上 下
11 / 56
二章

モニター室のDVD

しおりを挟む
「……私、モニター室に行きます」
 皆が疑心暗鬼になっている中、スズエさんはそう告げる。そしてマミさんの方を見て、
「すみませんが、彼女に何かあったか聞いてあげてくれませんか?」
 紫色の髪の少女をチラッと見ながら頼む。
「構わないが……怯えているんだぞ」
「話したくなければそれでいいです。きっと彼女も、何かあってのことでしょうし。でもせめて、名前だけでも分かったら……」
「……そうか。分かった」
「お願いします」
 頭を下げ、スズエさんは一人でモニター室に行ってしまった。マミさんはそのまま、少女の方に行って話を聞こうとしゃがみ込んだ。
「そういえば、お前の名前もまだだったな」
 ミヒロさんがシルヤ君の方を見ると、彼はうつむいたけど答えた。
「……シルヤっす」
「シルヤ君、ね。少し聞いてもいいかなー?」
 ケイさんがシルヤ君の方を見ると、彼は「何すか?」と姿勢を正す。
「スズちゃんとは親友なんだよねー?」
「そう、すね。生まれた時からの親友っす」
「そっかー」
「あの、なんすか?本当に……」
 シルヤ君はスズエさんを守るためか、かなり警戒しているように見える。……それはもう、異様なほどに。
「何でもないよー?ちょっと聞いてみただけだし」
「そうっすか?」
 二人の会話を聞きながらマミさんの方を見ると、なんとか少女と話が出来ているようだ。もしかしたらスズエさんはこれを見越して頼んだのかもしれない。
 チラッと、エレンさんの方を見る。彼は持っているフライパンをギュッと握っていた。なんだかんだ、彼も不安になっているのかもしれない。
 ――でも、このまま何もしないわけにもいかないよね……。
「あの、ボク、スズエさんのところに行っていいですか?」
 ボクがみんなに尋ねると、「そう、ですね。スズエさんだけだと心配ですからね」とカナクニ先生が小さく笑った。その後ろで、ハナさんがうつむいている。
 でも、みんな止める気はないようだと判断し、ボクはモニター室に向かう。スズエさんはボクを見て「来たんですね」と目を丸くしていた。
「うん。さすがに高校生一人に探索させるのはね」
 そう言って笑うと、「ちょうどよかった」と彼女は何かを渡した。
 それは八枚のDVDだった。どうやら机に置いていたらしい。
「少し、これを見ませんか?」
 その言葉に、ボクは頷く。その前にほかのところも探索するけど、めぼしいものは何もなかった。それはスズエさんも同じらしい。
 改めて、一つのパソコンに一枚ずつ読み込ませる。そこには恐らく、最初の試練で死んでしまった人達が映っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

意味がわかると下ネタにしかならない話

黒猫
ホラー
意味がわかると怖い話に影響されて作成した作品意味がわかると下ネタにしかならない話(ちなみに作者ががんばって考えているの更新遅れるっす)

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

処理中です...