能天気男子の受難

いとみ

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どうしてもと言われ、マクビルにも抱きついて機嫌を治してもらってから俺達は教室に向かった。



今日も光属性魔法の講義はある。
リビアンと並んでネフィル先生の講義を受ける。
ネフィル先生が教室に入った瞬間に俺を見て、驚いていたがすぐに笑顔に戻り、いつも通りの態度だった。

「魔力量を増やすためには、経験して値を増やせば魔力量も増え、使える魔法も増えます。そこで、さっそくですが明日、町の教会に行き、実践してみましょう。」

ネフィル先生の提案に、リビアンが質問する。

「ネフィル先生、他には誰が行くんですか?
だってぇ、私、国の保護対象でしょ?護衛の人が必要なんじゃないのかなぁって。」

「そうですね。誰か付いてきてもらいましょう。」

「はぁい!マクビルが良いでぇす。それか、グレース様とか、セレス様とか…が良いですぅ。」
リビアンは上目遣いをしながら、ネフィル先生に提案をする。と言うよりそのメンバーって、ゲームの攻略対象者じゃん。

ネフィル先生は、笑顔のままで
「検討してみます。」と言うだけだった。

誰か一緒に行くんだろうか?




昼休み。
俺は食堂で日替わりランチを食べようと思っていたが、テオルドとマクビルに止められた。
何でだ?
守護魔法は二人だけにしか解らないはずだし、他の人が俺に触れようとする人がいるとは思えないのに。

「今日は、天気が良いから外のベンチで食べようよ。」
テオルドにそう言われると、外で食べるランチも良いなと思えた。
食堂の隣にある店でサンドイッチを買い、外のベンチに行く。

その途中の廊下で、リビアンがいつものように激突してきた。
「きゃあぁぁ!」


俺は弾き飛ばされ、リビアンは床に手をついて倒れる。

ん?今、守護魔法が発動しなかったけど…どうなってんの?

「いっったぁぁい!」
リビアンは大声を出したかと思うと、しくしく泣き出してしまった。

守護魔法がリビアンに、効かないと言う事があるのだろうか?
女子だから?それとも………ヒロインだから、ゲーム補正でリビアンには効かないとか?

うーん、よく解らないけど…俺の事が好きじゃないという事は、はっきり解った。
いつも通りのリビアンに、ほっとするが、ちょっと落ち込む。
俺だって一応、攻略対象者だからさ。

テオルドは俺に手を差し出してきた。
「ほっといて行こう。」

マクビルも関わりたくないらしく、リビアンの方を一切見ていない。

だが、女の子が泣いているのを無視出来ない。
しかも良く見ると、リビアンは膝を擦りむいて血が出ている。思いっきり俺に体当たりして、床に転んだ時に出来た傷だろう。
スカートがやたら短すぎるからだと思うけど…。

光属性は自分で傷を治せない。

俺は試しに、リビアンを治してみたいと思った。
両手を顔に当て、しくしく泣いているリビアンに近づき、俺も同じように膝をついて、その血が出ている所に手をかざす。
「ヒール」

すると、俺の手のひらから光の玉が無数に出てきて、リビアンの傷を覆う。手のひらがほんのり暖かい。
傷を覆っていた光が消えると、綺麗に跡形もなくなっていた。

「凄い…。」
自分がやった魔法なのに、自分でびっくりしてしまった。

リビアンも驚いて、泣くのを止めて綺麗になった膝を見ていた。

「ルシオン、行くぞ。」
とマクビルに手を差し出され、その手を取ると一気に立ち上がらせられる。凄い力だ。

そのまま手を繋いで、その場を離れる。
リビアンは驚いたまま、固まっていた。




外のベンチについて腰を下ろすと、急に力が抜けふらついてしまった。
隣に座ったテオルドにとっさに手をついて支えてもらうと、逆に肩を抱かれ頭を肩にもたれさせてくれた。
「…ありがとう。」

さっきの『ヒール』で魔力量が少ない俺は、目眩を起こしたらしい。だらしない。

「凄かったね、さっきの治療魔法。綺麗だった。」
テオルドは褒めてくれた。

「あの女は自業自得だ。ほっとけば良いんだ。」
マクビルは、リビアンの事はやっぱり好きじゃないらしい。

俺はサンドイッチを食べる時もぼーっとして、ゆっくり粗食する。その後、うとうとと今度はマクビルの肩にもたれて寝てしまった。

「こいつは………馬鹿だな…。馬鹿が付くお人好しだ。」
マクビルは自分の肩に、頭をもたれているルシオンの髪を撫でる。
思っていた通りの触り心地に頬が緩む。

「だから、ほっとけないんだろ?俺もだけど…。」
テオルドはルシオンの寝顔を見ながら微笑む。

お互いに寝顔のルシオンを見つめ微笑む。
ぐっすり寝ているようで、髪を触っても頬を触っても動かない。
どうやらまだ魔力が戻らないため眠いらしい。

マクビルはルシオンを見ながら、気になっていた事を聞いてみた。

「だが…お前は良いのか?このままではセレスに取られるぞ。」
マクビルはテオルドが、一線を引いてそれ以上好きにならないように抑えているように感じていた。

テオルドはマクビルが何を言いたいのか解っていた。
「俺は………公爵家の長男だ。この血を絶やせない。…………だから…ルシオンの1番近い存在の友人でいると決めた。それ以上は望まない…。」

テオルドは、辛そうに微笑んだ。
マクビルも貴族だ。次男とはいえ家督を次ぐ事の大事さは解っている。平民の生活を守る事が貴族の勤めだ。
だが、テオルド自身の気持ちも知っている。
それが解るからこそ心配していたが、もうテオルドの決心は揺るがないようだ。

「そうか………。」

マクビルは、それしか言えなかった。



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