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tapestries. 愛しい雛の育て方①
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街道沿いは一面の緑で埋め尽くされていた。
柔らかな麦穂は風に揺れ、時に銀のさざ波のように風の道を作ってゆく。
森のない広大な平原は麦畑と牧草地が交互に連なり、春の風物詩とも呼べるその景色はずっと見ていても飽きることが無い。
牧草地には麦の収穫量を上げるためにトリフォリウムの種が蒔かれている。地を這う草は白く小さな花を付け、まるで大地を覆う白と緑の絨毯のようだ。そこには何頭もの家畜たちが放たれており、通り過ぎる馬車になど目もくれず、のんびりと草を食んでいる。
濃い茶の体毛のオーロックス(牛のような動物)。その頭部は平らで、本来の長く鋭い角は切り落とされていると分かる。太く湾曲した二本の角を持つムフロン(羊とヤギの中間のような動物)は何頭もの群れを成し、まるで大地に雲があるようだ。
獣たちの糞やトリフォリウムの根や草葉が来年の麦の為になるとはいえ、なんとも牧歌的な風景と言わざるを得ない。
王都へと続くこの交通路。
毎年のこととはいえ神経を擦り減らす社交シーズンの序章としては、あまりにものんびりとし過ぎている気がする。
「わぁ…!」
隣に座るカトリナが、微かな声をあげて身を乗り出した。
馬車は王都の正門を抜け、窓の外には背の高い壁のような建物が道の先まで続いている。
領地の都でも建物にここまでの高さや装飾の華やかさはない。
街の中心を貫く大通りの両脇は正面が連続してる商区で、中央の刻時塔のある広場まで沢山の人が通りを行き交っていた。
初めて見る王都の街並みに目をきらきらさせているカトリナを、私の向かいに座る美しい貴婦人が艶やかな唇を上品に笑ませて眺めている。たしなめようとする私を目で諫め、にやりと笑うその顔が「好きにさせておけ。」とおっしゃっている。
お優しいけれど、少し甘すぎる。
私は内心溜息を付く。
生誕祭直前の火の日は、我がルーメン伯爵家の王都入りの日。
馬車の家紋に目を留めた路面商達が次々と頭を下げ、通り過ぎた後もにこやかに見送っている。沿道の子供が手を振り、王都民たちの顔からはルーメン家への親しみが見え、私も誇らしい気持ちになる。
私を育てた彼女に言わせれば、『商人の笑顔を真に受けてはならない』と叱責が飛んできそうだ。
一年ぶりに会えるその顔を思い浮かべ、思わず口元が綻んでしまいそうになる。
私もカトリナのことを強く言えない。
社交シーズンをむかえる王都にあって、この明るく賑わう雰囲気に心が浮き立たないわけがないのだ。
「ああ。帰ってきたという気になるな。」
目を細めて刻時塔を見上げたまま、楽し気にほほ笑まれる顔を伺い見る。
黒曜石のような瞳と形の良い赤い唇。鼻筋は通り意志の強いお顔立ち。少しうねる黒く艶やかな髪は毛先に行くほどグレーになり、美しいかんばせをより一層きりりとさせる。
ルーメン家の血筋を色濃く受け継ぐ華やかな容貌を持ち、中年を半ばまで超えてなお体の線はどこも緩まず、明るめのプルシャンブル―のシックなドレスを美しく着こなしている。
エレノア・ルーメン伯爵夫人。
ルーメン家の正当な後継でありながら、家督を夫であるランドルフ様に委譲し、自ら後ろに下がることを良しとした稀有な方だ。この国での貴族制度上、本来ならばエレノア様が領主として名を立てるのが一般的だった当時、その決断は領地のみならず他領をも揺るがす大事件だった。
私がまだお屋敷に入る遥か前のその騒動は、使用人達の誇らしげな顔と共に今も語り継がれている。
お二人の婚姻時『伴侶の誓い』の場で、エレノア様は堂々と宣言なさった。
『得手不得手は人それぞれ。権謀術数渦巻く貴族院はランドルフ・ベルクヴァインに。私はあなたを守る剣となり、あなたは私を守る盾として、共に生涯ルーメンに尽くしてほしい。』
そう言って、かつて玲瓏の騎士と呼ばれた美しい花嫁は、凛々しく笑って大衆を大いにどよめかせたのだった。
思いもよらぬ事態に浮足立つ周りをものともせず、熱烈な愛を誓ったランドルフ様。今も久しぶりの王都に心を弾ませているエレノア様を眺め、にこにこと片頬を上げていらっしゃる。
その瞳からは愛が溶けだしているのではと思うほどに甘やかだ。
私はメイドの心得として、目に入っても見えないものとした。
お二人が仲睦ましいのは、仕える身として幸福以上の何ものでもない。
刻時塔を越え、真っすぐに進む先には貴族街の門がある。
市民街の商区より手の込んだ装飾に代わっても、建築方法は変わらず壁のような建物が連綿と続いてゆく。
これはかつて魔物の襲撃があった頃の名残で、大通りに誘い込んだ魔物から他の住宅地を守る造りになっている。森を拓いてしまった今では防火の役割を担い、王城や高位貴族の屋敷だけでなく市民街をも守っているのだ。
ルーメン家は伯爵位ではあるが、その歴史の古さから高位貴族として並び立つ。その為貴族街にあっても所有する土地は大きく、中心地に近い。
すでに到着の知らせが門兵から伝わっているらしく、屋敷の門は開け放たれ、私達を乗せた馬車はスムーズに庭へと入ってゆく。屋敷の前にはタウンハウスの使用人全員が並び、主を出迎えるその顔ぶれに私も嬉しさが込み上げてきた。
「長旅お疲れ様でございます。」
「デリオット。ヘザー。元気そうで何より。皆も息災で嬉しいよ。」
「王都は変わりないかい?」
エレノア様に次いでランドルフ様がデリオットさんと話すのを尻目に、私はそっと濃茶の瞳と視線を交わす。サンドベージュの髪をきっちりと纏め、かつてと同じようにしゃっきりと背筋を伸ばしたその人は、私にしか分からないような微かな頷きを返す。
それだけで、私達にとっては言葉よりも雄弁な挨拶になるのだ。
デリオットさんを先頭に屋敷へ入ってゆく際、かつて私を厳しく育て上げてくれた先輩は、私よりも一歩後ろを歩いて付いてくる。本家の筆頭レディース・メイドである私は、タウンハウスのハウスキーパーであるミセス・ヘザーよりもその地位が少し上だ。
こういう時、私はとても居た堪れない。
今の私の立場は、かつてミセス・ヘザーのものだったのだから。
「ヘザー様。お久しぶりです。」
歩調を緩めこそりと囁く私の言葉に、普段表情を隠している顔が僅かに歪む。
その懐かしい眉間の皺。
私はついつい口元がにやけてしまう。
「冗談はおよしなさい。部下がいる身になって何年も経つというのに。」
しようのないとでも言うように、ふぅと溜息を付かれる。
けれどその瞳は柔らかく、久々の再会を喜んでくれているのが分かるだけに、私は綻ぶ口元を諫めきれない。
「すみません、ミセス・ヘザー。会えて嬉しくて。」
「話は後よ。あなたはあなたの仕事をなさい。」
その厳しい視線が懐かしく、心がピリリと引き締まる。
目線で促され、私は頭を下げてエレノア様のチェンバールームへと足を速めた。
ヘザー様がカントリーハウスでエレノア様の筆頭レディース・メイドとして仕えていた頃。私はレディース・メイドの下っ端として悪戦苦闘の毎日を送っていた。
男爵家の次女として生まれた私には家督を継げるべくもなく、かといって両親の勧めに従って嫁いでしまうには野心があった。先がなかった私がルーメン伯爵家の行儀見習いとしての面接が通った時、光明が見えたと飛び上がって喜んだものだ。そんな私を見て父と母は額を押さえ、行けるうちに嫁に行けばいいものをと悲壮感を滲ませて溜息をついた。
ルーメン家での躾は出自の地位に関係なく、皆スカラリー・メイドから始まる。その後2年間キッチン・メイドとハウスメイドを行き来して、屋敷の根幹ともいえる内情を知ることになったのだった。それはこれまでに自分が受けてきた恩恵で、私はそれを当たり前のように甘受してきた。受ける側と供する側。双方を理解できることは私の強みになった。
その間の働きを認められ正式にお屋敷で雇われて数年。私はいきなりレディース・メイドへと昇格した。
たまたま枠が空いたところにたまたま目に留まった貴族家の私に声がかかったのかと、私は毎夜その幸運を女神に祈ったほどだった。
けれどその異例の昇格は当時筆頭であったヘザー様からの推薦であったと後に知り、その期待に応えたい思いだけを胸に、日々を過ごしていたのだった。
そんなある日、王家の馬車が屋敷にやって来て、一通の書状をエレノア様にお渡しになった。
当時各国との外交に腐心していた国王は、王妃を連れて隣国へ訪問しなければならなかった。
エレノア様に手渡されたのは、詫び状と追従の勅令だったのだ。
書状を読んだエレノア様は、腕に抱えていた生後5ヶ月のフォルティス様をヘザー様に押し付け(文字通り押し付け!)、勅令としてその場でヘザー様をフォルティス様のナニーメイドになさった。
そして「後は宜しく頼む。」と言い置いて、さっそうと旅立って行かれた。
本来ならば返事の書簡を持って帰るはずの王国の使者様は、急遽エレノア様を連れて帰還する羽目になり、私達同様心底困惑していらっしゃった。
そんな私達の中で、唯一ヘザー様だけが一切の動揺を見せず、王家の馬車を見送ったのだ。
ヘザー様はフォルティス様が王都の学園に移るまでの10年の間に現レディース・メイド達を育て上げ、淡々と、粛々と、さも当然のように王都へ付いて行ってしまった。
私は泣いて恨み節を口にし、叱責され、抱きしめられ、翌日キリリと皆さまを見送った。
尊敬の念は今も色あせないまま。
あの時から14年の時が過ぎた。
柔らかな麦穂は風に揺れ、時に銀のさざ波のように風の道を作ってゆく。
森のない広大な平原は麦畑と牧草地が交互に連なり、春の風物詩とも呼べるその景色はずっと見ていても飽きることが無い。
牧草地には麦の収穫量を上げるためにトリフォリウムの種が蒔かれている。地を這う草は白く小さな花を付け、まるで大地を覆う白と緑の絨毯のようだ。そこには何頭もの家畜たちが放たれており、通り過ぎる馬車になど目もくれず、のんびりと草を食んでいる。
濃い茶の体毛のオーロックス(牛のような動物)。その頭部は平らで、本来の長く鋭い角は切り落とされていると分かる。太く湾曲した二本の角を持つムフロン(羊とヤギの中間のような動物)は何頭もの群れを成し、まるで大地に雲があるようだ。
獣たちの糞やトリフォリウムの根や草葉が来年の麦の為になるとはいえ、なんとも牧歌的な風景と言わざるを得ない。
王都へと続くこの交通路。
毎年のこととはいえ神経を擦り減らす社交シーズンの序章としては、あまりにものんびりとし過ぎている気がする。
「わぁ…!」
隣に座るカトリナが、微かな声をあげて身を乗り出した。
馬車は王都の正門を抜け、窓の外には背の高い壁のような建物が道の先まで続いている。
領地の都でも建物にここまでの高さや装飾の華やかさはない。
街の中心を貫く大通りの両脇は正面が連続してる商区で、中央の刻時塔のある広場まで沢山の人が通りを行き交っていた。
初めて見る王都の街並みに目をきらきらさせているカトリナを、私の向かいに座る美しい貴婦人が艶やかな唇を上品に笑ませて眺めている。たしなめようとする私を目で諫め、にやりと笑うその顔が「好きにさせておけ。」とおっしゃっている。
お優しいけれど、少し甘すぎる。
私は内心溜息を付く。
生誕祭直前の火の日は、我がルーメン伯爵家の王都入りの日。
馬車の家紋に目を留めた路面商達が次々と頭を下げ、通り過ぎた後もにこやかに見送っている。沿道の子供が手を振り、王都民たちの顔からはルーメン家への親しみが見え、私も誇らしい気持ちになる。
私を育てた彼女に言わせれば、『商人の笑顔を真に受けてはならない』と叱責が飛んできそうだ。
一年ぶりに会えるその顔を思い浮かべ、思わず口元が綻んでしまいそうになる。
私もカトリナのことを強く言えない。
社交シーズンをむかえる王都にあって、この明るく賑わう雰囲気に心が浮き立たないわけがないのだ。
「ああ。帰ってきたという気になるな。」
目を細めて刻時塔を見上げたまま、楽し気にほほ笑まれる顔を伺い見る。
黒曜石のような瞳と形の良い赤い唇。鼻筋は通り意志の強いお顔立ち。少しうねる黒く艶やかな髪は毛先に行くほどグレーになり、美しいかんばせをより一層きりりとさせる。
ルーメン家の血筋を色濃く受け継ぐ華やかな容貌を持ち、中年を半ばまで超えてなお体の線はどこも緩まず、明るめのプルシャンブル―のシックなドレスを美しく着こなしている。
エレノア・ルーメン伯爵夫人。
ルーメン家の正当な後継でありながら、家督を夫であるランドルフ様に委譲し、自ら後ろに下がることを良しとした稀有な方だ。この国での貴族制度上、本来ならばエレノア様が領主として名を立てるのが一般的だった当時、その決断は領地のみならず他領をも揺るがす大事件だった。
私がまだお屋敷に入る遥か前のその騒動は、使用人達の誇らしげな顔と共に今も語り継がれている。
お二人の婚姻時『伴侶の誓い』の場で、エレノア様は堂々と宣言なさった。
『得手不得手は人それぞれ。権謀術数渦巻く貴族院はランドルフ・ベルクヴァインに。私はあなたを守る剣となり、あなたは私を守る盾として、共に生涯ルーメンに尽くしてほしい。』
そう言って、かつて玲瓏の騎士と呼ばれた美しい花嫁は、凛々しく笑って大衆を大いにどよめかせたのだった。
思いもよらぬ事態に浮足立つ周りをものともせず、熱烈な愛を誓ったランドルフ様。今も久しぶりの王都に心を弾ませているエレノア様を眺め、にこにこと片頬を上げていらっしゃる。
その瞳からは愛が溶けだしているのではと思うほどに甘やかだ。
私はメイドの心得として、目に入っても見えないものとした。
お二人が仲睦ましいのは、仕える身として幸福以上の何ものでもない。
刻時塔を越え、真っすぐに進む先には貴族街の門がある。
市民街の商区より手の込んだ装飾に代わっても、建築方法は変わらず壁のような建物が連綿と続いてゆく。
これはかつて魔物の襲撃があった頃の名残で、大通りに誘い込んだ魔物から他の住宅地を守る造りになっている。森を拓いてしまった今では防火の役割を担い、王城や高位貴族の屋敷だけでなく市民街をも守っているのだ。
ルーメン家は伯爵位ではあるが、その歴史の古さから高位貴族として並び立つ。その為貴族街にあっても所有する土地は大きく、中心地に近い。
すでに到着の知らせが門兵から伝わっているらしく、屋敷の門は開け放たれ、私達を乗せた馬車はスムーズに庭へと入ってゆく。屋敷の前にはタウンハウスの使用人全員が並び、主を出迎えるその顔ぶれに私も嬉しさが込み上げてきた。
「長旅お疲れ様でございます。」
「デリオット。ヘザー。元気そうで何より。皆も息災で嬉しいよ。」
「王都は変わりないかい?」
エレノア様に次いでランドルフ様がデリオットさんと話すのを尻目に、私はそっと濃茶の瞳と視線を交わす。サンドベージュの髪をきっちりと纏め、かつてと同じようにしゃっきりと背筋を伸ばしたその人は、私にしか分からないような微かな頷きを返す。
それだけで、私達にとっては言葉よりも雄弁な挨拶になるのだ。
デリオットさんを先頭に屋敷へ入ってゆく際、かつて私を厳しく育て上げてくれた先輩は、私よりも一歩後ろを歩いて付いてくる。本家の筆頭レディース・メイドである私は、タウンハウスのハウスキーパーであるミセス・ヘザーよりもその地位が少し上だ。
こういう時、私はとても居た堪れない。
今の私の立場は、かつてミセス・ヘザーのものだったのだから。
「ヘザー様。お久しぶりです。」
歩調を緩めこそりと囁く私の言葉に、普段表情を隠している顔が僅かに歪む。
その懐かしい眉間の皺。
私はついつい口元がにやけてしまう。
「冗談はおよしなさい。部下がいる身になって何年も経つというのに。」
しようのないとでも言うように、ふぅと溜息を付かれる。
けれどその瞳は柔らかく、久々の再会を喜んでくれているのが分かるだけに、私は綻ぶ口元を諫めきれない。
「すみません、ミセス・ヘザー。会えて嬉しくて。」
「話は後よ。あなたはあなたの仕事をなさい。」
その厳しい視線が懐かしく、心がピリリと引き締まる。
目線で促され、私は頭を下げてエレノア様のチェンバールームへと足を速めた。
ヘザー様がカントリーハウスでエレノア様の筆頭レディース・メイドとして仕えていた頃。私はレディース・メイドの下っ端として悪戦苦闘の毎日を送っていた。
男爵家の次女として生まれた私には家督を継げるべくもなく、かといって両親の勧めに従って嫁いでしまうには野心があった。先がなかった私がルーメン伯爵家の行儀見習いとしての面接が通った時、光明が見えたと飛び上がって喜んだものだ。そんな私を見て父と母は額を押さえ、行けるうちに嫁に行けばいいものをと悲壮感を滲ませて溜息をついた。
ルーメン家での躾は出自の地位に関係なく、皆スカラリー・メイドから始まる。その後2年間キッチン・メイドとハウスメイドを行き来して、屋敷の根幹ともいえる内情を知ることになったのだった。それはこれまでに自分が受けてきた恩恵で、私はそれを当たり前のように甘受してきた。受ける側と供する側。双方を理解できることは私の強みになった。
その間の働きを認められ正式にお屋敷で雇われて数年。私はいきなりレディース・メイドへと昇格した。
たまたま枠が空いたところにたまたま目に留まった貴族家の私に声がかかったのかと、私は毎夜その幸運を女神に祈ったほどだった。
けれどその異例の昇格は当時筆頭であったヘザー様からの推薦であったと後に知り、その期待に応えたい思いだけを胸に、日々を過ごしていたのだった。
そんなある日、王家の馬車が屋敷にやって来て、一通の書状をエレノア様にお渡しになった。
当時各国との外交に腐心していた国王は、王妃を連れて隣国へ訪問しなければならなかった。
エレノア様に手渡されたのは、詫び状と追従の勅令だったのだ。
書状を読んだエレノア様は、腕に抱えていた生後5ヶ月のフォルティス様をヘザー様に押し付け(文字通り押し付け!)、勅令としてその場でヘザー様をフォルティス様のナニーメイドになさった。
そして「後は宜しく頼む。」と言い置いて、さっそうと旅立って行かれた。
本来ならば返事の書簡を持って帰るはずの王国の使者様は、急遽エレノア様を連れて帰還する羽目になり、私達同様心底困惑していらっしゃった。
そんな私達の中で、唯一ヘザー様だけが一切の動揺を見せず、王家の馬車を見送ったのだ。
ヘザー様はフォルティス様が王都の学園に移るまでの10年の間に現レディース・メイド達を育て上げ、淡々と、粛々と、さも当然のように王都へ付いて行ってしまった。
私は泣いて恨み節を口にし、叱責され、抱きしめられ、翌日キリリと皆さまを見送った。
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