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最強課長伝説の幕開け
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「課長、休日は何をなさってるんですか?」
とあるビルのオフィス。
女性社員は隣の席でデスクワークに勤しむ課長に、何気無い質問をした。
課長は一度キーボードから指を離し、女性社員の方へと顔を向けた。
「うーん。……ま、色々とね」
「もう、課長ったらそう言っていつもはぐらかしますよね」
「そんな事ないさ」
適当にごまかす課長。
彼の年齢は見た所50手前ぐらい。眼鏡をかけていて……はげている。
他にはこれといった特徴も無いおっさんだ。
「隠す事ないじゃないですか……はっ! まさか危ない事をしてるとか!?」
「流石にそれは無いよ」
「もー教えてくれてもいいじゃ……って、あれ何ですかね」
女性社員はビル窓の外を指差した。
「ん? どれどれ……」
課長は指の先へと視線を向ける。。
すると、目に入るのはこちらに向かって来る大きな何か。
目を凝らしてみると、それが何なのか分かる。
強大な質量と共に空を飛ぶ巨体。風を切り裂き突き進む白い両翼。
それは──飛行機だ。
「か、課長!! 飛行機がこっちに!」
女性社員は驚き、椅子から転げ落ちる。
それは何も彼女だけでは無い。
気が付くとオフィスは、驚愕と恐怖によって支配されていた。
「まぁまぁ落ち着きたまえよ、佐藤くん」
しかし、課長は一切慌てない。
おもむろに席を立ち上がり、オフィスの窓際へと向かう。そして腰を落とし、左手の人差し指を突き出した。
「か、課長!? 何を!?」
「佐藤くん。僕はね、書類を作る為に"一日十万字"という膨大な文字数をタイピングしてきたのだよ」
「いや、嘘ですよね……」
「本当だよ。課長とはそれ程までに過酷なのだよ」
真剣な眼差し。
嘘をついているとは思えない。
「でも、もしそうだとして……今の状況と何の関係が?」
「見ていてくれたまえ。すぐにわかるさ、私の『一日十万字、感謝のタイピング』(*1)がね」
そう言う間にも、突っ込んで来る飛行機はビルにどんどんと近づいてくる。このままでは、じきにビルにぶつかる。
なのに課長は指先に全神経を集中している。
死に瀕して、おかしくなったのだと誰もが思った。
しかし、
「セイッ!」
──チュ! ドオオオオォォォォーーンンンッッッッ!!!!
飛行機は空中で爆発四散する。
課長の指先から放たれた青いビームによって。
「ふぅ……久しぶりだとこんなものかな?」
「……」
「ん? どうしたんだい?」
「……」
「佐藤くん、皆、どうして固まってるんだい?」
「……」
呆気にとられ、静まり返るオフィス。
しかしすぐに、
「はあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」
全員が同じような叫び声を上げた。
そして各々が疑問を口にし出した。
「課長! なんなんすか今のは!?」
「ぜんっっぜんタイピング関係ないし!!」
「人間の手からビームは出ませんよね普通!?」
「いつからフリ○ザ様になったんですか!?」
「いや、ピ○コロだろ!」
「どっちでもいいよ! だって人間の手からビームは出ないもん!」
唐突に始まった質問責め。
だが、それらに答える暇は無く、
ピカアアァァ──……
と身体が淡い光に包また。
「課長!? 今度は何なんですか!?」
「いや、私は何も……」
嘘偽りなく、何もしていない。
しかし、課長が何もしていなかったとしても、誰かが淡い光を放ったのは事実だ。
そして、その"誰か"とは──
◇◇◇
「ん? ここは?」
課長の目が覚めると、そこは見知らぬ場所だった。
地面は雲のよう。壁と天井はない。更に物一つない。
例えるなら、まるで空の上。
だが唯一。
目の前に何かがいる。
最初目にした時はそれが何なのか分からなかった。というか理解が追い付かなかった。
まぁそれも仕方ない。
何故ならその何かとは「ふんどし一丁でブリッジをするおっさん」なのだから。
「……え?」
呆然とする課長。眼鏡がずり落ち、口が半開きになる。
その様子を見て、変態はブリッジを維持したまま話し始めた。
「やぁ! はじめまして! 私は地球の神!」
「嘘は良くないね」
「本当なの! 地球という星は変態が多すぎて、神様こうなっちゃうの!」
「そうか……」
何故か納得する。心当たりがあるからだ。
「物分かりがいいね、課長さん!」
「ありがとう。だが……"さん"づけ? 神の方が偉いだろうに」
「いいや! 私みたいな神なんて、到底君には勝てないよ!
「確かにな……」
課長は再度納得する。
確かに、一般人でもふんどしブリッジど変態には勝てそうだ。男性最大の弱点を突き出しているし……ゲフンゲフン。
「それでその地球の神がわざわざ僕に何の用なんだい?」
「単刀直入に言うよ! 課長さんを異世界に転生させることにしたんだ!」
「ほう。何故なんだい?」
「課長さん地球にいると、宇宙の法則が乱れるからさ!」(*2)
明らかに人の世界の理を外れた力。課長はそれを有している。
だが本人はそれを自覚していない。
「そうなのか?」
「そうだよ!! 頼むから異世界に行ってくれないかな!」
「ふむ……」
長考する。
もし異世界に行けば、大好きな娯楽から離れざるを得なくなる。
しかし仕事を辞め、好きなように生きていくことが出来る。
安定を取るなら前者だろう。後者は何があるか分からない。
課長の脳内天秤は地球に傾きかけたが……
「課長さんには転生特典をあげるよ!」
ふんどし神様によって異世界に引っ張られた。
「……ほう、最近の流行りだな」
課長の若い頃はSFや漢らしい作品が多かった。
しかし現代ではファンタジーが圧倒的に多く、転生物が大人気だ。
そして、その中でもテンプレと言えば──チート能力だ。
「ふむ……それはどのような形でもいいのかい?」
「うん! スライムになったり、スマホを持って行ったり、なんでもいいよ!」(*3)
「そうか。なら──"若さ"をくれないか?」
50手前の人間が求める望み。
課長も視力と頭髪と健康、そしてその他諸々について、何か思う所があるのだろう。
神もそれを汲んでか、理解を示した。
「分かったよ! なら、課長さんには永遠の若さを与えるね! どれくらいの年齢が良い?」
「そうだな……色々と嗜める20代前半で頼むよ」
「オーケー! じゃあいくよ! うりゃ!」
ふんどしから光のビームが放たれれる。
言いたい事は色々とあるが、課長は大人しくそれを食らった。
そしてビームを食らった直後。
肌に艶を戻る。毛髪が生えてくる。眼鏡が必要なくなる。節々の痛みが消える。
そうして──若返る。
年の頃は要望通り20代前半。見た目は黒髪黒目。中肉中背。一般的なジャパニーズだ。
どうせならもっと高身長のイケメンにして欲しかったかもしれない。しかし一切そんな事は思わない。
それ程、若返るという事への喜びは計り知れないのだ。
「おぉ! マジで若返った!」
「口調も若返ったね! ……あと、他に欲しい能力とかある? 少しくらいならいいよ!」
「なら、ステータスを見れるようにしてもらっていいか? ほら、フ〇イファンとかの」
「あぁ、エフ〇フのね!」(*4)
「ん?」
「え?」
流れる気まずい空気。
だが、課長は大人だった。
「……ドラ〇エみたいなやつ」
「分かったよ! ほい!」
再度、ふんどしからビームが放たれる。再度、身に受ける。
「これでいいのか?」
「うん! じゃあ早速、課長さんを転生させるね!」
そう言うなり、神のふんどしから光が漏れ出す。
その光は周囲に広がり、課長の身体を包み込んでいく。
そして──課長は異世界へと転生した。
─────
*1)一日一万回、感謝の正拳突き。
ハンタ〇ハンタ〇に出てくる会長の、修行に関しての話。
気が付けば音を置き去りにしていた。
*2)宇宙の 法則が 乱れる!
FF5、ラスボス戦に出てくるメッセージ。
グランドクロスッ!!
*3)転ス〇と、異世界ス〇ホ。
どっちもアニメ化作品。
気になったら是非見てね。
*4)ファイフ〇ンと〇フエフ
現在でも度々論争になる略称問題。
作者は昔ファイファ〇教徒だったが、エ〇エフ教に改宗した。
◇◇◇
「うぅ……」
顔を覆いたくなるような眩い光が去り、視界が徐々に戻って来る。
そして今いる場所がどこだか分かるようになるなるまで、それ程時間はかからなかった。
「ここが、異世界か?」
目の前に広がるのは一面の原野。
緑の草がそこら中に生い茂り、太陽の光がさんさんと降り注ぐ。空には雲一つない青空が広がり、爽やかな風が吹き抜ける。
現代日本のオフィス街では決して見る事の出来ない長閑な景色だ。
たまにはこうした場所で羽を休めるのもいいかもしれない。と、課長も初めは思った。
しかし。
あまりにも長閑"すぎる"。
見た所、大して舗装もされていない道が一本あるだけで、周囲には雑草の他に何もない。
これでどうやって生き抜けと言うのか。
「うーん、いきなりこんな所に放り出されても困るな……」
困り果てる課長。
せめて標識があればいいが、それすら目に見える範囲には無い。
こうなれば道に沿って歩くか、誰かが通りかかるのを待つかしかないだろう──普通の人なら。
だが、彼は課長だ。
バスや電車で寝過ごして、誰もいない場所に放り出された事も一度や二度では無いはずだ。
故に、こうした際にとるべき行動は心得ている。
「すぅ……はぁーーー……」
軽く息を吸い、深く息を吐く。
そして体内の"気"を練り、
「とうっ!!」
垂直にジャンプする。十メートルも。
それは人智を遥かに越す跳躍力。
棒無しで棒高跳びと張り合っているようなものだ。
おそらく前世はバッタか兎だったのだろう。
しかし、そんな事は課長にとってどうでもいい。
それよりも、
「ふむ……あれは?」
空中から見える景色の中に、目を引くものがある。
それは、一人の少女と三人の男達だ。
少女は金のショートカットに琥珀色の瞳。褐色の肌と比較的小さな身体つきの可愛らしい見た目。
だがその手には短剣を持ち、三人の男達と睨んでいる。
男達はいづれもが革の防具を身に纏い、どこかガラの悪い容貌。
手には長剣を手にし、少女にその白刃の切先を向けている。
「テンプレだな……悪くない!」
課長はスタッと華麗に着地する。
そして、大地を削る勢いで駆け出した。
「げっへっへ、早く情報を渡した方が身の為だぜ」
「命あるうちに渡しな~」
「絶対に渡さないからな!」
睨みあう3人と1人。
だが、その睨みあいは短く、戦闘の口火が切られるのは早かった。
「なら、力ずくでもッ!」
三人の内。一人が剣が掲げ、少女に向かって駆け出す。
少女までの距離はおよそ5歩。かなり近い。
だが、剣に勢いを乗せるには十分だ。
「おらぁ!」
少女の元へと着くなり、男は強力な振り下ろしを放つ。
それは筋力と体格を活かし、更に助走をつけた雄々しい一撃。
少女はそれに対し、短剣を横薙ぐ。
的確なタイミングで男の白刃に自身の短剣をぶつけ、無理矢理剣先を逸らした。
「がっ!」
男は大地を斬る。剣先を逸らされ、空振ったのだ。
更に外したという実感と共に体勢を崩す。
「私の勝ち。何で負けたか明日までに考えておく事だな──」(*1)
眼前の勝利に微笑む少女。
だが、
「『ライトニングボルト』!」
男の仲間が放った電撃の矢を躱せなかった。
「うわああぁぁ!!」
全身に流れる電気と痛み。
抵抗の出来ない痺れを伴いながら、少女はその場に倒れてしまった。
「ふぃ~助かったぜー」
「早くそいつを殺せ!」
「いや、その前に~……」
下卑た表情を浮かべる。動けなくなった少女を見て、よからぬ事を考えているのだろう。
眼はにんまりとて、鼻の舌が伸びている。
しかし。
男の顔は歪んだ。
「アンパーーンチッッ!!」(*2)
課長の鉄拳によって──
「ぐふおおぉぉっ!!」
男は頬を殴られ、大きく吹き飛ぶ。地面に着いたかと思えば、殴られた勢いのまま原野を転がる。
そしてようやく静止した時。
男の意識は無かった。
「だ、誰だお前!?」
「み、見えなかった!?」
唐突に現れた乱入者に驚きを隠せない残り二人。
「な、仲間が!」
「く、くそっ!」
「……」
「急に現れて、誰なんだお前は!?」
「名を名乗れ!」
「はぁ……ただの課長だよ」
──瞬時。
課長が駆ける。
そして目にも止まらぬ速さで、
「とうっ!」
顔面への跳び膝蹴り。
人体の強固な部分による一撃の重みは計り知れず、男の一人は白目を剥きながら、崩れ落ちる。
「ひとぉつ……!」(*3)
更に課長は止まらない。
一足で間合いを詰め、もう一人の男の眼前に近づく。
そして、握り締める拳、鋭い踏み込み、それらを巧みに駆使し、
「せいっ!」
鳩尾に逆突きを放つ。
あまりの威力に耐え切れず、男は「うぅ……」と低い呻きをこぼしながら、腹を抱え、その場に崩れ落ちた。
「勝った……」
圧倒的な勝利。これぞ俺TUEEEEE!!!
イキった台詞の一つでも言いたくなる。
しかし自身の強さに溺れる事は無く、少女の元へと駆け寄った。
「大丈夫? 怪我はない?」
「……」
「どこか痛むの?」
心配する課長。
だが少女はそんな課長の手を握ると、
「……すっ……すげえええぇぇぇーーーっっ!!!」
大声を上げた。
─────
*1)本田じゃんけん。
本〇圭佑とペプシを賭けて行われる、死のじゃんけん。
たかがじゃんけんと思ってはいけない。
*2)某あんぱん系正義のヒーローの必殺技。
食らえば星になる、物理的に。
*3)SEKIROというゲームに出てくる台詞。
梟と呼ばれるNINJAに殺されると、これを言われ、後に説教される。
ちなみに作者はSEKIROトロコン済(どやぁ……
◇◇◇
心配する課長。
だが少女はそんな課長の手を握ると、
「……すっ……すげえええぇぇぇーーーっっ!!!」
大声を上げた。
少女はらんらんとした瞳で課長を見、強く手を握る。そこに籠められているのは感謝と憧憬だろう。
そしてこんな可愛い少女に褒められて、嬉しくないはずも無く、
「そ、そうかな……?」
課長は照れる。
勝手に目が泳ぎ、それを隠す為か、気恥ずかしそうに顔をそらす。
「すげーよ! 私、あんな速い一撃見た事ねーもん!」
「おっふ……」(*1)
「絶対に名のある武闘家かモンクだろ!」
「お、おっふ……」
「本当助けてくれてありがとな! 名前はなんて言うんだ?」
「名前か……」
本名を言うべきか、言わないべきか。大変に悩ましい所ではある。
しかし、「ここは異世界であり、過去が関係ない」という事を考えると……本名では無く、偽名を使いたくなる。
「うーん……」
偽名を使うなら、せめてかっこいい偽名を使いたい。ヴァレンシュタイン(*2)とか、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世(*3)とか。
出来るだけ中二心をくすぐるものがいいだろう。と考え、課長は熟考するが、
「……」
課長には思いつかなかった。
思えば課長は、ゲームの主人公名を本名か"課長"と打ち込むタイプだったのだ。
そして、そんな彼が出した結論は当然、
「……課長だ」
「おぉ! カチョーって言うのか」
異世界に来ても課長呼び。
別に嫌という訳ではないが、どこか勿体無い事をした気分になって来る。
「……あぁ。宜しくな」
「よろしく、カチョー!」
「所で、こいつらは何なんだ?」
先程の三人組を指差す。
「そいつらは盗賊だよ。この辺に拠点があるんだ」
盗賊──。
現代日本では聞き馴染みの無い言葉に一瞬戸惑うが、ここは異世界だ。いたとしても何らおかしくない。
「へー。で、君は何で絡まれてたんだ?」
ただの金目的であれば、そう易々と命のやり取りには発展しないはずだ。
しかし現実は違う。少女は話半ばに斬りかかられていた。
そこには何かしらの理由があるはずだ。
「実は私、斥候なんだ」
「ほう」
「あの盗賊達の拠点を突き止めたから、王国軍に伝えるつもりだったんだけど……あぁなっちまったんだ、えへへ……」
少女は恥ずかしそうに笑う。
「君は兵士なのか?」
「いや、王国軍の依頼で動いてるだけの冒険者さ。レベルは28だ」
「冒険者は分かるが……レベル? ……あっ!」
ここは異世界だ。地球とは世界の理が違うに決まっている。
レベルという概念があってもおかしくはないし、事実存在するのだろう。
そして、それを確認する手段を課長は持っている。
「『ステータスオープン』!」
少女に向かってそう叫ぶ。
すると、
─────
【名前】リゼ
【ジョブ】スカウト
【レベル】25
【筋力】302
【頑健】221
【敏捷】398
【器用】420
【魔力】102
【幸運】5
【スキル】
・短剣:レベル6
・隠密:レベル4
:五感強化:レベル3
・マラソン:レベル2
─────
ステータスが表示される。
「……リゼっていうのか」
「あぁ! ……って『ステータス鑑定』スキルを持ってるのか!? やべっ!」
「にしても、レベル25ってなってるが……どういう事だ?」
「ぐっ……!」
「もしかして鯖を読んでるのか?」
「ぐおっ……!」
痛い所を指摘されたのか、リゼは平坦な胸を押さえて苦しみ出す。
「それに、幸運5って低すぎないか?」
「ま、まぁな……」
「だから盗賊に絡まれてしまったんだろうな」
「おう……」
リゼとしても自身の【幸運】が低い事を気にしているのだろう。
それが仕事に支障をきたすレベルとなれば尚更だ。
「ふむ……なんか俺のステータスも気になって来たな。『ステータスオープン』」
─────
【名前】課長
【ジョブ】課長
【レベル】99
【筋力】999
【頑健】999
【敏捷】999
【器用】999
【魔力】999
【幸運】999
【スキル】
・ステータス鑑定:レベル10
─────
……強くてニューゲームどころではない。明らかに異常なステータスだ。
これだけ強ければ最強の名を欲しいままにし、圧倒的な無双によって絶対的な勝利を手にする事も出来る。
しかし、
「おぉ! 結構いいじゃん!」
課長はこの世界に疎かった。
レベル99とはカンスト値であり、能力値999もカンスト値だ。
つまり人類最強。どころか宇宙最強だ。
なのに課長はそれに気付いていない。
おそらくレベルのカンスト値を9999、能力値のカンスト値を2147万とでも思っているのだろう。(*4)
「いやー、なんかこういうのが目に見えるって嬉しいな~」
「ふーん。そんなにいいステータスなのか?」
「ふふふ! いいステータスだぞ~。通勤ラッシュと残業フィーバーを耐えて来た甲斐があったな」
満面の笑み。
だが、通勤と残業は関係ない気がする……。
「通勤ラッシュ? 残業フィーバー?」
「まぁまぁ知らなくてもいいさ。それよりも、これからどうするんだ?」
「私は盗賊の拠点を報告するし、王都に向かうつもり!」
王都、という場所については何も知らない。不安がある。
だがこのまま原野で生活する訳にはいかない。
「ついて行っていいか?」
「いいぜ!」
二人は立ち上がる。
照り輝く太陽を身に受け、王都に向かって歩き始めた。
─────
*1)おっふ。おっふっ。
斉木〇雄の災難。完璧美少女の美しさに思わず、このセリフが出てしまったりする。
*2)アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン
神聖ローマ帝国がボヘミアの傭兵隊長。マジの化け物。本当になろう主人公みたいな奴。
作者が子供の時、この名前聞いて尋常じゃない衝撃を受けた。
*3)ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世
イタリア王国初代国王。部下が優秀だったりする。
彼の記念堂に関しては今もある。行きたい。
この人物名を覚えるのに苦労した記憶がある。
*4)ディスガイア1のカンストステータス。
能力値の限界値は正確に言うと、2147万4836.47。
これ達成した奴、頭おかしい。
◇◇◇
あれから課長とリゼは歩いた。それこそ数時間程。
王都までの道程は長い。車や電車の無い時代の移動がどれ程大変だったか実感出来る。
気が付けば額には汗が滲み、足には疲れがたまっていた。
「遠いな」
「でももう近いよ、カチョー」
「おぉ……あとどれくらいなんだ?」
「一時間くらい」
「それを近いとは言わない」
幾度目かも分からないカルチャーショック。
もう何も思わない。それよりも早く足を休めたい。
「……仕方ない。飛ぶか」
「飛ぶ?」
「あぁ」
課長はリゼの肩に手を回し、引き寄せる。
「えっ……!?」
驚くリゼを気にも留めず、両足を持ち上げて無理矢理お姫様抱っこした。
「しっかり掴まっていろよ」
真剣な表情の課長。
彼は腰を落とし、足に力を入れ────飛んだ。
それはジャンプでは無い。幅跳びの類でも無い。
課長は文字通り空を"飛んだ"のだ。
「うわあああぁぁぁ!!!」
腹の底から出されるリゼの悲鳴。
しかし風を切る音の方が大きい為、耳には届かない。
「ははは! 若い頃はよくこうして出勤したものだ!」
「うわあああぁぁぁ!!!」
「いやー! 気持ちいいなー!」
「うわあああぁぁぁ!!!」
「……ん? あれが王都か?」
視線の先にはあるのは、城壁に囲まれた都市。
俗に言う"中世ヨーロッパ風"の都市で、石で出来た建物やビル一つない景色には感動を覚える。
上空からではよく見えないが、あれがおそらくリゼの言う王都なのだろう。
「よし! 行くぞ!」
課長は空中で体勢を変え、減速を始める。
下方に向かって徐々に落下し、振動に備えた。
そして、
──スガアアァァンッッ!!!
地を震わす轟音と共に、着地する。
見てみれば、大地にはクレータが生じ、舞い上がった砂ぼこりかぱらぱらと雨の様に降っている。
それも、王都の門の目の前で。
「敵襲だああああぁぁぁ!!!」
門衛は大声を上げ、慌て始める。
半鐘がカンカンと高い音を立て、一気に門は喧騒に包まれる。
完全に敵と思われている。はっきり言って、まずい。
「やばいってカチョー! そりゃこうなるよ!」
「……」
「カチョー、やっぱり考えてこの状況に!?」
落ち着き払った課長。
もしかしたら何か策があっての行動なのかもしれない。
でなければ、こうも狂った真似はしまい。
「……ど、どうする!?」
「何も考えてないんか―ーいっ!!」
「お、ナイスツッコミ!」
「えへへ、ありがとう……って、違うよカチョーッ!!」
「アチョーみたいだな」(*1)
「いやそこはアタタタタ!! ……ってそれも違ーーうっ!!」(*2)
リゼは大声でツッコむ。
だがそうこうしている間にも、
「動くな!」
「何しに来た化け物ども!」
武装した門衛達が二人の元へと駆け寄って来た。
いずれもその手には槍や剣を持ち、闘争心を顔に出している。戦うつもりなのだろう。
「"ども"!? いや、すごいのはカチョーだけで……」
「うるさい! 大人しく投降しろ!」
「カチョー、どうする!?」
本気を出せば余裕で勝てるだろう。それこそ赤子の手を捻る様なものだ。
だが、門衛達は何も悪い事をしていない。
外に化け物が現れたのに対して、"立ち向かう"という仕事を立派にこなしているだけだ。
それは褒められる事があっても、決して貶されるべきではない。
故に、
「大人しく投降しよう」
両腕を上げ、降参の姿勢を取った。
「カチョー……信じるぜ」
涙目のリゼ。そこには恐怖が巣くっている。
だが課長を信頼してか──両腕を上げた。
◇◇◇
「ふぅ……床が冷たいな」
「うぅ……これじゃ犯罪者だよ……」
二人がいるのは地下の牢屋。
あの後。当然だが二人は縄で拘束され、地下牢にぶち込まれた。
固い鉄格子に簡素なトイレ。藁のベッドに冷たい床。
そのどれもが健康で文化的な最低限度の生活を営む権利からかけ離れている。(*3)
「何も悪い事してないのにな」
「門の前に巨大クレーターを作るのは立派な犯罪だと思うけど……」
「そうなのか?」
「そうだよっ!」
果たして課長は幼稚園を卒業したのだろうか? という疑惑さえ募って来る。
リゼは課長の常識外れな強さに感動を覚えていないと言えば嘘になるが、それ以上に"呆れ"が強い。
一応、助けてもらった事もあり、そのおかげか課長には未だ尊敬の眼差しを送れるが、これ以上ミスを侵せば侮蔑の眼差しへと瞬時に切り替わるであろう。
しかしそんなリゼの心境は露知らず、
「そういえば某スライムも牢屋に閉じ込められてたな!」(*4)
「牢屋に閉じ込められるスライム?」
「そう、樽の中でポーション作ってたな」
「ポーション!? それ本当にスライム……?」
「うーん。どうなんだろうか……スライムであるし、人間でもあるし……」
「どっち!? ハーフなのか!? いや、有り得ないぞ!?」
と話し合っていた二人だが、話は一旦中断される。
階段をカツカツと降りて来る音が聞こえてきたからだ。
おそらく二人を裁判所に連れて行く兵士か、事情聴取にしに来た兵士か、課長の強さを聞きつけてやって来た兵士だろう。
「取り合えず弁解しようか、リゼ」
「そうだな、カチョー」
背筋を伸ばし、凛とした姿勢で来客を待つ二人。
しかし、その表情と姿勢は直ぐに崩れ去ってしまう事となる。
何故なら、その来客が──
「あら、情報通り下賤な輩ねぇ」
金髪縦ロールの美少女だったからだ。
─────
*1)アチョー。
ブルースリーの掛け声。
*2)アタタタタ
ケンシロウの掛け声。アタァー!!
*3)日本国憲法第25条第1項の条文。
誰もが守れていると思ってはいけない。
そしてコメディ作品で扱っていいものでもない。
*4)転〇ラのスライム様。
仲間のゴブリンと牢屋に共に収容されていた。
とあるビルのオフィス。
女性社員は隣の席でデスクワークに勤しむ課長に、何気無い質問をした。
課長は一度キーボードから指を離し、女性社員の方へと顔を向けた。
「うーん。……ま、色々とね」
「もう、課長ったらそう言っていつもはぐらかしますよね」
「そんな事ないさ」
適当にごまかす課長。
彼の年齢は見た所50手前ぐらい。眼鏡をかけていて……はげている。
他にはこれといった特徴も無いおっさんだ。
「隠す事ないじゃないですか……はっ! まさか危ない事をしてるとか!?」
「流石にそれは無いよ」
「もー教えてくれてもいいじゃ……って、あれ何ですかね」
女性社員はビル窓の外を指差した。
「ん? どれどれ……」
課長は指の先へと視線を向ける。。
すると、目に入るのはこちらに向かって来る大きな何か。
目を凝らしてみると、それが何なのか分かる。
強大な質量と共に空を飛ぶ巨体。風を切り裂き突き進む白い両翼。
それは──飛行機だ。
「か、課長!! 飛行機がこっちに!」
女性社員は驚き、椅子から転げ落ちる。
それは何も彼女だけでは無い。
気が付くとオフィスは、驚愕と恐怖によって支配されていた。
「まぁまぁ落ち着きたまえよ、佐藤くん」
しかし、課長は一切慌てない。
おもむろに席を立ち上がり、オフィスの窓際へと向かう。そして腰を落とし、左手の人差し指を突き出した。
「か、課長!? 何を!?」
「佐藤くん。僕はね、書類を作る為に"一日十万字"という膨大な文字数をタイピングしてきたのだよ」
「いや、嘘ですよね……」
「本当だよ。課長とはそれ程までに過酷なのだよ」
真剣な眼差し。
嘘をついているとは思えない。
「でも、もしそうだとして……今の状況と何の関係が?」
「見ていてくれたまえ。すぐにわかるさ、私の『一日十万字、感謝のタイピング』(*1)がね」
そう言う間にも、突っ込んで来る飛行機はビルにどんどんと近づいてくる。このままでは、じきにビルにぶつかる。
なのに課長は指先に全神経を集中している。
死に瀕して、おかしくなったのだと誰もが思った。
しかし、
「セイッ!」
──チュ! ドオオオオォォォォーーンンンッッッッ!!!!
飛行機は空中で爆発四散する。
課長の指先から放たれた青いビームによって。
「ふぅ……久しぶりだとこんなものかな?」
「……」
「ん? どうしたんだい?」
「……」
「佐藤くん、皆、どうして固まってるんだい?」
「……」
呆気にとられ、静まり返るオフィス。
しかしすぐに、
「はあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」
全員が同じような叫び声を上げた。
そして各々が疑問を口にし出した。
「課長! なんなんすか今のは!?」
「ぜんっっぜんタイピング関係ないし!!」
「人間の手からビームは出ませんよね普通!?」
「いつからフリ○ザ様になったんですか!?」
「いや、ピ○コロだろ!」
「どっちでもいいよ! だって人間の手からビームは出ないもん!」
唐突に始まった質問責め。
だが、それらに答える暇は無く、
ピカアアァァ──……
と身体が淡い光に包また。
「課長!? 今度は何なんですか!?」
「いや、私は何も……」
嘘偽りなく、何もしていない。
しかし、課長が何もしていなかったとしても、誰かが淡い光を放ったのは事実だ。
そして、その"誰か"とは──
◇◇◇
「ん? ここは?」
課長の目が覚めると、そこは見知らぬ場所だった。
地面は雲のよう。壁と天井はない。更に物一つない。
例えるなら、まるで空の上。
だが唯一。
目の前に何かがいる。
最初目にした時はそれが何なのか分からなかった。というか理解が追い付かなかった。
まぁそれも仕方ない。
何故ならその何かとは「ふんどし一丁でブリッジをするおっさん」なのだから。
「……え?」
呆然とする課長。眼鏡がずり落ち、口が半開きになる。
その様子を見て、変態はブリッジを維持したまま話し始めた。
「やぁ! はじめまして! 私は地球の神!」
「嘘は良くないね」
「本当なの! 地球という星は変態が多すぎて、神様こうなっちゃうの!」
「そうか……」
何故か納得する。心当たりがあるからだ。
「物分かりがいいね、課長さん!」
「ありがとう。だが……"さん"づけ? 神の方が偉いだろうに」
「いいや! 私みたいな神なんて、到底君には勝てないよ!
「確かにな……」
課長は再度納得する。
確かに、一般人でもふんどしブリッジど変態には勝てそうだ。男性最大の弱点を突き出しているし……ゲフンゲフン。
「それでその地球の神がわざわざ僕に何の用なんだい?」
「単刀直入に言うよ! 課長さんを異世界に転生させることにしたんだ!」
「ほう。何故なんだい?」
「課長さん地球にいると、宇宙の法則が乱れるからさ!」(*2)
明らかに人の世界の理を外れた力。課長はそれを有している。
だが本人はそれを自覚していない。
「そうなのか?」
「そうだよ!! 頼むから異世界に行ってくれないかな!」
「ふむ……」
長考する。
もし異世界に行けば、大好きな娯楽から離れざるを得なくなる。
しかし仕事を辞め、好きなように生きていくことが出来る。
安定を取るなら前者だろう。後者は何があるか分からない。
課長の脳内天秤は地球に傾きかけたが……
「課長さんには転生特典をあげるよ!」
ふんどし神様によって異世界に引っ張られた。
「……ほう、最近の流行りだな」
課長の若い頃はSFや漢らしい作品が多かった。
しかし現代ではファンタジーが圧倒的に多く、転生物が大人気だ。
そして、その中でもテンプレと言えば──チート能力だ。
「ふむ……それはどのような形でもいいのかい?」
「うん! スライムになったり、スマホを持って行ったり、なんでもいいよ!」(*3)
「そうか。なら──"若さ"をくれないか?」
50手前の人間が求める望み。
課長も視力と頭髪と健康、そしてその他諸々について、何か思う所があるのだろう。
神もそれを汲んでか、理解を示した。
「分かったよ! なら、課長さんには永遠の若さを与えるね! どれくらいの年齢が良い?」
「そうだな……色々と嗜める20代前半で頼むよ」
「オーケー! じゃあいくよ! うりゃ!」
ふんどしから光のビームが放たれれる。
言いたい事は色々とあるが、課長は大人しくそれを食らった。
そしてビームを食らった直後。
肌に艶を戻る。毛髪が生えてくる。眼鏡が必要なくなる。節々の痛みが消える。
そうして──若返る。
年の頃は要望通り20代前半。見た目は黒髪黒目。中肉中背。一般的なジャパニーズだ。
どうせならもっと高身長のイケメンにして欲しかったかもしれない。しかし一切そんな事は思わない。
それ程、若返るという事への喜びは計り知れないのだ。
「おぉ! マジで若返った!」
「口調も若返ったね! ……あと、他に欲しい能力とかある? 少しくらいならいいよ!」
「なら、ステータスを見れるようにしてもらっていいか? ほら、フ〇イファンとかの」
「あぁ、エフ〇フのね!」(*4)
「ん?」
「え?」
流れる気まずい空気。
だが、課長は大人だった。
「……ドラ〇エみたいなやつ」
「分かったよ! ほい!」
再度、ふんどしからビームが放たれる。再度、身に受ける。
「これでいいのか?」
「うん! じゃあ早速、課長さんを転生させるね!」
そう言うなり、神のふんどしから光が漏れ出す。
その光は周囲に広がり、課長の身体を包み込んでいく。
そして──課長は異世界へと転生した。
─────
*1)一日一万回、感謝の正拳突き。
ハンタ〇ハンタ〇に出てくる会長の、修行に関しての話。
気が付けば音を置き去りにしていた。
*2)宇宙の 法則が 乱れる!
FF5、ラスボス戦に出てくるメッセージ。
グランドクロスッ!!
*3)転ス〇と、異世界ス〇ホ。
どっちもアニメ化作品。
気になったら是非見てね。
*4)ファイフ〇ンと〇フエフ
現在でも度々論争になる略称問題。
作者は昔ファイファ〇教徒だったが、エ〇エフ教に改宗した。
◇◇◇
「うぅ……」
顔を覆いたくなるような眩い光が去り、視界が徐々に戻って来る。
そして今いる場所がどこだか分かるようになるなるまで、それ程時間はかからなかった。
「ここが、異世界か?」
目の前に広がるのは一面の原野。
緑の草がそこら中に生い茂り、太陽の光がさんさんと降り注ぐ。空には雲一つない青空が広がり、爽やかな風が吹き抜ける。
現代日本のオフィス街では決して見る事の出来ない長閑な景色だ。
たまにはこうした場所で羽を休めるのもいいかもしれない。と、課長も初めは思った。
しかし。
あまりにも長閑"すぎる"。
見た所、大して舗装もされていない道が一本あるだけで、周囲には雑草の他に何もない。
これでどうやって生き抜けと言うのか。
「うーん、いきなりこんな所に放り出されても困るな……」
困り果てる課長。
せめて標識があればいいが、それすら目に見える範囲には無い。
こうなれば道に沿って歩くか、誰かが通りかかるのを待つかしかないだろう──普通の人なら。
だが、彼は課長だ。
バスや電車で寝過ごして、誰もいない場所に放り出された事も一度や二度では無いはずだ。
故に、こうした際にとるべき行動は心得ている。
「すぅ……はぁーーー……」
軽く息を吸い、深く息を吐く。
そして体内の"気"を練り、
「とうっ!!」
垂直にジャンプする。十メートルも。
それは人智を遥かに越す跳躍力。
棒無しで棒高跳びと張り合っているようなものだ。
おそらく前世はバッタか兎だったのだろう。
しかし、そんな事は課長にとってどうでもいい。
それよりも、
「ふむ……あれは?」
空中から見える景色の中に、目を引くものがある。
それは、一人の少女と三人の男達だ。
少女は金のショートカットに琥珀色の瞳。褐色の肌と比較的小さな身体つきの可愛らしい見た目。
だがその手には短剣を持ち、三人の男達と睨んでいる。
男達はいづれもが革の防具を身に纏い、どこかガラの悪い容貌。
手には長剣を手にし、少女にその白刃の切先を向けている。
「テンプレだな……悪くない!」
課長はスタッと華麗に着地する。
そして、大地を削る勢いで駆け出した。
「げっへっへ、早く情報を渡した方が身の為だぜ」
「命あるうちに渡しな~」
「絶対に渡さないからな!」
睨みあう3人と1人。
だが、その睨みあいは短く、戦闘の口火が切られるのは早かった。
「なら、力ずくでもッ!」
三人の内。一人が剣が掲げ、少女に向かって駆け出す。
少女までの距離はおよそ5歩。かなり近い。
だが、剣に勢いを乗せるには十分だ。
「おらぁ!」
少女の元へと着くなり、男は強力な振り下ろしを放つ。
それは筋力と体格を活かし、更に助走をつけた雄々しい一撃。
少女はそれに対し、短剣を横薙ぐ。
的確なタイミングで男の白刃に自身の短剣をぶつけ、無理矢理剣先を逸らした。
「がっ!」
男は大地を斬る。剣先を逸らされ、空振ったのだ。
更に外したという実感と共に体勢を崩す。
「私の勝ち。何で負けたか明日までに考えておく事だな──」(*1)
眼前の勝利に微笑む少女。
だが、
「『ライトニングボルト』!」
男の仲間が放った電撃の矢を躱せなかった。
「うわああぁぁ!!」
全身に流れる電気と痛み。
抵抗の出来ない痺れを伴いながら、少女はその場に倒れてしまった。
「ふぃ~助かったぜー」
「早くそいつを殺せ!」
「いや、その前に~……」
下卑た表情を浮かべる。動けなくなった少女を見て、よからぬ事を考えているのだろう。
眼はにんまりとて、鼻の舌が伸びている。
しかし。
男の顔は歪んだ。
「アンパーーンチッッ!!」(*2)
課長の鉄拳によって──
「ぐふおおぉぉっ!!」
男は頬を殴られ、大きく吹き飛ぶ。地面に着いたかと思えば、殴られた勢いのまま原野を転がる。
そしてようやく静止した時。
男の意識は無かった。
「だ、誰だお前!?」
「み、見えなかった!?」
唐突に現れた乱入者に驚きを隠せない残り二人。
「な、仲間が!」
「く、くそっ!」
「……」
「急に現れて、誰なんだお前は!?」
「名を名乗れ!」
「はぁ……ただの課長だよ」
──瞬時。
課長が駆ける。
そして目にも止まらぬ速さで、
「とうっ!」
顔面への跳び膝蹴り。
人体の強固な部分による一撃の重みは計り知れず、男の一人は白目を剥きながら、崩れ落ちる。
「ひとぉつ……!」(*3)
更に課長は止まらない。
一足で間合いを詰め、もう一人の男の眼前に近づく。
そして、握り締める拳、鋭い踏み込み、それらを巧みに駆使し、
「せいっ!」
鳩尾に逆突きを放つ。
あまりの威力に耐え切れず、男は「うぅ……」と低い呻きをこぼしながら、腹を抱え、その場に崩れ落ちた。
「勝った……」
圧倒的な勝利。これぞ俺TUEEEEE!!!
イキった台詞の一つでも言いたくなる。
しかし自身の強さに溺れる事は無く、少女の元へと駆け寄った。
「大丈夫? 怪我はない?」
「……」
「どこか痛むの?」
心配する課長。
だが少女はそんな課長の手を握ると、
「……すっ……すげえええぇぇぇーーーっっ!!!」
大声を上げた。
─────
*1)本田じゃんけん。
本〇圭佑とペプシを賭けて行われる、死のじゃんけん。
たかがじゃんけんと思ってはいけない。
*2)某あんぱん系正義のヒーローの必殺技。
食らえば星になる、物理的に。
*3)SEKIROというゲームに出てくる台詞。
梟と呼ばれるNINJAに殺されると、これを言われ、後に説教される。
ちなみに作者はSEKIROトロコン済(どやぁ……
◇◇◇
心配する課長。
だが少女はそんな課長の手を握ると、
「……すっ……すげえええぇぇぇーーーっっ!!!」
大声を上げた。
少女はらんらんとした瞳で課長を見、強く手を握る。そこに籠められているのは感謝と憧憬だろう。
そしてこんな可愛い少女に褒められて、嬉しくないはずも無く、
「そ、そうかな……?」
課長は照れる。
勝手に目が泳ぎ、それを隠す為か、気恥ずかしそうに顔をそらす。
「すげーよ! 私、あんな速い一撃見た事ねーもん!」
「おっふ……」(*1)
「絶対に名のある武闘家かモンクだろ!」
「お、おっふ……」
「本当助けてくれてありがとな! 名前はなんて言うんだ?」
「名前か……」
本名を言うべきか、言わないべきか。大変に悩ましい所ではある。
しかし、「ここは異世界であり、過去が関係ない」という事を考えると……本名では無く、偽名を使いたくなる。
「うーん……」
偽名を使うなら、せめてかっこいい偽名を使いたい。ヴァレンシュタイン(*2)とか、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世(*3)とか。
出来るだけ中二心をくすぐるものがいいだろう。と考え、課長は熟考するが、
「……」
課長には思いつかなかった。
思えば課長は、ゲームの主人公名を本名か"課長"と打ち込むタイプだったのだ。
そして、そんな彼が出した結論は当然、
「……課長だ」
「おぉ! カチョーって言うのか」
異世界に来ても課長呼び。
別に嫌という訳ではないが、どこか勿体無い事をした気分になって来る。
「……あぁ。宜しくな」
「よろしく、カチョー!」
「所で、こいつらは何なんだ?」
先程の三人組を指差す。
「そいつらは盗賊だよ。この辺に拠点があるんだ」
盗賊──。
現代日本では聞き馴染みの無い言葉に一瞬戸惑うが、ここは異世界だ。いたとしても何らおかしくない。
「へー。で、君は何で絡まれてたんだ?」
ただの金目的であれば、そう易々と命のやり取りには発展しないはずだ。
しかし現実は違う。少女は話半ばに斬りかかられていた。
そこには何かしらの理由があるはずだ。
「実は私、斥候なんだ」
「ほう」
「あの盗賊達の拠点を突き止めたから、王国軍に伝えるつもりだったんだけど……あぁなっちまったんだ、えへへ……」
少女は恥ずかしそうに笑う。
「君は兵士なのか?」
「いや、王国軍の依頼で動いてるだけの冒険者さ。レベルは28だ」
「冒険者は分かるが……レベル? ……あっ!」
ここは異世界だ。地球とは世界の理が違うに決まっている。
レベルという概念があってもおかしくはないし、事実存在するのだろう。
そして、それを確認する手段を課長は持っている。
「『ステータスオープン』!」
少女に向かってそう叫ぶ。
すると、
─────
【名前】リゼ
【ジョブ】スカウト
【レベル】25
【筋力】302
【頑健】221
【敏捷】398
【器用】420
【魔力】102
【幸運】5
【スキル】
・短剣:レベル6
・隠密:レベル4
:五感強化:レベル3
・マラソン:レベル2
─────
ステータスが表示される。
「……リゼっていうのか」
「あぁ! ……って『ステータス鑑定』スキルを持ってるのか!? やべっ!」
「にしても、レベル25ってなってるが……どういう事だ?」
「ぐっ……!」
「もしかして鯖を読んでるのか?」
「ぐおっ……!」
痛い所を指摘されたのか、リゼは平坦な胸を押さえて苦しみ出す。
「それに、幸運5って低すぎないか?」
「ま、まぁな……」
「だから盗賊に絡まれてしまったんだろうな」
「おう……」
リゼとしても自身の【幸運】が低い事を気にしているのだろう。
それが仕事に支障をきたすレベルとなれば尚更だ。
「ふむ……なんか俺のステータスも気になって来たな。『ステータスオープン』」
─────
【名前】課長
【ジョブ】課長
【レベル】99
【筋力】999
【頑健】999
【敏捷】999
【器用】999
【魔力】999
【幸運】999
【スキル】
・ステータス鑑定:レベル10
─────
……強くてニューゲームどころではない。明らかに異常なステータスだ。
これだけ強ければ最強の名を欲しいままにし、圧倒的な無双によって絶対的な勝利を手にする事も出来る。
しかし、
「おぉ! 結構いいじゃん!」
課長はこの世界に疎かった。
レベル99とはカンスト値であり、能力値999もカンスト値だ。
つまり人類最強。どころか宇宙最強だ。
なのに課長はそれに気付いていない。
おそらくレベルのカンスト値を9999、能力値のカンスト値を2147万とでも思っているのだろう。(*4)
「いやー、なんかこういうのが目に見えるって嬉しいな~」
「ふーん。そんなにいいステータスなのか?」
「ふふふ! いいステータスだぞ~。通勤ラッシュと残業フィーバーを耐えて来た甲斐があったな」
満面の笑み。
だが、通勤と残業は関係ない気がする……。
「通勤ラッシュ? 残業フィーバー?」
「まぁまぁ知らなくてもいいさ。それよりも、これからどうするんだ?」
「私は盗賊の拠点を報告するし、王都に向かうつもり!」
王都、という場所については何も知らない。不安がある。
だがこのまま原野で生活する訳にはいかない。
「ついて行っていいか?」
「いいぜ!」
二人は立ち上がる。
照り輝く太陽を身に受け、王都に向かって歩き始めた。
─────
*1)おっふ。おっふっ。
斉木〇雄の災難。完璧美少女の美しさに思わず、このセリフが出てしまったりする。
*2)アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン
神聖ローマ帝国がボヘミアの傭兵隊長。マジの化け物。本当になろう主人公みたいな奴。
作者が子供の時、この名前聞いて尋常じゃない衝撃を受けた。
*3)ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世
イタリア王国初代国王。部下が優秀だったりする。
彼の記念堂に関しては今もある。行きたい。
この人物名を覚えるのに苦労した記憶がある。
*4)ディスガイア1のカンストステータス。
能力値の限界値は正確に言うと、2147万4836.47。
これ達成した奴、頭おかしい。
◇◇◇
あれから課長とリゼは歩いた。それこそ数時間程。
王都までの道程は長い。車や電車の無い時代の移動がどれ程大変だったか実感出来る。
気が付けば額には汗が滲み、足には疲れがたまっていた。
「遠いな」
「でももう近いよ、カチョー」
「おぉ……あとどれくらいなんだ?」
「一時間くらい」
「それを近いとは言わない」
幾度目かも分からないカルチャーショック。
もう何も思わない。それよりも早く足を休めたい。
「……仕方ない。飛ぶか」
「飛ぶ?」
「あぁ」
課長はリゼの肩に手を回し、引き寄せる。
「えっ……!?」
驚くリゼを気にも留めず、両足を持ち上げて無理矢理お姫様抱っこした。
「しっかり掴まっていろよ」
真剣な表情の課長。
彼は腰を落とし、足に力を入れ────飛んだ。
それはジャンプでは無い。幅跳びの類でも無い。
課長は文字通り空を"飛んだ"のだ。
「うわあああぁぁぁ!!!」
腹の底から出されるリゼの悲鳴。
しかし風を切る音の方が大きい為、耳には届かない。
「ははは! 若い頃はよくこうして出勤したものだ!」
「うわあああぁぁぁ!!!」
「いやー! 気持ちいいなー!」
「うわあああぁぁぁ!!!」
「……ん? あれが王都か?」
視線の先にはあるのは、城壁に囲まれた都市。
俗に言う"中世ヨーロッパ風"の都市で、石で出来た建物やビル一つない景色には感動を覚える。
上空からではよく見えないが、あれがおそらくリゼの言う王都なのだろう。
「よし! 行くぞ!」
課長は空中で体勢を変え、減速を始める。
下方に向かって徐々に落下し、振動に備えた。
そして、
──スガアアァァンッッ!!!
地を震わす轟音と共に、着地する。
見てみれば、大地にはクレータが生じ、舞い上がった砂ぼこりかぱらぱらと雨の様に降っている。
それも、王都の門の目の前で。
「敵襲だああああぁぁぁ!!!」
門衛は大声を上げ、慌て始める。
半鐘がカンカンと高い音を立て、一気に門は喧騒に包まれる。
完全に敵と思われている。はっきり言って、まずい。
「やばいってカチョー! そりゃこうなるよ!」
「……」
「カチョー、やっぱり考えてこの状況に!?」
落ち着き払った課長。
もしかしたら何か策があっての行動なのかもしれない。
でなければ、こうも狂った真似はしまい。
「……ど、どうする!?」
「何も考えてないんか―ーいっ!!」
「お、ナイスツッコミ!」
「えへへ、ありがとう……って、違うよカチョーッ!!」
「アチョーみたいだな」(*1)
「いやそこはアタタタタ!! ……ってそれも違ーーうっ!!」(*2)
リゼは大声でツッコむ。
だがそうこうしている間にも、
「動くな!」
「何しに来た化け物ども!」
武装した門衛達が二人の元へと駆け寄って来た。
いずれもその手には槍や剣を持ち、闘争心を顔に出している。戦うつもりなのだろう。
「"ども"!? いや、すごいのはカチョーだけで……」
「うるさい! 大人しく投降しろ!」
「カチョー、どうする!?」
本気を出せば余裕で勝てるだろう。それこそ赤子の手を捻る様なものだ。
だが、門衛達は何も悪い事をしていない。
外に化け物が現れたのに対して、"立ち向かう"という仕事を立派にこなしているだけだ。
それは褒められる事があっても、決して貶されるべきではない。
故に、
「大人しく投降しよう」
両腕を上げ、降参の姿勢を取った。
「カチョー……信じるぜ」
涙目のリゼ。そこには恐怖が巣くっている。
だが課長を信頼してか──両腕を上げた。
◇◇◇
「ふぅ……床が冷たいな」
「うぅ……これじゃ犯罪者だよ……」
二人がいるのは地下の牢屋。
あの後。当然だが二人は縄で拘束され、地下牢にぶち込まれた。
固い鉄格子に簡素なトイレ。藁のベッドに冷たい床。
そのどれもが健康で文化的な最低限度の生活を営む権利からかけ離れている。(*3)
「何も悪い事してないのにな」
「門の前に巨大クレーターを作るのは立派な犯罪だと思うけど……」
「そうなのか?」
「そうだよっ!」
果たして課長は幼稚園を卒業したのだろうか? という疑惑さえ募って来る。
リゼは課長の常識外れな強さに感動を覚えていないと言えば嘘になるが、それ以上に"呆れ"が強い。
一応、助けてもらった事もあり、そのおかげか課長には未だ尊敬の眼差しを送れるが、これ以上ミスを侵せば侮蔑の眼差しへと瞬時に切り替わるであろう。
しかしそんなリゼの心境は露知らず、
「そういえば某スライムも牢屋に閉じ込められてたな!」(*4)
「牢屋に閉じ込められるスライム?」
「そう、樽の中でポーション作ってたな」
「ポーション!? それ本当にスライム……?」
「うーん。どうなんだろうか……スライムであるし、人間でもあるし……」
「どっち!? ハーフなのか!? いや、有り得ないぞ!?」
と話し合っていた二人だが、話は一旦中断される。
階段をカツカツと降りて来る音が聞こえてきたからだ。
おそらく二人を裁判所に連れて行く兵士か、事情聴取にしに来た兵士か、課長の強さを聞きつけてやって来た兵士だろう。
「取り合えず弁解しようか、リゼ」
「そうだな、カチョー」
背筋を伸ばし、凛とした姿勢で来客を待つ二人。
しかし、その表情と姿勢は直ぐに崩れ去ってしまう事となる。
何故なら、その来客が──
「あら、情報通り下賤な輩ねぇ」
金髪縦ロールの美少女だったからだ。
─────
*1)アチョー。
ブルースリーの掛け声。
*2)アタタタタ
ケンシロウの掛け声。アタァー!!
*3)日本国憲法第25条第1項の条文。
誰もが守れていると思ってはいけない。
そしてコメディ作品で扱っていいものでもない。
*4)転〇ラのスライム様。
仲間のゴブリンと牢屋に共に収容されていた。
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元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
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小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
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お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
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注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
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