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10:婚約発表(レオナルド視点)
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信じられない!
こんなはずじゃなかった。
「あなたに奇跡が起きたのではなくて、アリシアが奇跡を起こしていたのね」
「イザベラ……」
「気安く呼ばないでくださらない?」
「そんな……!」
「私たちの婚約発表はアリシアの葬儀で台無しになってしまったし、評判もガタ落ちよ」
僕たちの婚約発表は盛大に行われ、たくさんの祝福を受けていた。
それなのに、その最中にアリシアの訃報が届いた。
おかげで僕は、献身的に看病した婚約者を捨てた薄情な男として白い目を向けられた。
でもイザベラを立てて祝われていた。
ところが、アリシアが葬儀の最中に息を吹き返し、彼女の方が話題になってしまった。
神の奇跡は僕ではなくアリシアに起きたのだと噂されるようになった。
そのせいで、僕とイザベラの婚約はどこかうしろめたい関係かのように遠巻きに貶されている。
それでも結婚準備を進めていたのに、更に追い打ちをかけるようにアリシアが求婚を受けた。
相手は、侯爵家よりも格上の公爵。
王家と親交の深いモンテスキュー公爵家にアリシアは嫁ぐことになった。
モンテスキュー公爵とアリシアの婚約発表は宮殿の大広間で行われ、国中の貴族だけじゃなく近隣諸国の王家や夕食貴族まで招かれていた。
その中には僕とイザベラも含まれていた。
王侯貴族たちからイザベラは形式上は丁寧に扱われている。しかし僕は完全に無視されていた。
まるで王族のような扱いを受けながら、アリシアは少し緊張している様子でしっかり周囲に受け答えしている。
「本当に可愛らしい方ね、アリシア嬢」
「まるで天使みたい」
「そりゃモンテスキュー公爵が恋に落ちるわけよね」
「美男美女で、まるで神話に出てくる夫婦みたい」
そこかしこでアリシアが褒め称えられている。
「あの方って、元婚約者が病気で昏睡状態の中を付きっ切りで看病して捨てられたんですってね」
「酷い話よ」
「きっと神様が助けてくださったんだわ」
「こう言っちゃなんだけど、恩知らずな元婚約者には捨てられてよかったわよ」
「そうよ。勿体ないもの」
胃がキリキリする。
僕は悪者で、更に馬鹿にされている。
「モンフォール侯爵令嬢もどんな神経していらっしゃるのかしらね」
「お見舞いにも行かなかったそうよ」
「どうして招待されたのかしら」
「見せつけるため?」
「違うわよ。歯牙にもかけない存在だからでしょう」
「単純に、一律に招待されたんじゃなくて?私だって面識ない方だし」
「あ……」
お喋りに夢中になっていてくれよ。
どうして僕に気づくんだよ。
「……あの方じゃない?」
「え?アリシア嬢を捨てたって人でなし?」
「間違いないわ!ほら、隣にいらっしゃるのはイザベラ嬢よ」
「招待されたからって、よくのこのこ来たもんよね」
辛い。
惨めで、恥ずかしくて、居た堪れない。
僕の隣でイザベラも顔を真っ赤にして震えていた。
「モンテスキュー公爵、ベルモンド伯爵令嬢、御婚約おめでとうございます!」
祝福と喝采が、また僕を苛んだ。
僕は、どこで間違えてしまったんだろう……
あのままアリシアと結婚していたら……
「……」
幸せそうなアリシアの笑顔を遠くから眺める。
凄く、凄く。
胸が痛い。
はっきりわかった。
僕は、過ちを犯したんだ。
僕が、愛していた、アリシア……
こんなはずじゃなかった。
「あなたに奇跡が起きたのではなくて、アリシアが奇跡を起こしていたのね」
「イザベラ……」
「気安く呼ばないでくださらない?」
「そんな……!」
「私たちの婚約発表はアリシアの葬儀で台無しになってしまったし、評判もガタ落ちよ」
僕たちの婚約発表は盛大に行われ、たくさんの祝福を受けていた。
それなのに、その最中にアリシアの訃報が届いた。
おかげで僕は、献身的に看病した婚約者を捨てた薄情な男として白い目を向けられた。
でもイザベラを立てて祝われていた。
ところが、アリシアが葬儀の最中に息を吹き返し、彼女の方が話題になってしまった。
神の奇跡は僕ではなくアリシアに起きたのだと噂されるようになった。
そのせいで、僕とイザベラの婚約はどこかうしろめたい関係かのように遠巻きに貶されている。
それでも結婚準備を進めていたのに、更に追い打ちをかけるようにアリシアが求婚を受けた。
相手は、侯爵家よりも格上の公爵。
王家と親交の深いモンテスキュー公爵家にアリシアは嫁ぐことになった。
モンテスキュー公爵とアリシアの婚約発表は宮殿の大広間で行われ、国中の貴族だけじゃなく近隣諸国の王家や夕食貴族まで招かれていた。
その中には僕とイザベラも含まれていた。
王侯貴族たちからイザベラは形式上は丁寧に扱われている。しかし僕は完全に無視されていた。
まるで王族のような扱いを受けながら、アリシアは少し緊張している様子でしっかり周囲に受け答えしている。
「本当に可愛らしい方ね、アリシア嬢」
「まるで天使みたい」
「そりゃモンテスキュー公爵が恋に落ちるわけよね」
「美男美女で、まるで神話に出てくる夫婦みたい」
そこかしこでアリシアが褒め称えられている。
「あの方って、元婚約者が病気で昏睡状態の中を付きっ切りで看病して捨てられたんですってね」
「酷い話よ」
「きっと神様が助けてくださったんだわ」
「こう言っちゃなんだけど、恩知らずな元婚約者には捨てられてよかったわよ」
「そうよ。勿体ないもの」
胃がキリキリする。
僕は悪者で、更に馬鹿にされている。
「モンフォール侯爵令嬢もどんな神経していらっしゃるのかしらね」
「お見舞いにも行かなかったそうよ」
「どうして招待されたのかしら」
「見せつけるため?」
「違うわよ。歯牙にもかけない存在だからでしょう」
「単純に、一律に招待されたんじゃなくて?私だって面識ない方だし」
「あ……」
お喋りに夢中になっていてくれよ。
どうして僕に気づくんだよ。
「……あの方じゃない?」
「え?アリシア嬢を捨てたって人でなし?」
「間違いないわ!ほら、隣にいらっしゃるのはイザベラ嬢よ」
「招待されたからって、よくのこのこ来たもんよね」
辛い。
惨めで、恥ずかしくて、居た堪れない。
僕の隣でイザベラも顔を真っ赤にして震えていた。
「モンテスキュー公爵、ベルモンド伯爵令嬢、御婚約おめでとうございます!」
祝福と喝采が、また僕を苛んだ。
僕は、どこで間違えてしまったんだろう……
あのままアリシアと結婚していたら……
「……」
幸せそうなアリシアの笑顔を遠くから眺める。
凄く、凄く。
胸が痛い。
はっきりわかった。
僕は、過ちを犯したんだ。
僕が、愛していた、アリシア……
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