、ホッとして、ソファにどっかりと腰を降ろした。
「あ~疲れたね。やっぱりお部屋が一番だね~」
両腕を万歳するようにして伸びをし、深呼吸した。レイラは私を気遣い、お茶を淹れたあと、テーブルにティーカップを置いた。
「リサ様、今日は本当に、お疲れさまでしたでしたね。では、食事までしばらくゆっくりとなさって下さい。御用のときはいつでもお呼び下さい」
と言い残してドアの外に出た。
しばらくすると、
「ニャン!」
シャノンが何事もなかったように、膝の上に現れたかと思うと、気だるそうにゆっくりと伸びをした後、そのまま丸く寝そべった。私は、シャノンのモフモフした毛を撫でながら身体も心も癒やされていくのを感じた。そうしているうちに、自然と、聞いているか聞いていないか分からないシャノンに話しかけていた。
「キッチンで照明が落ちたり、図書室で本棚が倒れたりなんて、はぁ、参った~。偶然って重なるもんだね」
「まあね~」
思いがけなく返事が帰ってきた。
「聞いてくれてたんだ~。ちょっと、嬉しいかも。ねえ、シャノンがいる時に起こったよね。その様子、見てたんじゃないの?」
「まあ、そうとも言える」
「じゃ、どうして照明が落ちたのかとか本棚がどうやって倒れたとか、知ってる?」
「まあね~」
「やっぱり、老朽化かなぁ。でも王宮はではそういうとこ、一番しっかりメンテナンスしてると思うけど・・え?もしかして、この国思った以上に逼迫してる?」
「うふふ・・あんた、やっぱり呑気だね~アホすぎるよね」
「はぁあ~!!」
ムカッとして、思わず語尾が上がる。シャノンにアホなんて言われる筋合いはない。心地よいモフモフの毛を撫でていた私の手が止まると、シャノンは、ぱっちりと目を開け、ゆっくり起き上がった。いつものようにしゃんと背筋を伸ばし、気取ったポーズで座ったかと思うと、パッとテーブルに移動し、私の目を正面から見据えていた。
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