異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭

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第四章 仲間

67 エルナの決めた道

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 酒場での食事をとっていた俺たちは、今日からの宿について話した。
 これだけの稼ぎをとれるなら定宿を普通の宿にしても十分やっていけるからだ。

「まぁ、フィーネは確定で俺たちのパーティに入るから、このくらいは安定して稼げるようになるだろうし、そろそろ定宿を変えるか?」
「そーだな。いいんじゃねぇか? それに普通の宿屋ならそこで朝晩の飯も食えるだろ」
「ああ、そうだな。どこの宿屋がいいだろうな」
「あー、ギーレンの宿屋がいいんじゃね?」
「ギーレンの宿屋?」
「おう、マルセルのとこで働いてた時に、よく来てた客がいてさ。その宿屋泊ってたらしいんだけど、飯がうまいんだってさ」
「へー。じゃあ空いてそうだったらそこにしようか」
「だな」

 俺はスマフォを発動しつつ、ギーレンの宿屋について調べてみた。
 スマフォは本当になんでも出てくるな。便利だ。
 他人から見れば空中を目で追ってるように見えるからじっくり見られると不自然ではあるだろうけど、そんな風に人をじっと見るやつはいないので大丈夫だろう。
 ――まぁ、不審に思われたところで相手には変な奴って思われるだけだろうが。

「へー。宿は大銅貨五枚と銀貨一枚の部屋があるみたいだぞ」
「ふぅん? 違いは?」
「えーっと、大銅貨五枚の部屋は普通の部屋だな。安宿ほど狭くはないけど、机と椅子、ベッドにクローゼットもあるみたいだ。ただ、風呂は大風呂になるみたいだな」
「ほぅ。銀貨一枚の方は?」
「そっちは机にソファー、クローゼットに、ベッドと、小さいけど風呂つきらしい。すごいな」
「なるほどな。でもまぁ、俺は大銅貨五枚の方でいいかな」
「そうだな、俺もそっちでいいかな。男だしな」
「そういうこったな」

 こうして俺たちはギーレンの宿屋を定宿にすることに決めた。
 スマフォにも、料理がおいしいと評判と書いてあったのだ。
 しかしそれだけ評判だともしかしたら部屋が空いてない可能性もあるので、ダメだったら別の宿屋にする予定だ。

 そうしてギーレンの宿屋につくと、ちょうど二部屋空いていたようで俺たちはとりあえず三日分の料金、銀貨一枚と大銅貨五枚を払った。
 これで実際料理がおいしければ、さらに延長しようと思っている。

「そうそう、お兄さんたち、うちは泊まり客は朝食は無料だからね。ただ料理内容はこっち任せだよ!」
「そうなのか。それはありがたいな」
「うちの料理はおいしいから、楽しみにしてな!」

 そう言ってニッと笑うこの宿屋の女将さんであろうふくよかな女性が言った。
 朝食の時間は昼の鐘がなるまでの間は頼めるそうだ。
 明日が少し楽しみである。

 風呂場は宿屋の裏手にあるらしく、この宿屋の息子さんであろう人が俺たちを案内してくれた。
 なるほどうまくできているなと思わせるルートだった。

 というのも、一階の食堂を通ってしか行けない作りになっているので、どうしてもいい匂いのするところを通らねばならない。
 でも、食ってから風呂に行くという人は少なく、やはり風呂上りに食堂で飯を食うというパターンが多いそうだ。
 風呂上りは大体が喉が渇いているので、エールなどのお酒の注文も増える、という寸法だ。

 実に考えた作りだと思う。
 まぁ、俺たちはすでに飯は食ってきてしまったので、俺は、軽く訓練したあとそのまま風呂を利用して部屋へと行った。
 ――ミハエルはもう少し訓練するとのことだったので、俺だけ先に戻ってきている。

 風呂場も綺麗に掃除されていて、女将さんもいい人そうだったし、息子さんも優しい人だった。
 これはとてもいい宿屋が空いていたといえる。ミハエルに感謝だな。

 そうして俺はベッドに寝転がるとそのまま眠りについた。



 ――翌朝――

 目が覚めた俺は部屋にある小さな洗面台で顔を洗ってから、一階の食堂へと下りていった。
 浄化魔法は便利でいいが、やっぱり風呂に入ったりこうして顔を洗うというのはいいものだ。
 そういえば、この世界では虫歯というものは存在していないようで、そこは素直に嬉しい。
 ――もちろん虫歯がなくともこの世界には歯磨きという習慣はあるのだけども。

 階下に下りた俺は、食堂にある一つの机について、ミハエルが起きてくるのを待った。
 数分もするとミハエルが大きく欠伸をしながら下りてきた。
 俺が手をあげて場所を示すと、ミハエルも手をあげてこちらへ向かってきた。

「よー、おはよう、ルカ」
「眠そうだな、おはよう、ミハエル」
「んー昨日寝る前に訓練しすぎたな。裏庭が広いもんでよ、ちょっと頑張り過ぎた」
「ははは。安宿の時は裏庭狭かったからな」

 そうして俺たちは無料である朝食を頼んだ。
 朝食というにはボリュームがある食事で、ご飯かパンか選べるうえに肉と野菜がゴロゴロ入ったシチューと、たっぷりの野菜つきだった。
 味については文句なしにおいしかったので、今夜にでも延期をしようかなと考えている。

 朝食をとったあと俺たちはフィーネの家へと向かった。
 今日はエルナからの返事を聞く日だ。

 裏道に入り、フィーネの住む家へと向かう。
 しばらくして到着した俺は、家の扉をノックして声をかけた。
 すぐに返事があり、扉が開いた。

「おはよう、ルカ、ミハエル」
「ああ、おはよう、フィーネ」
「おう、おはよう」
「中へ入って頂戴」

 そうして中へ招かれてはいると、すでにエルナが待っていた。
 座るように促されて俺たちは席につく。
 今回はエルナが紅茶を用意してくれ、用意が終わるとエルナも席についた。

「おはようございます、ミハエルさん、ルカさん」

 若干の緊張を含む声でエルナがそういった。
 俺たちもそれに挨拶を返して、エルナの返事を聞くことになった。

「――それで、エルナの気持ちは決まったか?別に俺たちは君が違う道を選んでも問題ないと思ってる。それはそれで、君が幸せになる為の道だから、俺たちは祝福するよ」
「そうだな、無理に冒険者やるよりはいいぞ。冒険者は危険がつきもんだからな」
「そうね、お姉ちゃんも、エルナが幸せでいてくれたらそれだけで嬉しいもの」

 そう言ってフィーネはエルナに笑いかけた。
 エルナは俺たちの言葉を聞いて嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう、お姉ちゃん、二人とも。でも、私の心は決まってるんです。人型を殺すっていうのはとても辛かったです。目の前が真っ白になって、吐き気が止まらなくて。家に帰ってからも夢に出てきました。でも、私、冒険者を続けたいんです」
「でも、エルナ……そんな状態じゃ……」

 フィーネの心配ももっともだ。夢に見るほど苦しんでいるのなら難しいだろう。
 フィーネの心配する声にエルナは首を振った。

「昨日、お姉ちゃんには悪いと思ったけど、私一人で街から出てゴブリン狩りに行ったの」
「えっ! なんでそんな危ないことを!!」
「ごめんなさい。でも、私負けたくなかった。お姉ちゃんと、ミハエルさんと、ルカさんと、冒険者をしたかったの」
「エルナ……」
「一人で狩りに行って、一人でゴブリンを殺しました。探して探して、たくさん殺しました。何度も吐いたけど、最後には冷静に狩りができるようになりました。まだ本当の意味で慣れるにはもう少しかかるかもしれませんが、私も仲間にいれてください。お願いします」

 そう言ってエルナは頭を下げた。
 俺もミハエルもフィーネも、そんなエルナに驚き、だけど笑みを浮かべた。

「もちろんだ、エルナ。最初は誰だって慣れるのに時間はかかる。俺だって、何度も吐いたし、泣いた。今だって人型を殺すのは少し辛い。それはきっとみんな同じだ」
「そーだな。俺だって最初は苦しくて辛かった。今だって別に楽しんで殺してるわけじゃねぇしな。いやまぁ、昨日はちょっと剣のアップグレードで楽しんだ部分はあるけどよ」
「ふふ。そうね。エルナ、みんな一緒よ。お姉ちゃんだって最初は苦しかったわ。でも今は慣れたの。エルナは優しくていい子だから、慣れるのに少し時間がかかるかもしれないわ。だけど大丈夫。ゆっくり慣れればいいわ。それまでお姉ちゃんがサポートしてあげるから」

 俺たちの言葉に頭を下げていたエルナは顔をあげると涙を流した。

「ありがとう、ございます……」

 涙を流すエルナをフィーネは優しく抱きしめた。
 そうして暫くしてから、落ち着いたエルナにフィーネが話し始めた。

「あのね、エルナ。お姉ちゃん昨日二人と狩りに行ったらCランク試験を受けれるようになったの」
「わぁ! 良かったね! お姉ちゃん!」
「ありがとう。でもね、お姉ちゃんエルナと一緒に受けたいの」
「えっ でも、私を待ってたらいつになるか……」

 そう言ってエルナがしょんぼりしたところでフィーネは笑みを浮かべた。

「うふふ、そうでもないわ。多分きっとすぐにCランク試験を受けれるわ」
「え? どうして?」
「昨日ルカたちと一緒にダンジョンに狩りにいったけど、すごかったわ。二人といればエルナもすぐにCランク試験受けれるようになるわよ」

 フィーネの言葉にエルナは目を丸くしていたが、俺たちも事実なだけに苦笑を浮かべることしかできなかった。

「ま、そういうこった。心配すんな、エルナ」

 ミハエルのそんな言葉に、エルナは嬉しそうに微笑んだ。

「はい。私、頑張ります」

 そうして俺たちはまずは冒険者ギルドへと向かった。
 フィーネの試験について聞くためだ。

 ギルドについた俺たちはフィーネの希望で俺たちとエルナも一緒に試験の話を聞くことになった。
 やってきたのはやはりハゲたおっさん、ギルドマスターだった。

「またお前らか。今日はそっちの嬢ちゃんの試験の話だと聞いてたんだがな」
「そうですよ。俺らは付き添いです」

 そう俺が言うと、ギルドマスターはジトっとした目になって溜め息をつくと言い出した。

「あーまぁいい。とりあえずちょっと時間よこせ。まずはどうして今こうなってるか話せ」

 フィーネとエルナは俺とギルドマスターの関係を知らないので首を傾げていた。
 なので俺はまずギルドマスターとこういう関係になったことについて話し始めた。
 その話が終わったと、ギルドマスターにフィーネたちとの話をした。

「はー。まぁなんとも面白いことになってんな、おまえらは。まぁいい。しかしお前ら全員そのパッシブスキルってもんを持ってんのか。恐ろしいパーティの誕生だな」
「ギルドマスターもありますよ?」

 俺がそう言うと、ギルドマスターは驚いた顔をしていた。

「あれ、言ってませんでしたっけ……?」
「聞いてねーよ! なんだよ! 教えろよ!」
「すいません。ギルドマスターには、『大剣操作・中』っていうパッシブがついてますよ」
「ほお! なるほどな」

 ギルドマスターは思うところがあったのだろう、俺の話を聞いてうんうんと頷いている。
 まぁ実際にギルドマスターの得物は大剣なのでやはりそういうことなのだろう。

「というかだ、パッシブってかなりレアなんだろ?」
「そうですね、一応」
「その割に、おまえの周りにゃ俺含めて随分多いな」

 ギルドマスターの言葉に俺は深く頷いた。

「本当に。驚きです」
「ま、それもお前の運かね。――よし、それじゃ嬢ちゃん、Cランク試験の説明をするぞ」
「はい、お願います。ですがその前に一つよろしいですか?」
「ん? なんだ?」
「妹、エルナと一緒に私はCランク試験を受けたいのですが、それは可能ですか?」
「ふむ。まぁかまわんぞ。どうせこいつらと一緒にいたらそれもすぐだろ」
「ええ、そうだと思います」
「じゃ、そん時にまたまとめて説明してやるよ」

 そう言うとギルドマスターはニカッと笑った。

「はい、ありがとうございます」
「あー、確かお嬢ちゃんの方はまだGランクだったか?」

 そう言ってギルドマスターはエルナを見た。
 エルナは緊張した面持ちでそれに答えた。

「は、はい! そうです!」
「まぁ、多分すぐにCランク試験受けれるようになるだろうが……あれだな。ゴブリンは一人でやれよ」

 何かを見抜いたのか、ギルドマスターはエルナにそう告げた。
 エルナもしっかりと頷いた。

「はい! 移動は手伝ってもらいますが、私一人で倒すつもりです」
「おう、そうか。いい返事だ。百匹も倒しゃ慣れるってもんだ。頑張れよ」

 そう言うとギルドマスターはエルナの頭をクシャクシャと撫でた。
 やはりギルドマスターはすごいな。エルナが人型を殺すのを辛く思っているのを見抜いたのか。

 そうして俺たちはギルドマスターのもとを辞して、南門から街の外へと向かった。
 いつも通り人のいない場所で街道をそれて森に入り、光学迷彩と飛行魔法をかける。
 俺はフィーネと、ミハエルはエルナと手を繋ぎ、宙に舞い上がった。

 少しして最初のゴブリンが見つかった。

「あそこだ」
「ああ、あれか。ルカたちはそこで待っててくれ。俺とエルナだけで行ってくる」
「分かった」

 そう言うとミハエルはエルナを連れて下りていった。
 今回は別に姿を見せて対峙する必要はないので光学迷彩をかけたまま、とにかく数を殺すことを目標にしている。
 ギルドマスターの言葉で、エルナは依頼を受けずに百匹を狩ってそれでFランクを目指すことにしたらしい。
 彼女なりに慣れるための努力なのだろう。
 だから俺たちはそんなエルナを見守ることに決めたのだ。

 地上に下りていったエルナとミハエルを見送った俺はフィーネに声をかけた。

「フィーネ、空中で待機でも大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ。ありがとう、気遣ってくれて」
「いや」
「でも手は繋いだままでお願いね。まだ慣れないの」
「ああ、もちろんだ」

 そう言いつつも、俺とフィーネの目線は地上へと向いている。
 木々の隙間から、水の刃が飛ぶのが見えた。
 あれはエルナの得意とするアクアカッターだ。

「エルナ、頑張ったのね……」
「そうだな。まさか一人でゴブリン狩りに行くなんて」
「ええ、驚いたわ。……ずっとあの子は家にいて、両親にも兄にもとっても大事にされてきたの。私も可愛いあの子が大好きで、ずっと大切にしてきたわ」
「うん」
「だけど、大人しくて控えめなあの子が、自ら危険に飛び込んだ。しかもたった一人で。変わったのね、あの子も」
「そうだな、エルナも守られるだけの子供ではなくなったんだと思う」
「ええ、そうなのでしょうね。なんだか少し寂しいわ。私の手から飛び立ってしまったようで」

 そう言って、なんだか少し寂しそうに微笑むフィーネ。
 だけど、それはエルナの踏み出した大きな一歩だ。

「君の手から飛び立ったけど、今度は君と共に並んで飛んでいるのさ」
「そう、そうね。私の手から飛び立って、今度は一緒に並んで飛んでるのよね」
「ああ、そうさ」

 そうしてエルナはその後も止まることなく、たった一人で百匹のゴブリンを倒してみせた。
 途中までは気分が悪そうではあったが、もうエルナの目には怯えも恐怖もない。
 決意と強い意志が伺える。

「お疲れ様、エルナ。頑張ったわね」
「うん、私やれたよ、お姉ちゃん。これでお姉ちゃんと冒険者を一緒にできるね」
「ええ、そうね。とても嬉しいわ」
「ミハエルさん、ルカさんも、ありがとうございました」

 そう言ってペコリと頭を下げるエルナ。
 俺もミハエルも笑みを浮かべて言った。

「頑張ったな、エルナ。これで君はFランクだ」
「おう、お疲れ、エルナ」

 俺たちの言葉にエルナは花が咲くような笑みを浮かべた。

「はい!」
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