異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭

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第二章 少年期 後編

36 新しいリバーシと俺の記憶

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 リバーシについての契約を交わした翌日、バルドゥルさんから少し相談されることになった。
 内容としては、あのままだとすぐに真似されてしまい、最初はいいが、長続きしないので他にいい案はないかというものだった。

 俺はそれに対して少し考えた後に出したのがまたもウードとの合作だった。
 この世界には一応磁石鉱石が存在していて、それはこの街にある鉱山ダンジョンから手軽に生み出される。
 ただそれはあまり価値は見出されていない。
 というのも、この世界は基本石と木でできており、鉄でできた物といえば鎧や武器、あるいはキッチン道具などで、磁石を取り付ける意味のない物ばかりなのだ。

 もちろん磁石のまま使われることもあるにはある。
 例えば、鉄の肩当に布をとりつけ磁石で挟んで取り外し可能なマント、などだ。
 ただ、それは引っ張れば外れてしまうので儀礼的な催しで装飾として付ける程度にしか使われないため大量に使われることはない。

 とはいえ、この磁石はそれなりに出るのではあるが、使い道がほとんどないためやはりクズ扱いされている。
 それでも売れるのは溶かしてしまえば磁気が消えて鉄として利用できるので、クズ鉄と同じ値段で買い取られるからだ。

 そこで俺は、前世友達の家にあった磁石リバーシを再現することにした。
 バルドゥルさんは俺の説明を軽く聞いた後、すぐにウードと、もう一人商人の人を呼びに行き、今は事務所のような所で俺が板書に書き込みをしながら、三人に説明しているところである。

 ――しかし、別に俺はあれを分解して中身を見たわけではないのでざっくりとした説明にはなるのではあるが。
 まず大雑把に構造の説明をして、二人が相談しながら完成させた。
 商人の人はそれを眺めているだけだが、色々と頭の中で販売ルートなどを考えているのだろう。

 完成する予定の新作リバーシはきっと職人技が光る一品になるはずだ。
 それでも、二人は今のままだとこれもいずれ真似はされると考え、木工、鍛冶の知恵を振り絞って特殊な加工を施すことにしたようだ。
 ――その話しを俺も聞いていたのだが、鉄と何かを合わせるだのなんだの、木を細工してどうのと正直分からなかった。
 さすがにそういう専門的な話しになると俺にはさっぱりだ。
 

 三人と相談し合いながら大まかに決まった内容で合意を得た。
 とりあえずは数日かけて試作品をまず完成させるとのことだ。
 ただ、完成すれば真似はされにくく、また磁石を簡単に入手できる鉱山ダンジョンがある街はそう多くないため、長期の売り上げが見込めるとのことである。

 売値に関しては木だけで作る方は大銅貨五枚のままで、新しい方は、裕福な平民向けの、装飾なしが銀貨五枚、そして貴族向けの装飾がされた物が大銀貨一枚から装飾の種類によって値上がるそうだ。

 どちらにしろどちらも売り上げの二割は俺の取り分だそうだ。
 新しい方は俺は何も貢献していないと言ったのだが、やはり知識分が技術料ということらしい。

 とはいえ、新しい方は実際素材の用意と作るのは彼らになるので、なんだか貰いすぎな気がしてならない。
 そのことも伝えてみて取り分を一割でいいと伝えたが、俺の考えがなければ生まれなかった商品なのだから、と、バルドゥルさんに再び拳骨を頂き、技術の安売りをするなと叱られてしまった。
 ウードは子供椅子の件もあって少しバツの悪そうな顔をしていたが、俺としては大雑把にこういうのと言っただけで、試行錯誤して作り上げたのはウードたちなので本当に気にしないでほしいところだ。


 そして、俺とウードとバルドゥルさんと商人の人は取り分についての合意をし、新しい分の契約書を交わすことになった。
 木の方も新しい方も俺の取り分は二割と固定である。これは完全に知識技術料金だ。
 木のリバーシは残りはバルドゥルさんと商人さんの取り分で、新しいのはそれにウードが加わる形になる。

 商人さんの見解では、木のリバーシは隣の領地までが精々販売できる金額で、本命は磁石リバーシの方らしい。
 真似されにくく、価格が変動するから遠くへ運んでもかなりの利益が出るそうである。

 ちなみに話し合いの後、お試しということで俺が作っていた木のリバーシで、ウードと商人さんが一度試し打ちしたのだが、中々に白熱していた。
 それを見ていたバルドゥルさんも二人の試合が終わったあと交代して打っていた。
 大変好評のようで俺も満足である。

 リバーシ打ちを終えたバルドゥルさんが俺に声をかけた。

「ルカ、またなんか思いついたらまずは俺に言え。ウードでも構わんが、ウードは根っからの職人だ。商売にゃ向いてねぇ。こいつはこいつで根っからの商人だ。どこまで行っても商人は信用はしても信頼は決してするな」

 その言葉にウードはむすっとしたが、商人さんはニコニコしていた。

「そうですなぁ。私は根っからの商人です。信用はしていただいて構いませんが、信頼はやめた方がよろしいでしょうな。はっはっはっ」
「まぁそうは言っても、こいつはそこらの商人よりゃ信用できる。取引相手との信用を裏切ることはせん」
「そうですな。一度でも信用を裏切れば、全て自分に跳ね返ってきますからなぁ。よっぽどの事がない限り私は裏切りだけは致しませんよ」
「そういうこったな。いいか、ルカ。なんか商売したり売るときはまず俺に相談しろ」
「はい、よろしくお願いします」

 俺はバルドゥルさんに頭を下げた。
 ウードはむすっとはしているが、実際それは事実なので黙っている。
 ――とはいえ、元々俺はリバーシを販売する気はなかったのではあるが。
 あくまでもこれは副産物に過ぎない。
 カールと遊ぶためのおもちゃを作りたかっただけなので、今後こうした販売をすることはないだろう。

 契約を終えた俺は今日の仕事をすませ、空いた時間にいそいそとリバーシ作りに邁進した。
 相変わらず不揃いなリバーシの石ではあるが、遊べればいいのだ。
 ――そうしてその日の仕事は終わり帰宅することになった。


「ただいまー」
「おかえり、ルカ」
「父さんは?」
「まだ帰ってないわ。一度戻ってきて今日は遅くなるって言ってたから先にご飯にしましょう。カールを呼んできてくれる?」
「うん、分かった」

 俺は子供部屋にいるであろうカールを呼びに向かった。

「カールー、お兄ちゃん帰ったよー」

 そう言って子供部屋を開けるとカールがバッと顔を上げニコーと笑い俺の方へやってきて抱き着いた。

「にーちゃ、おかえりー」

 俺は今死んでもいい!
 なんという天使。なんという可愛さ。
 俺は軽く身体強化をかけるとカールを抱き上げた。

「おーただいまー。カールは可愛いなぁ。もうご飯だから一緒に行こうなー」
「うん!」

 天使で超絶可愛い弟を抱き上げた俺はそのままで食卓へ向かった。
 食卓について三人で食事を始める。
 ふと久々に何も病気などはないかなと、鑑定をマリーにかけてみたら、予想外の結果が出た。
 ---------------------
 マリー・ローレンツ(27)
 人間:女性
 平民
 状態:健康(妊娠初期)
 効果:致死ダメージ軽減
 ---------------------

 俺は思わずマリーに聞いてしまった。
「母さん妊娠したの?」

 マリーは首を傾げて疑問を浮かべていた。

「え? どうして?」

 俺はしまったと思ったがもう遅い。
 素直に謝って鑑定魔法について話し、それで妊娠が分かったのだと伝えた。
 驚いてはいたが、優しく微笑むと怒ってはいないと言ってくれた。
 そして自分のまだ引っ込んでいるお腹を優しく撫でた。
 どうもまだ妊娠初期で気づいていなかったようだ。

「そう、妊娠してるのね。嬉しいわ。教えてくれてありがとう、ルカ」
「ううん。勝手に鑑定してごめん。でも、俺も楽しみ。無理はしないでね、母さん」
「ええ、気を付けるわ」

 カールはよく分からないようで首を傾げていた。天使だ。

「カールの弟か妹ができるんだよー。楽しみだねー」

 俺がそう声をかけると、カールは嬉しそうにニコーと笑った。
 どうしよう、俺死んじゃう。可愛すぎて死ぬ。
 そのうえ、また弟か妹が生まれたら俺はどうなるんだ。
 でも末っ子とは二年しか一緒にいれないのか。
 少し寂しくはあるが、頻繁に遊びに戻ってこよう。

 そして俺たちが寝る時間の少し前にウードが帰宅し、マリーは嬉しそうに妊娠報告をしていた。
 ウードは驚き、マリーを優しく抱きしめていた。
 いつまで経っても本当に仲の良い夫婦で、俺はそんなマリーとウードをみていると、時々ふと前世を思い出してしまう。

 親父はいつも母に命令ばかりしていた。
 母はそんな親父にいつも従っていた。
 俺の中ではそれが当たり前で普通だったし、俺が殴られるのも普通のことだった。
 だけど、それがおかしいと気づいたのは小学校高学年になってからだった。

 仲の良い友達の家に遊びに行った時、たまたまその家のお父さんがいた。
 俺にとって父親というのは恐怖以外の何物でもなかった。
 当然俺は親父にするように敬語で話しかけ挨拶をした。
 すると、友達の父親は俺の頭を優しく撫で、『しっかりした子だな』とほめてくれたのだ。
 そんなこと一度だってされたことがなかった。
 俺は心底驚いた。

 友達の父親は友達に、『お前も見習えよー』などと言い、友達は『うるさいなぁ』と口答えをしていた。
 それにも驚いたが、その後に、『お父さんに反抗した悪い子はお仕置きだー』と言い、父親が友達を抱きかかえくるくると回していたのだ。
 友達は嬉しそうに笑い声をあげていた。
 それはお仕置きでも何でもない、親子の愛情溢れる触れ合いだった。

 俺はその光景を見て、俺の家はおかしいのだと気付かされた。
 だけど、もっと早くから俺は違和感は感じていたのだ。
 俺は毎日のように体のどこかに痣を作っていたが、友達はそんなものはなかった。
 会話の中でも父親との楽しい話題を聞いたこともある。
 ただ、俺は認めたくなかったのだろう――普通ではない家庭を――

 俺はマリーとウードの抱き合う姿を見て、カールがそれに参加したところで、俺も二人に抱き着き、幸せを噛みしめていた。
 マリーもウードも、抱き着いてきた俺とカールを抱え込むように抱きしめてくれた。

 また一つ、俺の中の前世の記憶が今の暖かい記憶に置き換えられた気がする。
 忘れられるわけではないけれど、今のこちらが俺の愛しい家族なのだ。
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