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異世界勇者、世界に立つ

閑話 特別超害獣対策本部捜査二課四班設立。

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「と、遠山です!入ります!」

 私、遠山真琴25歳!ただいま何故か署長室に呼ばれたところ!この前遭遇した黒いフードの人のことについて聞きたいのかもしれないけど、その時に書いた報告書以外に報告できることなんて何もないよぉ!

「ああ、まずは掛けたまえ」

 署長と一対一で話すことなんてまずないから緊張しっぱなし。口から胃が出そう。

「単刀直入に言おう、君に辞令が下りた。遠山真琴巡査。今日より特別害獣対策本部捜査二課四班に所属してもらう。これが辞令書だ。謹んで背任したまえ」

 ……んんんんんんんーーーーーーー????????

「そ、それは」

 あまりにも展開が早いというか無理があるというか、無謀が過ぎるというか!特別超害獣対策本部ってあれでしょ!?とんでもないエリートとか、四日間歩き通しでも問題ない体力お化けとか、そういった人たちがわんさといるヤバヤバなとこでしょ!?無理だと思うんだけどなぁ。申し訳ないけど辞退させてもらえないかなぁ。

「申し訳ないが決定事項だ。なお、現時点をもって巡査から警部補に昇進だ。異例のスピード出世だな。おめでとう」

 うおおおお逃げ道が綺麗に塗りつぶされていく!

「つ、謹んで背任いたします」

 無理、私このお偉いさんの持つ独特な重圧に耐えられない。逆らえる気がしない。結局辞令書を受け取って、配属先を確認して、場所を教えてもらって

 ってわー、所属がこの建物けいさつしょから出るんだー。防衛省に出向扱いってどんな待遇?新しい部署ができるってだけだと思った上に関係ない話と思ってしっかり聞かなかったのが悪かったなぁ。しかも今日付で転任。権力ってすごいなぁ、でも逆らえないの、公務員だし。

 交番に戻って、先輩に事情を話し、特にない引継ぎをして、荷物持って転属。恐ろしいまでの速度に誰もかれもが置いてかれる気持ちになってると思う。私もそうだし先輩も凄くびっくりしてた。「送別会もやる暇ないなんて」って。

 そりゃそうだよね、せめて一か月前に出すものだよね辞令って。でも今はスピード命ってのも重々理解できちゃうから、文句は言わない。やっぱり半年前からおかしくなったわ世界。

 世間一般には3ヶ月前のでっかいカマキリが初めての化け物みたいな扱いしてたけど、警察はその2ヶ月前から変な化け物について情報が寄せられてて、世間の混乱を避ける為に水面下で話を進めてたんだよね。

 で、1日に寄せられる化け物の目撃談の頻度が日増しに増えてって、犠牲者まで手始めたからもう黙ってられないぞってなって、で、こうなったと。

 勿論2ヶ月間何もしなかったのかって言われたらそんな事はなくて、防衛省が主体となって警察庁と手を組み、特定超害獣駆除を目的とした特別害獣対策本部を設立。そこにくみする人間は超法規的措置の元、街中での発砲と、ある程度の武器の携行が許可されているんだよね。て事は私も持たなきゃなのか。怖いなぁ。

 と言うか特別害獣対策本部捜査ニ課4班って何する班なんだろ。細かくかっこ書きしてくれないと心構えが出来ないから書いて欲しい。

 なーんて考え事をしている間に、所属場所まで来た。仙台駅東口目の前。立地は良いんだけど車を止めるところがないって事は、有事の際に動く班じゃなさそう。よかったー!

 エレベーターを使って地下に下がる。チーンとなったエレベーターから降りると、筋肉のイケメンと筋肉のコワモテが睨み合ってた。超怖い。

「戦闘の際は勿論頼りにさせてもらうが、そもそもこの班は稀人捜索、保護を目的としたものだ。戦闘ありきで動いてもらっては困る」

 そう言った筋肉のイケメンが腕を組んで筋肉のコワモテを見下ろす。短髪で胸が厚い。叩いてもびくともしなさそう。

「はっ、関係ねぇ。相手は未知の力を持つバケモンってことには変わりねぇんだ、機嫌一つでぶっ殺されんのはゴメンだからな。そんときゃ俺がやるって話だ戦闘を視野に入れて何が悪い」

 筋肉のコワモテが凄い顔でイケメンを見る。頭の毛は剃ってるのか全くない。サメとか狩れそうだしナイフ一本で敵組織とか壊滅させそう。

「あ、あのー、今日付で配属になりました、遠山ですけどー」

 この空気感が耐えられないので、あえて壊す。初日からギスギスとかホントやめてよね……

「ん、ああ!これは申し訳ない事をした。私は江楠。四班班長だ。君のことを歓迎するよ!と言っても、私自身もこの班に今日配属されたばかりなんだけどね」

 そう言って筋肉イケメン、じゃなくて江楠さんが握手を求めて来たので応じる。手もおっきいし厚いなぁ……

「蛇子だ。早速だがお嬢ちゃんの遭遇した黒いフードについて話を聞かせてくれ。武器、能力、背格好、なんでもいい」

 対してコワモテの蛇子さんには肩をガッツリ掴まれ椅子に座らされた。危ない店の胴元に取り調べられてる気分になる。こわい。

「蛇子くん、遠山くんを恫喝しても何も良い事はないと私は思うが」

「こう言うのはな、形から入らねぇと意味がねぇんだ。さぁ、洗いざらい吐いちまいな」

 いや助けてくれよ班長。と言っても蛇子さんとも今後同僚な訳だしそもそも本気の恫喝じゃないことくらいわかるしなんか良い情報ないかなー、って考える私ったらお人好しすぎるかな?

「……あ、そうだ。あの時変な札持ってたんですよ黒フードの人」

「札ぁ?報告書にはそんな事一切書いてねぇじゃねぇかよ」

「そりゃあそうですよ。報告書は自身の行動と相手の言動、身体特徴は書きますけど」

「あー、いい、いい。そう言う形式だったもんじゃなくて、嬢ちゃんの口から感じた事言ってくれ」

 報告書のこと聞いて来たから言ったのに……まぁいいや

「そうは言っても、お札と黒ローブの人の力に直接的関係があるかは分かりませんよ?握ってたなー、くらいの記憶ですし、お守りか何かかもしれませんし」

「いいんだいいんだ、そう言う些細なことが重要なんだからな。そうだよな、江楠さんよう」

 そう言って江楠さんに話を振る蛇子さん。さっきまで口論してた人によくこのテンションで話しかけられるなこの人。

「全くもってその通りだ。付け加えて言えば、そう言った些細なものを地道に積み重ねた上に真相はある、と言ったところだろうか」

「一言余計だ」

 そして江楠さんのこの返し、本当は仲良いのだろうかこの2人。とんでもないバディものじゃん。私ヒロイン?激アツじゃん。

「ま、これからこの3人で仲良くやってくんだ、よろしく頼むぜオメェら」

「班長は私だからな。2人とも何かあったら逐一私に相談してくれ」

 な、なんやかんややってけそう、かな?

「お、お二方とも、よろしくお願いします!」



この後、蛇子さんが私と同い年で、江楠さんが10歳以上年上ということが判明して、また一波乱があったのは別の話。
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