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1:清らかな祈り
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どうしよう。
レオナルドが死んでしまう。
「いや……」
最期の瞬間は愛する人と二人きりにしてあげよう。
そういう気遣いで私以外が部屋を出て行った。
もう誰もレオナルドが治るなんて信じていない。
期待していない。
私は……
「いやよ……レオナルド……」
どうしてレオナルドが不治の病に冒されなければならないの?
何の罪もない優しい人の未来が、どうして……
「ああ、神様……!」
毎日、毎日、毎日。
ずっとお祈りしてきたけれど、この願いは叶えてもらえない。
レオナルドの病がよくなりますように。
レオナルドを苦しませないでください。
どうか。
どうか、レオナルドをお救いください。
「レオナルドをお救いください……!」
神様しか、できないこと。
だから、どうか。
「……、……ぅ」
「!?」
レオナルドがまた苦しそうに呻いた。
もう弱々しい吐息に乗せて声を洩らすのも辛そうなのに。
「レオナルド……?」
呼び掛けても、返事はない。
固くなった手を握る。
強張った土気色の頬を撫でる。
「レオナルド……!」
必死で呼んでも目覚めることはない。
「う……ううぅっ」
もう駄目だ。
私も、わかっている。
手の施しようがないことなんて。
「レオナルドぉ……っ」
枕元に跪き泣きじゃくる私を、慰めてくれる人はいない。
レオナルドにそうしてもらいたくても、彼はもう、死にゆく人。
「……っ」
無我夢中でレオナルドの手を両手で包み、額を擦りつける。
私にはもう、無理とわかっていても、無駄とわかっていても、そうするしかない。
神様。
どうか、レオナルドを連れて行かないでください。
誰からも愛される素晴らしい人なんです。
お願いします。
愛しているんです。
どうか……どうか……
どうしてもこの人の命が欲しいなら、代わりに私を連れて行ってください。
私が代わりに
──アリシア
「!?」
誰?
──もし本当に愛する男の代わりに死にたいと思っているのなら、私が助けてあげよう
「……あなたは……神様、ですか……?」
信じられない。
私、おかしくなってしまったの?
──私は天使サラフィエル
「天使……」
──レオナルドの魂の代わりに、君の美しい魂を頂けるなら、君の愛するレオナルドを返してあげよう
「……」
幻でもいい。
でも、本当に祈りが届いたのなら。
私は……
「お願いします。私の命を差し上げます。どうか、レオナルドを助けてください」
──おいで、アリシア
「うっ」
痛い!
体が……急に、重くなって……
「あ、あぁ……っ」
意識が、遠退いていく……
レオナルドが死んでしまう。
「いや……」
最期の瞬間は愛する人と二人きりにしてあげよう。
そういう気遣いで私以外が部屋を出て行った。
もう誰もレオナルドが治るなんて信じていない。
期待していない。
私は……
「いやよ……レオナルド……」
どうしてレオナルドが不治の病に冒されなければならないの?
何の罪もない優しい人の未来が、どうして……
「ああ、神様……!」
毎日、毎日、毎日。
ずっとお祈りしてきたけれど、この願いは叶えてもらえない。
レオナルドの病がよくなりますように。
レオナルドを苦しませないでください。
どうか。
どうか、レオナルドをお救いください。
「レオナルドをお救いください……!」
神様しか、できないこと。
だから、どうか。
「……、……ぅ」
「!?」
レオナルドがまた苦しそうに呻いた。
もう弱々しい吐息に乗せて声を洩らすのも辛そうなのに。
「レオナルド……?」
呼び掛けても、返事はない。
固くなった手を握る。
強張った土気色の頬を撫でる。
「レオナルド……!」
必死で呼んでも目覚めることはない。
「う……ううぅっ」
もう駄目だ。
私も、わかっている。
手の施しようがないことなんて。
「レオナルドぉ……っ」
枕元に跪き泣きじゃくる私を、慰めてくれる人はいない。
レオナルドにそうしてもらいたくても、彼はもう、死にゆく人。
「……っ」
無我夢中でレオナルドの手を両手で包み、額を擦りつける。
私にはもう、無理とわかっていても、無駄とわかっていても、そうするしかない。
神様。
どうか、レオナルドを連れて行かないでください。
誰からも愛される素晴らしい人なんです。
お願いします。
愛しているんです。
どうか……どうか……
どうしてもこの人の命が欲しいなら、代わりに私を連れて行ってください。
私が代わりに
──アリシア
「!?」
誰?
──もし本当に愛する男の代わりに死にたいと思っているのなら、私が助けてあげよう
「……あなたは……神様、ですか……?」
信じられない。
私、おかしくなってしまったの?
──私は天使サラフィエル
「天使……」
──レオナルドの魂の代わりに、君の美しい魂を頂けるなら、君の愛するレオナルドを返してあげよう
「……」
幻でもいい。
でも、本当に祈りが届いたのなら。
私は……
「お願いします。私の命を差し上げます。どうか、レオナルドを助けてください」
──おいで、アリシア
「うっ」
痛い!
体が……急に、重くなって……
「あ、あぁ……っ」
意識が、遠退いていく……
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