6 / 167
仇討ち
しおりを挟む
初陣の後も、しばらくの間、景虎は栃尾城に留まった。
兄の晴景から何度か、春日山に戻ってこいと使者が来たが、なんのかんのと理由をつけて、景虎は戻らなかった。
毎日の様に、本庄実乃を呼び、色々と話をした。
越後の情勢や、城主とは日々どの様なことをするのかと言うことも話したが、一番多く話したのは、やはり戦さのことだ。
景虎は寺にいる時、色々と戦さのことを考えていた。
しかし実乃と話すうちに、考えを改めさせられた。
戦さに勝つには敵の裏を描く、奇策が重要だと思っていた。
しかし実乃が言うには、そうでないとのことだ。
手堅い策を考え、それを上手く運ぶ。
策よりも実際の兵の運用、それが重要だと、実乃は言うのである。
なるほど確かにと、景虎も納得する。
先の長尾俊景との戦さ。
兵を二つに分け、一手に背後から襲いかかると言う攻め。
別に大した策では無い。
あるいは俊景も、読んでいたかもしれない。
しかし絶妙な機に、実乃は背後から攻めた。
それにより勝てたのだ。
相手の裏を描く奇策よりも、確実に勝てる策で、巧みに兵を動かす。
「それが戦さの肝にございます」
うむ、そうだな、と景虎は頷く。
「そして大将は、兵を自ら動かすのではなく、将達の性根を見て陣立て行うのであります」
そう実乃は付け足した。
その言葉に、景虎はニヤリとする。
実乃は部隊は自分が動かすから、景虎は自分を信用して、部隊を任せてほしいと言っているのだ。
つまりこれは、実乃が景虎を、大将として認めたと言うことだ。
その事に景虎は、満足して笑ったのだ。
これなら大丈夫だ。
本庄実乃なら、信用し打ち明けられる。
「頼みがある」
ある日景虎は、実乃に告げる。
「力を貸して欲しい」
「どの様な事でしょうか?」
実乃は硬い表情で問う。
「仇を討ちたい」
「仇?」
うむ、と景虎は頷く。
「兄上たちの仇を討ちたい」
それは・・・・・と実乃は呟いた。
「黒田和泉守を討ちたい」
兄の晴景から何度か、春日山に戻ってこいと使者が来たが、なんのかんのと理由をつけて、景虎は戻らなかった。
毎日の様に、本庄実乃を呼び、色々と話をした。
越後の情勢や、城主とは日々どの様なことをするのかと言うことも話したが、一番多く話したのは、やはり戦さのことだ。
景虎は寺にいる時、色々と戦さのことを考えていた。
しかし実乃と話すうちに、考えを改めさせられた。
戦さに勝つには敵の裏を描く、奇策が重要だと思っていた。
しかし実乃が言うには、そうでないとのことだ。
手堅い策を考え、それを上手く運ぶ。
策よりも実際の兵の運用、それが重要だと、実乃は言うのである。
なるほど確かにと、景虎も納得する。
先の長尾俊景との戦さ。
兵を二つに分け、一手に背後から襲いかかると言う攻め。
別に大した策では無い。
あるいは俊景も、読んでいたかもしれない。
しかし絶妙な機に、実乃は背後から攻めた。
それにより勝てたのだ。
相手の裏を描く奇策よりも、確実に勝てる策で、巧みに兵を動かす。
「それが戦さの肝にございます」
うむ、そうだな、と景虎は頷く。
「そして大将は、兵を自ら動かすのではなく、将達の性根を見て陣立て行うのであります」
そう実乃は付け足した。
その言葉に、景虎はニヤリとする。
実乃は部隊は自分が動かすから、景虎は自分を信用して、部隊を任せてほしいと言っているのだ。
つまりこれは、実乃が景虎を、大将として認めたと言うことだ。
その事に景虎は、満足して笑ったのだ。
これなら大丈夫だ。
本庄実乃なら、信用し打ち明けられる。
「頼みがある」
ある日景虎は、実乃に告げる。
「力を貸して欲しい」
「どの様な事でしょうか?」
実乃は硬い表情で問う。
「仇を討ちたい」
「仇?」
うむ、と景虎は頷く。
「兄上たちの仇を討ちたい」
それは・・・・・と実乃は呟いた。
「黒田和泉守を討ちたい」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
信忠 ~“奇妙”と呼ばれた男~
佐倉伸哉
歴史・時代
その男は、幼名を“奇妙丸”という。人の名前につけるような単語ではないが、名付けた父親が父親だけに仕方がないと思われた。
父親の名前は、織田信長。その男の名は――織田信忠。
稀代の英邁を父に持ち、その父から『天下の儀も御与奪なさるべき旨』と認められた。しかし、彼は父と同じ日に命を落としてしまう。
明智勢が本能寺に殺到し、信忠は京から脱出する事も可能だった。それなのに、どうして彼はそれを選ばなかったのか? その決断の裏には、彼の辿って来た道が関係していた――。
◇この作品は『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n9394ie/)』『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093085367901420)』でも同時掲載しています◇
大和型戦艦4番艦 帝国から棄てられた船~古(いにしえ)の愛へ~
花田 一劫
歴史・時代
東北大地震が発生した1週間後、小笠原清秀と言う青年と長岡与一郎と言う老人が道路巡回車で仕事のために東北自動車道を走っていた。
この1週間、長岡は震災による津波で行方不明となっている妻(玉)のことを捜していた。この日も疲労困憊の中、老人の身体に異変が生じてきた。徐々に動かなくなる神経機能の中で、老人はあることを思い出していた。
長岡が青年だった頃に出会った九鬼大佐と大和型戦艦4番艦桔梗丸のことを。
~1941年~大和型戦艦4番艦111号(仮称:紀伊)は呉海軍工廠のドックで船を組み立てている作業の途中に、軍本部より工事中止及び船の廃棄の命令がなされたが、青木、長瀬と言う青年将校と岩瀬少佐の働きにより、大和型戦艦4番艦は廃棄を免れ、戦艦ではなく輸送船として生まれる(竣工する)ことになった。
船の名前は桔梗丸(船頭の名前は九鬼大佐)と決まった。
輸送船でありながらその当時最新鋭の武器を持ち、癖があるが最高の技量を持った船員達が集まり桔梗丸は戦地を切り抜け輸送業務をこなしてきた。
その桔梗丸が修理のため横須賀軍港に入港し、その時、長岡与一郎と言う新人が桔梗丸の船員に入ったが、九鬼船頭は遠い遥か遠い昔に長岡に会ったような気がしてならなかった。もしかして前世で会ったのか…。
それから桔梗丸は、兄弟艦の武蔵、信濃、大和の哀しくも壮絶な最後を看取るようになってしまった。
~1945年8月~日本国の降伏後にも関わらずソビエト連邦が非道極まりなく、満洲、朝鮮、北海道へ攻め込んできた。桔梗丸は北海道へ向かい疎開船に乗っている民間人達を助けに行ったが、小笠原丸及び第二号新興丸は既にソ連の潜水艦の攻撃の餌食になり撃沈され、泰東丸も沈没しつつあった。桔梗丸はソ連の潜水艦2隻に対し最新鋭の怒りの主砲を発砲し、見事に撃沈した。
この行為が米国及びソ連国から(ソ連国は日本の民間船3隻を沈没させ民間人1.708名を殺戮した行為は棚に上げて)日本国が非難され国際問題となろうとしていた。桔梗丸は日本国から投降するように強硬な厳命があったが拒否した。しかし、桔梗丸は日本国には弓を引けず無抵抗のまま(一部、ソ連機への反撃あり)、日本国の戦闘機の爆撃を受け、最後は無念の自爆を遂げることになった。
桔梗丸の船員のうち、意識のないまま小島(宮城県江島)に一人生き残された長岡は、「何故、私一人だけが。」と思い悩み、残された理由について、探しの旅に出る。その理由は何なのか…。前世で何があったのか。与一郎と玉の古の愛の行方は…。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる