異世界で皇太子妃になりましたが、何か?

黒豆ぷりん

文字の大きさ
上 下
16 / 36
第二章 殿下、私のことはお好き?

8.危険な城内?

しおりを挟む
「ホントにし・あ・わ・せ!」

ほとんどよだれを垂らしそうなほど締まりのない顔の私の耳元で声がした。

「ニャン」
あれ?シャノン?気づいて足を止めた。いつの間に肩に乗っていたんだろう?顔に柔らかい毛が触れる。

「あんた、もう呆れるほどだらしない顔してるよ」

黙って寝ていると、ホントに可愛いのに、しゃべると全く可愛げがない。

「ほっといてよ。皇太子殿下に深く愛されている婚約者様なんだから」

「そんな顔を殿下に見せたら、即刻嫌われるの間違いなしだね。早く、嫌われてしまえ!」

「ホントに、憎たらしい黒猫!!」

シャノンと言い争っていたその時

ガシャーン!!

大きな音がして、心臓が止まりそうになった。私の目の前約3メートルのところにキッチンの照明が落下し、割れて粉々になっていた。

「何ということだ!リサ様、お怪我はありませんか?」

フランクは真っ青な顔で叫んだ。ウィリアムスとレイラはすぐさま私のそばに来た。
突然のことに全く口が聞けず、しばらく呆然と立ち尽くしていたが、幸いなことに私はびっくりしただけで全くの無事だった。
ウィリアムスは料理長のフランクに厳しく言い放った。

「リサ様は、アルベルト皇太子殿下の婚約者様だ。絶対に何かあってはいけないお方だと分かっているはずだ。このような事故があった以上、責任は取ってもらう」

「待ってください、ウィリアムス。私はこうして何事もなくピンピンしています。ほ~らこの通り!」

私はくるりとスカートを膨らませ軽やかに一回転してみせた。

「ただの事故ですよ。フランクのせいではありません。たまたま照明が傷んでいただけなんですから。そのくらいでいいではありませんか。私は美味しいお菓子をフランクに作ってもらわないと困ります」

青い顔のフランクは

「リサ様、本当に申し訳ありません。幸せを運ぶキッチンでこのようなことが起こってしまったことは、全て私の責任でございます。ウィリアムス様のおっしゃるとおりどんな罰でも受けます」
と真摯に言った。

「分かりました。私は次期、皇太子妃です。では命令です。フランクは私のために一生お城で美味しいお菓子を作り続けるという罰を受けてもらいます」

「リサ様がそうおっしゃるのなら仕方がありませんね。フランク、キッチンの管理はくれぐれも、しっかりしておくように」

ウィリアムスの言葉にフランクは

「承知しました」

と深く頭を下げていた。

私は、フランクが辞めてしまうとか、そういう事態が避けられて、ホントによかったと心から安堵した。

続いて、図書室に行きたいという私の望み通り、お城の図書室に向かった。ウィリアムスがノックをしてドアを開けた。そこはまるで街の図書館のようだった。本を閲覧するオープンスペースには、調べ物などが十分できる広いデスクが3つあり、自由に手にできる本の棚がずらりと並んでいた。カウンターがあり、おそらく司書と思われる人が立ち上がり、こちらを見ながら丁寧に頭を下げた。大きめの黒縁のメガネに目をとらわれがちだが、とても整った顔をしている。前髪を眉のあたりで一直線に揃えたサラサラの金髪のボブがお硬い雰囲気をさらに強めているようだ。

「こんにちは。こちらはアルベルト皇太子殿下の婚約者、リサ様です。図書室をご案内に来ました。よろしく」
とウィリアムスが挨拶した。

「私、お城の専属司書をしておりますアンナと申します。」

「私、リサです。本は大好きなので、興味津々です」

「了解しました。何かありましたらいつでもお声をかけてください。ごゆっくりなさって下さい」

そう言うと、アンナはいつもの業務に淡々ともどっていた。
おかげで、何の気兼ねもなく、本棚に並ぶ本を自由に見ることができた。途中から、魔法の本とかあるのかなと探し始めていた。すると、またまた聞き慣れた声が聞こえる。

「にゃ~ん」

私の方を見ながらのんびりと歩いて行く。

「シャノン、こっちにおいでよ」

と声をかけたが全く動こうとしないので、抱っこしに行く。両手で抱えてモフモフの毛並みに顔をうずめて思い切り癒やされていた。
と、その時、

ガタン、ドーン

という大きな音がした。
見れば、先程私がいた場所の本棚が倒れ、本が散らばり、図書館にはおよそ似つかわしくない光景がそこにあった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

処理中です...