冬の窓辺に鳥は囀り

ぱんちゃん

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62.冬の窓辺に鳥は囀り

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柔らかな歌声が、まどろみの中に滑り込んでくる。

高くもなく、低すぎもしない。
豊かな響きは、俺の意識を柔らかく包んで、朝の気配の中に呼び起こしてくれる。

手を滑らせて、隣にあったぬくもりを探す。
手のひらはシーツを滑るだけで、ベッドの中にその熱を残したまま持ち主の姿がない。


薄く目を開けると、カーテンを開け放しているその窓辺に、白い夜着を纏ったままの後姿が目に映る。

自分の屋敷の、自分のベッド。
その傍らに、夜着を纏った、愛を誓った人。

広く静かな早朝の部屋に、美しい歌声が響く。
光が差し込んでくる窓辺が、そのシルエットを黒く浮き立たせ、俺は思わず目を瞬く。

音の階段をのぼる中、その声が突然に裏返る。

途切れた歌。
僅かな沈黙の後、堪らずといったように漏れ聞こえてくる、くすくすという笑い声。
そして、先ほどよりも低い音程で、同じフレーズをなぞっていく。

かつての声を失っても、この美しさが消えるわけではないのだと、ぐっと、胸が詰まる。

楽し気に歌いながら、明けゆく庭を見つめるその姿に、不思議と涙がせりあがってくる。


囲う籠はすでに無く。
その翼を惜しみなく広げても、遮るものは何もない。
広い空に焦がれるだけでいた頃とは、もう違うのだ。
自分の力で、どこまでも羽ばたくことが出来る。


俺は、自由な君の寄る辺であろう。
羽を休める、止まり木であろう。
喉を潤す、泉であろう。

君が安心して休めるように。
暗い夢の気配など、僅かも朝に残さぬように。


ふいに、振り返ったひょうしに歌がやんでしまう。
横たわる俺と目が合うと、その青灰の瞳はみるみると溶けてゆく。

嬉しそうに、幸せそうに。
笑って、広げた腕の中に飛び込んでくる華奢な体。

歌が途中で終わってしまったことを残念に思いながら、その身体を優しく包み込む。

胸元でふふと笑う、その吐息。
柔らかな寝ぐせのグレーブロンド。

愛しい君が、いつまでもここで笑っていてくれるように。

誓いと願いのキスを、やわい唇に、そっと落として。













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