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四章

兄と妹

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 エレンさんの言葉にスズエさん含め全員がキョトンとする。
「……え?どういう……」
「そのままの意味ですよ。……事情は語れば長くなりますが……」
 スズエさんがわずかに震えている。このままではいけないとエレンさんは手を握って立ち上がらせた。
「少し広いところに行きましょう。ここにいたら精神的にもよくないでしょうし」
「そうだねー。詳しいことを聞きたいし」
 ケイさんも賛成し、一度先に進むことにした。
 ちょうどよく先はロビーで、エレンさんはスズエさんをソファに座らせる。
「……えっと……エレン、さん……事情があるって言ってたけど、なんで……」
 戸惑ったように尋ねるスズエさんはどこか怯えているようだった。
「……母の実家が田舎にあるのは知っていますよね?」
「えぇ……巫女の家系、でしたよね?行ったことはないですけど……」
「はい。……私はそこに住んでいる七守家に引き取られたんです。母方の遠い親戚らしいですね」
「……そう、なんですね……その、私も頭が追い付いてなくて……」
 スズエさんの反応も仕方ない。生き別れていた兄に突然そんなこと言われたって、すぐには受け入れられないし嘘だと思われてもおかしくない。
「……本当、なんですか?エレンさんが、兄って……」
 案の定、スズエさんはそう聞いてきた。それにエレンさんは「えぇ、そうですよ」と彼女の左手……包帯を巻いている方を優しく握った。
「あなたが包帯を巻いている理由は、放火魔が家に火を放ったせいで酷いやけどを負ったから、ですよね?そのせいで、祖父が亡くなった……そのことを、養子に出された後にひとりおじさんから聞きました。証明というわけではありませんが、知り合いでなければここまでは知りえないでしょう?」
「……えぇ、あってます。おじさんの名前も……じゃあ、本当に兄さん、なんですか……?」
 スズエさんが巻き込まれた放火事件自体は、全国ニュースになるほど有名なものだ。……でも詳しいことは、身内ぐらいしか知る由もない。それこそ、おじの名前など。
「へぇー……意外だなー、エレンとスズちゃん、あんまり似てないって思っていたのにー」
「そうですか?顔立ちとかは似ている気がしますけど……」
 ケイさんの言葉にカナクニ先生はスズエさんとエレンさんを交互に見ながら答える。
 実際、二人は顔立ちは美形で似ているが髪や瞳の色がまったく違う。だからよく見ないと分からないだろう。
「…………」
「どうしました?」
 スズエさんがエレンさんをジッと見ていると、それに気付いたようで首を傾げた。スズエさんは「その……」と目を伏せながら、
「……私、あなたのことなんて呼んだらいいんですか……?」
 そう、聞いた。キョトンとしていたエレンさんは小さく微笑んで、
「私は兄さんって呼んでほしいですよ」
 彼女の頭を撫でる。スズエさんが頬を染めながら「……エレン、兄さん……」と小さく言うとエレンさんは嬉しそうな表情を浮かべた。
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