異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭

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第一章 幼少期

21 予想以上にこの世界の魔法は弱い

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 マリーのいる部屋へ行くと、マリーはもう目を覚ましていたようだ。
 赤ちゃんを抱いておっぱいをあげているところだった。
 その目はとても優しく、ほんのちょっとだけ弟に嫉妬してしまった。
 でも、俺を見て笑みを向けてくれたマリーを見て、そんな嫉妬心はふきとんだ。

「マリー、もう大丈夫なのか?」
「ええ、起き上がるくらいなら平気よ」

 思わず俺はウードに声をかけてしまう。

「パパ、ママに回復魔法かけていい?」

 俺の言葉にウードもマリーも驚く。

「ルカ、あなた回復魔法も使えるの?」

 マリーの言葉に俺は頷いた。
 もちろん、回復魔法どころか、蘇生魔法も使えるけど、それはさすがに言わないでおこう。
 驚いていた二人だったが、マリーが笑顔で頷いた。

「ルカがママのためにかけてくれるんだもの、喜んでお願いするわ」
「そうだな、でもルカ、お外では絶対に見せないようにするんだぞ」
「うん、パパ。じゃあママに回復魔法かけるね」

 俺は裂傷や骨折も治療できるハイヒールをマリーにかけた。
 緑色の淡い光がマリーと、マリーに抱かれた弟を包み込む。

 その光景を見ていたウードは内心で激しく動揺していた。
 というのも、マリーは気づいてはいないが、手もかざさずに、回復魔法で全身を包み込むほどの威力は普通はないのだ。
 ウードはたまたま知り合いに回復魔法の使い手がおり、彼からその話を聞いたことがある。
 通常は治療したい場所に手をかざして部分的に回復魔法をかけるのだ。
 回復魔法は通常よりもかなり魔力の消費が激しいから、全身になんてかけたら魔力枯渇で倒れてしまう。
 もし、全身にかけれる者がいれば、それはもう伝説級だろうな、と彼は笑って言っていた。
 そして、そんな者はこの国、いや世界では一度だって現れていない、とも。
 そんな伝説の存在が今目の前にいる己の愛する息子なのだ。
 愛する母に治療をできて満足そうに笑う息子を見たウードは、きちんと話をする必要があると強く思った。

「ママ痛いの治った?」
「ええ、本当に回復魔法ってすごいのね、もう痛い所はどこにもないわよ。ルカ、ありがとう」
「うん!」

 俺は至極満足していた。
 暫くそうして弟を眺めて過ごしていたが、ウードにそろそろママを休ませようなと言われ部屋を出た。
 部屋を出た俺はそのまま自室に行こうとしたのだが、ウードに止められた。

「ルカ、少しパパとお話をしよう」

 俺は首を傾げつつも頷いた。
 そのままキッチンへ行くと食卓の椅子に座らされ、向かいにはウードが座った。

「ルカ、少し真面目なお話だ。ちゃんと聞くんだよ?」
「うん」
「お前がどこまで理解できるかは分からないが、これだけは話しておかないといけないんだ」

 随分真剣な顔をしたウードに俺は喉を鳴らして頷く。

「パパの知り合いに、回復魔法の使い手がいるんだ――」

 そう言って話し始めたウードの内容に俺は驚きを隠せなかった。
 まさか全身にヒールをかける程度で伝説の存在になってしまうなんて。
 俺が考えるよりも遥かにこの世界の魔法使いはあまり強くないようだ。
 そして俺が微妙にショックを受けたのが、魔素の呼び名だった。
 普通に魔力だって……。くそぅ、カッコイイ言葉考えたと思ってたのに。

「だからルカ、外では絶対に、緊急時以外では本当に魔法を使ってはいけない。お前の能力は素晴らしい物だ、だけど、今それを知られると、二度とパパたちと会えなくなってしまう。パパはそんなのは嫌なんだ。だから、お前が大きくなるまでは決して人に知られてはいけない。いいね?」
「うん。僕、パパたち以外には魔法は使わないし、見せないよ」
「ああ、いい子だ。だがなルカ、俺たちにもできるだけ使わないようにしなさい。どこで誰が見ているか分からないからな。ただ、十歳を迎えたら、お前の判断で行動しなさい。それまではパパとの約束を守ってくれるね?」
「うん、分かった」

 そうして俺はウードとの話し合いを終え、自室へと戻った。
 クセとなった消音魔法とロックを部屋にかけ、俺は独りごちる。

「はー、しかし予想以上の世界だなぁ。まさかここまでとは思わなかったな」

 だが、と俺は考えた。
 俺は冒険者になるのだ。国になど絶対仕えたくない。
 せっかく、魔法と剣のファンタジーな世界に来たのに、一生を役所みたいなとこで暮らすなんてまっぴらごめんだ。
 とはいえ、派手な行動はできないし、以前あの冒険者のお姉さんに聞いたことを更に詳しく調べる必要がある。
 というか、俺は知らないことが多すぎるのだ。
 この世界、というか国の通貨も知らないし、文字も知らない。
 知らないことが多すぎる。
 とはいえ、この世界は真っ白な綺麗な紙というのは大変高級品で、羊皮紙の次に高い。
 商人などは契約の時に羊皮紙や高級紙を使ったりするそうだが、普通の平民では手にすることはほとんどない、というのは以前ウードに聞いたことがある。
 普通の平民は板に書き込むか、かなり質の悪いガサガサの紙を利用したりするそうだ。

 ということはだ、図書館などは絶対にないということだ。
 定番なら冒険者ギルドにモンスター関連の冊子があったり、城の中に書庫があるとか、後は貴族が持ってる書庫だろうか。
 まぁ、要するに、平民である俺には読めるのはギルドにありそうな物くらいなのだが、それも子供の俺はきっと見ることができないだろう。
 まぁそうなるとウードやマリーに聞いたりとなるのだが、彼らとてただの平民だ。
 それほど物を知っているわけじゃないだろう。

 しかしそうなるとどうすればいいのか、いっそ魔法で作り出すべきか?
 それがいいかもしれない。
 結局はイメージさえしっかりしてれば魔法は答えてくれるのだから。
 まずはイメージを固めるために魔法の名前を決めよう。
 何がいいかな。
 完璧な本、すべてをここに詰めた本、賢者の書。 
 あ! ソロモンの鍵! でも鍵ってなんかイメージが湧かないな。
 ソロモンの書にしようかな。あれ? でもソロモンの鍵って魔法本だっけ?
 あ、一度そう考えたらもうダメだ。魔法本としかイメージできない、しまったなー。
 となると……、賢者もなんか違うし、あ、これにしよう。
 英知の書、うん。それっぽい! いいね!

 魔法の名前は決まったけど、人に見える物はだめだな。
 そうだな、ノートくらいのサイズで、俺には見えて人には見えず、空中に固定されたスマフォのような物。
 操作は思考でできれば楽でいい。
 検索機能、ブックマーク機能はデフォで、後は随時追加すればいいだろう。
 後はこのイメージを強く持って、魔法を作り上げる。
 ――できた。

 よし、早速使ってみよう。
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