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第二章 殿下、私のことはお好き?
6.捜索
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ドン、ドン、ドン、ドン
いつになく強めのノックの音が鳴り響いた。一緒に布団で寝ていたはずのシャノンの姿はすでになかった。
「リサ様、お目覚めですか?」
そう言いながら、レイラがドアを開けた。開け放たれたドアの外から、ウィリアムスが顔を出し、
「リサ様、おはようございます。失礼いたします」
と丁寧にお辞儀をしてから、私に笑顔を見せた。
こんな朝からウィリアムスが部屋を尋ねてくるなんて、どうしたんだろう。もしかして、アルベルト皇太子殿下からのお手紙を持ってきてくれたんだろうか。でも、ウィリアムは笑顔を浮かべている割には、その目が全く笑っていないのが気になる。
え?もしかして、今度こそ婚約破棄?
まさか、ないよね。いろんな妄想が頭を駆け巡り、不安な気持ちから私の笑顔はぎこちないものになってしまった。
「おはよう、ウィリアムス。ごきげんよう。何か御用ですか?」
「はい。アルベルト皇太子殿下から今日はお部屋を出て、お城の中をご案内するようにと承っております。いかがでしょうか」
チラリとレイラを見ると、私の方を見ながら頷いている。
「分かりました」
と応えると、
「10時頃のお迎えでよろしいでしょうか」
レイラは言った。
「はい」
「承知いたしました」
と私とウィリアムスは同時に返事をした。
お城の中で一番行ってみたいのは厨房だった。おいしい食事、特にティータイムで出てくるお菓子は最高に美味しい。どんな人がどんなキッチンでどんな道具を使っているのか、知りたくてたまらなかったので、今回のアルベルト皇太子殿下のご配慮は、以心伝心?渡りに船?まさにそんなふうに思えた。
朝食を終え、着替えを済ませた後は、10時になるのを心待ちにしていた。こんな風に待っているときは、得てして時間がスローモーションになったみたいになかなか過ぎていかない。時計の針におもりが付いているのではないかとおもうくらいゆっくりと進んでいる。
窓の外を覗くと、庭番のサムが庭の草木に散水していた。青空が広がり、白い雲がくっきりと浮き上がっているように見える。水の雫がキラキラと太陽光に反射していた。時計に目を戻すと、時間はまだたったの5分しか進んでいない。落ち着きなく、ウロウロしている私にレイラも苦笑していた。
「リサ様は、本当に分かりやすいですね」
「そうかなぁ」
「そうでございますよ。よほど、ご案内してほしい場所がお有りになるんですね」
「分かる?」
「はい」
「では、クイズです。私が1番行きたい場所はどこ?1番、キッチン、2番、図書室、3番アルベルト皇太子殿下の部屋。さて、どれでしょう?」
「もしかして、この順番はリサ様、行ってみたい場所ベストスリーみたいですね」
「ははは・・バレたか」
「ということで、1番行きたいと思っていらっしゃるのは、キッチンでございますね。確かに、リサ様はお菓子作りが得意と以前おっしゃっていましたね」
「あ、レイラ、ここに来たすぐに、私が自己紹介で言ったこと、覚えてくれていたんだ」
あのときは全く関心ない風に思えたのに・・そう思うと、レイラのそのさりげない優しさみたいなものが嬉しくて温かいものがじんわり心のなかで広がるのを感じた。
「ウィリアムス様にキッチン最優先でご案内していただくようにお伝えしておきましょう」
「やった!!」
私は、これから足を踏み入れるキッチンのことを考えるとワクワクが止まらなかった。期待感に舞い上がっていた私は、レイラがわずかに顔を曇らせていたことに全く気づくはずもなかった。
いつになく強めのノックの音が鳴り響いた。一緒に布団で寝ていたはずのシャノンの姿はすでになかった。
「リサ様、お目覚めですか?」
そう言いながら、レイラがドアを開けた。開け放たれたドアの外から、ウィリアムスが顔を出し、
「リサ様、おはようございます。失礼いたします」
と丁寧にお辞儀をしてから、私に笑顔を見せた。
こんな朝からウィリアムスが部屋を尋ねてくるなんて、どうしたんだろう。もしかして、アルベルト皇太子殿下からのお手紙を持ってきてくれたんだろうか。でも、ウィリアムは笑顔を浮かべている割には、その目が全く笑っていないのが気になる。
え?もしかして、今度こそ婚約破棄?
まさか、ないよね。いろんな妄想が頭を駆け巡り、不安な気持ちから私の笑顔はぎこちないものになってしまった。
「おはよう、ウィリアムス。ごきげんよう。何か御用ですか?」
「はい。アルベルト皇太子殿下から今日はお部屋を出て、お城の中をご案内するようにと承っております。いかがでしょうか」
チラリとレイラを見ると、私の方を見ながら頷いている。
「分かりました」
と応えると、
「10時頃のお迎えでよろしいでしょうか」
レイラは言った。
「はい」
「承知いたしました」
と私とウィリアムスは同時に返事をした。
お城の中で一番行ってみたいのは厨房だった。おいしい食事、特にティータイムで出てくるお菓子は最高に美味しい。どんな人がどんなキッチンでどんな道具を使っているのか、知りたくてたまらなかったので、今回のアルベルト皇太子殿下のご配慮は、以心伝心?渡りに船?まさにそんなふうに思えた。
朝食を終え、着替えを済ませた後は、10時になるのを心待ちにしていた。こんな風に待っているときは、得てして時間がスローモーションになったみたいになかなか過ぎていかない。時計の針におもりが付いているのではないかとおもうくらいゆっくりと進んでいる。
窓の外を覗くと、庭番のサムが庭の草木に散水していた。青空が広がり、白い雲がくっきりと浮き上がっているように見える。水の雫がキラキラと太陽光に反射していた。時計に目を戻すと、時間はまだたったの5分しか進んでいない。落ち着きなく、ウロウロしている私にレイラも苦笑していた。
「リサ様は、本当に分かりやすいですね」
「そうかなぁ」
「そうでございますよ。よほど、ご案内してほしい場所がお有りになるんですね」
「分かる?」
「はい」
「では、クイズです。私が1番行きたい場所はどこ?1番、キッチン、2番、図書室、3番アルベルト皇太子殿下の部屋。さて、どれでしょう?」
「もしかして、この順番はリサ様、行ってみたい場所ベストスリーみたいですね」
「ははは・・バレたか」
「ということで、1番行きたいと思っていらっしゃるのは、キッチンでございますね。確かに、リサ様はお菓子作りが得意と以前おっしゃっていましたね」
「あ、レイラ、ここに来たすぐに、私が自己紹介で言ったこと、覚えてくれていたんだ」
あのときは全く関心ない風に思えたのに・・そう思うと、レイラのそのさりげない優しさみたいなものが嬉しくて温かいものがじんわり心のなかで広がるのを感じた。
「ウィリアムス様にキッチン最優先でご案内していただくようにお伝えしておきましょう」
「やった!!」
私は、これから足を踏み入れるキッチンのことを考えるとワクワクが止まらなかった。期待感に舞い上がっていた私は、レイラがわずかに顔を曇らせていたことに全く気づくはずもなかった。
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