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五章

死の鬼ごっこの始まり

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 しばらくして、フウ君が疲れてしまったのか眠ってしまった。
「……まったく……」
 困ったように笑いながらも、スズエさんは自分の上着をフウ君にかける。そして静かにパソコンで続きを調べ始めた。やっぱり、世話好きだなぁ……。
「あー……クソッ。早く首輪の解除をしないといけないのに……」
 頭を掻きむしりながら起こさないように、しかし確実にいら立ったように呟く。
「スズエさん、あんまり無理しないでいいよ。疲れてるでしょ?」
 さっきまでフウ君と遊んでいたのだ。それを抜きにしても、ここに連れてこられてからずっと探索しっぱなしで疲れていないはずがない。
「いえ、大丈夫ですよ。……見張られているとゆっくり休むに休めないですしね」
 チラッとスズエさんが少し遠くを見る。そこにはレイさんやケイさんが立っていた。ケイさんは元とはいえ警官だから職業柄どうしても疑わないといけないのだろう。レイさんも疑い深い性格そうだし、仕方ないのかもしれない。
 それを知っているからか、スズエさんは特に気にした様子もなくまたすぐにパソコンを触り出した。
(……本当に大丈夫かな……?)
 彼女だって、たまには休まないといけないのに……。

 一日が経ち、全員でロビーに集まっていると「アハハッ!そろそろデスゲームらしいことしたいよね!」とアイトの声が聞こえてきた。
「……は?急に出てきて何言ってんのお前」
 スズエさんが冷たい目をしながら彼を見る。
「そんな目で見ないでよー。可愛いだけだよ?スズエさん」
「……こいつぶん殴りたい……」
 うん、同感。
「酷いなー。ボク、スズエさんのことこんなに大好きなのに」
「本当に好きならこんなことすんな。このサイコパス野郎」
「えー?スズエさんが泣く姿が可愛いのにー」
「……とっとと要件を言え、サイコパス緑野郎」
 ため息をつきながら睨む彼女にニコニコしながらアイトは「鬼ごっこしよ!」と告げる。
「は?鬼ごっこ?」
「うん!小さい頃よく遊んだでしょ?」
「……ここでの鬼ごっこってロクなものじゃないだろ」
 確かに、と思う。下の階でやったミニゲームですら命をかけたのだから。
 案の定、アイトは「そりゃ、デスゲームだからね!」と笑顔で頷いた。そんなんだからサイコパスって言われるんだぞ、お前。
「じゃあ、勝手に始めちゃいまーす!」
 アイトが指を鳴らすと、フウ君の首輪に赤いランプがついた。
「その赤いランプがついている人が鬼ね!時間内にボクを捕まえないと……首輪が発動するかもね?」
「ニャッ!?」
「制限時間は……今日の夕方六時。それじゃあ、はじめ!」
 勝手に始め、アイトは姿を消す。「おい、待て!」と手を伸ばすけど、届かなかった。
 フウ君は震えていた。死ぬかもしれないのだ、当然だろう。
「……フウ」
 誰も声をかけられずにいた中、スズエさんがフウ君の手を握る。
 赤いランプが、スズエさんの首輪に映った。
「……私が、鬼をやる」
 そのまま、フウ君をシルヤ君の方に優しく飛ばした。
「おっと、スズ、本当に大丈夫なのか?」
「あぁ、大丈夫。……だから、フウを見てやってくれ」
「ねえ、ちゃ……」
 フウ君が泣きそうになりながら彼女を見ている。それに気付いたスズエさんは目線を合わせるようにしゃがみ、
「……大丈夫。お姉ちゃんが何とかしてあげるからね」
 そう言って笑った。
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