異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭

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第六章 武器と防具

116 護衛の継続

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 フリッツさんたちやキストラーさん親子を乗せ、壊れた馬車はもうどうにもできないので、できるだけ破壊して隅に放置し、俺たちは出発した。
 次の馬車が購入できる街まで彼らを運ぶことにしたのだ。

 キストラーさんは何度も俺たちに謝礼をと言っていてそのたび断っていたのだが、さすがにこれ以上断るのも悪いので謝礼を受け取る代わりに次の街までの護衛ということにした。

 今日は時間的にも距離的にも野営になるだろう。
 夜までには馬車で寝かせているフリッツさんの仲間も目覚めるとは思うが。

 馬車には合計で六名も人が乗っていて、さらに荷物もあるので馬への負担が大きい。
 ただ、キストラーさんたちの馬車に繋がれていた馬が二頭とも無事だったので、昼に毎回交代させれば負担は減らせるだろう。

 そうしてその日の夕方近く、それなりに広い場所があったのでそこを野営地とすることにした。
 フリッツさんと目覚めたもう一人が手伝いをしようとしたが、まだ万全ではないだろうということで休んでいてもらい、キストラーさんたちも今は俺たちの雇い主なので待機してもらって、俺たちだけで野営の準備をした。

 とはいっても俺が馬の世話、ミハエルは薪拾い、フィーネとエルナで焚火と寝床の用意とすぐに分担できたので問題はない。
 食材に関してはキストラーさんの魔法の袋にある食材を使ってもいいということなのでフィーネに任せた。

 馬四頭に水と飼葉を与え、軽くブラッシングをしたあと、俺もフィーネたちの手伝いをすることにした。
 エルナは寝床の準備をしていたがそれはもうほぼ終わっており、フィーネの方は食事の用意をしていたので、俺は雇い主二人が座るための木箱を馬車内から持ってきて設置し、綺麗な布をかけておく。

 あとはエルナとフィーネのための何か座るものを探す。
 ちょうど手ごろなサイズの石が転がっていたのでそれを二つ持ってきて綺麗な布をかけておいた。
 あとは地面も濡れていないし、地べたでいいだろう。

 仕事が終わったところでミハエルと夜の当番について話をしようとしたところでフリッツさんともう一人がやってきた。

「ルカ君、ミハエル君、少しいいかな」
「はい、どうしました?」
「改めて自己紹介をしておこうと思って。俺はフリッツ、こいつはハンジ。で、俺たちはEランクだ。君たちは年下だけど、ランクはBで俺たちよりも遥かに上だ、だから敬語などはなしでお願いするよ」
「そうですか、わかりました。じゃあ改めて、俺はルカ。こっちはミハエルで、彼女がフィーネ、あっちの彼女がエルナ。よろしく」

 お互いに軽く頭を下げ合い、改めて会話する。

「あと、あのもらった高級回復薬なんだが、返すには俺たちでは少し時間がかかる。待ってもらえるだろうか?」
「ああ。いや、別にいらないよ。あれはドロップででたものだし」
「いやでも、あれほどの回復するものなら高いものだろう?」

 不安そうな顔でこちらをみるフリッツさんに俺は笑みを浮かべて言う。

「気にしないでいいさ。困ったときは助け合うものだろう? 冒険者は」

 俺の言葉を聞いたフリッツさんもハンジさんも深く頭を下げた。

「ありがとう、本当に。なんとお礼をすればいいのかわからないよ……」
「俺もだ。ありがとう。助けてくれて本当に感謝している」

 俺は頭を下げられて少し焦ってしまう。

「いやいや、頭を上げてくれ。本当に」

 俺の焦った声を聞いて、フリッツさんもハンジさんも苦笑しながら頭を上げてくれた。

「そういえば君たちは今日の見張り当番を決めていたんだろ?」
「ああ、うん」
「見張りくらいなら俺たちも負担にはならないから組み込んでくれ。本当に何もしないのは心苦しすぎる」
「そうか。わかった。でもきついときは無理しないでくれよ」
「ああ、わかってる」

 こうしてフリッツさんとハンジさんも見張り当番に組み込むことになった。
 基本二時間交代としても五人で回るから、フリッツさんとハンジさんは万全ではないということでペアで見張りをしてもらことにした。
 ――というのもあるが、実際は二人でゆっくり話す時間もいるだろうと思ってのことだ。仲間が三人も死んだのだから。
 俺たちはいつもの通りアラートを設定してあるので、何かがきてもすぐに対応はできる。

 見張り当番を決めたあとは、フィーネが作ってくれた野菜と肉のスープをパンと一緒にいただく。
 基本この世界の味付けではあるが、どうやらギーレンの宿屋の味付けを真似たらしい。
 大変おいしいスープだった。
 キストラーさんたちにもとても好評だった。

 食事を終え、寝る時間となった。
 キストラーさんとお嬢さんには馬車内で寝てもらい、他は雑魚寝だ。
 とはいえ、フィーネとエルナは少しだけ離してあるが。
 さすがに女の子の隣で眠りにつくのは難しい。
 俺だって健全な男だからな。



 翌日、前日と同じくフィーネとエルナに御者を、と思ったが、フリッツさんたちが御者くらいなら問題ないというので二人に任せ、フィーネたちは馬車内へいくことになった。
 まぁ、フィーネとエルナならお嬢さんにとってもいい話し相手となれるだろう。

 俺とミハエルは相変わらず馬に乗って移動だ。
 馬車の左右につき、前後にわかれてどちらから何がきても対応できるようにしている。
 俺は馬車の左側の前方で馬で並走していたが、御者をしているフリッツさんから声をかけられた。

「ルカ君」
「ん?」
「ルカ君は今いくつなんだ? 随分若く見えるけど」
「今十三だな」

 俺がそう言うとフリッツさんは随分と驚いた顔をしている。
 まぁそうだろうなとは思うが。

「すごいな。なら冒険者になって間もないのにもうBランクなのか。俺たちはパーティ組んでもう五年になるが、今回でやっとDになれそうだったんだ」

 そう言って寂しそうに笑う。
 そんなフリッツさんにハンジさんが話しかける。

「なぁフリッツ」
「なんだ?」
「俺、諦めたくねぇんだよ。あいつらもきっとそう言うと思う。なぁ、続けようぜ」
「ハンジ……」
「俺たちがDランク以上になれるとは思わねぇけどさ、それでもあいつらの分までやり続けてぇ」
「そう、だな。あいつらもきっと続けろって言うよな。でも俺らだけじゃ無理だぜ、ハンジ」
「わかってるさ。ま、仲間探そうぜ。新しい仲間とまた新しく始めようぜ」
「そうだな。また一から始めるか。あいつらの分も」
「ああ、あいつらの分もな」

 彼らの会話を聞いて俺は心から彼らを応援した。
 そのあとは色々と雑談をした。
『シュラハト』と知り合いだという俺の話や、彼らのこれまでの冒険の話。
 死んだ仲間たちとの想い出。

 一人一人を思い出すように、それぞれとの想い出を話す。
 時々寂しそうな笑みを浮かべるけれど、きっと彼らは乗り越えていけると思う。
 もしかしたら彼らもいつかどこかで命を落とすかもしれない。
 それでも、今、未来を見ている彼らを心から応援したい。

 そこからは特に問題もなく、順調に馬車を進めることができた。
 三日が経ち、最後の野営となる。

 明日には小さい街へとつくので、そこなら豪華ではないが馬車も買えるらしい。
 ただ、護衛として雇われていた彼らはその街で護衛が終了となる。
 さすがにEランク二人で護衛を続けるというのが不可能なためだ。
 キストラーさんもそれは理解していて、彼らのことはここで護衛依頼完了の報告をギルドにするらしい。
 二人は遠慮していたが、キストラーさんが亡くなった三人含め、本当にいい仕事をしてくれたと少々強引に二人を納得させていた。

 キストラーさんの目的地はゾルタウの街らしく、俺たちもそこを通ることになる。

「キストラーさん、俺たちもゾルタウの街を通過するので、そこまでなら護衛を続けましょうか?」
「それは実にありがたい申し出だが、君たちはBランクなのだろう? 残念ながらBランクに依頼を出せるほど私に余裕はないのだよ。新しい馬車も買わねばならんからね」
「目的地への通り道ですから、頂いた謝礼分でかまいませんよ」
「いやいや、さすがにあの程度のはした金では……」

 キストラーさんがそう言って断ろうとしたところで、お嬢さんがキストラーさんの袖をひいた。

「お父様、私フィーネさんとエルナさんともっとお話しがしたいわ」
「シャルロッテ、我儘を言わないでおくれ」

 キストラーさんにそう窘められて、お嬢さんはしょんぼりしてしまっている。
 そこでフィーネが声をかけた。

「キストラーさん、私やエルナもお嬢さんともっとお話しをしたいので、ルカの提案を受けて下さると嬉しいです」

 フィーネのアシストに俺ものることにした。

「そういうことなのでキストラーさん、うちの女性メンバーのために受けてくれませんか?」

 俺の言葉にキストラーさんは困った笑みを浮かべた。

「なんとも、Bランク冒険者だというのに、君たちは変わっているな。ありがとう、それじゃあ、ありがたく申し出を受け入れるとしよう」

 そうしてあと一週間ほど、ゾルタウの街へつくまで彼らの護衛を引き続きすることになった。
 馬車の購入に関してはゾルタウの街にいけばわざわざ買わなくてもいいらしく、馬だけ次の街で売ることになった。

 そうして翌日、小さな街について馬を売り払い、フリッツさんとハンジさんと別れることになった。

「フリッツさん、ハンジさん、頑張ってください」
「ああ、ありがとう。いつかまた新しい仲間とDランクになるよ」
「ありがとう、俺らも負けないように頑張るぜ」

 フリッツさんもハンジさんも明るい笑みを浮かべ、俺たちと握手を交わして別れた。
 きっと彼らともう会うことはないだろうけども、彼らを忘れることはないだろう。

 俺とミハエルは御者席につき、俺は馬の手綱を打った。
 馬車はゆっくりと進みはじめる。

 次の目的地はゾルタウの街となる。
 ここからそう遠くはないので一週間ほどで到着するだろう。

 お嬢さんはフィーネやエルナと話ができるのが嬉しいらしく、とても楽しそうにしていた。
 その辺を考慮して、エルナとフィーネにはゾルタウにつくまでの間はお嬢さんの相手をしてもらうことにして、御者は俺とミハエルですることにした。

 ここから先は特に見晴らしの悪い箇所があるわけではないらしいので、モンスターが街道に出てくる以外では問題はきっと起こらないだろう。

 そんなことを考えながら、俺は馬車を操作しつつ街を出た。
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