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五章
彼が警察をやめたわけ
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「あの、スズエ。アイトにタッチしていたらどうなっていたんですか?」
エレンさんに聞かれ、スズエさんは「誰かが死んでたよ」とあっけらかんと答えた。
「え?」
「だから逆に、捕まえないのが正解だったの。……だましてごめんね」
目を伏せながら、スズエさんは謝罪する。でも、あの場合は仕方なかったかもしれない。
「す、スズ」
「シルヤも、もう少し冷静になりなさいって言っているでしょう?パニックになったら周囲を見ることが出来なくなるよ」
スズエさんが優しく、しかし厳しく告げた。それはまるで、弟妹に言い聞かせるようなものだった。
「まったく……まぁいいけど。私が冷静でいたらいいだけだし……」
「その……ごめん。俺がもう少し冷静でいないといけなかったのに」
スズエさんがため息をつくと、ケイさんが謝った。しかし彼女は「まぁ、仕方ないでしょう」と告げた。
「恩人を失ったんでしょう?そのきっかけとなった人がいたら冷静にはなれないでしょう」
「でも、君は子供なのに……」
「冷静さに年齢は関係ないでしょう」
そう言いながら目を伏せる。彼女は、高校生らしからぬ冷静さがあった。だから、それに甘えてしまっていたけど本当はボク達が守らないといけないのに……。
ロビーで今後の話をしようと向かうと、「……あの」とスズエさんがケイさんに声をかけた。
「どうしたのー?」
「……その、本当にあいつが指示を出したんですか?」
そう聞かれ、ケイさんはキョトンとする。
「自分で言っていたじゃないかー。疑う余地がないと思うけどなー」
「……その……実はですね……」
その答えを聞いて、彼女はおずおずと何かを目の前に置いた。
それはCDだった。どこで見つけたのだろうか?
「それ、何かなー?」
「……えっと……」
珍しく歯切れが悪い。彼女は何かを知ってしまったのだろう。
「ねぇ、俺に関係あることなんだよね?それなら、教えてほしいかなー?」
「……わかり、ました」
ケイさんに言われ、スズエさんは静かにそれをパソコンに読み込む。
そこに映ったのは、警察官が犯人を追い詰めているところだった。それを見た瞬間、ケイさんは目を見開いた。
「これは……!?」
「さっき言っていた、恩人を殺してしまった……って時のものですよね?すみません、こんなもの見せて……」
「いや、大丈夫だよー。……でも、なんでさっきあんなことを言ったのー?」
あんなこと、というのはおそらく「あいつが指示を出したか」と聞いた時の言葉だろう。
スズエさんは無言で、シーンを進めていった。すると、木の陰に誰かがいることが分かった。
「……これ、アイトに似ていると思うけどなー」
「いえ、違うんです」
彼女が少しいじると、その人影が別の人になった。どうやら誰かがアイトの姿に編集したようだ。本当に、スズエさんは観察眼にはいつも脱帽する。
出てきた人影は、黒髪の男性だった。
「この人は?」
「この人が、ケイさんに指示を出した真犯人です。だから、アイトじゃないと思ったんですよ」
「……そう、みたいだねー。でも、この人って誰?……って、さすがに分からないか」
その質問に、スズエさんは目を伏せた。そして、
「……いえ、知ってる人、です……」
「え、そうなのー?」
「だって――私の父親ですから」
エレンさんに聞かれ、スズエさんは「誰かが死んでたよ」とあっけらかんと答えた。
「え?」
「だから逆に、捕まえないのが正解だったの。……だましてごめんね」
目を伏せながら、スズエさんは謝罪する。でも、あの場合は仕方なかったかもしれない。
「す、スズ」
「シルヤも、もう少し冷静になりなさいって言っているでしょう?パニックになったら周囲を見ることが出来なくなるよ」
スズエさんが優しく、しかし厳しく告げた。それはまるで、弟妹に言い聞かせるようなものだった。
「まったく……まぁいいけど。私が冷静でいたらいいだけだし……」
「その……ごめん。俺がもう少し冷静でいないといけなかったのに」
スズエさんがため息をつくと、ケイさんが謝った。しかし彼女は「まぁ、仕方ないでしょう」と告げた。
「恩人を失ったんでしょう?そのきっかけとなった人がいたら冷静にはなれないでしょう」
「でも、君は子供なのに……」
「冷静さに年齢は関係ないでしょう」
そう言いながら目を伏せる。彼女は、高校生らしからぬ冷静さがあった。だから、それに甘えてしまっていたけど本当はボク達が守らないといけないのに……。
ロビーで今後の話をしようと向かうと、「……あの」とスズエさんがケイさんに声をかけた。
「どうしたのー?」
「……その、本当にあいつが指示を出したんですか?」
そう聞かれ、ケイさんはキョトンとする。
「自分で言っていたじゃないかー。疑う余地がないと思うけどなー」
「……その……実はですね……」
その答えを聞いて、彼女はおずおずと何かを目の前に置いた。
それはCDだった。どこで見つけたのだろうか?
「それ、何かなー?」
「……えっと……」
珍しく歯切れが悪い。彼女は何かを知ってしまったのだろう。
「ねぇ、俺に関係あることなんだよね?それなら、教えてほしいかなー?」
「……わかり、ました」
ケイさんに言われ、スズエさんは静かにそれをパソコンに読み込む。
そこに映ったのは、警察官が犯人を追い詰めているところだった。それを見た瞬間、ケイさんは目を見開いた。
「これは……!?」
「さっき言っていた、恩人を殺してしまった……って時のものですよね?すみません、こんなもの見せて……」
「いや、大丈夫だよー。……でも、なんでさっきあんなことを言ったのー?」
あんなこと、というのはおそらく「あいつが指示を出したか」と聞いた時の言葉だろう。
スズエさんは無言で、シーンを進めていった。すると、木の陰に誰かがいることが分かった。
「……これ、アイトに似ていると思うけどなー」
「いえ、違うんです」
彼女が少しいじると、その人影が別の人になった。どうやら誰かがアイトの姿に編集したようだ。本当に、スズエさんは観察眼にはいつも脱帽する。
出てきた人影は、黒髪の男性だった。
「この人は?」
「この人が、ケイさんに指示を出した真犯人です。だから、アイトじゃないと思ったんですよ」
「……そう、みたいだねー。でも、この人って誰?……って、さすがに分からないか」
その質問に、スズエさんは目を伏せた。そして、
「……いえ、知ってる人、です……」
「え、そうなのー?」
「だって――私の父親ですから」
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