異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭

文字の大きさ
上 下
31 / 148
第二章 少年期 前編

31 ミハエルの決意

しおりを挟む
 両親に決意表明をしてから数日が経った。
 あの後両親に防護の魔法についてを説明したところ、かなり驚いていたが、俺の気持ちを汲んでくれて魔法をかけることを了承してくれた。
 これで家族皆が突然の攻撃を受けても死ぬことは決してない。
 ただ、カールのこと含め両親からの要望で俺も納得したので、後々新しい魔法を開発してかけ直す予定だ。

 朝食後、カールと少し遊んでから俺は教会学校に向けて移動を始めた。
 今日も今日とてカールとの一時いっときの別れは辛い。
 しかしお兄ちゃんは行かねばならないのだ……!
 弟との暫しの辛い別れに涙していると、教会学校についた。

 いつものごとく先に来ているマルセルの隣に座り、時間ギリギリにミハエルもやってきた。
 ミハエルは今日も青痣を顔に作っている。
 最近は青痣の頻度がかなり上がっているので、本当にあの時防護魔法をかけて良かったと思っている。

「おはよう、ミハエル。また殴られたのか?」
「おはよう、ルカ、マルセル。ああ、本当に嫌になる」
「おはよう、大丈夫……?」
「ああ、ルカのおかげでな」

 青痣の部分をさすりながらミハエルはそういった。
 実際は痣などはなく、魔法がそう見せているだけなのだ。
 それでも痛々しくは見えるので、マルセルなどは少し涙目になっている。
 分かっていても、心優しいマルセルには辛いのだろう。


 学校が終わった後、マルセルは家の用事で先に帰ったが、俺はミハエルと少し遊んで帰ることにした。
 ――遊ぶというよりは買い食いしてだべってるだけだが。
 ミハエルは普段は学校終わりにバイトに行くのだが、今日は休みだ。
 大体こうして学校終わりに遊ぶ時はミハエルのバイトが休みの日だけである。
 まぁ、バイトと言っても本来は成人前の子供なんぞ雇ってくれる者はいないのだが、幸いなことに、マルセルの父親がミハエルの状況を知って雇ってくれているのだ。

 マルセルの父親はこの町ではそれなりに稼いでいるのと、人柄がよく皆から慕われていて人望もある。
 ミハエルの父親がどう思ってるかは知らないが、マルセルの父親には何も言ってはいないようで、ミハエルの稼いだお金についても手は出していないし、バイトについても何も言ってはいないらしい。
 とりあえず二人で屋台広場へと行き、適当に何か買って広場の一角に座り食べながら会話をする。

「そういやルカはもう親に言ったんだっけ?」
「ん?ああ、冒険者になることか?」
「そう」
「ああ、言ったぞ」
「そっか、どんな感じだったんだ?」
「心配はしてたけど、ちゃんと理解してくれたよ」
「そうか……いい親だな」
「そうだな」

 そこで少し会話が途切れ、俺達は黙って食べる。
 食べ終わったところでミハエルが言った。

「俺さ、成人したら家出ることにした」
「そうか」
「おう、でよ、まぁなんだ……」
「なんだよ?」
「……俺も一緒に行っていいか?足手まといかもしんねーけどさ」

 そう言って少し不安気に俺を見てきた。
 だから俺はニッと笑ってミハエルに言う。

「何言ってんだ。お前なら大歓迎だよ」

 俺の言葉にミハエルは少し照れたようにニカッと笑った。

「そっか、ありがとな、ルカ」
「ただ一つ言っとくことがある」
「なんだ?」
「まだ俺は隠してることがある。でも、それは学校を卒業してなおミハエルが冒険者になる気があったら、その時に少し話す。それでも、いいか?」
「ああ、全然かまわねぇよ」
「そうか。なら、よろしくな!」
「おう、よろしくな、ルカ」

 俺達は成人したらパーティを組んで冒険者になる約束をした。
 と言ってもミハエルが人型を殺せるかどうかによるが。
 その踏み絵は卒業した時にやることになるだろう。

 ただそうとなれば、俺は新しい魔法を開発しておかねばならない。
 元々は一人で冒険者をやっていくつもりで開発した魔法ばかりなので、ミハエルと共に冒険者をやるなら仲間にかけれる魔法を開発しておくのは必要だろう。

「じゃあな、ルカ。マルセルには明日俺が話すよ」
「ああ、分かった。また明日な、ミハエル」

 ミハエルと夕方近くまで話し込んだ後、俺たちは別れそれぞれ家へと戻ることになった。
しおりを挟む
感想 79

あなたにおすすめの小説

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます

蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜 誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。 スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。 そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。 「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。 スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。 また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

処理中です...