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第二章 殿下、私のことはお好き?
8.危険な城内?
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「ホントにし・あ・わ・せ!」
ほとんどよだれを垂らしそうなほど締まりのない顔の私の耳元で声がした。
「ニャン」
あれ?シャノン?気づいて足を止めた。いつの間に肩に乗っていたんだろう?顔に柔らかい毛が触れる。
「あんた、もう呆れるほどだらしない顔してるよ」
黙って寝ていると、ホントに可愛いのに、しゃべると全く可愛げがない。
「ほっといてよ。皇太子殿下に深く愛されている婚約者様なんだから」
「そんな顔を殿下に見せたら、即刻嫌われるの間違いなしだね。早く、嫌われてしまえ!」
「ホントに、憎たらしい黒猫!!」
シャノンと言い争っていたその時
ガシャーン!!
大きな音がして、心臓が止まりそうになった。私の目の前約3メートルのところにキッチンの照明が落下し、割れて粉々になっていた。
「何ということだ!リサ様、お怪我はありませんか?」
フランクは真っ青な顔で叫んだ。ウィリアムスとレイラはすぐさま私のそばに来た。
突然のことに全く口が聞けず、しばらく呆然と立ち尽くしていたが、幸いなことに私はびっくりしただけで全くの無事だった。
ウィリアムスは料理長のフランクに厳しく言い放った。
「リサ様は、アルベルト皇太子殿下の婚約者様だ。絶対に何かあってはいけないお方だと分かっているはずだ。このような事故があった以上、責任は取ってもらう」
「待ってください、ウィリアムス。私はこうして何事もなくピンピンしています。ほ~らこの通り!」
私はくるりとスカートを膨らませ軽やかに一回転してみせた。
「ただの事故ですよ。フランクのせいではありません。たまたま照明が傷んでいただけなんですから。そのくらいでいいではありませんか。私は美味しいお菓子をフランクに作ってもらわないと困ります」
青い顔のフランクは
「リサ様、本当に申し訳ありません。幸せを運ぶキッチンでこのようなことが起こってしまったことは、全て私の責任でございます。ウィリアムス様のおっしゃるとおりどんな罰でも受けます」
と真摯に言った。
「分かりました。私は次期、皇太子妃です。では命令です。フランクは私のために一生お城で美味しいお菓子を作り続けるという罰を受けてもらいます」
「リサ様がそうおっしゃるのなら仕方がありませんね。フランク、キッチンの管理はくれぐれも、しっかりしておくように」
ウィリアムスの言葉にフランクは
「承知しました」
と深く頭を下げていた。
私は、フランクが辞めてしまうとか、そういう事態が避けられて、ホントによかったと心から安堵した。
続いて、図書室に行きたいという私の望み通り、お城の図書室に向かった。ウィリアムスがノックをしてドアを開けた。そこはまるで街の図書館のようだった。本を閲覧するオープンスペースには、調べ物などが十分できる広いデスクが3つあり、自由に手にできる本の棚がずらりと並んでいた。カウンターがあり、おそらく司書と思われる人が立ち上がり、こちらを見ながら丁寧に頭を下げた。大きめの黒縁のメガネに目をとらわれがちだが、とても整った顔をしている。前髪を眉のあたりで一直線に揃えたサラサラの金髪のボブがお硬い雰囲気をさらに強めているようだ。
「こんにちは。こちらはアルベルト皇太子殿下の婚約者、リサ様です。図書室をご案内に来ました。よろしく」
とウィリアムスが挨拶した。
「私、お城の専属司書をしておりますアンナと申します。」
「私、リサです。本は大好きなので、興味津々です」
「了解しました。何かありましたらいつでもお声をかけてください。ごゆっくりなさって下さい」
そう言うと、アンナはいつもの業務に淡々ともどっていた。
おかげで、何の気兼ねもなく、本棚に並ぶ本を自由に見ることができた。途中から、魔法の本とかあるのかなと探し始めていた。すると、またまた聞き慣れた声が聞こえる。
「にゃ~ん」
私の方を見ながらのんびりと歩いて行く。
「シャノン、こっちにおいでよ」
と声をかけたが全く動こうとしないので、抱っこしに行く。両手で抱えてモフモフの毛並みに顔をうずめて思い切り癒やされていた。
と、その時、
ガタン、ドーン
という大きな音がした。
見れば、先程私がいた場所の本棚が倒れ、本が散らばり、図書館にはおよそ似つかわしくない光景がそこにあった。
ほとんどよだれを垂らしそうなほど締まりのない顔の私の耳元で声がした。
「ニャン」
あれ?シャノン?気づいて足を止めた。いつの間に肩に乗っていたんだろう?顔に柔らかい毛が触れる。
「あんた、もう呆れるほどだらしない顔してるよ」
黙って寝ていると、ホントに可愛いのに、しゃべると全く可愛げがない。
「ほっといてよ。皇太子殿下に深く愛されている婚約者様なんだから」
「そんな顔を殿下に見せたら、即刻嫌われるの間違いなしだね。早く、嫌われてしまえ!」
「ホントに、憎たらしい黒猫!!」
シャノンと言い争っていたその時
ガシャーン!!
大きな音がして、心臓が止まりそうになった。私の目の前約3メートルのところにキッチンの照明が落下し、割れて粉々になっていた。
「何ということだ!リサ様、お怪我はありませんか?」
フランクは真っ青な顔で叫んだ。ウィリアムスとレイラはすぐさま私のそばに来た。
突然のことに全く口が聞けず、しばらく呆然と立ち尽くしていたが、幸いなことに私はびっくりしただけで全くの無事だった。
ウィリアムスは料理長のフランクに厳しく言い放った。
「リサ様は、アルベルト皇太子殿下の婚約者様だ。絶対に何かあってはいけないお方だと分かっているはずだ。このような事故があった以上、責任は取ってもらう」
「待ってください、ウィリアムス。私はこうして何事もなくピンピンしています。ほ~らこの通り!」
私はくるりとスカートを膨らませ軽やかに一回転してみせた。
「ただの事故ですよ。フランクのせいではありません。たまたま照明が傷んでいただけなんですから。そのくらいでいいではありませんか。私は美味しいお菓子をフランクに作ってもらわないと困ります」
青い顔のフランクは
「リサ様、本当に申し訳ありません。幸せを運ぶキッチンでこのようなことが起こってしまったことは、全て私の責任でございます。ウィリアムス様のおっしゃるとおりどんな罰でも受けます」
と真摯に言った。
「分かりました。私は次期、皇太子妃です。では命令です。フランクは私のために一生お城で美味しいお菓子を作り続けるという罰を受けてもらいます」
「リサ様がそうおっしゃるのなら仕方がありませんね。フランク、キッチンの管理はくれぐれも、しっかりしておくように」
ウィリアムスの言葉にフランクは
「承知しました」
と深く頭を下げていた。
私は、フランクが辞めてしまうとか、そういう事態が避けられて、ホントによかったと心から安堵した。
続いて、図書室に行きたいという私の望み通り、お城の図書室に向かった。ウィリアムスがノックをしてドアを開けた。そこはまるで街の図書館のようだった。本を閲覧するオープンスペースには、調べ物などが十分できる広いデスクが3つあり、自由に手にできる本の棚がずらりと並んでいた。カウンターがあり、おそらく司書と思われる人が立ち上がり、こちらを見ながら丁寧に頭を下げた。大きめの黒縁のメガネに目をとらわれがちだが、とても整った顔をしている。前髪を眉のあたりで一直線に揃えたサラサラの金髪のボブがお硬い雰囲気をさらに強めているようだ。
「こんにちは。こちらはアルベルト皇太子殿下の婚約者、リサ様です。図書室をご案内に来ました。よろしく」
とウィリアムスが挨拶した。
「私、お城の専属司書をしておりますアンナと申します。」
「私、リサです。本は大好きなので、興味津々です」
「了解しました。何かありましたらいつでもお声をかけてください。ごゆっくりなさって下さい」
そう言うと、アンナはいつもの業務に淡々ともどっていた。
おかげで、何の気兼ねもなく、本棚に並ぶ本を自由に見ることができた。途中から、魔法の本とかあるのかなと探し始めていた。すると、またまた聞き慣れた声が聞こえる。
「にゃ~ん」
私の方を見ながらのんびりと歩いて行く。
「シャノン、こっちにおいでよ」
と声をかけたが全く動こうとしないので、抱っこしに行く。両手で抱えてモフモフの毛並みに顔をうずめて思い切り癒やされていた。
と、その時、
ガタン、ドーン
という大きな音がした。
見れば、先程私がいた場所の本棚が倒れ、本が散らばり、図書館にはおよそ似つかわしくない光景がそこにあった。
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