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10話 ゴブリン討伐

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 クラン《彗星と極光》を立ち上げ、僕らが向かった先は──

「KISYAAAAAAッ!!」
「イオ、私が斬り込む! 援護を頼めるか!」
「うん! 任せて!」

 森。
 木々の生い茂る、森の中。

 大絶賛、五匹のゴブリンと戦闘中だ。

「《アクセラレート》!」

 僕の支援魔術で速度を増したベガ。
 瞬時に前衛のゴブリンへと詰め寄り、

「──《横時雨》」

 ブロードソードを横に一閃。
 紫色をした剣の筋が一条、ゴブリンの首元を通り過ぎた。
 一拍。
 遅れて、切り飛ばされた首が宙を舞う。

「GYWIIIIIIIIIAAAAッ!」

 怒った一匹のゴブリンが、彼女の左側面へ錆びた剣を振りかぶる。
 ベガは、右手のブロードソードは振るったばかり。
 左側面は隙だらけ。

 ギィンッ!

 しかし彼女は、左手の短剣でその一撃を受け止める。

「おぉ、今の良い一撃だね。"ゴブリンにしては"、だけど。《トニトルス》」

 短剣の先から、魔術の雷を放電。
 それは、鍔競り合う錆びた剣を通り、

「PIAAAAAAAAAAAAッ!」

 ゴブリンの全身を感電させる。
 何度も小刻みに痙攣したのち、緑の肉体は落ち葉の上に倒れ伏した。

 さらに、その緑の背中を上を、

「《ファイアーボール》!」

 僕の放った火球が通り過ぎる。
 火球は森の中を突き進み──命中。
 奥のゴブリンに衝突し、胴体を火を包む。

「PYAAAA! PYOO、PYUUUUッ!」

 膝を地に付け、藻掻き苦むゴブリン。
 仲間が駆け寄るが、鎮火することはできず。
 白目を剥いて、落ち葉に顔から倒れ込んだ。

 残るは二匹。
 一匹は、焼き殺された仲間を見て狼狽えている。
 もう一匹は……骨で作られた杖を突き出す!

「《UGAUGAU・GAU・GAGAUGAU……」

 魔術を詠唱している。
 ゴブリンの上位種、ゴブリンシャーマンだ。

 僕は即座に短い杖を構え、

「《ウィンド》!」

 詠唱。
 風を出現させ、地面の落ち葉を舞い上げる。

 僕は集中し、できる限り落ち葉を密集させ、葉の壁を形成。
 物理的な防御力はないが、ベガとゴブリンの間に"仕切り"を作った。

「……GUA? GAAUAKA・GAAA》ッ!」

 落ち葉の仕切りに戸惑うゴブリンシャーマンだったが、詠唱を完了。
 細長い氷を、矢のように放ってくる。

 さしゅッ!

 当然、葉の壁は貫かれた。
 風穴が開く。

 しかしこれまた当然か。
 その風穴の向こうにベガはいない。

「機転が利くの、イオだけと思わないでくれよ」

 咄嗟に、ゴブリンシャーマンは声のした方向──頭上に顔を向けた。

 鋭利な切っ先が、緑の顔面を捉えていた。

 ざじゅ──ッ!

 避けることのできなかったゴブリンシャーマンの頭部を、ベガのブロードソードが貫通。
 勢い余って、そのまま地面に突き刺さる。

 彼女は、僕が《ウィンド》を用いるのと同時に、自身も《ウィンド》を詠唱した。
 そうして、魔術の詠唱を悟らせなかったのだ。
 しかも、彼女が舞い上げたのは落ち葉ではない。
 自分の身体だ。

 空中に跳び上がり、死角からの一撃。
 全体重に重力を乗せた強烈な突きで、ゴブリンシャーマンを屠ったのだ。

 流石だ……!
 魔術の操作、バランス感覚、剣技の巧みさ、どれをとっても文句のつけようがない。

 ベガは、ゴブリンシャーマンの頭部が串刺しになった剣から手を離し、残る一匹に身体を向けた。

「さ、ゴブリン君。こうなりたくなければ、巣の場所を教えてくれるかな?」

 そう言って微笑むベガに恐れ戦き、ゴブリンは"巣へと"逃げ出した。
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