118 / 148
第六章 武器と防具
118 職人とCランク冒険者
しおりを挟む
ハインさんに聞いた皮職人のいる工房へと向かう。
道から逸れて少し奥へと向かうと目的の工房があった。
気難しい職人と聞きはしたが、工房は綺麗に掃除されており、こざっぱりとしている。
工房の中へ入ると、四十代くらいの女性がカウンターにいた。
女性がこちらに気づき、ニコリと笑みを浮かべる。
俺はペコリと頭を下げてから声をかける。
「おはようございます。皮鎧の製作をお願いしたくてきました」
「おはようございます。皮鎧の製作ですね、どの皮か見せて頂けますか?」
「はい」
魔法の袋からヒュドラの鱗皮をとりだし手渡した。
「あら、ヒュドラの鱗皮ですか?」
「はい、そちらを三人分と彼女の分を一部作ってほしいんです」
「なるほど、少しお待ちいただけますか?」
「はい」
女性はそう言うと中へ入っていった。
「すごいな、あの女性」
俺の言葉にエルナが首を傾げた。
「なぜです?」
「俺はあれがヒュドラの鱗皮とは言ってないんだよ」
「あ! 確かにです」
あの女性は俺が皮の種類を告げなくても見ただけで何かを当てたのだ。
受付にいたということは彼女が職人ではないだろうし。
かなり優秀な人ということだ。
普通は俺たちみたいな子供が持ってきた皮をヒュドラの鱗皮だとしてもまず疑うものだろう。
だけどあの女性は見た目で判断はしなかった。
しばらくして女性が戻ってきた。
「お待たせしました。依頼を受けましょう。失礼ですが冒険者タグの確認をしても宜しいですか?」
「はい。全員分いりますか?」
「いいえ、あなただけでかまいませんよ」
「わかりました」
俺は首にかけていた冒険者タグをはずしカウンターの上に置いた。
女性はタグを確認すると俺に返した。
「ありがとうございます。Bランク冒険者ですね。今年齢はおいくつですか?」
「十三です」
「となるとまだまだ成長されますね。一応、ある程度サイズの微調整はできるようにしましょうか」
「ええ、そうして頂けるとありがたいです」
「では中へどうぞ。まずは体のサイズを測らさせてもらいます」
女性の案内に従い中へと入り、俺たちは今つけている簡素な鎧をはずしてサイズを測ってもらった。
フィーネとエルナは布がかけられた場所で測っている。
寸法を測定し終わったあと、さらに奥へと案内された。
そこにはガタイのいい四十代くらいの男性と、二十代くらいの若い男性がいた。
女性は四十代くらいの男性に声をかける。
「あなた、彼らの依頼を受けるわ。測定はもう終わってるから注文を聞いてあげて」
「おう」
今の言い方からすると、依頼を受けるか受けないは最初にまず決めるのは女性らしい。
これは予想外だな。
「それと、彼らはまだ十代前半の若い子たちよ、まだまだ成長期だからある程度サイズ調整できるようにしてあげてね。はい、これ測定した紙ね」
「おう」
女性は俺たちのサイズを記載した紙を男性に渡した。
「さて、それじゃ、あとはこの人と皮鎧の構造については話してください」
「ありがとうございます」
女性はニコリと微笑むと受付カウンターへと戻っていった。
「驚いたろ?」
男性の声に俺はそちらを振り向く。
「そうですね、彼女が依頼を受けるか決めているとは思いませんでした」
「普通はな、俺みたいな職人が受けるか受けねぇか決めるもんなんだが、妻は人を見る目はピカイチだからな。妻が懸念を示した相手は全て断ることにしてる」
「素晴らしい奥さんですね。皮も一度見ただけで種類を当てられましたし」
「ははは。そうだろう! あれはいい女だ」
「父さん」
「ああ、すまんすまん。妻のことになるとついな。それでお前らの装備だな、どういうのが希望だ?」
そこからは職人さんと関節の可動域を邪魔しない構造であること、動きを阻害しない柔らかさであること、重すぎるのは困ることなど色々と話し合った。
皮の枚数は十分だそうで、問題なく作り上げることができるらしい。
四人分完成させるのに二ヶ月は必要になるとのことだ。
帰るのに一ヶ月かかるのでそれならと俺たちは完成するまでこの街に留まることにした。
話し合いを終えて帰ろうとしたところで受付の方から声が聞こえてきた。
「だからわかんねーかなー? 俺らはCランクだぞ? Cランクが頼んでるってのになんだよ」
「ですから何度も申しておりますが、あなた方の依頼は受けません、お帰りください」
「つーか、おばさんには言ってねぇんだよ。職人だせっつってんだろ。リザードマンの皮だぞ!」
「何度でも申し上げますが、主人にあなた方の依頼は受けさせません。お引き取り下さい」
何やらトラブルらしい。
俺が中から出て女性に声をかけた。
「どうしました? 大丈夫ですか?」
「ああ、お見苦しいところを。申し訳ありません。何も問題はありませんよ」
「おいおいおい、そんなガキの依頼受けて俺らCランクの依頼受けれねぇってなんだ? あ?」
「はぁ。ガキではございません。人の見た目や年齢で判断されるのが愚かなのです」
「うるせーよ! いいから職人だせよ、ババア!」
なるほど、なんともはや。
「女性に対してその物言いは失礼だろ。そんな態度で依頼を受けてもらえると思ってるならおめでたい頭をしているな、お前ら」
俺の挑発に四人組のCランクだという冒険者は簡単にのってきた。
「ああ!? クソガキが! 誰に口きいてんだ! あ!?」
「とりあえず外出ろよ、相手してやるから」
俺のわかりやすい挑発にのった四人組は素直に工房の外に出たので、俺は奥さんに謝罪した。
「すいません、勝手に出しゃばって」
「いいえ、ありがとうございます。大丈夫かとは思いますが、気を付けてくださいね」
「ええ、大丈夫です」
外に出た俺にミハエルが声をかける。
「どうする? 俺がやってもいいけど」
「ああ、まぁ俺がやるよ。問題ないさ」
「おう、わかった」
そんな俺たちの会話を聞いていたのか、男たちが再び騒ぎ出した。
「ああ!? ガキが一人でってか! ふざけやがって!」
これで本当にCランク冒険者なのだろうか。
あとでハインさんに伝えておくべきかもしれないな。
そう思っているとまさかの状況になった。
相手が剣を抜いたのだ。
「いや、お前ら街中で普通剣抜くか? 手加減しないぞ?」
「はぁ? ガキがほざいてんじゃねぇよ! 死ねや!」
「はぁ……」
俺は剣帯から鞘ごとはずした。
怒りのあまりか周りが見えていない、自称Cランク冒険者へ相対する。
しかし、ちょっと挑発が過ぎたかもしれないな、反省しよう。
とはいえ、すぐにサンダーで麻痺させようかと思ったが、剣を抜いているので少しだけ痛い目をみてもらおう。
俺は四人相手に鞘つきの剣で捌き、時々彼らの体に鞘で攻撃をする。
「ガッ! くそが! ちょこまか動きやがって!」
まだまだ元気らしいな。
本当にCランクなのかもしれない。
そんなことを考えながら俺は彼らの剣を避けつつ彼らの体に鞘を当てていく。
そうして十分くらいが経ったころ、四人組はゼーゼーと大きく息をしながら、体のあちこちを押さえていた。
「なん、なんだよ、おまえ……」
「なんで四人がかりでやってあたらねぇんだよ……」
男たちの文句は無視して告げる。
「そろそろいいか?」
男たちは苦い顔をしながら、再度剣をかまえた。
もう意地になっているらしい。
「そうか。なら次で決めようか」
「くそが!」
上段から強く振り下ろす攻撃を鞘で受け止めて流し、左手で男に弱いサンダーを撃つ。
男の一人が倒れ、俺は次々と残りへ攻撃をしていく。
「よし、終わりだな」
俺がそう声を出すころには全員が痺れて麻痺していた。
「さて、悪いがお前らの冒険者タグを調べさせてもらうぞ」
基本的に冒険者はタグを大体首からかけているので彼らの首元を探る。
「おいおい、お前ら本当にCランクだったのか……」
これは実に情けない。
「ぐ、がえ……ぜ……」
「返してやるさ。お前らのタグは冒険者ギルドに渡しておく。あとで取りにいけ」
そこまで声をかけたところで警備兵がやってきた。
どうやら奥さんが呼んだらしい。
奥さんが一部始終を話し、俺も軽く説明をして、男達は警備兵に連れていかれた。
街中で剣を抜いたのだから仕方ないだろう。
奥さんが俺たちの方へやってきた。
「遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました」
「いえ、まさかあの程度の挑発で彼らが剣を抜くとは思わず、俺もすみません。ご迷惑をおかけして」
「いいえ、お客様にあのようなことをさせて本当に申し訳ないです」
「いえ、勝手にしたことですから。本当にもう気にしないで下さい」
「わかりました。本当にありがとうございます。主人にはきっとよい装備を提供させてみせます」
「はは。お願いします」
「お任せください」
こうして俺は四人組の冒険者タグを持ったままギルドへと向かった。
ミハエルたちにはいい宿屋がないか探してもらっている。
やはり料理のおいしい宿屋がいいのだ。
ギルドに入り、受付嬢さんに声をかける。
「すみません、ギルドマスターにお会いしたいのですが、いらっしゃいますか?」
「はい、失礼ですが冒険者タグをお見せ頂いてもかまいませんか?」
「はい」
俺がタグをとりだして見せると受付嬢さんは驚いた顔をしていた。
「えっ あ、えっと、はい。少々お待ちください!」
そう言うと慌てて奥へと向かっていった。
俺のミスリルのタグが見えていたのか、ざわざわと周囲から声がしてくる。
「え、あの若さでBなの? すごくない?」
「すげーな」
「かわいい顔してるわね。好みだわ」
「貴族の子かなんかじゃねぇの?」
「それにしちゃ装備がしょぼくない?」
しょぼい……。まぁ確かにしょぼいけども……。
「確かに防具はしょぼいけど、あれ、あの武器相当だぞ」
「なら実力かもな」
「時々いるからな、ほら、シュラハトのレオンとかそうじゃん」
「あーそういやあいつもそうだよな」
へぇ、レオンも俺くらいのときから高ランクだったのか。
そんな他人の会話に耳を傾けていると受付嬢さんが戻ってきてギルドマスターの部屋まで案内してくれた。
「ソファーにかけて待っていてくれ」
「はい」
少しして書類仕事を終えたハインさんがやってきた。
「さて、それで今日はどうした? だめだったか?」
「ああ、いえ。皮職人さんには依頼を受けてもらえました」
「ならどうした?」
「実は――」
俺はハインさんに今日きた理由を説明した。
「なるほど……。そいつらのタグをもらっていいか?」
「はい」
金色のタグを四枚取り出してハインさんに渡す。
ハインさんはタグを一枚一枚見て溜め息をついた。
「はぁ、やっぱりこいつらか……」
「やっぱり?」
「ああ、すまない。いや、こいつら普段から素行が悪くてな。なまじ実力がある分調子にのったタイプなんだ。上には上がいるのを理解しないバカなやつらだ」
「ああ……」
「だがまぁ、もう無理だな。街中で剣を抜いた上に相手を殺そうとするようなやつをギルドはこれ以上庇うことはできない」
一瞬、ハインさんが冷たい目をした。
糸のような目だというのにそれを感じる。やはり彼もBランクということか。
すぐにまた優しい雰囲気に戻り俺に声をかける。
「いや、迷惑をかけたね」
「いえ」
「このタグはこちらできちんと預かっておくよ」
「はい」
「それで、鎧が完成するまでは君たちはどうするんだ?」
「せっかくなのでダンジョンに潜ってみようかと思っています」
「そうか。基本的には鉱山ダンジョンと作りには大きな違いはないよ、ただ鉱石はでないけどね」
「なるほど、ありがとうございます」
「いやしかし、アーロンが羨ましいね。うちを常駐にしてるAランクも気位が高くてね。こいつらみたいなバカではないが、あれもあれで扱いにくいんだよ」
そう言って金色のタグを弄びながらハインさんは苦笑した。
暫くハインさんと会話したあと、せっかくなので料理のおいしい宿屋を聞いてみたところ、二軒ほど教えてもらえたので、ミハエルたちと合流したあとに情報のすり合わせをしよう。
「では、失礼します」
「ああ、何かあったらまた来てくれ」
「はい」
ギルドマスターの部屋を出て、ギルド併設の酒場へと向かう。
酒場でしばらく待っていると、ミハエルたちがやってきた。
席にいる俺をミハエルが見つけたので軽く手をあげる。
「よー待たせたな」
「いや、俺もさっき下りてきたとこだ」
ミハエルたちの情報によると、三軒ほどよさげな宿屋があるらしい。
ハインさんからの情報も併せて、クルツの宿屋に決めた。
まぁいまいちだったら残りの二軒へ移ってもいいだろう。
「じゃ、行こうか」
「おう」
「そうね」
「はいです」
こうして俺たちはクルツの宿屋へ向かった。
道から逸れて少し奥へと向かうと目的の工房があった。
気難しい職人と聞きはしたが、工房は綺麗に掃除されており、こざっぱりとしている。
工房の中へ入ると、四十代くらいの女性がカウンターにいた。
女性がこちらに気づき、ニコリと笑みを浮かべる。
俺はペコリと頭を下げてから声をかける。
「おはようございます。皮鎧の製作をお願いしたくてきました」
「おはようございます。皮鎧の製作ですね、どの皮か見せて頂けますか?」
「はい」
魔法の袋からヒュドラの鱗皮をとりだし手渡した。
「あら、ヒュドラの鱗皮ですか?」
「はい、そちらを三人分と彼女の分を一部作ってほしいんです」
「なるほど、少しお待ちいただけますか?」
「はい」
女性はそう言うと中へ入っていった。
「すごいな、あの女性」
俺の言葉にエルナが首を傾げた。
「なぜです?」
「俺はあれがヒュドラの鱗皮とは言ってないんだよ」
「あ! 確かにです」
あの女性は俺が皮の種類を告げなくても見ただけで何かを当てたのだ。
受付にいたということは彼女が職人ではないだろうし。
かなり優秀な人ということだ。
普通は俺たちみたいな子供が持ってきた皮をヒュドラの鱗皮だとしてもまず疑うものだろう。
だけどあの女性は見た目で判断はしなかった。
しばらくして女性が戻ってきた。
「お待たせしました。依頼を受けましょう。失礼ですが冒険者タグの確認をしても宜しいですか?」
「はい。全員分いりますか?」
「いいえ、あなただけでかまいませんよ」
「わかりました」
俺は首にかけていた冒険者タグをはずしカウンターの上に置いた。
女性はタグを確認すると俺に返した。
「ありがとうございます。Bランク冒険者ですね。今年齢はおいくつですか?」
「十三です」
「となるとまだまだ成長されますね。一応、ある程度サイズの微調整はできるようにしましょうか」
「ええ、そうして頂けるとありがたいです」
「では中へどうぞ。まずは体のサイズを測らさせてもらいます」
女性の案内に従い中へと入り、俺たちは今つけている簡素な鎧をはずしてサイズを測ってもらった。
フィーネとエルナは布がかけられた場所で測っている。
寸法を測定し終わったあと、さらに奥へと案内された。
そこにはガタイのいい四十代くらいの男性と、二十代くらいの若い男性がいた。
女性は四十代くらいの男性に声をかける。
「あなた、彼らの依頼を受けるわ。測定はもう終わってるから注文を聞いてあげて」
「おう」
今の言い方からすると、依頼を受けるか受けないは最初にまず決めるのは女性らしい。
これは予想外だな。
「それと、彼らはまだ十代前半の若い子たちよ、まだまだ成長期だからある程度サイズ調整できるようにしてあげてね。はい、これ測定した紙ね」
「おう」
女性は俺たちのサイズを記載した紙を男性に渡した。
「さて、それじゃ、あとはこの人と皮鎧の構造については話してください」
「ありがとうございます」
女性はニコリと微笑むと受付カウンターへと戻っていった。
「驚いたろ?」
男性の声に俺はそちらを振り向く。
「そうですね、彼女が依頼を受けるか決めているとは思いませんでした」
「普通はな、俺みたいな職人が受けるか受けねぇか決めるもんなんだが、妻は人を見る目はピカイチだからな。妻が懸念を示した相手は全て断ることにしてる」
「素晴らしい奥さんですね。皮も一度見ただけで種類を当てられましたし」
「ははは。そうだろう! あれはいい女だ」
「父さん」
「ああ、すまんすまん。妻のことになるとついな。それでお前らの装備だな、どういうのが希望だ?」
そこからは職人さんと関節の可動域を邪魔しない構造であること、動きを阻害しない柔らかさであること、重すぎるのは困ることなど色々と話し合った。
皮の枚数は十分だそうで、問題なく作り上げることができるらしい。
四人分完成させるのに二ヶ月は必要になるとのことだ。
帰るのに一ヶ月かかるのでそれならと俺たちは完成するまでこの街に留まることにした。
話し合いを終えて帰ろうとしたところで受付の方から声が聞こえてきた。
「だからわかんねーかなー? 俺らはCランクだぞ? Cランクが頼んでるってのになんだよ」
「ですから何度も申しておりますが、あなた方の依頼は受けません、お帰りください」
「つーか、おばさんには言ってねぇんだよ。職人だせっつってんだろ。リザードマンの皮だぞ!」
「何度でも申し上げますが、主人にあなた方の依頼は受けさせません。お引き取り下さい」
何やらトラブルらしい。
俺が中から出て女性に声をかけた。
「どうしました? 大丈夫ですか?」
「ああ、お見苦しいところを。申し訳ありません。何も問題はありませんよ」
「おいおいおい、そんなガキの依頼受けて俺らCランクの依頼受けれねぇってなんだ? あ?」
「はぁ。ガキではございません。人の見た目や年齢で判断されるのが愚かなのです」
「うるせーよ! いいから職人だせよ、ババア!」
なるほど、なんともはや。
「女性に対してその物言いは失礼だろ。そんな態度で依頼を受けてもらえると思ってるならおめでたい頭をしているな、お前ら」
俺の挑発に四人組のCランクだという冒険者は簡単にのってきた。
「ああ!? クソガキが! 誰に口きいてんだ! あ!?」
「とりあえず外出ろよ、相手してやるから」
俺のわかりやすい挑発にのった四人組は素直に工房の外に出たので、俺は奥さんに謝罪した。
「すいません、勝手に出しゃばって」
「いいえ、ありがとうございます。大丈夫かとは思いますが、気を付けてくださいね」
「ええ、大丈夫です」
外に出た俺にミハエルが声をかける。
「どうする? 俺がやってもいいけど」
「ああ、まぁ俺がやるよ。問題ないさ」
「おう、わかった」
そんな俺たちの会話を聞いていたのか、男たちが再び騒ぎ出した。
「ああ!? ガキが一人でってか! ふざけやがって!」
これで本当にCランク冒険者なのだろうか。
あとでハインさんに伝えておくべきかもしれないな。
そう思っているとまさかの状況になった。
相手が剣を抜いたのだ。
「いや、お前ら街中で普通剣抜くか? 手加減しないぞ?」
「はぁ? ガキがほざいてんじゃねぇよ! 死ねや!」
「はぁ……」
俺は剣帯から鞘ごとはずした。
怒りのあまりか周りが見えていない、自称Cランク冒険者へ相対する。
しかし、ちょっと挑発が過ぎたかもしれないな、反省しよう。
とはいえ、すぐにサンダーで麻痺させようかと思ったが、剣を抜いているので少しだけ痛い目をみてもらおう。
俺は四人相手に鞘つきの剣で捌き、時々彼らの体に鞘で攻撃をする。
「ガッ! くそが! ちょこまか動きやがって!」
まだまだ元気らしいな。
本当にCランクなのかもしれない。
そんなことを考えながら俺は彼らの剣を避けつつ彼らの体に鞘を当てていく。
そうして十分くらいが経ったころ、四人組はゼーゼーと大きく息をしながら、体のあちこちを押さえていた。
「なん、なんだよ、おまえ……」
「なんで四人がかりでやってあたらねぇんだよ……」
男たちの文句は無視して告げる。
「そろそろいいか?」
男たちは苦い顔をしながら、再度剣をかまえた。
もう意地になっているらしい。
「そうか。なら次で決めようか」
「くそが!」
上段から強く振り下ろす攻撃を鞘で受け止めて流し、左手で男に弱いサンダーを撃つ。
男の一人が倒れ、俺は次々と残りへ攻撃をしていく。
「よし、終わりだな」
俺がそう声を出すころには全員が痺れて麻痺していた。
「さて、悪いがお前らの冒険者タグを調べさせてもらうぞ」
基本的に冒険者はタグを大体首からかけているので彼らの首元を探る。
「おいおい、お前ら本当にCランクだったのか……」
これは実に情けない。
「ぐ、がえ……ぜ……」
「返してやるさ。お前らのタグは冒険者ギルドに渡しておく。あとで取りにいけ」
そこまで声をかけたところで警備兵がやってきた。
どうやら奥さんが呼んだらしい。
奥さんが一部始終を話し、俺も軽く説明をして、男達は警備兵に連れていかれた。
街中で剣を抜いたのだから仕方ないだろう。
奥さんが俺たちの方へやってきた。
「遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました」
「いえ、まさかあの程度の挑発で彼らが剣を抜くとは思わず、俺もすみません。ご迷惑をおかけして」
「いいえ、お客様にあのようなことをさせて本当に申し訳ないです」
「いえ、勝手にしたことですから。本当にもう気にしないで下さい」
「わかりました。本当にありがとうございます。主人にはきっとよい装備を提供させてみせます」
「はは。お願いします」
「お任せください」
こうして俺は四人組の冒険者タグを持ったままギルドへと向かった。
ミハエルたちにはいい宿屋がないか探してもらっている。
やはり料理のおいしい宿屋がいいのだ。
ギルドに入り、受付嬢さんに声をかける。
「すみません、ギルドマスターにお会いしたいのですが、いらっしゃいますか?」
「はい、失礼ですが冒険者タグをお見せ頂いてもかまいませんか?」
「はい」
俺がタグをとりだして見せると受付嬢さんは驚いた顔をしていた。
「えっ あ、えっと、はい。少々お待ちください!」
そう言うと慌てて奥へと向かっていった。
俺のミスリルのタグが見えていたのか、ざわざわと周囲から声がしてくる。
「え、あの若さでBなの? すごくない?」
「すげーな」
「かわいい顔してるわね。好みだわ」
「貴族の子かなんかじゃねぇの?」
「それにしちゃ装備がしょぼくない?」
しょぼい……。まぁ確かにしょぼいけども……。
「確かに防具はしょぼいけど、あれ、あの武器相当だぞ」
「なら実力かもな」
「時々いるからな、ほら、シュラハトのレオンとかそうじゃん」
「あーそういやあいつもそうだよな」
へぇ、レオンも俺くらいのときから高ランクだったのか。
そんな他人の会話に耳を傾けていると受付嬢さんが戻ってきてギルドマスターの部屋まで案内してくれた。
「ソファーにかけて待っていてくれ」
「はい」
少しして書類仕事を終えたハインさんがやってきた。
「さて、それで今日はどうした? だめだったか?」
「ああ、いえ。皮職人さんには依頼を受けてもらえました」
「ならどうした?」
「実は――」
俺はハインさんに今日きた理由を説明した。
「なるほど……。そいつらのタグをもらっていいか?」
「はい」
金色のタグを四枚取り出してハインさんに渡す。
ハインさんはタグを一枚一枚見て溜め息をついた。
「はぁ、やっぱりこいつらか……」
「やっぱり?」
「ああ、すまない。いや、こいつら普段から素行が悪くてな。なまじ実力がある分調子にのったタイプなんだ。上には上がいるのを理解しないバカなやつらだ」
「ああ……」
「だがまぁ、もう無理だな。街中で剣を抜いた上に相手を殺そうとするようなやつをギルドはこれ以上庇うことはできない」
一瞬、ハインさんが冷たい目をした。
糸のような目だというのにそれを感じる。やはり彼もBランクということか。
すぐにまた優しい雰囲気に戻り俺に声をかける。
「いや、迷惑をかけたね」
「いえ」
「このタグはこちらできちんと預かっておくよ」
「はい」
「それで、鎧が完成するまでは君たちはどうするんだ?」
「せっかくなのでダンジョンに潜ってみようかと思っています」
「そうか。基本的には鉱山ダンジョンと作りには大きな違いはないよ、ただ鉱石はでないけどね」
「なるほど、ありがとうございます」
「いやしかし、アーロンが羨ましいね。うちを常駐にしてるAランクも気位が高くてね。こいつらみたいなバカではないが、あれもあれで扱いにくいんだよ」
そう言って金色のタグを弄びながらハインさんは苦笑した。
暫くハインさんと会話したあと、せっかくなので料理のおいしい宿屋を聞いてみたところ、二軒ほど教えてもらえたので、ミハエルたちと合流したあとに情報のすり合わせをしよう。
「では、失礼します」
「ああ、何かあったらまた来てくれ」
「はい」
ギルドマスターの部屋を出て、ギルド併設の酒場へと向かう。
酒場でしばらく待っていると、ミハエルたちがやってきた。
席にいる俺をミハエルが見つけたので軽く手をあげる。
「よー待たせたな」
「いや、俺もさっき下りてきたとこだ」
ミハエルたちの情報によると、三軒ほどよさげな宿屋があるらしい。
ハインさんからの情報も併せて、クルツの宿屋に決めた。
まぁいまいちだったら残りの二軒へ移ってもいいだろう。
「じゃ、行こうか」
「おう」
「そうね」
「はいです」
こうして俺たちはクルツの宿屋へ向かった。
26
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる