42 / 167
武田信繁
しおりを挟む
再び訪れた太原雪斎に、和睦の仲介を頼んだ。
それでは、と雪斎は応じ、和睦は進む。
長尾側から本庄実乃と山吉豊守を使者として送ると、武田側からは武田晴信の弟、信繁はやって来た。
「武田左馬助信繁でございます」
名乗る信繁を見て、ほぉ、と景虎は思った。
信繁は景虎より五つほど年上の、三十路前後だろう。
くっきりとした顔立ちで、鋭い目と、張った顎をしている。
大柄というわけではないが、しっかりとした体付きをしており、特に手が大きい。
以前、高梨政頼が、
「武田大膳(信玄)は卑怯なだけの男ですが、弟の左馬助の方はなかなかの武者です」
と言っていたが、なるほど、と景虎は納得する。
押し出しの良い、いかにも大将と言った男だ。
信繁の背後に、片目で片足の従者が控えていた。
その男が貧相な為、信繁の威厳が更に増して見える。
「和睦を受け入れて頂き、かたじけのうございます」
深く信繁は頭を下げる。
うむ、と短く景虎は頷く。
どうせまた何か謀を巡らせてくるのだろうが、当然そんなことおくびにも出さず、二度と北信濃に手を出さないような口ぶりで、信繁は丁寧に礼を言う。
では、と間に雪斎が入り、双方の条件を読み上げ、誓紙を取り交わす。
誓紙を受け取り、それでは、と信繁は去っていく。
拙僧も、と言って雪斎も帰る。
「・・・・・・・・」
居並ぶ長尾の家臣の末席で、宇佐美定満は微笑みながら、太原雪斎を見つめていた。
それでは、と雪斎は応じ、和睦は進む。
長尾側から本庄実乃と山吉豊守を使者として送ると、武田側からは武田晴信の弟、信繁はやって来た。
「武田左馬助信繁でございます」
名乗る信繁を見て、ほぉ、と景虎は思った。
信繁は景虎より五つほど年上の、三十路前後だろう。
くっきりとした顔立ちで、鋭い目と、張った顎をしている。
大柄というわけではないが、しっかりとした体付きをしており、特に手が大きい。
以前、高梨政頼が、
「武田大膳(信玄)は卑怯なだけの男ですが、弟の左馬助の方はなかなかの武者です」
と言っていたが、なるほど、と景虎は納得する。
押し出しの良い、いかにも大将と言った男だ。
信繁の背後に、片目で片足の従者が控えていた。
その男が貧相な為、信繁の威厳が更に増して見える。
「和睦を受け入れて頂き、かたじけのうございます」
深く信繁は頭を下げる。
うむ、と短く景虎は頷く。
どうせまた何か謀を巡らせてくるのだろうが、当然そんなことおくびにも出さず、二度と北信濃に手を出さないような口ぶりで、信繁は丁寧に礼を言う。
では、と間に雪斎が入り、双方の条件を読み上げ、誓紙を取り交わす。
誓紙を受け取り、それでは、と信繁は去っていく。
拙僧も、と言って雪斎も帰る。
「・・・・・・・・」
居並ぶ長尾の家臣の末席で、宇佐美定満は微笑みながら、太原雪斎を見つめていた。
1
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜
岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!???
そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる