上 下
13 / 56
二章

犠牲者ビデオ その二

しおりを挟む
 次の映像は、白と黒の髪の青年が鎖で身体を縛られていた。
「な、何!?なんで縛られてるの!?」
 パニックになっている彼はキョロキョロと必死に探していた、けど何も見つからなかったようだ。
「い、いや……っ!しにたく、ない……!」
 彼の言葉もむなしく、時間切れになり……首を、斬り落とされた。
「……酷いね」
「そう、ですね……」
 スズエさんは無表情ながらも悲しげだった。
 その次に見たのは、ピンク色の髪の女の子が吊るされている映像だった。
「あ……う……」
 呻く声が聞こえてくる。そのまま、あっけなく少女は動かなくなった。それを見ていると、
「首吊りって、死刑の時は苦しまないように調整されているみたいですけど無理やりだとかなり苦しいみたいですよ……外国でクレーンを使った絞首刑とかあるじゃないですか。あれ、相当な苦痛みたいです、きっと、この子も……」
 スズエさんがそう言葉を紡いだ。
 確かに、そんな話はどこかで聞いたことある気がする。なんで高校生であるスズエさんが知っているのかは謎だけど、でもそれを聞いただけで本当はどれだけこの子が苦しんだのか理解した。
 そんな話をした彼女は次の映像を見ていた。どうやら白髪の男子高校生がおなかを貫かれて壁に寄り掛かっている場面だった。
「あー、クソ。なんでオレがこんなこと……確かに人生どうでもいいとか思ってたけどさ……ここで、かよ……」
 そんな言葉を吐き捨てていた。
「……ん?」
 ボクの隣で、初めてスズエさんが何かを探る目をした。
「どうしたの?」
 すかさずボクが尋ねると「あ、いえ……」と言うか悩んでいたけど、
「……なんか、おかしくないですか?」
 彼女はそう、言った。ボクももう一度映像を見ると、確かに違和感があった。
「ねぇ、壁の血……」
「やっぱり、そうですよね……ゴウさんとかケイさんみたいな、ガタイのいい人じゃないとこんな感じにつかないですね。それに音声も違和感があります。まるで成人男性の声を無理やり幼くしたような……」
「じゃあ、この子……」
「えぇ、生きてる可能性がありますね」
 スズエさんの言葉にボクはわずかな希望が見えた気がした。……一瞬だけ、悲しげな表情を浮かべていた気がしたけどよく見えなかった。
 次の映像は、天井に押しつぶされそうになっている茶髪の男性だ。
「や、やめてくれ!」
 その男性は必死に懇願していた。そんな彼から、意外な人の名前が出てきた。
「彼女のための舞台なんだろう!?「森岡 涼恵」のための!なんで私がこんな目に……!」
「……え……?」
 ボクはもちろん、スズエさんも目を丸くしていた。
「なんで、私の名前を……?」
 もちろん心当たりなんてないのだろう、疑問を呈していた。
 でも、その答えなど帰ってくるわけもなく。その男性は悲鳴をあげながら潰されてしまった。
「…………」
 ボク達は顔を見あう。……少女の瞳は不安で揺れていた。
「……大丈夫、ボクは君が何者であっても、君の味方だよ」
 そう言いながら、優しくその頭を撫でた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

意味がわかると下ネタにしかならない話

黒猫
ホラー
意味がわかると怖い話に影響されて作成した作品意味がわかると下ネタにしかならない話(ちなみに作者ががんばって考えているの更新遅れるっす)

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...