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エルーシ殿下とセレスはうなずき合い、何かを決心したようだった。
「ルシオンが居なくなってから、ヒューリとテオルドが目を覚ましたんだ。」
「テオルドも?…本当に?無事なの?」
ヒューリが目を覚ましたと言うのは、グレース王子から聞いて知っていた。本当だったのかは疑わしかったが。
でもテオルドが目を覚ましたのは知らなかった。
「テオルドも大丈夫だ。もちろんヒューリも異常はない。」
それを聞いて安心する。
それならそうと、グレース王子も言ってくれたら良いのに…。
もしかして…知らなかった?
あの部屋で俺とずっと一緒にいたから、グレース王子も外部の情報が解らなかったんじゃないか?
それと、気になる事が…
「俺は…どうなるんですか?……やっぱり幽閉、ですか。」
裁かれるのだと、もう諦めていた。
せめて、俺に優しくしてくれた人達に会いたかったのだが。
「何を言ってるんだ?ルシオンは無罪だよ。」
「へ?」
エルーシ殿下のあっけらかんとした言い方に、俺はまだ信じられないでいる。この人の言動にはいつも驚かされるが、嘘は言わないはずだ。
だが確証が欲しくてセレスの方を見る。
「本当だよ。魔法省の優秀な研究員に調べてもらったんだ。」
セレスが言うには、テオルドの部屋を徹底的に調べてもらったらしい。そして微かだが、黒い人影の痕跡があったそうだ。黒い人影を造り出していたのが誰なのか、3日かかって解ったらしい。
そして、何故ヒューリやテオルドが眠り続けたのかも解明したらしい。そのからくりは、黒い人影を造り出していた人物と、睡眠薬のような魔法をかけたのが別人だったのだ。
魔法省の研究員によると、あらかじめ魔法で睡眠薬のような玉を造っておき、黒い人影で運び被害者に襲いかかる。被害者が剣で人影を切りつければ、睡眠薬の玉が弾け魔法がかけられてしまうというものだった。
被害者の目撃情報で、黒い人影が霧のように消えたというのは、睡眠薬の玉が霧状になったのだった。
それから、マクビルとヒューリの黒い人影に触れられた時についた痣は、怨念のようなものらしい。怖い。
「じゃあ、その犯人は捕まったの?」
「証拠がなくて、まだだ。そして……」
セレスはそこから眉間にシワをよせ言い淀んだ。
「ルシオン、悪いが…囮になって欲しい。現行犯で捕まえたいんだ。セレスもまだ被害に合っていないから、2人で囮になってもらいたい。」
セレスが言い出せないのを見越して、エルーシ殿下が頼んできた。
「もしかしたら俺が、黒い人影を造り出してしまったら………。」
「あー、それはない。君の闇属性は弱いからね。」
そうなのだ。すっかり忘れていたが闇魔法の訓練は、あまりやっていない。そもそも俺の魔力量が少ない。光属性を増やす為、頑張っていたがそれでも人並みにしか魔力量を上げられなかった。
そこまではっきり言われると落ち込む。
「犯人が黒い人影を操って攻撃してくるまで、しばらく一緒に居てもらおうか。」
頼んでいるはずなのに、エルーシ殿下は悪びれもなくニヤついていた。
◆◆◆
「セレス…一緒に寝る必要あるの?」
「ある!別々のベッドだとルシオンを守れるか解らない。何でも一緒にいないと心配だ。そうだ、明日からはシャワーも一緒に浴びよう。ね、ルシオン。」
何だか断れない雰囲気の笑顔で押しきられた。
今日から早速、寮のセレスの部屋で一緒に囮になる。
久々のセレスの部屋で一緒に寝るのは良いんだけど、ドキドキしすぎて眠れるか心配なんだけど。俺はそわそわして落ち着かないでいた。
そんな俺とは違いセレスは機嫌が良いようだ。
「ほら、おいで。」
「!※★#@!!」
ベッド上で布団を剥ぐって俺の入る隙間を開けてくれたのは良いのだが、セレスのシャツから胸がチラ見えしていた。あれはヤバい。
セレスの久々のエロさにその場で身悶える。
「ルシオン、どうした?」
「…何でもない。」
平常心、平常心だ。そう自分に言い聞かせ気を取り直し、ベッドに入る。
セレスのベッドはほのかに、爽やかで甘い香りがしてくる。セレスの香りだと思うと安心してくる。
「ルシオン、おやすみのキスは?」
「ふあ?」
変な声が出てしまった。キス!?
今それ、必要なくない?
だが、セレスは本気なのか目を閉じてしまう。
え?これって、キスしろって事だよね。
俺はしばらく色々悩んで、思いきってセレスの唇に軽く自分の唇を当てた。
「おやすみ!」
早口に言ってセレスに背を向け、布団を被った。
あー、物凄くドキドキした。まだ心臓が激しく波打って苦しい。
だが、そんな軽いキスではダメだったらしい。セレスは、布団の上から俺の身体をなぞってくる。
「あんまり可愛い事すると、痛い目みるよ。」
口調は優しいのに、触ってくる手付きが妖しさを滲ませている。
ヤバい…。いつ黒い人影が襲ってくるか解らない状況なのに、今現在、セレスに襲われそうな予感がする。
どうしよう。
「ルシオンが居なくなってから、ヒューリとテオルドが目を覚ましたんだ。」
「テオルドも?…本当に?無事なの?」
ヒューリが目を覚ましたと言うのは、グレース王子から聞いて知っていた。本当だったのかは疑わしかったが。
でもテオルドが目を覚ましたのは知らなかった。
「テオルドも大丈夫だ。もちろんヒューリも異常はない。」
それを聞いて安心する。
それならそうと、グレース王子も言ってくれたら良いのに…。
もしかして…知らなかった?
あの部屋で俺とずっと一緒にいたから、グレース王子も外部の情報が解らなかったんじゃないか?
それと、気になる事が…
「俺は…どうなるんですか?……やっぱり幽閉、ですか。」
裁かれるのだと、もう諦めていた。
せめて、俺に優しくしてくれた人達に会いたかったのだが。
「何を言ってるんだ?ルシオンは無罪だよ。」
「へ?」
エルーシ殿下のあっけらかんとした言い方に、俺はまだ信じられないでいる。この人の言動にはいつも驚かされるが、嘘は言わないはずだ。
だが確証が欲しくてセレスの方を見る。
「本当だよ。魔法省の優秀な研究員に調べてもらったんだ。」
セレスが言うには、テオルドの部屋を徹底的に調べてもらったらしい。そして微かだが、黒い人影の痕跡があったそうだ。黒い人影を造り出していたのが誰なのか、3日かかって解ったらしい。
そして、何故ヒューリやテオルドが眠り続けたのかも解明したらしい。そのからくりは、黒い人影を造り出していた人物と、睡眠薬のような魔法をかけたのが別人だったのだ。
魔法省の研究員によると、あらかじめ魔法で睡眠薬のような玉を造っておき、黒い人影で運び被害者に襲いかかる。被害者が剣で人影を切りつければ、睡眠薬の玉が弾け魔法がかけられてしまうというものだった。
被害者の目撃情報で、黒い人影が霧のように消えたというのは、睡眠薬の玉が霧状になったのだった。
それから、マクビルとヒューリの黒い人影に触れられた時についた痣は、怨念のようなものらしい。怖い。
「じゃあ、その犯人は捕まったの?」
「証拠がなくて、まだだ。そして……」
セレスはそこから眉間にシワをよせ言い淀んだ。
「ルシオン、悪いが…囮になって欲しい。現行犯で捕まえたいんだ。セレスもまだ被害に合っていないから、2人で囮になってもらいたい。」
セレスが言い出せないのを見越して、エルーシ殿下が頼んできた。
「もしかしたら俺が、黒い人影を造り出してしまったら………。」
「あー、それはない。君の闇属性は弱いからね。」
そうなのだ。すっかり忘れていたが闇魔法の訓練は、あまりやっていない。そもそも俺の魔力量が少ない。光属性を増やす為、頑張っていたがそれでも人並みにしか魔力量を上げられなかった。
そこまではっきり言われると落ち込む。
「犯人が黒い人影を操って攻撃してくるまで、しばらく一緒に居てもらおうか。」
頼んでいるはずなのに、エルーシ殿下は悪びれもなくニヤついていた。
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「セレス…一緒に寝る必要あるの?」
「ある!別々のベッドだとルシオンを守れるか解らない。何でも一緒にいないと心配だ。そうだ、明日からはシャワーも一緒に浴びよう。ね、ルシオン。」
何だか断れない雰囲気の笑顔で押しきられた。
今日から早速、寮のセレスの部屋で一緒に囮になる。
久々のセレスの部屋で一緒に寝るのは良いんだけど、ドキドキしすぎて眠れるか心配なんだけど。俺はそわそわして落ち着かないでいた。
そんな俺とは違いセレスは機嫌が良いようだ。
「ほら、おいで。」
「!※★#@!!」
ベッド上で布団を剥ぐって俺の入る隙間を開けてくれたのは良いのだが、セレスのシャツから胸がチラ見えしていた。あれはヤバい。
セレスの久々のエロさにその場で身悶える。
「ルシオン、どうした?」
「…何でもない。」
平常心、平常心だ。そう自分に言い聞かせ気を取り直し、ベッドに入る。
セレスのベッドはほのかに、爽やかで甘い香りがしてくる。セレスの香りだと思うと安心してくる。
「ルシオン、おやすみのキスは?」
「ふあ?」
変な声が出てしまった。キス!?
今それ、必要なくない?
だが、セレスは本気なのか目を閉じてしまう。
え?これって、キスしろって事だよね。
俺はしばらく色々悩んで、思いきってセレスの唇に軽く自分の唇を当てた。
「おやすみ!」
早口に言ってセレスに背を向け、布団を被った。
あー、物凄くドキドキした。まだ心臓が激しく波打って苦しい。
だが、そんな軽いキスではダメだったらしい。セレスは、布団の上から俺の身体をなぞってくる。
「あんまり可愛い事すると、痛い目みるよ。」
口調は優しいのに、触ってくる手付きが妖しさを滲ませている。
ヤバい…。いつ黒い人影が襲ってくるか解らない状況なのに、今現在、セレスに襲われそうな予感がする。
どうしよう。
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