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数日経てば、男子寮にいる生徒ほとんどが、黒い人影を見ていた。
まだ被害がないのが、ルシオン、テオルド、ジオード、セレス、他数人だった。
エルーシ殿下は毎日王城に帰るため例外だが、寮生活を楽しんでいるグレース王子は、強固な結界を張っているらしく被害はない。
そんななか…
「ヒューリ、大丈夫?」
ルシオンは救護室に来ていた。
ヒューリも昨夜、被害にあったらしく、救護室でソフィー先生に診てもらっていた。
「ああ、俺は大丈夫だ。」
「話を続けても良いか?……それで、痣は?」
救護室にはセレスもいて、昨夜の様子をヒューリに聞いていたようだった。
俺も気になり、適当に近くにあった椅子に座って聞く。
「俺は、左手首です。黒い人影は「どうして」と言って近づいて来ました。そして左手首に触れて来て、ビリビリと衝撃があったので、剣で切りました。…ですが、切った感触もなく…霧のように消えました。」
そう言ってヒューリは、左手首の痣を見せた。
そこは、やっぱり赤黒く痣になっていた。
「あなたは、「どうして」と聞いたのね。」
「はい。」
ソフィー先生は念を押して聞く。マクビルの時と一緒で、黒い人影の『どうして』を聞いている。だが一晩たった今、ヒューリに幼児化になるような変化はない。それとも、これから変わってしまうのだろうか…そう思うとルシオンはとたんに不安になる。
「ヒューリ、今日部屋に泊まりに行っても良いか?」
「え!?ああ、良いけど…。」
ルシオンの突然の提案に、ヒューリはチラッとセレスの方を見る。
セレスは渋い顔をしていたが、頷き仕方ないと了承した。
その後、昼休憩も夕食の時もルシオンは、ヒューリと行動を共にしたが、いつも通りで変わった所は無かった。
そして、今現在ヒューリとルシオンは、1つのベッドで一緒に寝ていた。
「ヒューリとは同室だったけど、こうやって一緒に寝た事はなかったな。」
「そうだな。」
ヒューリは何故か、ルシオンに背中を向けていた。
始めはヒューリがルシオンに、ベッドを譲った事が切っ掛けだった。
ヒューリは頭が良くて生徒会に所属していて、平民だが1人部屋。
そしてルシオンは腐っても貴族だ。だから貴族様にソファで寝てもらうなど、ヒューリには出来なかった。ゆえに、ベッドを譲ったのだが、ルシオンは部屋の主はヒューリだから自分はソファを使うと言いだした。
どちらも譲らなかった結界、一緒にベッドで寝る事になったのだが…ヒューリにはこの状況が耐えられなかった。
元々、ルシオンには好意を寄せていた。しかも拐われ助け出した時の扇情的な姿を見ているのだ。一緒のベッドで、何の疑いも無しに無防備な寝姿を見ると、ヒューリは眠れなくなってしまっていた。
隣からは規則正しい寝息が聞こえてきて、そっと寝顔を覗き見た。安らかに眠っている顔は、整っていて美しかった。ヒューリは起こさないように、静かに唇で唇に触れた。
柔らかかった感触は、ヒューリをさらに悩ませる事になった。
翌朝
ルシオンは、けたたましい音で跳ね起きた。
「うわぁっ!なに?なんだ!?」
頭が痛くなるほどの音量で、サイレンのように鳴っているものは、目覚まし時計だった。しかも5台。
ルシオンは止め方に手間取ったものの、全部音を止める。
ルシオンは眠そうな顔のまま、隣で寝ているだろう友人を見る。ヒューリは、まだぐっすり寝ている。
もう起こす時間だと思い、体を揺すって起こすが、ヒューリは起きない。
同室だった頃は、なかなか起きなくて、ベッドから落として起こしていた事もあった。
だから、今回もベッドから落として起こす。だがそれでも眠り続けている。
寝起きが悪いヒューリだとしても、こんなにも反応が無いのはおかしい。
まさか………と心臓が大きく跳ねる。
恐る恐る、ヒューリの鼻元に耳を近付けてみた。
微かだが、息はしているし、ヒューリの胸に手を当てれば、鼓動は伝わってきていた。
やっぱり寝ているだけかと、ルシオンは安堵した。
「ヒューリ…。」
声をかけ、体を揺するが、それでもヒューリは起きなかった。
ソフィー先生に来てもらい、ヒューリの様子を診てもらった。
「不思議だけど、ただ眠っているだけね。……やっぱり、黒い人影の影響なのかしら。」
「昨日の夜は、普通でした。眠ったら目が覚めなくなるなんて……。」
「そうね…、とりあえず生徒会に報告ね。……………でも、彼どうしてベッドから落ちているの?」
ルシオンは、どう説明しようかと冷や汗をかいた。
そして、国立記念日がやってきた。
「ルシオン…元気だせよ。」
マクビルは、そう言ってルシオンの頭を撫でるが、『うん…』と気落ちした返事しか返ってこない。
あの日からヒューリは、ずっと眠ったままだった。
ルシオンは、一緒にいたのに何も出来なかった自分が、情けなくて落ち込んでいたのだ。
そんなルシオンに、テオルドは優しく話しかける。
「ルシオン、良い事教えてあげる。ダンスパーティに参加した生徒だけが貰える生花のブローチがあるんだけど、そのブローチには迷信があってね、3つ集まると願い事が叶うらしいんだ。だからね…。」
テオルドは、自分とルシオン、それからマクビルを指差して3つだよ、と微笑む。
ルシオンは、そんな友人達の優しさに涙が溢れていた。
まだ被害がないのが、ルシオン、テオルド、ジオード、セレス、他数人だった。
エルーシ殿下は毎日王城に帰るため例外だが、寮生活を楽しんでいるグレース王子は、強固な結界を張っているらしく被害はない。
そんななか…
「ヒューリ、大丈夫?」
ルシオンは救護室に来ていた。
ヒューリも昨夜、被害にあったらしく、救護室でソフィー先生に診てもらっていた。
「ああ、俺は大丈夫だ。」
「話を続けても良いか?……それで、痣は?」
救護室にはセレスもいて、昨夜の様子をヒューリに聞いていたようだった。
俺も気になり、適当に近くにあった椅子に座って聞く。
「俺は、左手首です。黒い人影は「どうして」と言って近づいて来ました。そして左手首に触れて来て、ビリビリと衝撃があったので、剣で切りました。…ですが、切った感触もなく…霧のように消えました。」
そう言ってヒューリは、左手首の痣を見せた。
そこは、やっぱり赤黒く痣になっていた。
「あなたは、「どうして」と聞いたのね。」
「はい。」
ソフィー先生は念を押して聞く。マクビルの時と一緒で、黒い人影の『どうして』を聞いている。だが一晩たった今、ヒューリに幼児化になるような変化はない。それとも、これから変わってしまうのだろうか…そう思うとルシオンはとたんに不安になる。
「ヒューリ、今日部屋に泊まりに行っても良いか?」
「え!?ああ、良いけど…。」
ルシオンの突然の提案に、ヒューリはチラッとセレスの方を見る。
セレスは渋い顔をしていたが、頷き仕方ないと了承した。
その後、昼休憩も夕食の時もルシオンは、ヒューリと行動を共にしたが、いつも通りで変わった所は無かった。
そして、今現在ヒューリとルシオンは、1つのベッドで一緒に寝ていた。
「ヒューリとは同室だったけど、こうやって一緒に寝た事はなかったな。」
「そうだな。」
ヒューリは何故か、ルシオンに背中を向けていた。
始めはヒューリがルシオンに、ベッドを譲った事が切っ掛けだった。
ヒューリは頭が良くて生徒会に所属していて、平民だが1人部屋。
そしてルシオンは腐っても貴族だ。だから貴族様にソファで寝てもらうなど、ヒューリには出来なかった。ゆえに、ベッドを譲ったのだが、ルシオンは部屋の主はヒューリだから自分はソファを使うと言いだした。
どちらも譲らなかった結界、一緒にベッドで寝る事になったのだが…ヒューリにはこの状況が耐えられなかった。
元々、ルシオンには好意を寄せていた。しかも拐われ助け出した時の扇情的な姿を見ているのだ。一緒のベッドで、何の疑いも無しに無防備な寝姿を見ると、ヒューリは眠れなくなってしまっていた。
隣からは規則正しい寝息が聞こえてきて、そっと寝顔を覗き見た。安らかに眠っている顔は、整っていて美しかった。ヒューリは起こさないように、静かに唇で唇に触れた。
柔らかかった感触は、ヒューリをさらに悩ませる事になった。
翌朝
ルシオンは、けたたましい音で跳ね起きた。
「うわぁっ!なに?なんだ!?」
頭が痛くなるほどの音量で、サイレンのように鳴っているものは、目覚まし時計だった。しかも5台。
ルシオンは止め方に手間取ったものの、全部音を止める。
ルシオンは眠そうな顔のまま、隣で寝ているだろう友人を見る。ヒューリは、まだぐっすり寝ている。
もう起こす時間だと思い、体を揺すって起こすが、ヒューリは起きない。
同室だった頃は、なかなか起きなくて、ベッドから落として起こしていた事もあった。
だから、今回もベッドから落として起こす。だがそれでも眠り続けている。
寝起きが悪いヒューリだとしても、こんなにも反応が無いのはおかしい。
まさか………と心臓が大きく跳ねる。
恐る恐る、ヒューリの鼻元に耳を近付けてみた。
微かだが、息はしているし、ヒューリの胸に手を当てれば、鼓動は伝わってきていた。
やっぱり寝ているだけかと、ルシオンは安堵した。
「ヒューリ…。」
声をかけ、体を揺するが、それでもヒューリは起きなかった。
ソフィー先生に来てもらい、ヒューリの様子を診てもらった。
「不思議だけど、ただ眠っているだけね。……やっぱり、黒い人影の影響なのかしら。」
「昨日の夜は、普通でした。眠ったら目が覚めなくなるなんて……。」
「そうね…、とりあえず生徒会に報告ね。……………でも、彼どうしてベッドから落ちているの?」
ルシオンは、どう説明しようかと冷や汗をかいた。
そして、国立記念日がやってきた。
「ルシオン…元気だせよ。」
マクビルは、そう言ってルシオンの頭を撫でるが、『うん…』と気落ちした返事しか返ってこない。
あの日からヒューリは、ずっと眠ったままだった。
ルシオンは、一緒にいたのに何も出来なかった自分が、情けなくて落ち込んでいたのだ。
そんなルシオンに、テオルドは優しく話しかける。
「ルシオン、良い事教えてあげる。ダンスパーティに参加した生徒だけが貰える生花のブローチがあるんだけど、そのブローチには迷信があってね、3つ集まると願い事が叶うらしいんだ。だからね…。」
テオルドは、自分とルシオン、それからマクビルを指差して3つだよ、と微笑む。
ルシオンは、そんな友人達の優しさに涙が溢れていた。
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