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エピローグ 

創造神様の旅立ち

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僕はユーリン、神様だ。
でも、神!ってほど威厳はなくて見た目は十歳くらいの子供。
でも、【フーラン】という世界を作った創造神。そんな僕だけど神様でいることに飽きた。
なぜってこの世界を作って何十万年の経っているんだ、そりゃ飽きるよ。
神様でいるのは退屈。
だから僕は最近、地上に降りて冒険者になって魔物と戦ったり、たくさんの場所を巡ってみたり、冒険してみたいなと妄想していることが多い。

「ユーリン?何か悩み事でもあるのですか?」
僕が妄想にふけっていると僕の友達であり、この世界の生と死の女神であるリンナが声をかけてきた。
「あ~、悩み事ってってわけじゃないけどね。ちょっと妄想してたんだ」
リンナは不思議そうに首を傾げた。
「妄想?いったい何を妄想していたんですか?」
僕はさっき妄想していたことをリンナに話した。
話した後、リンナは少し驚いていたようだけど別に取り乱すことなく普通に冷静だった。
「意外に驚かないんだね」
「いえ、驚いてます。ただ、なんとなく、ユーリンの様子を見ていて、そんな予感はあったので、いずれは‥‥‥‥と思っていましたが、まさか、こんなに早くだとは思いませんでした」
確かにリンナは周りのことを見ていると思う。

昔、地上のある国で、その当時の国王が変な宗教にのめり込んでいた。
僕たちは神だからと言って全てを見ているわけじゃない。いちいち、そんなことで干渉する事はない。
だけど、本来の神のための新しい世界をつくる、とか言っていろんなとこで戦争を仕掛けようとしていた。
それを感じ取ったリンナが怒ってその宗教を自らぶち壊しに行ったことがあった。
彼女は女神に相応しいほどの顔立ちのため起こるととても怖く感じる。
その様子を何も知らなかった僕たちは神界から見て呆れていたリンナの暴れっぷりは地上の者には、さぞ世界の終わりに見えたことだろう。

「二人で何を話しているんだい?」
僕がリンナの昔の暴れっぷりについて思い出していると前から温和な雰囲気を持つ青年が近づいてきた。それは、僕のもう一人の友達であり、この世界の文化の神でもあるケルンが前から歩いてきた。
「あ、ケルン。ちょっと僕の妄想についてね」
「妄想?」
ケルンも先程のリンナと同じように不思議そうな顔をしていたのでケルンにも僕の妄想について話した。
ケルンはリンナとは逆でとても驚いていた。
「ユーリン、それは本当に〝妄想だけ〟なのかい?」
落ち着きを取り戻したケルンが僕に尋ねた。
突然のその言葉、問いかけに対して否定することが出来なかった。
妄想だけって表面的には思っていても心の奥では叶えたいと思ってしまうから、だから僕はその問いに対して答えることが出来なかった。
僕がどうするべきなのか悩んでいるとケルンが優しく喋りかけてきた。
「ユーリン、自分に嘘をついちゃだめだよ」
ケルンの一言で何が消えていくのを感じ、そしてとても心が軽くなったので二人に正直に伝えた。

あれは〝妄想なんかじゃない〟と。

その気持ちを伝えると二人は微笑んでいた。
「二人は、僕の考えに反対しないの?」
「反対なんかしませんよ。ユーリンはこの世界をの創造神かもしれませんけど、自分の好きなことも楽しまないといけないと思います」
「僕も反対しないよ。だって僕はユーリンに本当の気持ちを話させたんだから」
二人は地上に降りること、そして僕の妄想‥‥‥いや、夢を認めてくれた。
「二人ともありがとう」
「「どういたしまして」」

これで、僕の妄想は現実のものになったのだけど早速!‥‥‥ってわけにはいかず三人で頭を抱えていた。
理由は一つ問題があったからだ。
その問題というのが場所である。通常、神が地上に降りるとき、教会にある自分たちの像に降りる。
神が何もないのに降りてくるもんなら世界が混乱してしまう。
それの例がリンナの暴れ事件だ。

「場所かぁ、じゃあ、こんなのはどうだろう」
行き詰まっていたところに口を開いたのはケルンだった。
「うん?なに」
僕はケルンに聞き返した。
「ユーリンが降りる依り代を地上の子こら選んでそこに降りるっていうのはどうだろう」
「依り代かぁ」
依り代というのは、神が降りる器のことだ。何か特別な場合の時のみに使われる方法なのだが、まさかこんなことで使うことになるかもしれないとは思わなかった。
「それは、ダメなんじゃないですか」
僕が悩んでいるとリンナが依り代の案を否定した。
「どうしてダメなんだ?」
ケルンは自分の案がなぜ否定されているのか見当もつかなかったのか不思議そうにリンナに訪ねていた。

「理由としては二人あります。一つ目に、依り代になる者の体力についてです。創造神であるユーリンが降りればその者がどんなに強かろうとユーリンの力に耐えきれなにでしょう。二つ目に、たとえ、その力に耐えきったとしても依り代を使うのは一日、二日ではないでしょう。その分のその者の人生を狂わせてしまいます。神がこんなことをしてはいけません」
「そうだね。僕たち神がそんなことしてはいけないね」
「じゃあさぁ、普通に降りるとして、場所が重要じゃない?」
前にも言ったように、僕たち神がただの街や森に普通に降りてくるもんなら世界が混乱に陥ってしまう。

「そうですね。では神域はどうですか?」
リンナが思い出したように言った。
大昔、人間の神官が神と繋がる聖なる場所を作ろうってなって〝神域〟というものを作っていたのだ。
今でも聖教会の神官がたまに様子を見に来るけど、今の聖教会にその様子はない。
「うん~、そうだね。そんなのもあったね」
ケルンは思い出したようだ。
「神域はここと近い場所ですし降りるならちょうどいいと思います」
「じゃあ、決まりだね。場所も決まったことだしそろそろ行こうかな」
決まって、僕が言うと二人は驚いたようだった。
「えっ?もう行くの?いくらなんでも早すぎない?」
「そうですよ。もうちょっとしてからでも良いんじゃないですか?」
二人は食う入るように僕を見た。

「でも、やっぱり冒険は早く楽しみたいじゃん?」
僕が二人の質問に答えると二人は僕の気持ちを尊重してくれた。
「そうですね。でしたら三つ約束事をしてください」
「約束?」
「はい。まず一つ目、何かあればすぐに連絡すること。二つ目、世界を壊さないこと。そして最後に三つ目、もし何もなくても一ヶ月に一回‥‥‥いや、二ヶ月に一回でも良いですからここ、神界に帰ってきてください。ケルンも良いですよね」
リンナは確認するように言った。
「僕は別に構わないよ」
ケルンはリンナの僕に対する約束に何も問題なかったらしくあっさりと答えた。
僕としても別に僕を縛るようなものではなくただ単に僕をを心配してくれている気持ちが伝わってくる内容で全く問題なかった。
それどころか少し嬉しかった。
まぁ、二つ目の〝世界を壊さないこと〟っていうのは少し‥‥‥ねぇ?
そんなことを考えつつ、リンナと約束した。

「では、ユーリン行ってらっしゃい」
「少し寂しい気もするけど、会おうと思えば会えるからね。楽しんでおいで」
「うん。ありがとう二人とも!」
ーー『天孫降臨』
僕はそんな二人の言葉を聞きながら地上に降りた。
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