佐々木と吉田 アニメ声優に必要なのは、お約束のギャグ編

一万人に一人が、買い支えている

　あの・・・・と吉田が呟き、瞼を押さえる。
「野球あるじゃないですか」
「ベーズボールの野球？」
「ベースボールの野球」
　苦笑しながら、吉田は頷く。

「先輩の親父さん、まぁ俺の親父もそうですけど、野球好きでしょう？」
「そうやね、団塊の世代だからね」
「毎日野球、テレビで観てましたよね？」
　ああっ、と佐々木が頷く。
「じゃぁ球場に、どのくらい行ってました？」
　ああああああっと佐々木は呟く。

「どうだろう・・・・・どうだろうなぁ」
　佐々木が首を傾ける。
「俺が知る限り三回行ってる、一回一緒に行って、二回知り合いの人と行ったって言ってた」
「俺の親父は、俺の知る限り一回しか行ってないですよ」
　ふんふんふん、と佐々木が行ってる。
「多分それって、そんなに珍しい事じゃないんですよね」
　そやね、と佐々木が頷く。

「この国に、まぁ団塊の世代が何千万人もいて、その殆どが、男がですけど野球が好きで野球中継を観てる」
「ああっ」
「でも毎日、毎試合球場に行くなんて人は数千人で、それでその人たちで野球って言うカルチャーを支えてるわけですよ」
「うううううんんん、数千人もいるかな？」
「どうですかね、数百人ですかね」
「毎日行くとなるとな」
「まぁそうですね」

「とにかく」
「ああっ、とにかく」
「球場行くだとか、グッツを買うだとか、新聞を買うだとかして一部の人が、金を払って野球ってカルチャーを支えてたわけですよ」
　うんうん、と佐々木が頷く。
「大半の人は、ただテレビで観てただけなんですよ」
「そうやね」
「でも多くの人がテレビで観てて、その何人かを沼に沈めて、その人たちに買い支えさせる」
「あああっ、うんうんうん」
「入口は広く、沼は深く」
　吉田は両手を広げ、それを閉じながら下ろしていく。
「それがカルチャーのビジネスモデルってもんですよ」