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黒滝の戦い
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本庄実乃の読み通り、黒田秀忠の下には、五百ほどの兵しか集まらなかった。
それでも景虎の方は、三百程度、二倍とまではいかないが劣勢だ。
「どうする?」
そう問えば、実乃は、
「兵を二手に分けましょう」
と答えた。
長尾俊景との戦いと、同じ陣立てで望むようだ。
そうしようと、景虎は同意する。
戦いに大切なのは奇策ではない。
勝てる戦さを、勝てるように運ぶ。
その手腕が重要だ。
「背後に回り込む隊の指揮は、小島どのに任せましょう」
実乃の言葉に、景虎も頷く。
攻撃の隊には、越後一の猛者である、小島貞興に任せるべきだろう。
問題は、兵をどのくらい任せるべきかだ。
「和泉守は死の物狂い、攻めかかってくるでしょう」
そうだな、と景虎も思う。
越後で生きて行くために、あるいはこの乱世で生き抜くためには、武名が重要である。
特にそれほどの出自ではなく、己の武勇での仕上がって来た秀忠には、武名が全てといって良い。
負けたままでは終われない。勝って領地を得て、兵たちを集めなければならない。
死ぬ気でかかってくるだろう。
「ですから本陣の守りを、固くすべきです」
此度は景虎も、それに同意である。
「それで・・・・・」
ジッと景虎を見つめると、実乃が告げる。
「小島殿には、二十人、連れていただきまましょう」
「に、二十人?」
景虎は戸惑う。
貞興の方に、はあまり兵は割けない。
しかしそれでも百人、無理でも八十人程度は回すつもりだった。
「たった二十人か?」
思わず景虎は、義旧の方を見る。
「弥太郎めならば、二十人もいらぬ、十人で良いですと言うでしょう」
義旧が力強く頷く。
「・・・・・分かった」
二人が言うのだ。
「そうしよう」
景虎は同意する。
「あれが、黒田和泉守です」
集まった敵兵の中心にる武者を、義旧が指差す。
景虎は黙って頷く。
そうだろうと、景虎も思っていた。
遠目から見ても、大柄で立派な武者だ。
父為景の、可愛がっていた勇士だ。
ふと、そう景虎は思った。
父の唯一の記憶である大きな手が、景虎の頭を過ぎる。
秀忠がゆっくり前に出る。
「黒田和泉守秀忠にござる」
大きな声で、秀忠が名乗る。
「平三どの、お相手いたす」
そう言って秀忠が手を上げると、弓兵が前に出る。
サッと実乃も前に出てる。
こちらの兵は、板の盾を構える。
「放て」
「防げ」
両者の声が、戦場に響く。
黒田勢の矢が、数百本、栃尾衆に放たれる。
栃尾衆は、それを盾で防ぐ。
「槍構え」
実乃が命じる。直ぐに槍兵の戦いに移る。
戦さの作法だ。
初めは弓を撃ち合い、次に槍で突き合う。
「突っ込め」
秀忠が叫ぶ。
「防げ」
実乃が応じる。
予想通り黒田勢が苛烈に攻めてくる。それを栃尾衆が防ぎながら、ゆっくり小島貞興が率いる別働隊が伏せている、丘の方に移動する。
戦さの前、実乃が、
「和泉守は兵が千人集まれば、鶴翼に陣を敷き、包囲しようとしたでしょう」
と言った。
その通りだと景虎も思った。
栃尾衆は三百、三倍いればそれが定石だ。
「しかしあまり集まらぬ筈。それならおそらく、得意の横突きをするでしょう」
「横突き?」
景虎が問うと、はい、と言って、実乃が答える。
「ここという機で、兵の一部を割き、こちらの横を突くのです」
なるほど、と景虎は頷く。
実乃の背後から突く攻めと同じ、単純な策だ。
だがそれだけに、上手く使えば確実に、敵を倒せる。
そして実乃は、得意のと言った。秀忠はそれが上手いのだろう。
「和泉守の横突きは、恐ろしい攻めです」
実乃は強い口調で告げる。
「ただ同時に、そこに勝機がございます」
「攻め立てろ」
秀忠の号令が響く。黒田勢が勇猛果敢に突き進んでくる。
「防げ、防げ」
声を枯らして、実乃が応じる。
丘に近づく。
栃尾衆が大きく動いた。大きく動けば、綻びが生まれる。
今だ、と景虎は思う。
「行け」
秀忠が軍勢を割き、百人ほどが横に回り込もうとする。
ここが潮目だ、そう景虎は確信する。
戦さの前に、実乃が言った。
「横突きを仕掛けようとする時、陣が乱れます」
そこを突く。
丘の上から、貞興の隊が見えた。
貞興が丘から黒田陣に、襲いかかる。
逆落としだ。
これは・・・・・と景虎は思わず唸る。
二十人与えると言うと、貞興は、
「十人でよいです」
と応えた。
しかしその十人も要らないらしい。
一騎で貞興は、黒田勢に突っ込む。
槍を、いや、剛槍を振るい、敵を次から次えと薙ぎ倒していく。
一騎当千という言葉がある。
一騎で千人に値する武人という事だ。
そんなものは言葉だと、景虎は思っていた。
十人程度なら、一度に相手にする事はできるだろう。
しかし本当に、千人相手に出来る者などいない。
そう思っていた。
だが小島弥太郎貞興とい男は、正真正銘の一騎当千である。
たった一騎で次々と敵を、薙ぎ倒していく。
「平三さま」
金津義旧が声をあげる。
景虎は貞興の活躍に、目を取られていた。
しかし黒田勢も必死だ。
遂に景虎の眼前にも、敵がやって来た。
景虎の馬の轡を取っていた義旧が、その手を離し槍を構える。
「控えろ下郎ども」
義旧が大音声を響かせる。
「この金津新兵衛義旧」
名乗って義旧は、槍を大きく振り回す。
「平三さまには、指一本触れさせぬ」
義旧の気迫に、うっっと敵がたじろぐ。
「平三さま、お退がりを」
実乃が近寄り、景虎に言う。
いや、良い、と景虎は首を振る。
「もう終わる」
そう言って、貞興の方を見る。
「和泉守どの」
黒田勢を追い散らし、貞興が秀忠の前に進む。
「弥太郎、かかって来い」
秀忠は槍を構える。
いざ、と吠え、貞興が槍を振るう。
貞興も秀忠も、景虎の父、為景が認めた、可愛がった武者だ。
為景が死に、二人はどんな気持ちで相対しているのだろう。
そして・・・・・。
三度、その槍を秀忠は受け止める。
あの剛槍を、三度受けただけでも、大した者だと景虎は思う。
四度目、貞興が槍を構える。
もう受ける力は無いのだろう、秀忠の肩が上がらない。
「・・・・・・・・」
一瞬、秀忠が景虎の方を見た。
どんな表情をしているのか、景虎には分からない。
あぁああああっ、と言う雄叫びと共に、貞興の剛槍が秀忠を貫く。
ゆっくりと、馬上から秀忠が崩れ落ちる。
バッと貞興は拳を上げる。
「黒田和泉守、討ち取ったり」
「退け、退け」
黒田勢が、そう叫びながら引いていく。
追い討ちは掛けない、必要ないからだ。
黒田勢が引き、実乃が兵を纏めていく。
「平三さま」
貞興が近づき、馬から降りる。
「和泉守にございます」
布に包まれた秀忠の首を、地面に置く。
うむ、と言って、景虎は馬を降り、包みを解く。
そこに黒田秀忠の首がある。
穏やかな顔のように、景虎には見えた。
「弥太郎」
景虎が呼ぶと、はっ、と貞興が応えた。
二人が相対した時、景虎は貞興がどんな気持ちであったか、それを思った。
そして秀忠を討ち取り、どんな気持ちであるのか、それも思った。
しかしそれを尋ねはしない。
「見事であった、褒めてつかわる」
尋ねても意味のない事だ。
ハハッ、と貞興が頭を下げる。
平三さま、と義旧が呼びかける。実乃が兵を纏め上げるのが終わったのだ。
うむ、と頷き、兵たちを見回す。
「みな、大儀であった」
黒田勢は死に物狂いで攻めて来ただの、兵たちは皆、ボロボロである。
「我らの大勝利じゃ」
実乃、そして義旧に目をやり、景虎は告げる。
「勝鬨を上げい」
ハハッ、と応えて、義旧が前に出る。
栃尾衆が戦ったのだ。本来は実乃の仕事だろうが、実乃が譲ったのだろう。
えいえいおぉおおっ、と大声を上げ、義旧が拳を振り上げる。
えいえいおぉおおおっ、と皆がそれに続く。
えいえいおおおっ、と三度、義旧がそれを繰り返し、皆がそれに続く。
「・・・・・・・」
景虎はそれを、静かに見つめている。
それでも景虎の方は、三百程度、二倍とまではいかないが劣勢だ。
「どうする?」
そう問えば、実乃は、
「兵を二手に分けましょう」
と答えた。
長尾俊景との戦いと、同じ陣立てで望むようだ。
そうしようと、景虎は同意する。
戦いに大切なのは奇策ではない。
勝てる戦さを、勝てるように運ぶ。
その手腕が重要だ。
「背後に回り込む隊の指揮は、小島どのに任せましょう」
実乃の言葉に、景虎も頷く。
攻撃の隊には、越後一の猛者である、小島貞興に任せるべきだろう。
問題は、兵をどのくらい任せるべきかだ。
「和泉守は死の物狂い、攻めかかってくるでしょう」
そうだな、と景虎も思う。
越後で生きて行くために、あるいはこの乱世で生き抜くためには、武名が重要である。
特にそれほどの出自ではなく、己の武勇での仕上がって来た秀忠には、武名が全てといって良い。
負けたままでは終われない。勝って領地を得て、兵たちを集めなければならない。
死ぬ気でかかってくるだろう。
「ですから本陣の守りを、固くすべきです」
此度は景虎も、それに同意である。
「それで・・・・・」
ジッと景虎を見つめると、実乃が告げる。
「小島殿には、二十人、連れていただきまましょう」
「に、二十人?」
景虎は戸惑う。
貞興の方に、はあまり兵は割けない。
しかしそれでも百人、無理でも八十人程度は回すつもりだった。
「たった二十人か?」
思わず景虎は、義旧の方を見る。
「弥太郎めならば、二十人もいらぬ、十人で良いですと言うでしょう」
義旧が力強く頷く。
「・・・・・分かった」
二人が言うのだ。
「そうしよう」
景虎は同意する。
「あれが、黒田和泉守です」
集まった敵兵の中心にる武者を、義旧が指差す。
景虎は黙って頷く。
そうだろうと、景虎も思っていた。
遠目から見ても、大柄で立派な武者だ。
父為景の、可愛がっていた勇士だ。
ふと、そう景虎は思った。
父の唯一の記憶である大きな手が、景虎の頭を過ぎる。
秀忠がゆっくり前に出る。
「黒田和泉守秀忠にござる」
大きな声で、秀忠が名乗る。
「平三どの、お相手いたす」
そう言って秀忠が手を上げると、弓兵が前に出る。
サッと実乃も前に出てる。
こちらの兵は、板の盾を構える。
「放て」
「防げ」
両者の声が、戦場に響く。
黒田勢の矢が、数百本、栃尾衆に放たれる。
栃尾衆は、それを盾で防ぐ。
「槍構え」
実乃が命じる。直ぐに槍兵の戦いに移る。
戦さの作法だ。
初めは弓を撃ち合い、次に槍で突き合う。
「突っ込め」
秀忠が叫ぶ。
「防げ」
実乃が応じる。
予想通り黒田勢が苛烈に攻めてくる。それを栃尾衆が防ぎながら、ゆっくり小島貞興が率いる別働隊が伏せている、丘の方に移動する。
戦さの前、実乃が、
「和泉守は兵が千人集まれば、鶴翼に陣を敷き、包囲しようとしたでしょう」
と言った。
その通りだと景虎も思った。
栃尾衆は三百、三倍いればそれが定石だ。
「しかしあまり集まらぬ筈。それならおそらく、得意の横突きをするでしょう」
「横突き?」
景虎が問うと、はい、と言って、実乃が答える。
「ここという機で、兵の一部を割き、こちらの横を突くのです」
なるほど、と景虎は頷く。
実乃の背後から突く攻めと同じ、単純な策だ。
だがそれだけに、上手く使えば確実に、敵を倒せる。
そして実乃は、得意のと言った。秀忠はそれが上手いのだろう。
「和泉守の横突きは、恐ろしい攻めです」
実乃は強い口調で告げる。
「ただ同時に、そこに勝機がございます」
「攻め立てろ」
秀忠の号令が響く。黒田勢が勇猛果敢に突き進んでくる。
「防げ、防げ」
声を枯らして、実乃が応じる。
丘に近づく。
栃尾衆が大きく動いた。大きく動けば、綻びが生まれる。
今だ、と景虎は思う。
「行け」
秀忠が軍勢を割き、百人ほどが横に回り込もうとする。
ここが潮目だ、そう景虎は確信する。
戦さの前に、実乃が言った。
「横突きを仕掛けようとする時、陣が乱れます」
そこを突く。
丘の上から、貞興の隊が見えた。
貞興が丘から黒田陣に、襲いかかる。
逆落としだ。
これは・・・・・と景虎は思わず唸る。
二十人与えると言うと、貞興は、
「十人でよいです」
と応えた。
しかしその十人も要らないらしい。
一騎で貞興は、黒田勢に突っ込む。
槍を、いや、剛槍を振るい、敵を次から次えと薙ぎ倒していく。
一騎当千という言葉がある。
一騎で千人に値する武人という事だ。
そんなものは言葉だと、景虎は思っていた。
十人程度なら、一度に相手にする事はできるだろう。
しかし本当に、千人相手に出来る者などいない。
そう思っていた。
だが小島弥太郎貞興とい男は、正真正銘の一騎当千である。
たった一騎で次々と敵を、薙ぎ倒していく。
「平三さま」
金津義旧が声をあげる。
景虎は貞興の活躍に、目を取られていた。
しかし黒田勢も必死だ。
遂に景虎の眼前にも、敵がやって来た。
景虎の馬の轡を取っていた義旧が、その手を離し槍を構える。
「控えろ下郎ども」
義旧が大音声を響かせる。
「この金津新兵衛義旧」
名乗って義旧は、槍を大きく振り回す。
「平三さまには、指一本触れさせぬ」
義旧の気迫に、うっっと敵がたじろぐ。
「平三さま、お退がりを」
実乃が近寄り、景虎に言う。
いや、良い、と景虎は首を振る。
「もう終わる」
そう言って、貞興の方を見る。
「和泉守どの」
黒田勢を追い散らし、貞興が秀忠の前に進む。
「弥太郎、かかって来い」
秀忠は槍を構える。
いざ、と吠え、貞興が槍を振るう。
貞興も秀忠も、景虎の父、為景が認めた、可愛がった武者だ。
為景が死に、二人はどんな気持ちで相対しているのだろう。
そして・・・・・。
三度、その槍を秀忠は受け止める。
あの剛槍を、三度受けただけでも、大した者だと景虎は思う。
四度目、貞興が槍を構える。
もう受ける力は無いのだろう、秀忠の肩が上がらない。
「・・・・・・・・」
一瞬、秀忠が景虎の方を見た。
どんな表情をしているのか、景虎には分からない。
あぁああああっ、と言う雄叫びと共に、貞興の剛槍が秀忠を貫く。
ゆっくりと、馬上から秀忠が崩れ落ちる。
バッと貞興は拳を上げる。
「黒田和泉守、討ち取ったり」
「退け、退け」
黒田勢が、そう叫びながら引いていく。
追い討ちは掛けない、必要ないからだ。
黒田勢が引き、実乃が兵を纏めていく。
「平三さま」
貞興が近づき、馬から降りる。
「和泉守にございます」
布に包まれた秀忠の首を、地面に置く。
うむ、と言って、景虎は馬を降り、包みを解く。
そこに黒田秀忠の首がある。
穏やかな顔のように、景虎には見えた。
「弥太郎」
景虎が呼ぶと、はっ、と貞興が応えた。
二人が相対した時、景虎は貞興がどんな気持ちであったか、それを思った。
そして秀忠を討ち取り、どんな気持ちであるのか、それも思った。
しかしそれを尋ねはしない。
「見事であった、褒めてつかわる」
尋ねても意味のない事だ。
ハハッ、と貞興が頭を下げる。
平三さま、と義旧が呼びかける。実乃が兵を纏め上げるのが終わったのだ。
うむ、と頷き、兵たちを見回す。
「みな、大儀であった」
黒田勢は死に物狂いで攻めて来ただの、兵たちは皆、ボロボロである。
「我らの大勝利じゃ」
実乃、そして義旧に目をやり、景虎は告げる。
「勝鬨を上げい」
ハハッ、と応えて、義旧が前に出る。
栃尾衆が戦ったのだ。本来は実乃の仕事だろうが、実乃が譲ったのだろう。
えいえいおぉおおっ、と大声を上げ、義旧が拳を振り上げる。
えいえいおぉおおおっ、と皆がそれに続く。
えいえいおおおっ、と三度、義旧がそれを繰り返し、皆がそれに続く。
「・・・・・・・」
景虎はそれを、静かに見つめている。
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