冬の窓辺に鳥は囀り

ぱんちゃん

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解釈 貴族の会話

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ルスキニアは小夜鳴き鳥のことで、日暮れや夜明けに美しい声で鳴きます。そのことから愛妻の夜の声に例えられたり、下卑た物言いをすれば娼館で働く人達を表す隠語として使われます。

貴族の男性陣はもちろん知っていますが女性陣は精々『閨事にまつわる人前では決して言わない言葉』という認識しかありません。エレノアさんは伯爵令嬢ですが騎士団に居たのでそういう下世話な話も知っているのです。

セレスは美しい声の鳥という認識しかありませんでしたが、意味は知らなくとも相手の明らかな嘲笑に自分が馬鹿にされたという事はちゃんと理解していました。
そして馬鹿にされてもしょうがないとは思いつつ、けれどフォルティスから毎日のように溢れんばかりに愛情を刷り込まれているので、なんにも特徴のないスズメだけど、と言ったのです。

麦の生産量の高いアヴィニス王国ですが、不作の年もあるのでスズメは麦を食べる害鳥という見方もあります。麦は国民の主食です。厳重に管理されていますし農民の地位も低くはありません。

『(麦穂に)群がる』は乞食や物乞いを指していて、粉に挽く前の麦を乞うほどの地位を表しています。

トゥルドゥスはツグミのことです。人懐こい鳥で果物を好んで食べます。ぴょんぴょん歩いては立ち止まるその様子が可愛らしく人々から愛されています。

さぁ、それを念頭に置いて三人の会話を見てみましょう。




「ははっ!声変わりか! これでは何のために結婚したのか。歌う事しか出来ぬ鳥が、歌えぬならばルスキニアとなって鳴くしか能がない。」
(歌う事しか知らない無能な伴侶。唯一の特技を無くしたのなら閨の中で精々上手に甘えることだな。捨てられないようにね。)

「私の声はかの鳥ほど美しくもないのです。ですが私の伴侶は、私がただのパッセルと知っていても愛を誓ってくれたので。」
(セレスはこの時言葉通りの意味合いで話していますが、大人みたいに自分を何かに例えて話してみたことが照れくさかったのと、フォルティスから疑いようもない程いっぱい愛されてるんですって皆の前で言っちゃったのが恥ずかしくなって「えへっ」と笑っちゃってます。)

そして周りの人達はセレスの思いを正確に受け取っていて、胸がきゅーーんっとなりました。

「はははははっ!!」
「パッセルとは!麦穂に群がる鳥に自分を例えるとは恐れ入る!」
(ルーメン家にとっての害鳥か!伴侶である自分を物乞いと例えるなんて私ですら驚くよ!)

「パッセルではなく、トゥルドゥスなのですよ。」
(スズメではなくツグミです。一見すると見分けがつかないと思われるでしょうが。)

「賢い鳥が口を噤んでいるのは、それが鳴く時ではないと分かっているからです。けれど鳴かなくとも、ぴょんぴょんと跳ねるように歩くだけでも愛らしく、いくらでも苺をあげたくなってしまうのですが。」
(セレスに向けて:賢い君よ。少しの間黙っていてね。)(アルノーに向けて:私の伴侶は賢いので話すべきでないことが何かを、ちゃんと知っているのです。彼の能力は歌う事だけにとどまりません。彼が与えてくれる恩恵に私は私の愛情をいくら注いでも足りないと思う程です。)

「野にあっては同じように見えても、私にとっては間違えようもない程愛しいトゥルドゥスです。」
(その辺の有象無象と一緒にしてくれるなよ)

「お忘れなきよう。」
(覚悟しておけ)


と、このような意味合いの舌戦が、それなりに身分の高い貴族の人々に囲まれた中で繰り広げられていたのです。
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