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二章
白い部屋で起こったことは何?
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階段の先にも扉が二つあった。片方に入ると、そこは温泉らしく謎の生物のぬいぐるみ?が置かれていた。
スズエさんがそれに近付くと、なんの抵抗もなく握った。
「…………」
何か言った気がするけど、聞こえてくることはなかった。
温泉をどんなに調べても何も見つからず、もう一つの部屋に入ってみることにした。
もう一つの部屋は真っ白で、何もなかった。……そのハズ、なのにどこか不気味な部屋だ。横を見ると、スズエさんが顔を青くしていた。
「……どうしたの?」
スズエさんに尋ねると、「あぁ、いえ……」と何かを考え込んだ後、
「……なんか、血のにおい?がするんですよね……ここで誰か殺されたような……」
そう言われ、あぁ、なるほどとボクも納得した。
一瞬、部屋に血が飛び散っているところが見えた気がした。
「…………ねぇ、ユウヤさん」
スズエさんがボクの腕を掴んで部屋の外に出る。どうしたのだろうと思うと、階段の下まで来てボクの方に振り返った。
「……気付きました?」
「え、何が?」
突然話を振られ、首を傾げてしまう。そんなボクに彼女はわずかに震えながら答えた。
「……あの、男子高校生が映っていた部屋ですよ」
「え……?」
「あそこで誰かが死んだのは確実でしょうね」
壁にもたれながら、スズエさんは呟く。ボクもその隣に立ち、聞いてみることにした。
「なんで気付いたの?」
その質問にスズエさんは寂しげにしながら、
「……嫌でも分かっちゃうんですよ、私の瞳は、ね……」
それだけ、答えた。
――祈療姫。
かつて存在したという、ボクが住んでいた村に伝わる巫女の話。そんな巫女の血を、スズエさんは引いている。
「……ねぇ、スズエさん。君の瞳には、何が映っているの?」
気付けば、ボクはそう聞いていた。
「……そうですね。絶望と、黒い闇、ですかね」
そう告げる彼女の瞳の奥には、黒いものが渦巻いていた。
少しして、放送が流れる。
『参加者の皆さんは三階に上がってください』
「……調べ残しがなければ行きましょうか」
それを聞いてスズエさんが姿勢を正す。そして歩きだそうとする彼女の後ろ姿を見てボクは思わずその腕を掴んでしまった。
「どうしました?」
スズエさんが驚いたように目を見開き、ボクの方を見ていた。
「……スズエさん」
「なんですか?」
「無茶だけは、しないでね」
思ったより弱弱しい声が出て自分でも驚いた。彼女は少し考え込み、
「……えぇ、ありがとうございます」
ただ、お礼を言ってくれるだけだった。
スズエさんがそれに近付くと、なんの抵抗もなく握った。
「…………」
何か言った気がするけど、聞こえてくることはなかった。
温泉をどんなに調べても何も見つからず、もう一つの部屋に入ってみることにした。
もう一つの部屋は真っ白で、何もなかった。……そのハズ、なのにどこか不気味な部屋だ。横を見ると、スズエさんが顔を青くしていた。
「……どうしたの?」
スズエさんに尋ねると、「あぁ、いえ……」と何かを考え込んだ後、
「……なんか、血のにおい?がするんですよね……ここで誰か殺されたような……」
そう言われ、あぁ、なるほどとボクも納得した。
一瞬、部屋に血が飛び散っているところが見えた気がした。
「…………ねぇ、ユウヤさん」
スズエさんがボクの腕を掴んで部屋の外に出る。どうしたのだろうと思うと、階段の下まで来てボクの方に振り返った。
「……気付きました?」
「え、何が?」
突然話を振られ、首を傾げてしまう。そんなボクに彼女はわずかに震えながら答えた。
「……あの、男子高校生が映っていた部屋ですよ」
「え……?」
「あそこで誰かが死んだのは確実でしょうね」
壁にもたれながら、スズエさんは呟く。ボクもその隣に立ち、聞いてみることにした。
「なんで気付いたの?」
その質問にスズエさんは寂しげにしながら、
「……嫌でも分かっちゃうんですよ、私の瞳は、ね……」
それだけ、答えた。
――祈療姫。
かつて存在したという、ボクが住んでいた村に伝わる巫女の話。そんな巫女の血を、スズエさんは引いている。
「……ねぇ、スズエさん。君の瞳には、何が映っているの?」
気付けば、ボクはそう聞いていた。
「……そうですね。絶望と、黒い闇、ですかね」
そう告げる彼女の瞳の奥には、黒いものが渦巻いていた。
少しして、放送が流れる。
『参加者の皆さんは三階に上がってください』
「……調べ残しがなければ行きましょうか」
それを聞いてスズエさんが姿勢を正す。そして歩きだそうとする彼女の後ろ姿を見てボクは思わずその腕を掴んでしまった。
「どうしました?」
スズエさんが驚いたように目を見開き、ボクの方を見ていた。
「……スズエさん」
「なんですか?」
「無茶だけは、しないでね」
思ったより弱弱しい声が出て自分でも驚いた。彼女は少し考え込み、
「……えぇ、ありがとうございます」
ただ、お礼を言ってくれるだけだった。
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