1 / 1
たゆたう
しおりを挟む
なんにもない場所。
私もいない。僕もいない。あなたもいない。
でもここにいる。
ああ、あれはなんだろう?
暖かくて冷たそう。
手を伸ばしてみるけど、手はどこ?
ない、なんにもない。
手ってなに?
見えない。見えるってなに?
ああ、私には、僕には、なんにもない。
なんにもないから、なんにもできない。
あれに触ってみたいのに。
どうすれば手はみつかるだろう?
見つけるってなんだろう?
でも見つけないと。
見つけないと触れない。
どうやれば見つかるだろう?
だれ?
ああ、これは手?
ありがとう、手を見つけてくれて。
わからないけど手があった。
ああ、これであれに触れる。
触れると思ったのに。
届かない。
どうすればいい?
そう、足。足がほしい。
足ってなに?
なんでもいい。
あれに触りたい。
でも届かない。
だから近くに行きたい。
ねぇさっきの人、足をみつけて。
ねぇ?
いないの?
いないってなに?
人ってなに?
わからない。
わからないけど、足を見つけないと。
さっきはどうやって手を見つけたんだっけ?
確か、誰かが私の、僕の、手をつかんだ。
そう、掴まれたと思ったら手がでてきた。
だからきっと足もすぐ近くにあるんだ。
ああ、歩きたい。
歩けばあそこにいけるのに。
いやだ。
また黒い人がやってきた。
痛い。
腕に何かが刺さった。
ああ、なんだろう。
体がふわふわする。
何も考えられない。
今日はおしまい。もう何も考えられない。
目が覚めた。
ああ、頭がスッキリしている。
頭ってなんだろう?
今日こそあれに触りたい。
何かを刺される前に、足を見つけないと。
白い白い世界。
真っ白な世界。
あれ?
何か音がした。
ああ、足があった。
見つけた。
でも困ったな。
足はあるけど鎖がついてる。
ジャラリと音を立てる鎖。
私は、僕は、ベッドから降りた。
ベッド?
ああ、歩ける。
鎖は長いみたい。
ああ、触れた。
やっと触れた。
でも、暖かくないし、冷たくもなかった。
ふわふわしている。
これじゃない。
私が、僕が、探しているのはこれじゃない。
見回してみるけど、なんにもない。
ああ、みつからない。
なに?
大きな音がする。
いやだ。誰かが私の、僕の、体に触っている。
大きな音が私の耳に届く。
いやだいやだ。
見つけた手で私は、僕は、耳を塞いだ。
耳ってなに?
そうしてしばらくしたら、音が消えた。
ああ、よかった。
私は、僕は、鎖を引きずりながら歩く。
ここは、四角い部屋みたい。
真っ白な部屋。
部屋?
そう部屋。
昨日までは何もなかったのに。
ああ、どこにあるんだろう。
見つからない。
あったはずなのに、見つからない。
どこにいったの?
ああ、疲れた。
鎖が重い。
私は、僕は、ベッドに腰かける。
ベッド、そう、これはベッド。
私が、僕が、眠る場所。
でも何かを刺される場所。
あれが刺さると私は、僕は、何も考えられなくなる。
とても嫌なもの。
いつも、そう、いつも。
黒い人がやってくる。
あれがくると腕に何かが刺さる。
黒い人はきっと悪いもの。
逃げないと。
どこへ?
どこでもいい。
でも、無理だよ。
だって、足には鎖があるもの。
唯一の出口は開かない扉。
開かない扉なのに、黒い人はそこから入ってくる。
ああ、いやだ。
また何かが私の、僕の、体を触っている。
手で払おうとしても、手が動かない。
なぜ?
ああ、手が消えた。
また手がなくなった。
せっかく見つけたのに。
消えていく。
足が消えた。
部屋が消えた。
またなんにもなくなった。
ああ、私は、僕は、何を探していたんだっけ?
わからない。
ああ、なんにもなくなった。
なんにも、なんにもない。
せっかく何かをみつけたのに。
もうそれも分からない。
真っ白な世界を私は、僕は、たゆたう。
委ねて、たゆたう。
また長い眠りにつこう。
眠りってなんだっけ?
ああ、眠い。
深く深く。
私は、僕は、意識を閉じる。
私もいない。僕もいない。あなたもいない。
でもここにいる。
ああ、あれはなんだろう?
暖かくて冷たそう。
手を伸ばしてみるけど、手はどこ?
ない、なんにもない。
手ってなに?
見えない。見えるってなに?
ああ、私には、僕には、なんにもない。
なんにもないから、なんにもできない。
あれに触ってみたいのに。
どうすれば手はみつかるだろう?
見つけるってなんだろう?
でも見つけないと。
見つけないと触れない。
どうやれば見つかるだろう?
だれ?
ああ、これは手?
ありがとう、手を見つけてくれて。
わからないけど手があった。
ああ、これであれに触れる。
触れると思ったのに。
届かない。
どうすればいい?
そう、足。足がほしい。
足ってなに?
なんでもいい。
あれに触りたい。
でも届かない。
だから近くに行きたい。
ねぇさっきの人、足をみつけて。
ねぇ?
いないの?
いないってなに?
人ってなに?
わからない。
わからないけど、足を見つけないと。
さっきはどうやって手を見つけたんだっけ?
確か、誰かが私の、僕の、手をつかんだ。
そう、掴まれたと思ったら手がでてきた。
だからきっと足もすぐ近くにあるんだ。
ああ、歩きたい。
歩けばあそこにいけるのに。
いやだ。
また黒い人がやってきた。
痛い。
腕に何かが刺さった。
ああ、なんだろう。
体がふわふわする。
何も考えられない。
今日はおしまい。もう何も考えられない。
目が覚めた。
ああ、頭がスッキリしている。
頭ってなんだろう?
今日こそあれに触りたい。
何かを刺される前に、足を見つけないと。
白い白い世界。
真っ白な世界。
あれ?
何か音がした。
ああ、足があった。
見つけた。
でも困ったな。
足はあるけど鎖がついてる。
ジャラリと音を立てる鎖。
私は、僕は、ベッドから降りた。
ベッド?
ああ、歩ける。
鎖は長いみたい。
ああ、触れた。
やっと触れた。
でも、暖かくないし、冷たくもなかった。
ふわふわしている。
これじゃない。
私が、僕が、探しているのはこれじゃない。
見回してみるけど、なんにもない。
ああ、みつからない。
なに?
大きな音がする。
いやだ。誰かが私の、僕の、体に触っている。
大きな音が私の耳に届く。
いやだいやだ。
見つけた手で私は、僕は、耳を塞いだ。
耳ってなに?
そうしてしばらくしたら、音が消えた。
ああ、よかった。
私は、僕は、鎖を引きずりながら歩く。
ここは、四角い部屋みたい。
真っ白な部屋。
部屋?
そう部屋。
昨日までは何もなかったのに。
ああ、どこにあるんだろう。
見つからない。
あったはずなのに、見つからない。
どこにいったの?
ああ、疲れた。
鎖が重い。
私は、僕は、ベッドに腰かける。
ベッド、そう、これはベッド。
私が、僕が、眠る場所。
でも何かを刺される場所。
あれが刺さると私は、僕は、何も考えられなくなる。
とても嫌なもの。
いつも、そう、いつも。
黒い人がやってくる。
あれがくると腕に何かが刺さる。
黒い人はきっと悪いもの。
逃げないと。
どこへ?
どこでもいい。
でも、無理だよ。
だって、足には鎖があるもの。
唯一の出口は開かない扉。
開かない扉なのに、黒い人はそこから入ってくる。
ああ、いやだ。
また何かが私の、僕の、体を触っている。
手で払おうとしても、手が動かない。
なぜ?
ああ、手が消えた。
また手がなくなった。
せっかく見つけたのに。
消えていく。
足が消えた。
部屋が消えた。
またなんにもなくなった。
ああ、私は、僕は、何を探していたんだっけ?
わからない。
ああ、なんにもなくなった。
なんにも、なんにもない。
せっかく何かをみつけたのに。
もうそれも分からない。
真っ白な世界を私は、僕は、たゆたう。
委ねて、たゆたう。
また長い眠りにつこう。
眠りってなんだっけ?
ああ、眠い。
深く深く。
私は、僕は、意識を閉じる。
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
寝室のクローゼットから女の声がする!夫の浮気相手が下着姿で隠れていてパニックになる私が下した天罰に絶句
白崎アイド
大衆娯楽
寝室のクローゼットのドアがゴトゴトと小刻みに震えて、中から女の声が聞こえてきた。
異様な現象を目の当たりにした私。
誰か人がいるのかパニック状態に。
そんな私に、さらなる恐ろしい出来事が目の前で起きて…
蒼天の下、海辺の街で貴方を想う
豆狸ぽんすけ
現代文学
戦争の機運が高まる中、ある海辺の街で一組の若い夫婦がささやかな結婚式を挙げ、平穏に暮らしていた。……夫が徴兵されるまでは。
※戦争物ということで、R15を保険で付けています。
※夫視点はなろうの方で公開中です。処女作なので、拙いところがあります。
※登場人物の名前は伏字にしてありますので、感情移入できる名前を自身で入れてお読みください。
夫の不倫で離婚することになったから、不倫相手の両親に告発してやった。
ほったげな
恋愛
夫から離婚したいと言われた。その後私は夫と若い伯爵令嬢が不倫していることを知ってしまう。離婚は承諾したけど、許せないので伯爵令嬢の家に不倫の事実を告発してやる……!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる