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第一章 異世界へ
4腹が減っては…
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『キュ~~~ >> グルグルグルグル~~<<<』
超豪華なお部屋に、まるで似つかわしくない音が高らかに何度も響き渡る。
どのくらい眠っていたのか定かではないが…
「お腹…すいた…」
高級ベッドに寝ていても、やっぱりすくものはすく。
何か食べるもの…
力なくベッドから体を起こす。立ち上がろうとして、ふらつく。
少し立ちくらみ…やっぱりご飯食べないとダメだ。
「食べもの、食べもの…」
テーブル、机、バスルーム、クローゼットと手あたり次第捜索するも、菓子パン1個、チョコレート一粒、キャンディ1個...もない。
「何もない!」
埃一つ見つけるのも困難そうな、整然と片付いた豪華なお部屋に食べ物などあろうはずもなく…
「はぁ」
とうとう、私は力尽きて、床にへたりこんだ。
「お腹すいたよー。帰りたいよー。豪華なお部屋もイケメンの彼氏もいりません。だから食べ物のあるおうちに返してくださーい‼︎」
「パパ~!ママ~!」
と叫んでいた時、
トン、トン、トン
ドアをノックする音がした。
「はい」
力なく返事をすると、
静かにドアが開いた。と、同時に
「失礼いたします。リサ様」
と笑顔でレイラが現れた。しかもレイラが持ってきたワゴンには、私がまさに、今渇望して止まない食べ物、ランチと思われる食べ物が、わんさかと乗っているではないか。
「レイラ!愛してる!」
テーブルにランチが並ぶのが待ちきれない。
「あはぁ...」
開いた口からよだれが落ちそうになり、我にかえる。
いや待て。まだ実感はないが、私は皇太子殿下の婚約者....ということらしい。
その重いような軽いような非現実感だけがランチに襲いかかろうとする私の欲望を抑える最後の砦となった。
「ガルルルルル~…」
「お待たせいたしました。リサ様、どうぞ、お召し上がりくださいませ」
レイラが吹き出しそうになっているのを横目で見ながら、私はランチに貪りついた。
「そんなに慌てなくてもランチは逃げませんよ」
「ごほっ!そ、そうですわね。おほほ…」
お腹が満たされ、やっと一息ついた私は、多分、柑橘系の果物のエキスが入っていると思われるよき香りのお茶を、レイラがコポコポと湯気を立てながら、ティーカップに注いでいるのを見ていた。
「あー幸せ」
この世界も悪くない。何と言っても、食事がうまい!異世界の食べ物といえど、ここは、城内。恐らく、この世界では最上級の料理に違いないが、気取ったところがなくて私の口に合う!とても合う!
胃袋が満たされたおかげで、気持ちにも余裕が出てきた。
色々悩んでも仕方ない。
何とかなるでしょう!
と元気に言ったところで、それでも、今後の私の身の振り方を左右する最大の関心事を思い切って聞いた。
「ねぇ、レイラ。私は元の世界に戻れるのかな」
「非常に難しいと思われます」
レイラは、珍しく歯切れの悪い言い方をする。
「ねぇ、それって100パーセントで言ったら、どれくらい?」
「・・・はっきり申し上げまして99パーセントは無理かと」
「大学入試公開模試でも99パーセント無理とか出ないよ。それって不可能ってこと!?
でも、私の家族や友達や学校とか…突然私がいなくなったことで大騒ぎになっているはずだよね。
これって失踪事件だよね」
「それはご安心下さいませ。ご家族もお友達も全てリサ様の事は万事なかったことに…」
「ええっ!なかったことにって...それはどういうこと⁉︎」
「まぁ、それは...とにかく、全くご心配には及びませんので、リサ様はこちらでの生活を満喫なさってくださいませ」
「そんなこと言われても、私にも私の大事な生活があるんだからっ!」
一体私のことを何だと思ってるんだ。と、何だか猛烈に腹立たしい気持ちになり、言葉もついつい荒っぽくなる。
気が付くと、レイラはその美しいエメラルドグリーンの瞳でじっと私の方を見つめていた。
…な…に?
途端、頭の中がモヤがかかったようになり、なぜだか私は気になっていた様々なことが、どうでもいい気がしてしまった。
こんなこと、前にもあったような....
超豪華なお部屋に、まるで似つかわしくない音が高らかに何度も響き渡る。
どのくらい眠っていたのか定かではないが…
「お腹…すいた…」
高級ベッドに寝ていても、やっぱりすくものはすく。
何か食べるもの…
力なくベッドから体を起こす。立ち上がろうとして、ふらつく。
少し立ちくらみ…やっぱりご飯食べないとダメだ。
「食べもの、食べもの…」
テーブル、机、バスルーム、クローゼットと手あたり次第捜索するも、菓子パン1個、チョコレート一粒、キャンディ1個...もない。
「何もない!」
埃一つ見つけるのも困難そうな、整然と片付いた豪華なお部屋に食べ物などあろうはずもなく…
「はぁ」
とうとう、私は力尽きて、床にへたりこんだ。
「お腹すいたよー。帰りたいよー。豪華なお部屋もイケメンの彼氏もいりません。だから食べ物のあるおうちに返してくださーい‼︎」
「パパ~!ママ~!」
と叫んでいた時、
トン、トン、トン
ドアをノックする音がした。
「はい」
力なく返事をすると、
静かにドアが開いた。と、同時に
「失礼いたします。リサ様」
と笑顔でレイラが現れた。しかもレイラが持ってきたワゴンには、私がまさに、今渇望して止まない食べ物、ランチと思われる食べ物が、わんさかと乗っているではないか。
「レイラ!愛してる!」
テーブルにランチが並ぶのが待ちきれない。
「あはぁ...」
開いた口からよだれが落ちそうになり、我にかえる。
いや待て。まだ実感はないが、私は皇太子殿下の婚約者....ということらしい。
その重いような軽いような非現実感だけがランチに襲いかかろうとする私の欲望を抑える最後の砦となった。
「ガルルルルル~…」
「お待たせいたしました。リサ様、どうぞ、お召し上がりくださいませ」
レイラが吹き出しそうになっているのを横目で見ながら、私はランチに貪りついた。
「そんなに慌てなくてもランチは逃げませんよ」
「ごほっ!そ、そうですわね。おほほ…」
お腹が満たされ、やっと一息ついた私は、多分、柑橘系の果物のエキスが入っていると思われるよき香りのお茶を、レイラがコポコポと湯気を立てながら、ティーカップに注いでいるのを見ていた。
「あー幸せ」
この世界も悪くない。何と言っても、食事がうまい!異世界の食べ物といえど、ここは、城内。恐らく、この世界では最上級の料理に違いないが、気取ったところがなくて私の口に合う!とても合う!
胃袋が満たされたおかげで、気持ちにも余裕が出てきた。
色々悩んでも仕方ない。
何とかなるでしょう!
と元気に言ったところで、それでも、今後の私の身の振り方を左右する最大の関心事を思い切って聞いた。
「ねぇ、レイラ。私は元の世界に戻れるのかな」
「非常に難しいと思われます」
レイラは、珍しく歯切れの悪い言い方をする。
「ねぇ、それって100パーセントで言ったら、どれくらい?」
「・・・はっきり申し上げまして99パーセントは無理かと」
「大学入試公開模試でも99パーセント無理とか出ないよ。それって不可能ってこと!?
でも、私の家族や友達や学校とか…突然私がいなくなったことで大騒ぎになっているはずだよね。
これって失踪事件だよね」
「それはご安心下さいませ。ご家族もお友達も全てリサ様の事は万事なかったことに…」
「ええっ!なかったことにって...それはどういうこと⁉︎」
「まぁ、それは...とにかく、全くご心配には及びませんので、リサ様はこちらでの生活を満喫なさってくださいませ」
「そんなこと言われても、私にも私の大事な生活があるんだからっ!」
一体私のことを何だと思ってるんだ。と、何だか猛烈に腹立たしい気持ちになり、言葉もついつい荒っぽくなる。
気が付くと、レイラはその美しいエメラルドグリーンの瞳でじっと私の方を見つめていた。
…な…に?
途端、頭の中がモヤがかかったようになり、なぜだか私は気になっていた様々なことが、どうでもいい気がしてしまった。
こんなこと、前にもあったような....
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