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第五章 出会い
92 レアな宝箱
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翌日、目を覚ました俺はぐっと背伸びをして大きく息を吐く。
相変わらず洞窟内だが快適な寝心地だ。
ベッドから下りた俺はアイテムボックスにそのままベッドを収納し、チラリとミハエルが寝るベッドを見た。
もぞもぞ動きだしているのでそのうち起きそうだ。
衝立の向こう側でもゴソゴソ音がするのできっと二人も起きて準備しているのだろう。
俺はとりあえず朝のスープでも用意しようと思い、地面に薪を置いて火をつけ、水を入れた鍋を焚火にかけた。
湯気が出始めたところで具現化魔法で作ったコンソメを放り込み、じゃがいもとキノコと切ったベーコンを入れる。
野菜が煮えたところで牛乳をいれて、最後に塩コショウで味をととのえ、醤油をほんの少し垂らして完成だ。
いい香りが漂い始めた頃、準備の終わったフィーネたちと目覚めたばかりというミハエルがやってきた。
「おはよう、みんな」
「うーす」
「おはよう。ルカ、ミハエル」
「おはようございます!」
全員が揃ったところで出来たミルクスープをよそって全員に配る。
みんな一口のんでほっと息をついている。
「エルナ、昨日はだいぶ発動が安定するようになったな」
「はい! 失敗はほとんどなくなりました! でも、精度がまだまだです。思ったところに飛んでくれなくて」
「まぁそこらへんは慣れだろうな。ジャベリンがどう飛んで行くかを想像して射出するようにすればうまくいくかもな」
「なるほどです。今日はそのあたりを意識してみます!」
「うん」
このパーティの中ではエルナだけがどちらかというと見劣りしてしまう戦闘能力だ。
俺がいなければ魔法使いとしてはかなり優秀なのだが、俺がいることで見劣りしてしまう。
だけどエルナはそのへんで腐らずに、くらいついてきている。
そもそも魔法使いとしては俺が異常なだけであって、エルナはかなり優秀なのだ。
もしかしたらエルナ自身気づかずそのことでストレスを重ねているかもしれないのでそこが心配ではあるのだが、時折ミハエルがエルナに何か声をかけてはエルナが笑顔を見せているのできっと大丈夫だろう。
以前聞くつもりはなかったが耳に入った言葉があって、さすがイケメンだなと思ったことがあった。
『エルナはすげぇな。助かってるぜ』なんてことを言って、エルナの頭をポンポンしていたのだ。
計算なのか、天然なのか、イケメンですね。
そうしてセーフゾーンにある荷物を片付け、俺たちは次の階層、五十九階へ向けて移動した。
階段を下りてミニマップを確認すると久しぶりの宝箱があった。
「お、宝箱だ。久しぶりだな」
「お? まじか。すげぇ久々じゃね?」
「前回見たのは四十五階じゃなかったかな?」
「確かそうよ、そのあとBランク試験の説明を聞いたはずだもの」
「ああ、そうだったな」
そうしてかなり久々の宝箱を目指して移動を始めた。
この階ではアクアドッグが一匹増えて二匹になった。
ここからはミノタウロスにルーツをかけてから、俺とフィーネがアクアドッグを先制攻撃し、すぐにミハエルが止めを刺すという戦法に切り替えた。
エルナは変わらずミノタウロス相手だが、もう不発はほぼないのであとは精度の訓練だ。
せっせと狩りをしつつ移動していると、宝箱までもうすぐ、というところでアクアドッグが消えたあとに何かキラキラしたものが落ちた。
全部を倒したあとでそれを回収すると、なんとも綺麗な鱗だった。
アクアドッグと同じ色なのであの体に生えてた鱗だろう。
鑑定してみると、やはり、アクアドッグの水鱗というらしい。
かなりレアなようで宝石と同じ扱いのようだが、魔法の水鱗のようだ。
何せこの鱗は硬いというのに、触れれば水のように鱗の表面に波紋が広がるのだ。
だけど別に水に濡れることはないという本当に不思議な鱗なのだ。
アクママリン色の水鱗は光に透かすと鱗内で光が乱反射してまるで光が鱗の中で乱舞しているようで、本当に美しい。
「わぁ! すっごく綺麗ですね!」
「本当ね、とても綺麗だわ」
「おー、まじだ。すげぇな」
エルナがとてもキラキラした目で水鱗を見ていたので思わず言ってしまった。
「いるか?」
「えっ! いえ! いいですいいです!」
「そうか? 別にいいぞ。なぁミハエル?フィーネ」
「おう、別にいいぜ」
「エルナがいらないなら私がもらおうかしら?」
フィーネもおどけるようにそう言ってエルナを見た。
エルナは恥ずかしそうに上目遣いになりつつも、チラチラと全員を見回しながらおずおずと言う。
「えっと、えっと、いいんですか? 高くないです?」
「あーまぁ値段はそこそこするが、滅多にでない物みたいだし、せっかくだから、別にかまわないさ」
「そーだな。その分頑張ってくれ、エルナ」
そう言ってミハエルがエルナの頭をポンポン叩いた。
顔を赤くしながら嬉しそうに笑うエルナに俺は水鱗を渡した。
エルナは水鱗を受け取るとじっと眺めとても嬉しそうにしていた。
フィーネもそんなエルナを見てとても微笑ましい顔をし、俺にチラリと視線を向けると、目でありがとうと礼を伝えてきた。
俺は小さく頷いてからエルナとフィーネを見ていった。
「銀細工師さんに加工してもらってネックレスとかにするといいんじゃないか?」
それを聞いたエルナがなるほど! という顔をしていたのでそのうちフィーネと作りにいくだろう。
俺はフィーネに俺の知ってる銀細工師さんを紹介しておいた。
エルナは水鱗を姉であるフィーネに見せて嬉しそうに笑いかけている。
昔からあまり我儘を言わないと以前フィーネが言っていたので、こうして喜んでくれているのは嬉しいことだろう。
そんな風に話ながらも段々と宝箱に近づいてきた。
「あのモンスターを倒した先にあるな」
「おう、ちゃっちゃと倒そうぜ」
ミハエルがそう言い、フィーネが頷いて、弓を引き絞った。
それを合図に戦闘が開始された。
俺はすぐにミノタウロス三体にルーツをかけ、アクアドッグにアースバレットを数発撃ちこむ。
すぐにミハエルが追いつき、俺とフィーネの攻撃で動きを止めてひるんでいるアクアドッグの一体の首を刎ね、もう一体の口の中に剣を刺す。
首を刎ねられたアクアドッグはすぐに煙となり、口の中を刺されたアクアドッグも少しして煙となり消えた。
残りのミノタウロスも倒し、ドロップ品の皮を拾うと先へ進む。
先頭を歩くミハエルが何かに気づいたのか、声をあげた。
「お、あれか」
多分宝箱を見つけたのだろう。
俺たちも少し歩くと先の方にぽつんと置かれた宝箱が見えた。
宝箱はこれまで見た木製のものではなく、鉄製のようだ。
「これまでの宝箱と違うな」
「そういやそーだな。鉄か」
とりあえず俺は宝箱を鑑定してみた。
---------------------
宝箱:レア
罠:なし
---------------------
「おお、レア宝箱らしいぞ? これは期待できそうだな」
どうやらレアな宝箱らしい。
ちょっとワクワクしながら宝箱を開けると、中には綺麗に畳まれた布が入っていた。
取り出してみると、それはローブのようだった。
当然レアな宝箱から出たローブなのですぐに鑑定をかけた。
---------------------
魔法のローブ
状態:最良
詳細:魔法抵抗(大) 物理防御(中) 魔法威力向上(中) 移動速度上昇(小) 麻痺・睡眠耐性(小) 汚れ防止
---------------------
「すげぇな。ルカが魔法かけてるみたいなローブじゃん」
「本当ね、すごいわね。こんなものもあるのね」
「すごいですねー」
「すごいな、これは。うん、これはエルナ用かな」
「えっ! なんでですか? ルカさんでいいと思うんですけど」
エルナの言葉に俺は苦笑して答えた。
「いや、さすがにこれは女性用みたいだから」
というのも、この魔法のローブ、スカート状の裾の左側部分に金の刺繍で大きな花が描かれているのと、スカート状の内側にミニスカートもあるのだ。
「あ、本当だ。可愛いですね。でもルカさんならいけると思いますよ!」
それは俺が女顔だからだろうが、俺は男なんです、エルナさん。
俺が困った顔をしていると、フィーネが苦笑して言った。
「エルナ、だめよ。ルカが可愛い顔をしているとしても、彼は男の子なのよ。女性ものは着たくないと思うわ」
「あ! そっか……。ごめんなさい、ルカさん。いい装備だから、私よりルカさんが着る方がいいと思って……」
そう言ってエルナがしょんぼりする。
「いや、いいんだ。確かにいい性能ではあるが、さすがに女性ものは遠慮したい。それに、エルナの魔法の威力があがれば、俺たちももっと助かるからな」
「そうそう、ルカが可愛くなっても俺としちゃ何も嬉しくねぇからな」
そう言いながらミハエルがケラケラと笑った。
それにフィーネがクスリと笑い続ける。
「そうね、可愛いルカも悪くないけど、私としてはルカにはカッコよくいてほしいわね」
ぐぬ。まさかのフィーネからの爆弾投下で俺の目が思わず泳いでしまう。
俺はすぐに視線を逸らしてから、エルナに言った。
「まぁ、そういうことだから、それはエルナが装備してくれ」
俺がそう言うとエルナは深く頭を下げた。
「ありがとうございます! 大切に着させてもらいます!」
とはいえ、ローブではあるのだが、どちらかというと服に近いので着替えが必要である。
皮鎧をつけたままでは装備することができなさそうだ。
近場のセーフゾーンに移動し、隅に衝立を立ててそこでエルナが着替えをした。
少しして出てきたエルナは実に似合っていた。
基本真っ白だが、ローブの内側は黒い布地のようで、上半身は体型にそれなりにしっかりそうタイプのようだ。
袖部分は末広がりになっていてだぼっとしており、袖の縁は金色の刺繍で彩られている。
下はスカート状なのだが、腰あたりから下の前部分が動きやすいように八の字に開いていて、後ろにもスリットが入っているようだ。
前が大きく開いているので、その代わりに中には丈がかなり短いヒラヒラしたスカートがある。
ただ、エルナはきちんとズボンもはいているので目のやり場に困ることはないようで安心だ。
スカート状の左側の裾にはワンポイントで刺繍の金色の大きな花が咲いている。
服のようなローブは柔らかいタイプではなく、少し硬めの生地のようで、大きなフードつきだ。
フードをかぶれば顔は完全に隠せるだろう。
ウエスト部分に黒い皮ベルトが斜めに三重に巻かれているが、どうも飾りベルトのようで服に固定されているらしい。
宝箱に綺麗に折りたたまれて入っていたわりにまったく皺もないのが不思議だ。
魔法のローブだからなんだろうけども。
「おー、エルナ似合ってるじゃん」
ミハエルの言葉にエルナがぱっと顔を輝かせた。
「本当ですか!」
「おう、いいと思うぜ」
「良かったです。えへへ、お姉ちゃん似合うって!」
「ええ、とっても可愛いわよ」
「ありがとう!」
そんな微笑ましい場面もありつつ、俺たちは六十階を目指して移動をしはじめた。
どうやらローブの効果はしっかりとあるようで、エルナのジャベリンではミノタウロスを急所以外で倒すのに二発必要だったのだが、俺と同じ一発で倒せるようになったようだ。
とはいえ、精度が上がったわけではないので、そこは訓練が必要だろう。
こうして残り三分の一というところまで来て俺たちはセーフゾーンへ移動して泊ることになった。
明日はダンジョンを出たらそのまま休みで、その翌日がパーティとなる。
若干ギリギリになってしまったが、みんな疲れてはいなさそうだし問題はないだろう。
それでも、今回は少し時間配分を適当にしすぎたので反省だな……。
相変わらず洞窟内だが快適な寝心地だ。
ベッドから下りた俺はアイテムボックスにそのままベッドを収納し、チラリとミハエルが寝るベッドを見た。
もぞもぞ動きだしているのでそのうち起きそうだ。
衝立の向こう側でもゴソゴソ音がするのできっと二人も起きて準備しているのだろう。
俺はとりあえず朝のスープでも用意しようと思い、地面に薪を置いて火をつけ、水を入れた鍋を焚火にかけた。
湯気が出始めたところで具現化魔法で作ったコンソメを放り込み、じゃがいもとキノコと切ったベーコンを入れる。
野菜が煮えたところで牛乳をいれて、最後に塩コショウで味をととのえ、醤油をほんの少し垂らして完成だ。
いい香りが漂い始めた頃、準備の終わったフィーネたちと目覚めたばかりというミハエルがやってきた。
「おはよう、みんな」
「うーす」
「おはよう。ルカ、ミハエル」
「おはようございます!」
全員が揃ったところで出来たミルクスープをよそって全員に配る。
みんな一口のんでほっと息をついている。
「エルナ、昨日はだいぶ発動が安定するようになったな」
「はい! 失敗はほとんどなくなりました! でも、精度がまだまだです。思ったところに飛んでくれなくて」
「まぁそこらへんは慣れだろうな。ジャベリンがどう飛んで行くかを想像して射出するようにすればうまくいくかもな」
「なるほどです。今日はそのあたりを意識してみます!」
「うん」
このパーティの中ではエルナだけがどちらかというと見劣りしてしまう戦闘能力だ。
俺がいなければ魔法使いとしてはかなり優秀なのだが、俺がいることで見劣りしてしまう。
だけどエルナはそのへんで腐らずに、くらいついてきている。
そもそも魔法使いとしては俺が異常なだけであって、エルナはかなり優秀なのだ。
もしかしたらエルナ自身気づかずそのことでストレスを重ねているかもしれないのでそこが心配ではあるのだが、時折ミハエルがエルナに何か声をかけてはエルナが笑顔を見せているのできっと大丈夫だろう。
以前聞くつもりはなかったが耳に入った言葉があって、さすがイケメンだなと思ったことがあった。
『エルナはすげぇな。助かってるぜ』なんてことを言って、エルナの頭をポンポンしていたのだ。
計算なのか、天然なのか、イケメンですね。
そうしてセーフゾーンにある荷物を片付け、俺たちは次の階層、五十九階へ向けて移動した。
階段を下りてミニマップを確認すると久しぶりの宝箱があった。
「お、宝箱だ。久しぶりだな」
「お? まじか。すげぇ久々じゃね?」
「前回見たのは四十五階じゃなかったかな?」
「確かそうよ、そのあとBランク試験の説明を聞いたはずだもの」
「ああ、そうだったな」
そうしてかなり久々の宝箱を目指して移動を始めた。
この階ではアクアドッグが一匹増えて二匹になった。
ここからはミノタウロスにルーツをかけてから、俺とフィーネがアクアドッグを先制攻撃し、すぐにミハエルが止めを刺すという戦法に切り替えた。
エルナは変わらずミノタウロス相手だが、もう不発はほぼないのであとは精度の訓練だ。
せっせと狩りをしつつ移動していると、宝箱までもうすぐ、というところでアクアドッグが消えたあとに何かキラキラしたものが落ちた。
全部を倒したあとでそれを回収すると、なんとも綺麗な鱗だった。
アクアドッグと同じ色なのであの体に生えてた鱗だろう。
鑑定してみると、やはり、アクアドッグの水鱗というらしい。
かなりレアなようで宝石と同じ扱いのようだが、魔法の水鱗のようだ。
何せこの鱗は硬いというのに、触れれば水のように鱗の表面に波紋が広がるのだ。
だけど別に水に濡れることはないという本当に不思議な鱗なのだ。
アクママリン色の水鱗は光に透かすと鱗内で光が乱反射してまるで光が鱗の中で乱舞しているようで、本当に美しい。
「わぁ! すっごく綺麗ですね!」
「本当ね、とても綺麗だわ」
「おー、まじだ。すげぇな」
エルナがとてもキラキラした目で水鱗を見ていたので思わず言ってしまった。
「いるか?」
「えっ! いえ! いいですいいです!」
「そうか? 別にいいぞ。なぁミハエル?フィーネ」
「おう、別にいいぜ」
「エルナがいらないなら私がもらおうかしら?」
フィーネもおどけるようにそう言ってエルナを見た。
エルナは恥ずかしそうに上目遣いになりつつも、チラチラと全員を見回しながらおずおずと言う。
「えっと、えっと、いいんですか? 高くないです?」
「あーまぁ値段はそこそこするが、滅多にでない物みたいだし、せっかくだから、別にかまわないさ」
「そーだな。その分頑張ってくれ、エルナ」
そう言ってミハエルがエルナの頭をポンポン叩いた。
顔を赤くしながら嬉しそうに笑うエルナに俺は水鱗を渡した。
エルナは水鱗を受け取るとじっと眺めとても嬉しそうにしていた。
フィーネもそんなエルナを見てとても微笑ましい顔をし、俺にチラリと視線を向けると、目でありがとうと礼を伝えてきた。
俺は小さく頷いてからエルナとフィーネを見ていった。
「銀細工師さんに加工してもらってネックレスとかにするといいんじゃないか?」
それを聞いたエルナがなるほど! という顔をしていたのでそのうちフィーネと作りにいくだろう。
俺はフィーネに俺の知ってる銀細工師さんを紹介しておいた。
エルナは水鱗を姉であるフィーネに見せて嬉しそうに笑いかけている。
昔からあまり我儘を言わないと以前フィーネが言っていたので、こうして喜んでくれているのは嬉しいことだろう。
そんな風に話ながらも段々と宝箱に近づいてきた。
「あのモンスターを倒した先にあるな」
「おう、ちゃっちゃと倒そうぜ」
ミハエルがそう言い、フィーネが頷いて、弓を引き絞った。
それを合図に戦闘が開始された。
俺はすぐにミノタウロス三体にルーツをかけ、アクアドッグにアースバレットを数発撃ちこむ。
すぐにミハエルが追いつき、俺とフィーネの攻撃で動きを止めてひるんでいるアクアドッグの一体の首を刎ね、もう一体の口の中に剣を刺す。
首を刎ねられたアクアドッグはすぐに煙となり、口の中を刺されたアクアドッグも少しして煙となり消えた。
残りのミノタウロスも倒し、ドロップ品の皮を拾うと先へ進む。
先頭を歩くミハエルが何かに気づいたのか、声をあげた。
「お、あれか」
多分宝箱を見つけたのだろう。
俺たちも少し歩くと先の方にぽつんと置かれた宝箱が見えた。
宝箱はこれまで見た木製のものではなく、鉄製のようだ。
「これまでの宝箱と違うな」
「そういやそーだな。鉄か」
とりあえず俺は宝箱を鑑定してみた。
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宝箱:レア
罠:なし
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「おお、レア宝箱らしいぞ? これは期待できそうだな」
どうやらレアな宝箱らしい。
ちょっとワクワクしながら宝箱を開けると、中には綺麗に畳まれた布が入っていた。
取り出してみると、それはローブのようだった。
当然レアな宝箱から出たローブなのですぐに鑑定をかけた。
---------------------
魔法のローブ
状態:最良
詳細:魔法抵抗(大) 物理防御(中) 魔法威力向上(中) 移動速度上昇(小) 麻痺・睡眠耐性(小) 汚れ防止
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「すげぇな。ルカが魔法かけてるみたいなローブじゃん」
「本当ね、すごいわね。こんなものもあるのね」
「すごいですねー」
「すごいな、これは。うん、これはエルナ用かな」
「えっ! なんでですか? ルカさんでいいと思うんですけど」
エルナの言葉に俺は苦笑して答えた。
「いや、さすがにこれは女性用みたいだから」
というのも、この魔法のローブ、スカート状の裾の左側部分に金の刺繍で大きな花が描かれているのと、スカート状の内側にミニスカートもあるのだ。
「あ、本当だ。可愛いですね。でもルカさんならいけると思いますよ!」
それは俺が女顔だからだろうが、俺は男なんです、エルナさん。
俺が困った顔をしていると、フィーネが苦笑して言った。
「エルナ、だめよ。ルカが可愛い顔をしているとしても、彼は男の子なのよ。女性ものは着たくないと思うわ」
「あ! そっか……。ごめんなさい、ルカさん。いい装備だから、私よりルカさんが着る方がいいと思って……」
そう言ってエルナがしょんぼりする。
「いや、いいんだ。確かにいい性能ではあるが、さすがに女性ものは遠慮したい。それに、エルナの魔法の威力があがれば、俺たちももっと助かるからな」
「そうそう、ルカが可愛くなっても俺としちゃ何も嬉しくねぇからな」
そう言いながらミハエルがケラケラと笑った。
それにフィーネがクスリと笑い続ける。
「そうね、可愛いルカも悪くないけど、私としてはルカにはカッコよくいてほしいわね」
ぐぬ。まさかのフィーネからの爆弾投下で俺の目が思わず泳いでしまう。
俺はすぐに視線を逸らしてから、エルナに言った。
「まぁ、そういうことだから、それはエルナが装備してくれ」
俺がそう言うとエルナは深く頭を下げた。
「ありがとうございます! 大切に着させてもらいます!」
とはいえ、ローブではあるのだが、どちらかというと服に近いので着替えが必要である。
皮鎧をつけたままでは装備することができなさそうだ。
近場のセーフゾーンに移動し、隅に衝立を立ててそこでエルナが着替えをした。
少しして出てきたエルナは実に似合っていた。
基本真っ白だが、ローブの内側は黒い布地のようで、上半身は体型にそれなりにしっかりそうタイプのようだ。
袖部分は末広がりになっていてだぼっとしており、袖の縁は金色の刺繍で彩られている。
下はスカート状なのだが、腰あたりから下の前部分が動きやすいように八の字に開いていて、後ろにもスリットが入っているようだ。
前が大きく開いているので、その代わりに中には丈がかなり短いヒラヒラしたスカートがある。
ただ、エルナはきちんとズボンもはいているので目のやり場に困ることはないようで安心だ。
スカート状の左側の裾にはワンポイントで刺繍の金色の大きな花が咲いている。
服のようなローブは柔らかいタイプではなく、少し硬めの生地のようで、大きなフードつきだ。
フードをかぶれば顔は完全に隠せるだろう。
ウエスト部分に黒い皮ベルトが斜めに三重に巻かれているが、どうも飾りベルトのようで服に固定されているらしい。
宝箱に綺麗に折りたたまれて入っていたわりにまったく皺もないのが不思議だ。
魔法のローブだからなんだろうけども。
「おー、エルナ似合ってるじゃん」
ミハエルの言葉にエルナがぱっと顔を輝かせた。
「本当ですか!」
「おう、いいと思うぜ」
「良かったです。えへへ、お姉ちゃん似合うって!」
「ええ、とっても可愛いわよ」
「ありがとう!」
そんな微笑ましい場面もありつつ、俺たちは六十階を目指して移動をしはじめた。
どうやらローブの効果はしっかりとあるようで、エルナのジャベリンではミノタウロスを急所以外で倒すのに二発必要だったのだが、俺と同じ一発で倒せるようになったようだ。
とはいえ、精度が上がったわけではないので、そこは訓練が必要だろう。
こうして残り三分の一というところまで来て俺たちはセーフゾーンへ移動して泊ることになった。
明日はダンジョンを出たらそのまま休みで、その翌日がパーティとなる。
若干ギリギリになってしまったが、みんな疲れてはいなさそうだし問題はないだろう。
それでも、今回は少し時間配分を適当にしすぎたので反省だな……。
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