上 下
24 / 61
三章

居合斬り

しおりを挟む
 夜、眠れずに歩いていると目の前にスズエさんとシルヤ君が何かを話しているのが見えた。
(二人で何をしているんだろ……?)
 そう思うけど、スズエさんは気配に敏感だ。下手に近付いたら気付かれるだろう。
 どうしようか悩んでいると、二人は近くにあった部屋に入っていった。

 最終日、ナシカミが「まさかここまで生き残るとはなー」と笑って出迎えた。
「でも、今日は初めての死者が出るかもな?」
 ケラケラ笑う彼を、シナムキがなだめる。そして、
「そ、その……本日は本当に危険ですから……」
 頭を隠しながら告げた。危険……?と思っていると中心に何かが現れた。
 近付いて見ると、それは日本刀だった。
「あ、そうそう。今日はスズエ一人になったってことだから、居合斬りになったぞー」
「……私が元剣道部だから、ってことか?」
「そうそう。分かってんじゃねぇか」
 本当に楽しそうに、ナシカミが言う。スズエさんはため息をつきながら「もう二年前の話だろ……」と呟いた。
「まぁ、得意分野で来てくれたのには感謝するよ」
「フン、その余裕がいつまで続くかな?」
 スズエさんが挑発するように笑うと、ナシカミも負けじと言い返す。
 居合斬り、というと刀を抜いた勢いで斬りつけるというイメージがあるんだけど……。
「……ちなみに、納刀までセットなのか?」
「そうだぞ。それを五試合してもらう」
「なるほどな……」
 なんか、よく分からない言葉が出てきた。それに気付いたスズエさんが説明してくれた。
「居合斬り、というのは抜刀術とも言われていて刀が鞘に収まっている状態……これを帯刀というんですが、その状態から刀を抜いた時に一撃、さらに追撃を加えたうえで血を振り払う残心、刀を収める納刀とこれが一セットなんです。ドラマとかで見たことがあるかもしれませんね」
 なるほど、となんとなくだけど理解する。
「あ、あの、それって……本当に死ぬ可能性があるってこと……ですよね……」
 キナちゃんが不安げに聞いてくる。スズエさんが「大丈夫だよ」とその頭を撫でた。
 そして、スズエさんは日本刀を持って中心に立った。
「本当に大丈夫ですかね……」
 ハナさんが不安げに呟く。女子高校生が本物の日本刀で居合切りをするって言うのは見ているだけでひやひやするだろう。
 スズエさんの目の前に出てきたのは巨大な怪物。あれを、居合斬りで倒せというのか。
 緊張しているボク達を横目にスズエさんは一つ息をついて構えた。
「それじゃあ……はじめ!」
 ナシカミのその号令とともに怪物が襲い掛かってくる。もうすぐで攻撃されそうというところで、スズエさんが動いた。
 本当に一瞬のことで、目が追い付かなかったけど怪物が倒れていた。
「……え?」
 この場合、判定はどうなるの……?と思っていたけど、
「おー、早いなー。シナムキ、判定は?」
「せ、成功、です……」
 どうやらそこらへんは心配いらないらしい。
 スズエさんはそれを、怪我一つせず五試合やってのけた。
「すごいなー、簡単だったか?もう五試合やってみるか?」
 ナシカミがニヤニヤ笑いながら近づいてくる。スズエさんは日本刀と元の位置に置きながら「これ以上はご遠慮いただきたい」とため息をついた。
「冗談が通じねぇなー」
「冗談に聞こえないんだよ」
 本当にそうだ。シナムキはともかく、ナシカミは何をやらかすか分かったものではない。
 だけど、とにかくゲームも何とか全員生き残って乗り越えることが出来た。それに安堵しつつ、ボク達は自分の部屋に戻っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

怪物どもが蠢く島

湖城マコト
ホラー
大学生の綿上黎一は謎の組織に拉致され、絶海の孤島でのデスゲームに参加させられる。 クリア条件は至ってシンプル。この島で二十四時間生き残ることのみ。しかしこの島には、組織が放った大量のゾンビが蠢いていた。 黎一ら十七名の参加者は果たして、このデスゲームをクリアすることが出来るのか? 次第に明らかになっていく参加者達の秘密。この島で蠢く怪物は、決してゾンビだけではない。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

感染した世界で~Second of Life's~

霧雨羽加賀
ホラー
世界は半ば終わりをつげ、希望という言葉がこの世からなくなりつつある世界で、いまだ希望を持ち続け戦っている人間たちがいた。 物資は底をつき、感染者のはびこる世の中、しかし抵抗はやめない。 それの彼、彼女らによる、感染した世界で~終わりの始まり~から一年がたった物語......

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...